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第56話「ぽんた王国訪問なのじゃ」

おお、シロの元主人が来おった。久しぶりじゃの。

談合の捜査らしいのじゃが…

なんぞゴットファーザーのような悪人顔の写真じゃ。

ふむ…こやつ…もしやポンの誘拐にかかわっておるのかのう?

これは急がねば…ポンが狸汁になってしもうたら、わらわはずっと店番なのじゃ!


 ふう、今日もレジかの。

 いつもお茶しながらTVしていたテーブルが見える。

 早くポンを連れ戻し、あの特等席に戻るのじゃ。

 いきなりドアが開いて本日初のお客は……

 おお、あれはシロの元主人の刑事ではないかの。

「今、シロはおらぬが」

「先日はありがとうございました」

「うむ、あの時は少々騒がしかったがのう」

 こやつ何故かキョロキョロしおる。

「何か用かの?」

「その……」

「わらわでよければ話を聞くが」

「……」

 むう、こやつわらわのしっぽを見て眉間にしわを刻みおった。

「用がないのであれば帰るか買うかするのじゃ」

「最近……」

 おお、写真かの。

 なんじゃこの男は?

 なかなか渋い男じゃが、わらわの好みではないのう。

「このごつい……ゴットファーザーのようなのがどうしたのじゃ?」

「地上げ屋で……」

「この顔ゆえ悪役よのう」

「ここのダム工事でも背後で談合をまとめていたらしくて」

「談合……ふむ」

「立ち退きでも暗躍してるらしくて」

 まぁ、人間の悪がわらわにかなうとも思えんが。

 わらわはごまかせても、ここにはミコもおるしのう。

 そうそう、やたら撃ちたがる婦警さんもおるのじゃ。

「この男が現れたら連絡を」

「ふむ、わかった、捕まえる必要はないのじゃな」

「それは我々の仕事ですので」

 おお、この爺さん、たくさん買ってくれるのう。

 この間もそうだったのじゃ。

 売上協力してくれておるのじゃろう。

 しかしの、わらわとしてはパンよりも……

「これ、爺さん、売上協力もよいが……」

「はい?」

「わらわ、さつまあげがよいのう」

「今度持ってきますので」

「シロも喜ぶで、よろしくの」

 ふふ、この爺さんのさつまあげはなかなかなのじゃ。


 カラカラ音がして……今度のお客は村長じゃ。

「あの……ミコ……ちゃんはいますか?」

「むう……また給食当番かの?」

「ええ……」

「ダメじゃ」

「……」

「ミコを取られるとここの夕飯がピンチなのじゃ」

 って、いきなり叩かれたぞ。

 振り向けばミコじゃ。

 チョップを繰り出しておる。

「何を……」

「何をじゃないでしょ!」

「給食当番は困るのじゃ」

「モウ……コンちゃんがいると話がまとまらないから、はい、学校に配達」

「だって夕飯が……」

「さっさと行く!」

 むう、ミコのやつこわいのう。

 しかしミコをとられるとかなわんのじゃ。

 すると村長が、

「給食当番の事なんだけど……」

「なんじゃ、村長、言うてみるのじゃ」

「実は遠足のせいなの」

「遠足? 遠足の時は給食はなかろう」

「ええ……」

 村長愛想笑いしながら、

「レッドちゃんがいると、動物園には行けないから」

 あー!

