第57話「ポン太のニンジャ屋敷」
ふむ、ポン吉はシロに骨抜きにされたからよいが…
ポン太の方はちと頭が回るようじゃのう。
カラクリ満載なニンジャ屋敷…ポン太の罠じゃ。
しかし、わらわは勝負に行くのじゃ。
ま、わらわには「ゴット・シールド」があるので平気じゃがの。
「ポン太とやら、来てやったぞ」
「来たな雌キツネ、返り討ち!」
「できたらおぬしの願い、何でも聞いてやろうぞ」
「ふん!」
おお、ポン太とやら、現れおったぞ。
なんじゃあの格好は。
いつの間にかニンジャの格好なのじゃ。
むう、この薄暗い屋内では効果的かもしらん。
む、ポン太の手が動いたぞ。
おお、手裏剣じゃ。
でも新聞紙かの、黒く塗ってあるのじゃ。
「この程度ではわらわは倒せん」
「な、泣かすくらいなら!」
な、泣かすくらい……かわいいのう。
「ポン太とやら、一つ聞きたい」
「なんだ、雌キツネ!」
「おぬし、ポンと結婚したいのかの?」
「長老が決めたんです!」
「それはポン吉より聞いた……おぬしの本心か?」
「ボクはポン姉好きです」
むう……よくポン太の目を見るのじゃ。
真剣な目をしておるのう。
しかし何故ポンかの?
理解に苦しむところじゃ。
まぁ、ポンはタヌキゆえ、よいカップルな気もするが。
ポン太は良い子そうなので、ポンとは釣り合わぬ気がする。
「死ねっ! 雌キツネ!」
「無駄じゃ、おぬしではわらわは倒せぬ!」
しかし、なかなかの動きなのじゃ。
あの眼鏡で良い子そうな顔からは想像できん。
修業しておるのは本当のようじゃの。
「ゴット・アロー!」
うむ、様子見で発射。
おお、避けおった!
やはり顔で判断してはいかんのう。
「なかなかやるの、ゴット・アローを避けるとは」
「術を使うとは、ただの雌キツネじゃないな!」
「なぜそこまでニンジャの修業をしておるのじゃ」
「ふふ、ここで戦い方を覚えて、人間と戦うためっ!」
むう、良い子と思ったが、頭が良いと余計な事を考えるものじゃの。
これは懲らしめる必要があるのじゃ。
どんどん追い詰めて……ぬぬっ!
追い詰めた筈が消えてしもうた。
なんての、床の間の掛軸の裏に逃げたに決まっておる。
掛軸の裏……壁じゃ。
時代劇じゃと、ここに抜け道があるのじゃが。
「覚悟っ!」
背後に殺気。
振り向けばポン太が刀を振り下すところじゃ。
もう避ける事はできん。
しかしゴット・シールドがあるのじゃ。
それに……
なんじゃあの刀は!
プラスチックのオモチャではないかの。
刀はシールドで防いだが……
ふふ、仔タヌキをからかってやるかの。
「きゃっ! 痛いっ!」
「!!」
「やられた……痛い……死んじゃう」
「はわわ、大丈夫ですか! ごめんなさい!」
「うう……痛い……死ぬ……」
「そんな、オモチャの刀なのに!」
ポン太め、おろおろしておる。
むう、どーやらこやつは強がっておるだけのようじゃ。
「うわ~ん、痛いよう、クスン」
「はわわ、傷を見せて下さいっ!」
ふはは、子供じゃの。
「クスン」はウソ泣きなのじゃ。
「それ、捕まえた!」
「え!」
「男が女を叩いてはいかんではないか、まったく!」
「だましたなーっ!」
「ニンジャのおぬしが修業足りんのじゃ」
「うう……」
「これ、よく聞くのじゃ!」
「……」
ふむ、観念したのかわからんが、おとなしくなったのじゃ。
「ポン太、おぬし、どう育ったか知らんが、しっかりせぬか!」
「だって長老が……」
「よくわらわの顔を見るのじゃ」
「う……」
「よいか、おぬしは人の良さそうな顔をしておる」
「?」
「無理せず、人に尽くせばよいのじゃ」
「でも……」
「わらわの言う通りにするのじゃ!」
ポン太、固まってしまいおった。
おお、でも小さく頷いておる。
『コンちゃん、見たであります』
『なんじゃシロ』
『ウソ泣きであります』
『解決したのでよいのじゃ』
『その子はコンちゃんにホレてるであります』
「!」
おお、本当じゃ、ポン太め、わらわを見て赤くなっておる。
『子供ゆえ、大人の女にあこがれておるのじゃ』
『さすがコンちゃんであります』
『しかし……好都合ではないかの』
『?』
「これ、ポン太、ポン吉」
「はい?」
「なになに~」
「ここで会うたもなにかの縁、ニンジャ屋敷を案内するのじゃ」
おお、ポン太達、急に表情が明るくなりおった。
「オレ、ちょっと着替えてくるぜ!」
「ボクも!」
二人して行ってしもうた。
ポン太はもう着替えておるのに、舞い上がっておるようじゃ。
「コンちゃん、どうしたでありますか?」
「ここ、面白いではないか」
「カラクリ屋敷でありますが」
「うむ、遠足によかろう」
「なるほど!」
「村の子供らはしっぽの生えたのを見慣れておるゆえ、ポン太達を見てもさも驚かんじゃろう」
それにじゃ、もっと大事な事があるのじゃ。
遠足先を早く見つけんと、ミコを給食当番にとられるからのう。
