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第59話「バスで遠足なのじゃ」

一時はどうやって店番を抜け出そうかと思ったが…

ミコの方から遠足に行くように言ってくれよった。

敵の攻撃もダンプで突っ込んで来るだけのようじゃし、術で楽勝かの。

「おそば屋さんにポンちゃんいたみたいなんだけど……」

なぜ皆はわらわがポンを追い出したように言うのじゃっ!


「う~ん」

「どうしたのじゃミコ、ビールビール」

「あ、お風呂あがったのね、はいはい」

「何を唸っておったのじゃ」

「これ」

 なんじゃ?

 ミコの見ておったのは遠足のチラシかの。

「どうかしたのかの?」

「遠足はいいんだけどね……」

「?」

「ほら、レッドちゃん、キツネよね」

「まぁ、人の姿をしておるがのう」

「ここなら、村ならいいのよ」

「うん?」

「ポンちゃんやシロちゃん、レッドちゃんはしっぽあるでしょ」

「ふむ……」

「ポンちゃんやシロちゃんなら問題ないのよ、わかってるみたいだから」

「何がじゃ?」

「人前でしっぽ丸出ししたらダメなの」

「……レッドは子供ゆえわからんとな?」

「なんとな~く不安なのよね」

「大丈夫でないかの? コスプレと言えばよかろう」

「どうかしら?」

 わらわ、ビールがぬるくなってはかなわんので先に一口。

「ここなら……村なら別にいいんだけどね」

「大丈夫でないかの……あの村長が下見をして決めたのであろう」

「そうねぇ、村長さんが下見に行ったのよねぇ」

「わらわ、聞いたぞ、村長は動物園行きを急遽変更したのじゃ」

「そうなんだ」

「だから大丈夫であろう」

「それなら……うん」

「心配性じゃのう、ミコは、そんなに心配なら同行すればよかろう」

 む!

 言ってから気付いたぞ。

 わらわが同行して見守ると言えばよかった。

 大失敗じゃ。

「そうね、一緒に行くって手があったわね」

 あ~あ、大失敗じゃ、ミコが行けばわらわは……

「ねぇ、コンちゃん、遠足に行ってくれない?」

「!!」

「遠足……嫌?」

 願ったり叶ったりじゃの。

「ふむ、ミコが行けと言うのであれば行くが……」

「何よ、ジッと見て……」

「いや……なんじゃ、その……」

「何?」

「ミコが行けば……」

「そうね……できたらそうしたいところだけど……」

「?」

「私、一緒に遠足に行ったらベタベタしそうだし……」

 むう、ミコ、レッドにぞっこんなのじゃのう。

 なんといっても子供を欲しがっておったからの。

 レッドは我が子も同然なのじゃろう。

「だから寝る時以外はできるだけ離れてるのよ」

「ふむ、おぬしも母親役をしっかり演じておるということか」

「だからコンちゃんお願いね」

 ふむ、何にせよレッドの遠足に同行決定じゃ。

 ミコの方から言い出してくれよった。

 一時は遠足にどうやって紛れ込むか……店番を抜け出すか困っておったが、案ずるより産むが易しじゃったのう。

「それに私がここを離れたら……コンちゃんにまかせたら……不安……」

 むう、ミコめ、言いおるな。

 くっ!


