二人の依頼
今回は途中から視点が変わります。
「さて、依頼を受けるとは言ったものの、何を受けるかな……」
「うーむ……取り敢えずこのSSSと書かれた依頼でも受けてみようかの……」
ジェシカ達との対話を終えた和人達は、ギルドで張り出されている依頼書をみながら、どんな依頼を受けるか考えている。和人は面白そうな依頼がないか、ヴェルはまだ人間の世界を良く分かって無いので取り敢えず自分のランクと同じランクの依頼を探している。
「おっ!これは面白そうだ」
「むっ?これなら分かり易くていい」
悩む事数分、和人とヴェルは同時に良さそうな依頼を見付けた。
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依頼場所:デスマウンテン
内容:デスマウンテンに住み着いた火竜の討伐
難易度:SSS
報酬:白金貨40枚+マジックアイテム
依頼主:クーデル侯爵家
備考:デスマウンテンにて火竜が確認された。恐らく頂上付近に巣を作っていると思われる。火竜は単体ですらSSランクに認定されている魔物だ。人語は話せないが、人間より頭が回る。しかも巣を作っているなら恐らく今回現れた火竜は番だろう。この依頼を受けてくれた勇敢な者よ、どうか奴等を排除して、この街に安全を齎してくれ。
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依頼場所:破滅の森
内容:破滅の森で確認されたデスピナスの調査及び討伐
難易度:EX
報酬:閃貨3枚+国宝一つ
依頼主:アキレス皇国
備考:ブレイアルと言う街の近くに存在する破滅の森にてデスピナスと思われる魔物の姿を確認した。デスピナスは単体で災害級とされる魔物だ。もし奴が本当に破滅の森にいるとするなら、我が国の大事な街が危険だ。この依頼を受けようとしてくれた者よ、どうか我が国の大事な街を護ってくれ。
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この二つの依頼場所であるデスマウンテンと破滅の森は、共に危険度がSSSとなっており、この世界有数の凶悪な場所だ。
「ま、絶望の森よりはマシだろう」
「うむ、絶望の森よりマシなら私でも大丈夫だな」
そう言いながら依頼書をカウンターに持って行く和人とヴェル。
今回二人は別々の依頼を受けるつもりだ。何故ならヴェルが久々に暴れたいと言った為だ。
どんな依頼も和人がいれば先ず間違い無くヴェルの出番等無く解決してしまうだろう。別にそれが不満なわけでは無いが、ヴェルとしても偶には力を振るいたいのだ。
と言う訳で今回は和人とヴェル、別々に行動をしようとなったのだ。
「姉ちゃん、これ頼む」
「同じくこれを」
「はいは〜い!って、あら?さっきのお二人さんじゃない!どれどれ、どんな依頼か…………え?」
カウンターで互いに選んだ依頼書を提出する和人とヴェル。そしてその依頼書を見た受付嬢は最早定番になって来ているように、驚きで全身を硬直させる。
「あの……お二人さんは本当にこの依頼を受けるの?」
恐る恐ると言った感じで聞く受付嬢に、周囲にいた冒険者や受付嬢が訝し気な視線を送る。
「ああそのつもりだ。ほらギルドカード」
「寧ろ何故そこまで驚くのかの?ほれ、ギルドカードじゃ」
だが二人はそんな周囲の視線を柳に風と受け流し、そのまま対応してくれた受付嬢にギルドカードを提出した。
「何でって……と、とにかくカードを拝見するわね」
そう言いながら二人のギルドカードを確認して、再び硬直する。
「い、EXランクにSSSランク……」
余りの驚きについ言葉を漏らしてしまった受付嬢。その声は本当に小さかったのだが、最初から和人達に注目していた冒険者や受付嬢達がそれを聞き逃すわけも無く、周囲はまたもや騒がしくなった。
「おい、聞いたか今の?」
「あ、ああ……てことはあの男が「瞬速の絶対者」かよ……」
「にわかに信じられねぇな、どうみても17〜18歳にしか見えねぇ……」
「で、でもギルドカードは偽造出来無いんだから本物の筈だ……」
「マジかよ……あいつら超大物じゃねーか」
「確かジェシカ達、あいつらの目の前でEXランクやSSSランクの冒険者でも神獣と出会ったらどうのこうのって言ってなかったか?」
「確かに言ってたな。しかもご本人様の前で……あいつら大丈夫か?」
「ああ、南無……」