 わらわもミコも頷くばかりじゃ。

「適当な所を探しに……その日だけでも給食を」

「なるほど」

「学校小さいから、ちょっとしたところでいいんだけど……」


「コンちゃん!」

「おお、シロ、パトロールかの」

 学校でばったりじゃ。

「子供と遊ぶのも仕事であります」

「店に早く戻らんか!」

「あはは~」

 くっ、こやつ笑ってごまかしておる。

「ふむ、しかし好都合じゃ」

「?」

「ポンを探しに行くぞ」

「え……今からでありますか」

「配達も終わったしのう、それに……」

 ここにはそば屋があるのじゃ。

 まだ開店はしておらんがの。

 そう、あの信楽焼のタヌキがおったところじゃ。

「シロ、ニオイを感じぬか?」

 二人そろってクンクン。

「これは!」

「押入れにも、こんなニオイがしたであろう」

「確かに!」

「それ、シロ、ニオイを辿るのじゃ!」

「だから本官はそこまで能力ないであります」

「おぬし、やる素振りも見せんのう……まったく」

「あはは~」

 また笑っておるのじゃ。

「しょうがない、わらわの術を使うのじゃ」 

 まず指を鳴らしてコスチュームチェンジ。

 わらわとシロ、ファッション雑誌な服装じゃ。

「ななな何を!」

「よそに行くのにミニスカポリスとメイドは目立とう」

「おお!」

「これなら、パン屋に来る女共と同じじゃ」

「で、これから?」

「ふむ、シロ、これへ」

「?」

 シロを持ち上げる……ふむふむ。

「おぬし軽いのう」

「姿は人でも犬であります」

「よいよい、では飛ぶぞ」

「え?」

 それ、シロを抱えてひとっ飛びじゃ。

「うわ、飛んでいるであります!」

「歩いて行くなぞ、面倒でできるか!」

「で、でもっ!」

「なんじゃ、シロ、おぬし高いところは苦手かの?」

「いや……闇雲に飛んでも探している事には……」

「おぬし、わらわは神じゃぞ神! 抜かりはないのじゃ!」

「……」

 まったく、シロのヤツ、目が疑っておる。

 落としてやろうかしらん。

「ちゃんとニオイを追っておるのじゃ!」

「まぁ……信じるでありますよ」

「くっ、警察の犬のくせに!」

 まったく、あとでギャフンと言わせてやるのじゃ。

 それ、山をひとっ飛び。

 ニオイを辿って……

 気配を辿って……

 ふむ、そろそろかの気配が近付いて……

「あったであります、ぽんた王国」

 むむ、シロのヤツ、ニコニコ顔で指さしておる。

 確かに「ぽんた王国」の看板じゃ。

 ラブホテルと思っておったが、なんじゃここは。

 藁葺き屋根の古い家が並んでおるのう。

 しかし、確かにココじゃ。

 気配が、ニオイが近付いてくるぞ。

「ともかく着陸するぞ」

「了解であります」

「しかし……」

 ニオイ……ポンのニオイがどんどん強くなるのじゃ。

 しかし、こう、また別のニオイがするのじゃ。

「シロ、感じぬか!」

「コンちゃんも感じるでありますか?」

「このニオイは!」

 わらわとシロの目、同時にロックオン。

「おそばのニオイなのじゃ!」

「おそばのニオイであります!」


 ふむ、藁葺き屋根の家が何軒かあるが……

「シロはどう思うかの?」

「ここは看板通り『みやげもの屋』……そして『おそば屋』」

「ちょっと待つのじゃ……あれを見るのじゃ」

「?」

 おお、メイド姿のポンじゃ。

 うむ?

「あの子供は何じゃ?」

「あ、ポンちゃん抱っこしてるであります」

「うむ、ポンのヤツ、もみくちゃにしよる」

「子供ら、嫌がっているのでは?」

「まぁ、よい、様子を見るのじゃ」

「……」

「シロ、何か言いたそうな目じゃのう」

「いや、すぐに連れ戻すと思っていたであります」

「ほれ、よく見るのじゃ、あの子らはしっぽがあるのじゃ、タヌキ、仔タヌキ」

「おお、ポンちゃんのしっぽを見慣れているのでついつい見逃したであります」

「それに仲良くやっておるようじゃ」

「でありますね」

「わらわ、誘拐されたとばかり思っておったが……」

「まさか……ポンちゃんの意思で来たとでも言うでありますか?」

「さっきのを見ればそうも思いたくなるのじゃ」

「本官はそうは……パン屋には店長さんもいるであります」

 うむ、ポン、子供らと別れて行ってしまいおった。

「では、真相をあれに聞くのじゃ」

「あの子達?」

「うむ、子供ゆえ、簡単に口も割ろう」

「了解であります」

 それ、わらわは眼鏡を確保、シロはもう一方じゃ。

「うわ!」

「これ、おぬしら!」

「ななな!」

 おお、二人ともびっくりしておる。

「ぽ……あのタヌキ娘とはどういった関係かの」

 む、なんじゃ!

 この眼鏡、わらわの尻を触りよる!

