五章 プロローグ
今回から第五章突入です。
第五章は神獣達のお話ですね。
P.S
四章 プロローグが四章に含まれていなかったことに気づきましたので直しときました。
夜の帳が降りて来て、そろそろ今日が終わるといった時、大地を掛ける一匹の巨大な獣。
そしてそれに追随するかのように飛ぶ巨大な鳥。彼等は神獣と呼ばれる存在であり、魔物に分類されながらも、神の力を持つこの世界の最強の一角。人々は彼等を疎みつつ、だが倒す事など不可能な事を理解しているため手を出す事をしない。
神獣は基本住処を持たず、人の認識を超えた速度で世界中を駆け回る。その為人間達には休憩中の時以外は見つけることが出来ない。
彼等は常に一匹で行動する。しかし、稀に二匹三匹と一緒に居ることもある。それは何故か。
「グオオオオッ‼︎」
「キエエエエ‼︎」
二匹の神獣は互いにブレスを放ち、その衝撃で周りの木々は吹き飛び、地面は抉れる。そう、二匹以上が同時にいる時は争っている時だ。
神獣同士は別に仲が悪い訳では無い。だが、互いの力を出し合って争える存在が同じ神獣しかいないだけだ。その為神獣同士は争い、互いの力を認識し合う。
「アハハハッ!中々やるね鳳凰!」
「貴方も相変わらずの力ですね九尾!」
狐の姿をした神獣が、空に飛ぶ鳥の姿の神獣、鳳凰に話し掛ける。
「久振りに会ったから戦ってみたけど、貴方結構強くなってない?」
「フフフッ確かに強くなりました。それでも貴方は私の力と互角に当たって来る。どうやら強くなったのは私だけで無いようですね」
二匹の神獣の声は、思ったよりも高く、綺麗に澄み渡るような声音であり、声だけを聴くと、美しい女性同士の会話に思える。しかしその声の主達は、互いに凶悪な威力の魔法を放ち合い、また、一撃一撃が致命傷となるだろう攻撃で相手を襲う。
「ん?この気配は応龍と霊亀ですね」
「あ、本当だ!もしかしたら数十年振りに神獣全員による戦闘が出来るかもね!」
争いながらもきちんと周りの気配は探っているらしく、他の神獣達の接近にも気付いた。どうやら向こうも自分達の気配を察して、此方に向かって来ているようだ。
「なら一旦ここらで中止にして、二人と合流したら再開しましょう」
「さんせーい。なら早く行こうよ!」
九尾と鳳凰は戦闘を切り上げ、応龍と霊亀の気配がする方向へと走りだした。
走ること数十分、目の前には黒い鱗の龍と、漆黒の甲羅に水脈のような模様が刻まれている亀が現れた。
「やあ、久振りだね九尾、鳳凰」
「……貴方達の戦闘の気配、ハッキリと分かった……」
応龍と霊亀は現れた九尾と鳳凰に話し掛ける。
「でもそのおかげで会えたじゃん!結果オーライだよ結果オーライ!」
「フフフ、私も九尾と同じ意見ですよ」
九尾は満面の笑み、鳳凰は優しい微笑みを浮かべ、目の前の応龍と霊亀に話し掛ける。
「全く、君達と言う奴は……」
「……でもそれが二人の良いところ……」
応龍は呆れ半分に、霊亀は無表情に言葉を返す。なんだかんだ言ってもやはり仲が良いようだ。
「アハハハッ、まあ細かいところはいいじゃん!せっかく数十年ぶりにこうして皆会ったんだから久し振りに戦おうよ!」
「相変わらず九尾は戦いが好きだなぁ」
「……でも私も戦いたい……」
「なら早く早く!」
「落ち着きなさい九尾。きちんと皆戦いますよ。でもここは私達の戦いでもうボロボロだから一先ず移動しましょう」
神獣達の会話はまるで家族のようだが、その瞳は闘争心で溢れている。
「じゃあ移動しようか」
応龍の掛け声に皆一斉に頷き、その場でいきなり人間には視認が出来無い亜光速の域に突入して動きだす。目指す場所はとある街の方角。そこに自分達では到底及ばない力を持って理不尽の根源がいる事も知らずに………
はい、と言うことで第五章のプロローグでした。次回から主人公の視点になります。
10月10日、神獣を四神から瑞獣に変えました