「でもそれなら納得だな、SSSランクやEXランクの冒険者ならAランク冒険者程度、簡単に倒すよな……」
口々に騒ぎ立てる冒険者達。そんな中和人とヴェルはやはりと言った感じで無視を貫いている。
「早く受理してくれよ」
「私もそろそろ待ちくたびれたのぉ」
和人とヴェルの言葉でようやく意識が戻って来たのか、受付嬢はどもりながらもきちんと依頼を受理してくれた。
「な、難易度EX、破滅の森の調査、受理しました。次いで難易度SSS、 火竜の討伐、受理しました」
そして受付嬢が受理した依頼を聞いて再び騒がしくなるギルド。
「お、おい、聞いたか?破滅の森の調査だってよ」
「あ、ああ……でもそれより火竜だろ!」
「単体でSSランクの魔物に二人で挑むとかありえねぇだろ!」
「いや、あの男の方も依頼を受けている。しかも別の場所で、だ」
「はぁ⁉︎てことはソロで挑むのかよ!自殺行為だろ!」
「今思い出したけど、あの男が受けた依頼って破滅の森でデスピナスが確認されたから出された依頼だぜ?」
「ハアァァ⁉︎もう驚き過ぎて言葉が出ねぇよ!」
「デスピナスって確か災害級だろ?ヤバすぎるだろ⁉︎」
再び口々に騒ぎ立てる冒険者達。そして和人達はそんな冒険者達を無視してギルドの外に向かう。背後に好奇と畏怖の視線を感じながらギルドの扉を潜った。
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「んじゃ、破滅の森は向こうだからここらで一旦別れようか」
「ああ、待ち合わせとかはどうするのだ?」
「ん〜……それならギルドで良いだろう。どうせ俺等ならそんな時間を掛けずに終了するだろうしな」
「あい分かった。ではそうしよう」
ブレイアルの街の街門前、和人とヴェルは依頼の後の話をしていた。
「じゃあそろそろ行くか。神獣を探す時間も欲しいしな」
「うむ、では先に失礼するぞ」
そう言ってヴェルは足に魔力を流し、デスマウンテンの方向に体を向けた。その瞬間、足に流した魔力を爆発的に動かし、姿を一瞬にして消した。
「ヒュー、相変わらずすげぇ速度だ」
ヴェルの移動速度は和人でもギリギリ見えるくらいの速さなので、和人の視界からもほんの数秒で消えた。
「さて、俺もそろそろ行こうかな……」
そう呟き和人もヴェルと同様に足に魔力を流し、それを爆発的に動かし移動を開始する。
そして、和人達のいた場所には恐ろしい程の静寂と、二つの巨大なクレーターだけが残っていた。
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「ふう、ここがデスマウンテンか……まあまあ楽しそうじゃな……」
マスターと別れた私は、受けた依頼とやらの目的地であるデスマウンテンにやって来た。
「えーっと……確か火竜とやらを狩れば良いのだったな……」
マスターから教えて貰った火竜の姿を思い浮かべながら、私は山を登り始めた。
山は木などは無く、殆どが岩ばかりで正直登り辛い。
「でも飛ぶとその魔力にビビったのか、魔物が一切近付いて来なくなるんじゃったな……」
それは流石にマズイので私は岩だらけの道を歩き続ける。早く終わらせないよマスターを待たせてしまう。
「キシャァァァ!」
暫く歩くと、前方に身体に火を纏ったトカゲみたいな生物が現れた。大きさは大体3m弱と言ったところだ。
「こいつがマスターの言ってたフレアリザードとか言う魔物かの?」
マスターが教えてくれた情報だと、火を纏った巨大なトカゲだと言っておったから先ず間違い無いだろう。
「ランクS程度の小物が神竜たる私に逆らうか」
私はマスターか頂いていた”銃”とか言う武器を両手に構えた。
これは以前魔物の大群を殺した時、私に大量の返り血が掛かったのを見たマスターが、
『お前に魔物の血が掛かっているのは見たくない』
と言って私にくれた物だ。
これは遠距離から攻撃出来る優れ物らしい。実際使うのは初めてだけど、練習はしていたので問題無く扱えると思う。
私はマスターに言われたこの武器の使い方を思い出しながら銃に魔力を込める。
「確か銃に魔力を込めて引き金を引く、だったかのぅ……」
言われ通り魔力を込めた銃をフレアリザードに向け、引き金を引く。
ズドン‼︎
マスターが銃口と呼んでた場所から魔力の弾丸が鈍い音をたてて発射された。
「キシャッ⁉︎」
発射された弾丸は狙い違わずフレアリザードの眉間に直撃し、その頭を吹き飛ばした。
「おおう、出た……流石はマスターの授けてくれた物、凄い威力だ……」
