第60話「キツネの嫁入り発動!」
「助太刀に来たのじゃ」
「援軍であります」
「こ、コンちゃん、シロちゃん!」
うむ、感動の再会で抱きついてきおった。
「これこれ、じゃれるのは後じゃ」
「はい、もうすぐ到着します!」
おお、村長席を立って言いおる。
「は~い!」
「ニンジャ屋敷から巡ります、係の人の言う事をしっかり聞いてください」
「はいは~い!」
おお、ぽんた王国が見えてきたのじゃ。
「ああ! めがねにんじゃ!」
レッドめ、ポン太を見つけて打ち震えておるのう。
「めめめめがねにんじゃ!」
ドアが開いたら一番に飛び出しおったぞ。
ポン太、抱きつかれてびっくりしておる。
まぁ、レッドがわらわに付いて来たら戦いにくかった故、よかったかのう。
「みんな、ニンジャ屋敷に行ったでありますね」
「うむ、わらわ達はそば屋に向かうかの」
現場監督が先頭で入店、おお、ポンのびっくりした声が聞こえるぞ。
何か話しておるようじゃが、現場監督がのれんを上げてくれたのじゃ。
ポン、再度びっくりしておる。
「助太刀に来たのじゃ」
「援軍であります」
「こ、コンちゃん、シロちゃん!」
うむ、感動の再会で抱きついてきおった。
「これこれ、じゃれるのは後じゃ」
「だ、だって~」
「ポン、おぬし攻撃があるのは知っておろう」
「うん、現場監督さんから聞いたよ」
ポン、急に真顔になって、
「ダンプの爆音が近付いて来るよ」
ふむ、そこまでわかっておるのならよいか。
現場監督はつるはしか……物騒じゃの。
シロは……銀玉鉄砲……まぁ、いつもの事か。
確かにダンプの音が近付いて来るのう。
それも団体で来るのがわかるかの。
「コンちゃん、大丈夫かな?」
「わらわの術をもってすればイチコロなのじゃ」
「頼んだよ~」
おお、見えたぞダンプ軍団。
店に向かって一直線なのじゃ。
し、しかし今時こんなコテコテ攻撃……センスないのう。
「きゃー!」
って、ポンのヤツ、ビビッておる。
こやつわらわと暮らしておったので平気かと思っておったが情けない。
「うむ、わらわの術で……」
こんな攻撃「必殺心臓マッサージ」で全滅じゃ。
「あ?」
なんじゃ?
ダンプが地面に沈んでしまったぞ!
わらわ、術をまだ出しておらん。
無駄に宙をモミモミ。
「えーっと、コンちゃんの術?」
「いいや……わらわの術ではないが……」
おお、爺さんタヌキが来おった。
むう、わらわのそばもしっかり頼むぞ。
「罠をしかけていて……駐車場より近付くと……重い車だと……」
「長老、さすが、なんだかんだ言っても戦う気だったんだ」
「罠、しかけてるの忘れてた」
「……今、一瞬しまったとか思いませんでした?」
「……」
「突っ込んで来たら、損害賠償請求とか思ってませんでした?」
なんだかポンが不機嫌顔になってしまったぞ。
まぁ、なにはともあれ勝ったのかのう。
「だ、大丈夫かな?」
「あれが悪人の末路なのじゃ」
「助けに行かないでいいかな?」
「ポン、おぬしもお人好しじゃのう」
「だって~」
あれは敵じゃぞ敵。
「わたし、助けに行く!」
「ポン、迂闊に動くではないっ!」
って、止めようと思ったらもうおらんのじゃ。
「ちょ、コンちゃん、ポンちゃん行ってしまったでありますよ!」
「シロ、止めぬか!」
「一番近くにいたのはコンちゃんであります」
た、確かにそうなのじゃがな。
な~んとなく雰囲気でわかっておったであろうが。
ああ、ポン、走って行きおる。
「なぁ、コンちゃんよう……」
「なんじゃ、監督」
「ポンちゃん行っちゃったようだけど……」
「あやつらしいのじゃ」
「あ、助けに行ったの、ボス」
「は?」
おお、ポン、懸命な救出活動じゃ。
しかしのう……
それは現場監督の話じゃと敵のボスなのじゃ。