「案ずるより産むが易しでありましたね」

「うむ、すっきりはせんがのう」

「?」

「わらわに店を任せるのは不安とか言いおった」

「では……」

「何じゃシロまで」

「いや、コンちゃん、今日店を任されたらどうするでありますか?」

「シロに……」

「本官もパトロールあり、遠足同行であります」

「……」

「一人でありますよ」

「そうじゃの、ドアの札を『今日はおわりました』にするのじゃ」

「コンちゃん、ダメダメであります」

「わらわ一人で店番したら、きついではないか~」

「本当にダメダメであります」

「それにわらわが店番やるとお稲荷さまの効果が発動されて満員御礼になってしまう」

「そうでありましたね」

「そうじゃ!」

「?」

「わらわの術で店を封印すれば客は来んのじゃ!」

「コンちゃん『お稲荷さま』か『厄病神』かわからないでありますよ」

「神とはそーゆーものなのじゃ、気まぐれ」

「さわらぬ神に……」

「何か言いたいのかの、シロ」

「なんでもないであります、早くバスに乗るであります」

 ふむ、バスに乗るのも初めてじゃな。

 保護者ゆえに一番後ろで見守るとするかの。

「……って、おぬしなんじゃ!」

 子供遠足には不似合いのヤツが登場じゃ。

「何だよコンちゃん」

「何故おぬしのようなむさくるしい男がここにおるのじゃ……と言うておるのじゃ」

「ふふ……今日は仕事も休みで風呂に入って来たから汗くさくないぜ」

「むさくるしいと言うて……」

 見ておると、現場監督のヤツ、真ん中付近で止まってしもうた。

 おお、何じゃ、子供らにもみくちゃにされておる。

『シロ……これは?』

『コンちゃん本当に知らないでありますか?』

『何故現場監督が子供に人気なのじゃ』

『現場の方々は休み時間に子供と遊んでいるでありますよ』

『そうだったのかの……』

『本官も一緒に遊ぶので、現場監督の人気はわかるでありますよ』

 むう、このむさくるしい熊男が子供に人気があるとはびっくりじゃ。

 現場監督、わらわの隣に座りよる。

「おぬしが子供に人気とは知らなんだ」

「まぁ……」

 現場監督、急に真顔になりおった。

『コンちゃんよう』

『おお、なんじゃ、現場監督がテレパシーかの!』

『いや、コンちゃん神さまだから、これくらいお茶の子だろうなって』

『むう、何じゃ?』

『いや、コンちゃんがいれば安心だ』

『ふむ、先日攻撃があると言っておった事かの』

『術で守ってくれるんだよな』

『まぁ、そのつもりじゃが……』

『?』

『一応、どうなるか聞きたいのう』

『は?』

『攻撃がある……どんな攻撃かと聞いておるのじゃ』

『ああ……攻撃ね、タブン……』

『?』

『ダンプで突っ込んで、兵隊出てきてタヌキ爺さんをボッコボコ……』

『あ、あきれるほどベタベタのコテコテじゃのう~』

 まぁ、それならテキトーに術で解決しそうじゃの。

「あら、あんた達も来てたのかい」

「こんにちは、コン……ちゃん、シロちゃん」

「豆腐屋の婆さんに村長、おはようなのじゃ」

 うむ、二人は前の席かの。

 村長こっちを見ながら、

「コン……ちゃんありがとう、『ぽんた王国』良さそうよ」

「ふむ、下見はしたようじゃの」

「まぁ、一応ね、最初から決まりのようなものだったけど……」

「??」

「だって山越えただけだし、お金も食事代だけでいいって事だったから」

「ふむ、安上がりという事かの……」

 村長が通路側で、こっちを振り向いて話しておるのじゃが、窓側は豆腐屋の婆さんじゃ。

「何故豆腐屋の婆さんがおるのじゃ?」

「あ、お婆さんは私がお願いして来てもらったの」

「何かあるようじゃの?」

「コン……ちゃんは『ぽんた王国』に行った事あるのよね?」

「じゃのう……」

「ポン太くんには会った?」

「ポン太がどうしたのかの?」

「ポン太くんは醤油と味噌を作ってるのよ」

 豆腐屋の婆さんが顔を上げて、

「豆腐も大豆使うんだよ、スカウトに行くのさ」

「むむ、そうか」

 今度は村長がニコニコ顔で、

「あそこ、ダムになっちゃうから、引っ越さないといけないでしょ」

「村長は知っておるのかの」

「おそば屋さん、村のそば屋にスカウトするのよ」

「なるほどのう」

 と、婆さんと村長がじっと見ておる。

 何事じゃ?