さて、ポン太達の案内で「ぽんた王国」の事はわかったのじゃ。
「ポンのやつめ、頑張っておるのう」
そば屋は……覗くだけじゃ。
「これ、ポン太」
「はい、コン姉、なんですか?」
「今日、わらわとシロが来た事はポンや……あの長老には内緒なのじゃ」
「いいですけど……なんでですか?」
「うむ……ポンの働きっぷりを見てな」
「?」
「ここにおったほうがポンの為かもしらん」
「ぼ……ボク、コン姉の方が」
「オレはシロ姉が」
ふはは、ポンが聞いたら激怒するぞ。
しかしまぁ、ポンもタヌキゆえ、実際ここの方が良いかもしれぬ。
ここはタヌキしかおらんからのう。
「わらわとシロはここには居れん」
二人ともシュンとしておる。
「ポン吉とやら」
「?」
「ここにシロを姉として置いて行くと……」
「オレ、すごい嬉しい!」
ピョンピョン飛び跳ねておる。
「姉弟では結婚出来んぞ」
「がーん!」
「だから我々は帰るのじゃ」
と、ポン太がわらわの服をつかんでにらんでおる。
『なんじゃ、ポン太、こわい顔しおって』
『ウソですよね?』
『……』
『ポン姉を置いて、そして二度と来ないんだ』
むう、するどいのう。
しかしポンの気持ちを確かめたいのも本当なんじゃがの。
あやつもタヌキ、仲間と一緒が良いような気もする。
『ポン太よ、よいか、ポンはわらわの大切な妹分なのじゃ』
『!!』
『妹分の幸せを思って……それは本当じゃ』
「うう……信じます……でも!」
「なんじゃ?」
「もうコン姉に逢えないなんて嫌です」
む~、こやつわらわに本気のようじゃの。
まぁ、わらわの美貌ではしかたないのう。
「わかったのじゃ、ここの案内はないかの?」
「?」
「村の遠足で来てやるゆえ」
「は、はいっ!」
おお、パンフレットを出しよった。
「コン姉、絶対ですよ、約束ですよ!」
「村長にしっかり話しておくゆえ、遠足間違いなしじゃ」
「コン姉も絶対来てくださいよ!」
「わかったわかった!」
まぁ、遠足は確実じゃろう。
ニンジャ屋敷はなかなかのアトラクションじゃし、醤油や味噌も作っておる。
昼の食事もそばで問題なかろう。
おお、ポン太、わらわに抱きついておる。
「絶対ですよ……」
わらわの美貌も罪つくりじゃのう。
ま、神ゆえしかたないか。
「遠足の事は長老に話しておくのじゃ」
「わかりました……コン姉も来てくださいよ!」
ふふ、こうモテモテなのも気分よいのう。
ちょっとポンにみせびらかしたくもあるのじゃ。
あたたた……パン屋に戻ったらミコに怒られた。
ちょっとポンを探しに行っただけではないか。
それに何故わらわを叩いて、シロは叩かん。
張本人はわらわ……決めつけおってモウ。
「コン姉、いたい?」
今はレッドと豆腐屋に向かっておるのじゃ。
夕飯の豆腐をもらうのじゃ。
「レッドよ、おぬしミコは好きかの?」
「すきすき~」
「あやつ、鬼婆なのじゃ」
「?」
ポカンとしておる。
子供ゆえにわからんかのう。
まぁ、ミコの食事を食っては逆らえん。
それ、豆腐屋じゃ。
「これ、婆さんや、もらいに来たぞ」
おお、都合よく村長がおる。
「これ、村長、遠足の件じゃが、ここにするのじゃ」
「あら、コン……ちゃん、パンフレット?」
ポン太からもらったのを渡すのじゃ。
村長、見入っておる。
「婆さん、豆腐を、油揚げも欲しいのう」
「はいはい、また家出で家に来られても困るからね」
「わらわは神じゃぞ、なんじゃその言いようは」
「油揚げいるの? いらないの?」
「くれるものは拒まん」
「でも、うちにもタヌキかキツネの店員がほしいねぇ」
「なんじゃそれは?」
「あんたのところ……パン屋はすっかりよくなったじゃないかね」
「ふむ……」
「でも、どっちかというとタヌキがいいわねぇ」
「なぬっ!」
「ポンちゃんはよく働くけど、コンちゃんはいるだけだからねえ」
「婆さん、死にたいかの?」
「油揚げ、いらないの?」
むう、どうして村の女はすぐ兵糧攻めする。
ミコといい、この婆さんといい。
と、村長が、
「良さそうう……明日早速下見に行くわ」
「む! ミコは給食当番に出さんぞ!」
「場所もわかってるから、給食作って行くわよ、カレーなら今から作っていいし」
「それでよいのじゃ」
豆腐屋の婆さん、パンフレットを見て、
「あら、醤油や味噌も作ってるんだね」
「うむ、なかなかじゃったぞ」
「じゃあ、私も一緒に行くかねぇ」
「ふん、婆さんは買い物に行きたいだけじゃろう」
「歳をくっても女だからね……はい、油揚げも入れとくよ」
「きゃーん、お・あ・げ!」
まぁ、いいか。
しっかり油揚げもくれたようじゃし、満足じゃ。
なんといっても、ミコを取られなかったのが大きいのう。
今日はちょっと心配じゃったのじゃ。
いつ村長が現れて、ミコを引き抜くかヒヤヒヤだったのじゃ。
結局村長は来んで、昼もおやつの時間なのじゃ。
「は~い、今日のおやつはゼリーよ」
「うむ、ミコ、早くお茶の準備をするのじゃ」