頭が吹き飛んだフレアリザードを以前マスターから教えて貰った魔法を使い創り出した別次元に放り込み、今の攻撃を思い出していた。
「少ない魔力であそこまでの威力を出せるとは驚いた……しかもまだ魔力を込める事が出来る余地を残している……いや、もしかしたら込められる魔力に上限が無いのかもしれんな……」
私再び銃に魔力を込めて引き金を引いた。今度はさっきの倍の魔力を込めてみたがマスターから授かったこの武器はそんな物何でもないように平然の魔力を受け止めた。
ズドォン‼︎
発射された弾丸は先程フレアリザードの眉間を撃ち抜いた時とは比べ物にならない程の威力が秘められており、目の前にあった軽く10mはありそうな岩を一瞬にして粉々に砕いた。
「しかも魔力を増幅させる機能も付いてると見た。やはりマスターは本当に素晴らしいお方だ。また惚れ直してしまった」
新武器の性能とマスターの素晴らし差に心躍らせ、私は意気揚々とデスマウンテンの山道を進む。
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「ふーん、ここが破滅の森か。自分で選んどいてなんだけど、俺ってこの世界来てからいろんな森行ってるよな」
破滅の森の入り口にやって来た俺は目の前にある巨大な森を見て思わず呟いた。
「さてと、どうせなら神獣を探す為の魔法をここで試すか」
俺は「神の知識」から魔力探知の魔法を見付け出し、その魔法に固有技能である「神眼オリジナル」と、もう一つの固有技能である「魔眼オリジナル」を組み合わせ、新たなるオリジナル魔法を創り出した。
「名付けて「魔神眼」と言ったところかな」
「魔神眼」は、「神眼オリジナル」の能力である、知ってる場所を全て視認出来ると言う能力と、「魔眼オリジナル」のイメージした事柄を起こす事が出来ると言う能力を組み合わせ、更にそこに「神の知識」で探り出した「魔力探知」の魔力を探る事が出来ると言った能力を足した魔法で、能力は『生き物、建物、自然、関係無しにイメージした物の場所を探る事が出来る。また、魔力を持つ物を探る場合の精度が500%アップする』と言った超チート能力だ。
「いや、チート能力なんて事今更か……」
早速創り出した「魔神眼」を発動してデスピナスを探る。「魔神眼」を発動すると、俺の眼の色は、右が金、左が赤に光り輝き、それぞれの眼で情報を探り出した。
「ほう、右は魔力を探り、左は対象を探るのか……普通、こんな情報が一気に入って来たら脳が処理出来なくなって頭痛がする筈なんだが、それが全く感じ無いな……」
どうやら「魔神眼」は脳の処理能力をも圧倒的に上げてくれるようだ。
「むっ、捉えた!」
赤に輝く左眼がデスピナスを捉え、金に輝く右眼がデスピナスの纏う魔力を感じ取った。しかもどうやら右眼は魔力を捉えるだけで無く対象の情報も識別してくれるようだ。
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名前:(無し)
種族:デスピナス
生命力:115250 / 115250
魔法力:87500 / 8750
力:36000
守:44000
速:52500(105000)
魔:20000
スキル:「闇魔法」・・・闇属性の魔法を扱えるようになる(使える魔法や威力には個体差有り)
「風魔法」・・・風属性の魔法を扱えるようになる(使える魔法や威力には個体差有り)
技能:「速度倍化」・・・発動するとステータスの速度が倍になる
称号:「災害を起こす者」・・・かつて災害レベルの事象を起こした事のある者に送られる称号。基礎ステータスに補正がかかる
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どうやらデスピナスは食事中のようで、暫くそこから動く気配が無い。食べているのはこの森でもかなりの上位に君臨する筈のSSランクモンスターである「ヘヴィコング」。
奴等はかなり好戦的で、その太い腕からの一撃は30tにも達するの言われている。
そんなモンスターを何でも無いように食しているデスピナスを見て俺は、
「成る程、中々面白そうな奴だな」
と、呟きながらニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、発動していた「魔神眼」を止めて、デスピナスのいる方向にゆっくりと歩みを進め出した。