「あの……コンちゃん?」

「なんじゃ村長?」

「おそば屋さんにポンちゃんいたみたいなんだけど……」

「!!」

 うっ……すぐ返事、出来んのじゃ。

 二人、わらわをガン見しておる。

 何故シロを見ないのじゃ。

『ねえ、コン……ちゃん……』

『ななななんじゃ! そそそ村長っ!』

『ポンちゃんとケンカしたの?』

『ちちち違うわいっ!』

『でも、おそば屋さんで働いてるのはポンちゃんよね?』

 くくっ!

 な、何かよい言い訳はないかの!

 わ、わらわのせいではないというのに!

『これっ! シロ! 何かよい言い訳はないかの!』

『あはは~』

 くっ!

 シロめ笑って……目、逸らしておる。

 むう、普段は使っておらん頭脳をフル稼働じゃ。

 ポク・ポク・ポク・チーン!

「村長、婆さん、聞くのじゃ」

 ふむ、頷いておる。

「ポンが店長を好いておるのは、説明はいらんな」

「で?」

「しかし店長は優柔不断の甲斐性無しじゃ」

「で?」

「ポンのアタックにも店長はさっぱり……」

「……」

「ある意味倦怠期夫婦……とるべき手は……」

「手は?」

「家出じゃ、家出」

「おおっ!」

 村長も婆さんも力強く頷いておる。

「ポンちゃんも考えたわね」

「おお、村長はわかるかの!」

「最近、店長さん壊れてるものね」

「……」

「効果絶大……だけど……」

 村長と婆さん、わらわを見よる。

 何じゃ?

「アイデア出したの、コン……ちゃんよね」

「!!」

「ポンちゃん……あの娘がそんな家出なんて積極策考えつきそうにないもの、さすがコン……ちゃん」

 おお、なんか知らんがほめられておるようじゃ。

「ふふ、雌キツネのわらわにとって、恋の駆け引きなぞ朝飯前なのじゃ」

 ふふ、テキトー言ったが、なんぞ「棚ぼた」で尊敬されとるようじゃ。

「今日はコン……ちゃんが付いて来てくれてよかったかも」

 よいよい、村長の言葉を聞いておると、どんどん気持ちよくなるのじゃ。

「コン姉~」

「レッドちゃん、席離れたらダメ~」

 おろ、レッドと千代が来た。

「どうしたのじゃ」

「コン姉もいっしょとは!」

「うむ、レッド、おぬしが余計な事をせぬように監視で……保護者で来ておるのじゃ」

「わーい!」

「千代の言う事を聞いて良い子でおれよ」

「は~い!」

 むう、レッドめ、抱きついてきおる。

 千代が疲れた笑みを浮かべておるのう。

 普段この役は千代の役目かの。

 千代は眼鏡ゆえ、仕方ないかのう。

「コン姉もいっしょに~」

「うむ、そうじゃのう」

 まぁ、「攻撃」があるので無理なのじゃが……

 拒否・否定すると面倒な事になるので大人のウソなのじゃ。

「ねぇねぇ、コン姉~」

「なんじゃ?」

「ニンジャやしきにね!」

「?」

「『ゆみかおる』はいるかな?」

「!!」

「『ゆみかおる』すきすき~」

 む、痛い視線、感じるぞ!

 村長と豆腐屋の婆さん、わらわをガン見なのじゃ。

「『ゆみかおる』すきすき~」

「コン……ちゃん、レッドちゃんにどんな教育してるのかしら……」

 わーん、「ゆみかおる」はわらわのせいではないのじゃーっ!


「はい、もうすぐ到着します!」

 おお、村長席を立って言いおる。

「は~い!」

「ニンジャ屋敷から巡ります、係の人の言う事をしっかり聞いてください」

「はいは~い!」


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