神獣の伝説
今回の話は、終わらし方がイマイチ無理矢理な気がするので、読み終わってそういう風に感じたら是非ご指摘下さい。頑張って直します。
冒険者ギルドブレイアル支部、今このギルド内には異様な雰囲気が流れていた。
「おい、何時まで呆けているつもりだ?約束はきちんと守って貰うぞ?」
「ふふふっ相変わらずマスターのやる事はデタラメだのう。でもそこがカッコイイんだけど」
原因は今座っている二人の少年少女だ。
片方は珍しい黒髪黒目の少年、もう片方は美しい金髪を後ろで束ねた絶世の美女、いや、年齢は少年と同じくらいなので美少女と言う方が正しいだろう。
「えーっとー……」
そんな二人から視線を向けられているジェシカはとても居心地が悪そうだ。何せ少年の方はAランク冒険者を一撃で沈める力を持っている者であり、少女の方はそんな少年と気心の知れた会話をしているのだ。
「あ、あの、取り敢えずバンとフェイルの喧嘩を止めてくれてありがとう。二人の名前を聞いても?」
恐る恐る聞くジェシカ。それに周りの人々も反応を示す。何故ならAランク冒険者を二人同時に一撃で沈める少年なので、名の知れた冒険者なのでは無いかと思ったからだ。
「ん?ああ、そういやまだ名乗って無かったな。俺の名前はカズト、カズト マガミだ」
「私はヴェルフェン。マスターであるカズト様に従っている」
「カズト……君にヴェルフェンさん……聞いたこと無いわね」
王都であんな活躍をした和人とヴェルの名前は今だに知れ渡って無いのは、王都での出来事から余り時間が経っていないのと、王国側が情報規制をしているからだ。和人やヴェルは互いに一人で国を相手にしても圧勝出来る力を持っている。そんな人物が他国に渡ったたら間違い無くその国が最強になってしまい、ある程度収まっている戦争が再び起こってしまうからだ。
「んじゃこっちも名前を教えたんだから、そちらさんも名前を教えてもらおうか?」
「もちろんよ。改めて私はジェシカ」
向かいに座っている女性が名乗る。
「俺がジェニアだジェシカとは姉弟だ」
ジェシカの隣にいた男性が名乗る。
「僕はフォルスと言います」
「アタイはエーレス」
「ガンギスだぜ!」
ジェシカ、ジェニアに引き続き、争ってた二人を止めようとしていた冒険者達も名乗る。
「喧嘩してたのがバンとフェイル。今二人を運んで行ってる奴等がいるけど、そいつらは後ででいいよね?」
「ああそれで構わない。で?早速情報とやらを聞こうか?」
和人は頷き、ジェシカに約束の情報を求める。
ジェシカはそれに頷き返し、情報を説明し始める。
「先ず貴方達神獣って知ってる?」
「神獣?知らんな。ヴェルはどうだ?」
「すまぬ、私も神獣とやらは知らないのぅ」
ジェシカの質問に首を傾げる和人とヴェル。ジェシカはその様子を見て、ホッと息を吐いた。
「良かった、それならこの情報が貴方達へのお礼になるわね。
神獣とはこの世界に存在する魔物の長とされていて、魔族とは別の進化を辿った魔物だと言われているわ。
神獣は確認されているだけだと四匹、獣型の神獣である九尾、鳥型の神獣である鳳凰、龍型の神獣である応龍、そして水棲型の神獣である霊亀。これらが現在までに存在が確認されている神獣よ。でも歴史上でほん数回だけだけど確認されている神獣もいるわ。まあ存在していると言われているだけで、まだ未確認なんだけどね」
和人はジェシカの説明を聞きながら、「神の知識」で神獣の記憶を探ろうとしてみたが、無理だった。どうやら神獣とは神とついているが精確には神では無いようだ。つまり神獣とはヴェルと同じような存在だろうと想像する。
「成る程……神獣か、興味あるな」
「うむ、戦ってみたいのぉ」
「それはダメよヴェルフェンさん。神獣はとっても強いんだから。何度か休憩中のところに遭遇した人達が挑んだっていう記録は残っているけど、その全員が死亡か、重傷を負っているわ。神獣はまさに魔物達の神なのよ。幾ら強くても人間には勝て無いわ。それこそ有名なSSSランカー冒険者が束で掛かっても、怪我くらいは負わせられかもしれないけど勝つのは無理よ。多分最近現れたEXランク冒険者でそのくらいしか出来ないんじゃないかしら」
SSSランク冒険者と、EXランク冒険者と言う名前が出たところで和人とヴェルがピクリと反応する。正直神獣と戦っても負ける気がしないので反論しようとしたのだが、そうするとまたギルド内が騒がしくなりそうなのでやめといた。
