皇帝との謁見
サブタイトルが思いつかない……orz
「んん……ああ、今日は皇帝に会うんだったな…」
今日は皇帝と会う日なので、昨夜は軽目に第3Rまでにして寝た為、予想より早く目が覚めてしまった。
外を見ると、薄っすらと明るくなる帝国の景色が見える。
「ちょっと起きるの早過ぎたな…軽く散歩でもしてくるか……」
ベッドを見ると、ヴェルはまだぐっすりと眠っていた。その寝顔はとても美しく、見慣れた今でも少し見惚れてしまう。
「こんな状態のヴェルを起こすのはしのび無いな……メモ残して俺一人で行くか……」
自分で作った別空間から、一枚の羊皮紙と、ペンを取り出し、散歩に行って来ると書き、部屋の机に置いといた。
「さて、ちょっと行って来るか……」
外に出ると、やはり朝早くなのか、殆ど人が居なかった。
人が殆どいないこの風景は、昨日の昼に来た時の光景と全く違い、新鮮な気持ちにしてくれた。
暫く歩いていると、一人で素振りをしている兵士を見つけた。
「おはよう。こんな早くから訓練とは熱心な奴だな」
なんとなく気になったので話かけてみると、向こうも俺に気付いたのか、素振りを止めて近付いて来る。
「おはようございます。僕は最近皇帝陛下の近衛兵に選ばれたので、つい気合が入ってしまいまして、こうして自己鍛錬をして少しでも皇帝の役に立てる様になりたいんです。あっと、申し遅れました、僕は帝国近衛兵のエリックと申します」
「俺はカズト。今日皇帝に呼ばれている冒険者だ」
エリックは、和人の自己紹介を聞き、驚いた表情を作り、次には尊敬の眼差しを送って来た。
「てことは、貴方が史上初のEXランク冒険者の「瞬速の絶対者」様ですか⁉︎お会いできて光栄です!」
「お、おお……ありがとう。お前も近衛兵ならまた後で会えるかもな」
俺の手を握り、激しく上下させて握手して来るエリックにたじたじになりつつも、早くこの場から離れたい為適当に話を切り上げる。
「あっ⁉︎失礼しました!つい興奮してしまいまして……僕は貴方と皇帝陛下の謁見の場に居合わす予定なので、後程またお会いしましょう。では僕はまだ暫くここで素振りをして行きますので、失礼します」
一礼してまた元の場所に戻り素振りを開始するエリックを見て、一つため息を吐き、そろそろ良い時間になるので宿に戻る事にした。
「お帰りマスター。早朝散歩はどうだった?私も連れて行って欲しかったんだがな」
宿に帰ると、もうヴェルは起きており、ちょっと拗ねていた。
「悪い悪い。あんまりにも気持ち良さそうに寝ていたから、起こすのは何か悪くってな」
ヴェルに謝罪しつつ、先程の散歩の話をヴェルにしてやった。
「ふむ…真面目な奴もおったのだな」
どうやら機嫌は直してくれた様だ。
「だろ?あいつは面白い奴だった。……っと、そろそろ飯の時間じゃないか?」
ふと思い出しヴェルに伝えると、ヴェルも思い出したとばかりに反応して、二人揃って一階の食堂へ向かった。
どうやら和人達は結構早目の時間に来たのか、周囲には他の客の姿は見られなかった。
「そういえば皇帝との謁見の時ってヴェルはどうするんだ?」
「どう、とは?」
「ほら、皇帝に呼ばれているのって俺だけだろ?だからヴェルはどうするのかなって思ってさ」
食事を取りながら、ふと疑問に感じた事を伝えると、ヴェルは少し考える素振りをして、
「ふむ、私も行くぞマスター。これでも一応はSSSランク冒険者の肩書きを持っているから、問題無いだろう」
「そうか。ならそれでもいいや。一緒に行こう」
「うむ!」
結局一緒に行く事にした。
***
食事を終え、そろそろ城も開くだろう時間になったので、和人とヴェルは帝国の王城に向かい足を進めた。
「止まれ。ここからは皇帝の住まわれる王城だ。如何な要件でこちらに来た」
王城の前で門番に止められたので、ギルドカードを見せ、来た理由を説明した。門番はチラッとヴェルを見ていたが、きちんと仕事をこなしていた。帝国の門兵はかなり優秀のようだ。
「確認が取れた。ようこそ帝国の王城へ。連絡をしておいたので、城に入ったら待機しているメイドが居るので、その者に付いて皇帝陛下との謁見の間にお行き下さい」
門番の兵士に言われた通り、王城に入るとメイドと思われる女性が一人待っていた。
「EXランク冒険者カズト様にそのお仲間であるSSSランク冒険者のヴェルフェン様ですね?私は貴方様方のご案内をさせて頂くマリーと申します。早速ですが皇帝陛下がお待ちですので、こちらへどうぞ」
マリーと言うメイドに連れられ、かなりの広さを持つ城を歩き出した。
大体5分くらい歩いた頃、目の前に派手で巨大な扉が現れ、マリーはその場で足を止め扉をノックした。
「失礼します。皇帝陛下、EXランク冒険者カズト様と、そのお連れのSSSランク冒険者ヴェルフェン様をお連れしました」
「入れ」
マリーが和人達の来訪を伝えると、扉の奥から威厳のある声が聞こえて来た。恐らく皇帝とやらだろう。
(なんだ……この不快な感覚は……)
その声に和人は何とも言えない嫌な感覚を抱いた。
扉を潜ると、部屋の左右の隅に如何にも強そうな見た目の屈強な男や女の兵士が待機していた。その中にはエリックの姿も有った。とゆうことはこの兵士達は皇帝の近衛兵だろう。その奥には、玉座を中心に、この国の重鎮らしき人物達も居た。
「よくぞ来た。カズト・マガミよ。聞けばそちの連れもSSSランクとの事では無いか。その若さでよくやったものだ。そんなお主らに一度会ってみたくってな、今回は呼ばせて貰った」
玉座に座る皇帝と思われる50代の男性が話かけて来る。その時和人は気付いた。この男の心の内にあるどす黒い部分に。そして、俺達を呼んだ本当の理由に……
次回は皇帝との謁見の詳しい話です。