むむ……ボスの顔見覚えがあるぞ。
刑事の爺さんの写真の顔じゃ。
「ああ、ポンちゃん、なんだか焦っているであります!」
「捕まったようじゃの」
「ああ、口にガムテープ貼られたであります」
「ふう……お人好しの末路かのう」
「あ、ボスが何か言ってますよ」
『出て来い爺、妙な動きを見せたら、娘を……タヌキ娘を狸汁にするぞゴラ!』
「あんなお人好し、狸汁になってしまえばよいのじゃ」
「コンちゃん、言いたい放題でありますね」
おお、しかしタヌキの爺さん表に出おった。
『中にいる連中、全部出て来いやゴラ』
「わらわ、面倒、出とうな~い」
「ポンちゃん死ぬでありますよ」
「あんなボンクラお人好しタヌキは死なねば治らん」
「コンちゃん本気でありますか~」
「本気じゃ本気、何故わらわがポンのために出ねばならんのじゃ」
「しかし~」
「大体ポンは人質じゃろ、ダンプで攻撃してくる連中が生かしたまま返すわけなかろうが」
「素直に従わないと……そうそう、レッド達に魔の手がのびるかもしれないであります」
「むう、では、しかたないかのう」
「出てから術を使うでありますよ」
「出てから? はて? その心は?」
「ここで隠れて術を使っても、『やっつけるだけ』」
「それでよいではないか」
「コンちゃんが『やった』ってわかるようにやれば、コンちゃんを崇め奉るでありますよ」
「目立ってよいものかの?」
わらわ達も従って出るとするかの。
ここからはテレパシーじゃ。
『ミコが怒らんかのう……』
『あんなコテコテ連中が何言っても誰も信じないでありますよ~』
「サツまで呼んでやがるとは、タヌキ爺やるな、タヌキのくせに」
『これ、シロ、おぬしの方が威力あるようじゃが』
『コンちゃん早く術を使うでありますよ』
うむ、そうじゃの。
ポンとボス、もめておる。
ボスめタバコを吹かしながら、
「山の向うのダム工事で、しっぽをはやしたのが、妙な術で邪魔をしたって情報が入ってる」
うむ、それはわらわの事と思うが……
銃口をタヌキ爺さんに向けるのはなんでかのう。
「生かしておいたら、今後の仕事の妨げになるんでね」
おお、撃つか!
発砲か!
リアル拳銃のリアル銃声か!
な、なんじゃ、シロ、肘でつつくでない。
『なんとかするであります!』
『はいはい、わかったわかった、うるさい警察の犬じゃ』
『コンちゃん楽しんでいるでありますよね?』
『ゴット・シールドしてあるからへっちゃらなのじゃ』
『そうでありますか……』
しかし……ポンはボスに捕まっておるのでどうしようもないのが難じゃ。
こっちは弾が当たらんが、そうしたらポンがあの世送りになるじゃろう。
「待てっ!」
『コンちゃん、なにか術を!』
おお、良いタイミングでポンのテレパシーじゃ。
『任せておくのじゃ……しかし』
『しかしなんですか!』
『わらわが術を繰り出すのも、迂闊にやってはバレるやもしれん』
『こ、ここからコンちゃん・シロちゃん、しっぽ見えてません』
なるほど、それでボスはタヌキ爺さんを狙っておるのかのう。
『用心は用心じゃ』
『術って頭で念ずるだけじゃダメなんです?』
『一応格好というのがあるのじゃ』
「何だ、ねーちゃん、俺のクラブで働いてみるか?」
おお、ボスを待たせておるのであった。
「無粋なヤツじゃ……わらわはそこのタヌキ娘に言っておきたい事があるのじゃ」
「んだと?」
「このタヌキ爺を殺して、娘も当然殺すのであろうが」
「別れの言葉、短めにな」
「なーに、すぐ済む……」
ふむ、ポンは見ておるな。
あのお人好し仔タヌキめ、ちとからかってやるのじゃ。
「わらわは店長と結婚したのじゃ!」
ついでに術も発動するのじゃ。
ふふ「キツネの嫁入り」じゃ。
雲よわき起これ!
