ユーグレイマンが贈り物をしたいそうです。
不機嫌なんて言葉を人間はよく使うけれど、よもやこのあたしが使うハメになるとは全く以て思っていなかったと言っても過言ではない。というか考えたことすらなかったというのが本音だ。
あたしは亜人間・ユーグレイマン。別名はホモ・ユーグレナ。所謂ミドリムシ人間。
人間が地球環境に耐えられなくなって衰退し、早数百年。あたし達ユーグイレイマンはとある人間によって、住みやすい地球環境を生み出すために生まれた。紆余曲折を経て、生まれたのは試作一号であるこのあたし。個体名はイヨ。由来はあたし達を生み出した人間──あたしは先生と呼んでる──の出身地らしい。なんて安易な、と色々と学習した今では本当に思う。
さて、なんでそんなあたしが不機嫌なのかというと……
「人間の食べ物の味なんてあたしに分かるはずがないじゃないの!」
日頃のお礼に先生へプレゼントをあげようと思ったのだ。で、あたし達の主食である微生物の詰め合わせセットを贈ったのだが、贈り返されてしまった。「貰っても食べられないから、お前に返す」と言われて突き返されてしまったのだ。本当にひどい。
そこであたしは本を読みあさって、人間が繁栄していた頃の風習にバレンタインというものがあったことを知った。贈り物を贈る風習は他にも沢山あったけれど、ちょうどこの時期に行われていたようなのでぴったりかと思った。で、贈り物も花束やチョコレートというお菓子が通例であったようなので、何をあげるのか迷うこともない。
ただしここで問題が。
男性から女性へは花束を、女性から男性へはチョコレートを贈るらしいのだが……あたしって性別どっち何だろう。やっぱり女かな。でもちょっぴり自信はない。
そういう訳で聞き込みを始めてみた。