「このっ!」

「きききキツネっ!」

 おお、我が腕から抜け出おった。

「うわ、キツネっ!」

 眼鏡の方が鈍そうに思えたが、素早いのう。

 見ればもう一方はシロに抱かれてデレデレしておる。

「コンちゃん、あの子逃げたでありますよ」

「まぁ、こやつがおるからよいが……これ!」

「はい、キツネさん?」

「うむ、もうわかっておるとは思うが……我らはポンの家族じゃ」

「においでわかる~」

 むう、こやつ、シロにぞっこんかの。

「名前をもうせ」

「ポン吉、お姉さんは?」

「わらわはコン、こっちはシロじゃ」

「シロ姉~」

 うむ、デレデレしておるのう。

「で、ポン吉とやら、ポンはどうしてここにおるのじゃ」

「長老が連れてきたんだぜ、アニキと結婚するんだ」

「ぷっ!」

 思わずわらわとシロ、吹き出してしもうたぞ。

「アニキとはさっきの眼鏡かの」

「だぜ!」

 逃げたアニキとやら、戻ってきおったぞ。

 手には得物……プラスチックの刀じゃ。

「キツネっ! 敵っ!」

 こわい顔をしておる。

『シロよ、どうしたものよのう』

『術で捕まえては?』

『それがいいかの』

 って、思ったら藁葺き屋根の家に入ってしまったぞ。

 しかし……何か嫌な予感がするのじゃ。

「これ、ポン吉、あそこは何じゃ」

「あそこはニンジャ屋敷だぜ!」

「ニンジャ屋敷……カラクリ屋敷かの」

 頷いておる。

「つまりはあそこは『罠』があるのじゃな」

「だぜ」

「コンちゃん、どうするでありますか?」

「このポン吉を人質にしておびき出すのはどうかの?」

「ポン吉にひどい事するでありますか?」

「それでは動物虐待になるゆえ……これ、ポン吉」

「なに? コン姉?」

「『助けて』と言うのじゃ」

「タスケテ~」

 さて、ポン太とやらはどう出るかの。

 家を出ずにこっちを見ておる。

 作戦失敗かのう。

「ポン吉がどうなってもよいのか!」

「キツネは敵!」

 どこでそーいう事を習ったのかのう。

 それにわらわはキツネでも「お稲荷さま」、神じゃぞ神!

「これ、ポン吉、もう一度……」

「シロ姉、好き好き~」

 こやつ、シロに骨抜きじゃ。

「コンちゃん、どうするでありますか?」

「友好的に解決したかったのじゃが」

「雨が降るでありますよ」

「シロも言うのう」

「コンちゃんは……感情主義では?」

「なんじゃそれは?」

「機嫌で戦うであります」

「ほめ言葉ではないのう……しかし」

「?」

「わらわが友好的というのも確かにらしくないのう」

 まぁ、神であるわらわが仔タヌキごときに敗れる事はなかろうが、情報収集はしておくかの。

 いくさにあたって油断は禁物。

「これ、ポン吉」

「なになに、コン姉」

 こやつのへたれっぷりは……レッドを思い出す。

「あそこは危険かの?」

「ニンジャ屋敷だぜ、カラクリたくさん」

「潜入は危険かの?」

「アニキ、ああ見えて修業してるぜ」

「ほほう」

 あの眼鏡仔タヌキがか?

 今は怒っておるが、さっきポンと話している感じでは「お人よし」っぽかったがのう。

 おお、大声で何か言いよる。

「雌キツネー」

 うむ、その通りじゃ。

「ポン吉を人質とは卑怯っ!」

 うむ、その通りじゃ。

「正々堂々勝負しろっ!」

 とか言ってわらわに罠にはまれというのじゃな。

「アニキは将来ここの主で」

「ほほう」

「ポン姉と結婚する事になってるんだぜ!」

 は?

 わらわとシロ、「ポカ~ン」なのじゃ。

「あやつポンが好きなのかの?」

「長老が決めたんだぜ」

「……」

「オレ、シロ姉が好き好き」

「うむ……それでは行くとするかの」

『コンちゃん!』

『なんじゃシロ』

『罠でありますよ』

『わらわは神ゆえ……ゴット・シールドでへっちゃらじゃ』

『はぁ……』

『それよりポンと結婚せねばならぬあわれな仔タヌキを救うのじゃ』

『コンちゃん……』

『なんじゃ、シロ!』

『面白がっているだけでありますよね?』

 その通りなのじゃ。

 こやつもわかってきたようじゃの。



「ポン太とやら、来てやったぞ」

「来たな雌キツネ、返り討ち!」

「できたらおぬしの願い、何でも聞いてやろうぞ」

「ふん!」

 おお、ポン太とやら、現れおったぞ。


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