「ふーん……例えばだけど神獣と会うためにはどうすればいいんだ?」
「ちょっと!貴方達神獣と戦うつもりじゃないでしょうね⁉︎貴方達は確かに強いけど神獣はもっと強いのよ!さっきも言ったけど、SSSランク冒険者やEXランク冒険者でも無理なんだから!」
「あー落ち着け落ち着け。誰も戦うなんて言って無いだろ?ただの興味だ興味」
和人の質問に、和人達が神獣に挑むつもりなのではないか思ったジェシカがすぐさま止めるが、和人はただの興味だと言って誤魔化した。
そう和人達は神獣と戦うつもりなのだ。
そもそも和人が神獣という存在に興味を持たないわけが無い。そしてヴェルはそんな和人に従うだろう。
「そう?それなら良いんだけど……でも無茶だけはしないでよ?知り合って間も無いとは言っても知り合いが死ぬのはあまり良い気分ではないんだから」
ジェシカは本当に心配そうにそう言う。
彼女は冒険者だ。知り合いが死ぬのを何回も味わっているのだろう。そのため和人達相手にもこんな心配してくれるのだ。もしかしたら彼女の性格がそもそも心配性なだけかもしれないが。
「でもカズトさん達って本当にお強いですよね。僕も冒険者になってからそこそこ経っているので、相手の強さはそれなりに分かるんですけど、カズトさんとヴェルフェンさんの強さは測りしれませんよ」
そんな思考をしていると、フォルスがそんな事を言って来た。
「アタイもそう思うね。アンタら結構な凄腕だろ?」
「是非手合わせを願いてぇな!」
フォルスに追随するように、エーレスとガンギスも口々にそう言う。
「まあそれなりには強いと自負しているな。だが手合わせする気は無いぞ?」
「何でだよ?いいじゃねぇか別に」
「そもそも俺達は依頼を受けに来たんだ。それなのに中お前等の問題を解決してやったんだ。これ以上時間は取りたく無い」
「うっ、そいやそうだったな、すまねぇ」
和人の言葉に潔く引き下げるガンギス。どうやらガンギス達も和人達に態々時間を取って貰った事に負い目があったようだ。
「態々時間を取らせてしまいすみません。でもお二人がいなければまだバンさんのフェイルさんの喧嘩はまだ止まって無かったと思います。本当にありがとうございました」
ガンギスに次いでフォルスも謝罪をして来る。その横ではエーレスも頭を下げていた。
「なら俺達はそろそろ行くな。あの二人が目覚めたらもう喧嘩しないように言っとけよ?」
そう言って席を立つ和人。ヴェルもそれに追随して席を立った。
「分かったわ。今回は本当にありがとう。それでさっきの神獣に会う方法だけど、神獣は人の認識出来ない速度で移動するから、多分狙って見付けるのは無理よ。さっき言った過去の記録も休憩中の神獣に偶然遭遇したってだけの話だから。まあ神獣はその名に恥じない魔力を纏っているから、もし魔力を探れれば見付けられるかもしれないけどね」
ジェシカはそこで一拍置き、続きを語る。
「でもそんな珍しい魔法なんて中々無いし、有ったとして神獣クラスになると隠蔽とかも持ってるだろうから、それらを突破出来るレベルが必要なのよ。それに仮に出来たとしても、人の認識出来ない速度で移動してるんだから結局は無理ね」
そう言って自分も立ち上がりギルドの外へと向かって行く。
「じゃあ私達はバンとフェイルの様子を見に行くわ。また機会があったら会いましょう」
ギルドの出入り口で一度こちらを振り向き手を振ってギルドの外に出るジェシカに、フォルス達も従って行く。
「では失礼します。カズトさん、ヴェルフェンさんお気を付けて」
「アタイ達は暫くここに留まるつもりだからまた会えたら会おうな」
「今度会った時は絶対手合わせして貰うからな!」
フォルス達は和人達にそう言って先に外に出たジェシカを追う。そして、全員の姿が見えなくなった頃、ようやくギルド内が再び騒がしくなり、互いに近くの者と会話を始めた。恐らく今の会話の間に皆落ち着きを取り戻したのだろう。しかし話題はやはりと言うか和人とヴェルの事だったが。
「魔力を探る魔法か……「神の知識」にあるな」
そんな中和人は不適に笑い、ヴェルと共にギルドカウンターに向かって歩き出した。
次回は和人とヴェルの依頼の話です。




