魔王の気持ち
今回は最初の方以外魔王視点です。
「さて、と一息ついたし何かしようぜ」
王の間と呼ばれる部屋で魔王達を見下ろしながらそう言葉を発しているのは俺だ。
「貴様!たかが人間の癖に魔王様を見下ろすとは何事だ⁉︎貴様がこちらに来い!」
すると、さっき俺にあっさりぶっ飛ばされたリュオンと呼ばれる魔人が、俺を指差して怒鳴り付けて来る。
「あ?なんだお前、まだ痛め付け足りないのか?あ?」
「ヒッ⁉︎」
むかついたから威圧に魔力を乗せて放ってみたら、リュオンはビビって情け無い悲鳴を上げた。はっザマァ。
「すみませんカズト様…リュオンは私の事になると狂信的になってしまい、頭に血が登りやすくなってしまうのです…」
俺に圧倒的実力差を見せ付けられた魔王は、あの後態度がガラッと変わった。何か妙に熱い眼差しで俺を見て来るのだ。
「ふぅん…アリアを狂信的にねぇ……面倒な事になる前に一思いに殺っちまうか……?」
最後の方は、ボソッと言っただけなのだが、どうやら魔人の驚異的な聴覚には意味を成さず、リュオンは土下座して許しを乞うて来た。やっぱりこうゆう性格の奴は、脅すに限る。
「全く…リュオンにも困った物だな」
大柄な鬼の魔人の、グアルディオラがそう言うと、ヒヤルとリリアンも同意して頷く。
さて、そろそろあの後何があったかを説明しよう。
それは今から数時間前の事・・・
あの後、発動していた魔法を解除して魔王の股間に浄化と乾燥を掛けてやり、起こしてあげながら、俺が来た理由を説明した。その際アリアラテスと言う魔王の名前を聞いておいた。アリアと呼ぶのは魔王にそう言われたからだ。
俺に起こされたアリアは、顔を羞恥で染めながら俺の説明を聞き、魔人の皆が目覚めたら話し合わせてくれと言った。今思えば、その時からアリアの俺を見る目が変わったんだったな……
〜アリア視点〜
私は生まれた時には既に神々の記憶の一部が存在していた。それを自覚出来たのはある程度の時か経ち、柔軟な思考が出来るようになってからだった。
私はその記憶を知り激しい憤りを覚えた。我らの信仰する闇女神レディア様を陥れた神々を許してはおけなかった。
それから更に時が経ち、私自信がこの魔界で最強の実力を手に入れたことにより、魔王となる事を決意した。その後は楽だった。先ず最初に今の魔王を殺し、その部下と新たな兵士を配下として人間界に攻め入る準備を整えた。人間共は、我らが神レディア様を陥れた神々を信仰している。そんな奴等に生きている意味は無い。皆殺しだ。その時の私はそう覚悟を決め、喋り方も魔王らしく威厳のある言葉遣いを心掛けた。そんな私にも立派な部下が出来た。三つ目族の魔人リュオンと、鬼族の魔人グアルディオラ。そして吸血鬼族のリリアンに、悪魔族のヒヤルだ。
彼等は優秀だった。実力も知識も他の魔族達とは一線をなしており、私の腹心として立派に働いてくれた。そんな彼等でもあの方には勝てなかった……
闇夜の様な漆黒の瞳に、漆黒の髪を持ち、私達が束になっても勝てない程の圧倒的な実力を持つ少年、カズト マガミ様だ。先ずカズト様は、我々の陣営で最も実力を持ち、四天王と呼ばれる存在であり、腹心でもある二人を瞬殺して、二人掛で戦った残りの二人も、脳が認識出来ない速度での攻撃で倒してしまった。
私は全力で戦った。四天王と呼ばれている実力者を無傷で全滅させた相手だ、元より手加減などしている余裕は無い。しかし私の魔法は全く意味を成さなかった。どんな魔法を唱えても全部最下級魔法で相殺させられてしまうのだ。私は焦った。こんな事今まで一度も無かった筈なのに…気付いたら私は周囲を巻き込んでしまう魔法を唱えていた。あの魔法は威力はあるけど調整が聞か無いのだ。気付いた私は直ぐに魔法をキャンセルしようとしたが手遅れだった。皆ごめん。心の中で謝っていた私は、そこで何度目か分からない驚愕をした。私の魔法が呑み込まれてしまったのだ。この時点で私の勝ち目は無くなっていた。負けた……そんな言葉が頭に何度も何度も流れて行った。カズト様はそんな私を更なる絶望に落とした。終わりだ…そんな感想しか出て来なかった。私は情けなく失禁までしてしまった。カズト様が最後に見せた魔法、あれは最早魔法と言った枠組みを越えていた。あんなものが放たれたらこの世界は滅びる。いや、この世界だけでは無く、他の世界があるとしたら、その世界まで滅びてしまうだろう。私は心底絶望した。恐怖すらも生温く感じる程の絶望を味わった。しかし、それと同時に彼に強く惹かれた。今まで居なかった自分より強い彼に…
カズト様の話を聞いた私の心は一つだった。カズト様に従おう。カズト様に着いて行こう。我らの神を陥れた存在を滅ぼす為に、大好きなカズト様と一緒にいるために…
カズト様に従う事を他の魔人達に説明したら、やはり反発が多かったが、カズト様が何かすると、たちまち魔族全員がカズト様に跪き、服従の意を示した。かくいう私も、カズト様に跪き、服従の意を示していた。本能の部分が何故かこうしないといけないと反応したのだ。それに従い私や四天王を含め、全ての魔族達がカズト様の配下となる事を了承した。
「カズト様はこの後如何されるので?」
あの後、カズト様はこの後何するのかを聞いた。出来れば少しでも一緒に居たかったのだ。
「そうだな…暫くは予定は無いし、何処かでゆっくりするつもりだな」
「なら!なら是非我が城にてお住まい下さい!部屋は沢山空いておりますが、カズト様には特別立派なお部屋を用意しておりますゆえ!」
やった!これで暫く一緒にいられる!私はかなり積極的に行った。カズト様に用意してあるのは私の部屋だ。これなら寝る時も一緒に居れる。
恋とは人をここまで積極的にするものなのだろうか?これが初恋の為分からないが、とにかく今は一緒に居たい。カズト様をもっと知りたい。これが今の私の心情だ。願わくば、この至福の時が永遠と続きますように……私静かに願い、カズト様の後を追い歩き出した。