大地に雨を降らせるのじゃ!
悪なる者共よ流れ去れっ!
オマケに雷のサービスじゃ。
ふふ、久しぶりの大暴れ、超楽しい。
来た来た、鉄砲水が連中を一掃!
「コンちゃんコンちゃん!」
「なんじゃシロ!」
「これはコンちゃんの術でありますか?」
「その通りじゃ、『キツネの嫁入り』!」
「ちょっと……」
「なんじゃシロ!」
「加減できないでありますか?」
「は?」
おお、言われて気付いたぞ。
ついつい調子に乗ってしもうた。
水の勢いすごくて、道路を越えて来たのじゃ。
退避たいひ!
「止められないでありますか?」
「い、今から止めるのじゃ……」
「遅いであります……」
「あー……」
一番道側にあったそば屋、流されてしまったのじゃ。
しかし今止めれば、ニンジャ屋敷は無事なのじゃぞ。
指を鳴らせば術は緊急停止。
「それ、キツネの嫁入り終了じゃ」
「コンちゃん手加減ナシであります、感ナシ!」
「感ナシとか言うなー!」
「それに大間違いであります」
「何がじゃ?」
「キツネの嫁入りは……日照り雨の事では……雲って雷鳴ってたであります」
それかの……むう、確かにそうかも知らん。
「こんなキツネの嫁入りもあるのじゃ!」
う、シロ、ジト目でこっちを見ておる。
「キツネのわらわが言うからそーなのじゃ!」
「いつ嫁入りしたでありますか」
「店長はわらわを選ぶに決まっておるのじゃ!」
シロめ、ため息つきよる。
しかし急に真顔になりおったぞ。
「あの……ポンちゃんはどーなったでありますか?」
「あ!」
「……」
「悪人共と一緒に流れてしまったようじゃのう……」
「……」
「うう……うっかりしてしもうた」
「本当でありますか? わざとポンちゃんも亡き者にしたではありませんか?」
「そ、そんなことないのじゃ!」
「コンちゃんには動機があるであります」
「む……ウソではないのじゃ、うっかりなのじゃ」
「ポンちゃん殺して下刻上、見損なったであります」
「ち~が~う~の~じゃ~!」
「どうでもいいので、早くポンちゃんをなんとかするでありますよ」
「おお、そうじゃそうじゃ!」
もう鉄砲水は収まったものの、泥だらけなのじゃ。
「むう、こうめちゃくちゃでは捜索は骨よのう」
って、なんじゃ、頭に激痛じゃ。
見ればシロがチョップしておる。
それも顔が本気・マジなのじゃ。
「何でわらわを叩くのじゃ」
「本当に殺意、ないでありますか?」
「当たり前じゃ」
「さっさと術を使ってポンちゃん探すでありますっ!」
「おお、そうじゃそうじゃ!」
「本当に殺意、なかったでありますよね?」
「わらわがポンに負けるような事はないのじゃ、わらわは神ぞ神!」
「厄病神もいるであります」
うぐ……シロめ言いおる。
しかし早いとこ探さんとな。
わらわの術でポンが死んだとあっては後味悪いでのう。
むう、毎夜、枕元にポンが立ってもうっとおしいのじゃ。
「しっかり術、使ったでありますか?」
「し、しっかり使ったのじゃ……」
鉄砲水の後のぽんた王国なのじゃ。
さいわい流されたのはそば屋とみやげもの屋、道路側だけで済んだのじゃが……
術を使って救出したつもりが、泥の中から出てくるのはハズレの悪人ばかりじゃ。




