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捻くれ者は静かに暮らしたい。  作者: 飽多諦
第一話 鬼憑き四葉
8/17

黒羽四葉の違和感。

後日談というか、今回のオチ。

うん。一回言ってみたかったんだよね。このセリフ。

翌朝、黒羽四葉は、きちんと学校に来ていた。

いつも通り、誰にでも優しかった。僕のことで、誰かに八つ当たりしている様子は無かった。

僕は表情には出さなかったが、その事に、内心ほっとした。

皆さんは、『何を大げさな。たかが悪戯の告白を、卑しい者に断られただけじゃあないか。』と思ってしまわれたかも知れないし、普通なら、僕もそう思っていただろう。

しかし相手は、鬼になってしまうほど、そのことに対して何かを抱えている。

それ程問題は、深刻な者だったのだ。

一歩間違えば、死人が出るほどには、深刻だった。

しかし、その心配も、恐らくないだろう。

学校に来れるほどだ。昨日僕をボコボコにして、粗方満足してくれたのかも知れない。

『粗方』では、まだ不安が残るという意見もあろうが、粗方は僕が受けたのだから、残りの少しは、時間様が解決してくれる。某小説風に言えば、悪魔様が解決してくれる。

悩みなんてそんなモノだ。人間の悩みはそんなモノだ。

万物流転の法則である。

従って、黒羽四葉に関する怪異譚は、幕を閉じたのだった。

いやぁ。よかったよかった。

これ以上、体に穴あけられたりするのは、流石に僕といえど、精神的にきついからね。

あははははははははははははは。

そこにもうひとりの僕が、語りかける。

―――ではなぜ、黒羽四葉は、僕に話しかけてきている?

何故「狐野君は、猫好き?」なんて他愛も無く、話しかけて来ている?

何故だ。彼女は僕に恨みを抱いているのではなかったのか?僕に辱められて。怒り沸騰ではなかったのか?もしくは、悲しみに暮れていたはずではなかったのか?ていうか、もうこれエピローグに入っちゃってる感じじゃあなかったのか?

僕が彼女をこっぴどくフッた事は既に学年中、もしくは学校中に知れ渡っているはずである。つまり彼女が僕に話しかけることは、クラス中から、学年中から、学校中から、訝しまれることを意味している。

彼女は風見鶏であったはずだ。孤立を恐れ、他の顔色を伺う、風見鶏であったはずだ。

故にこそ、彼女のこの行動の意味が分からない。

トチ狂って、お友達にでもなりに来たのだろうか?

これで、「私とお友達になってくれると嬉しいです。」的なオチなのか?

と、頭の中で一人問答をしていると、黒羽四葉は「どしたの?」と、僕の顔を覗き込んできた。

ああ、返事をしなくては。状況が分からない以上、ここで彼女の精神を不安定にさせるわけには行かない。

「あ、あぁ。何でもない。」

ああ。喉にうまく唾が回ってきてくれない。

しかしそんなことも構わずに、黒羽四葉は、さっき吹っ掛けてきた質問への回答を優しく求めてくる。

僕は気づかれない程度に嘆息をついてから、こう答えた。

「好きではないね。そもそもペットという概念が嫌いとすら言えるね。」

すると、黒羽四葉は、興味深いとでも言う様に、目を輝かせて聞いてきた。

「そのこころは?」

その態度に、少しいい気になった僕は、饒舌に答えてやった。

「だってあいつら、僕らの、つまりは飼い主の食生活圧迫しといて、何食わぬ顔で、何もしないで居座りやがるんだぜ?ムカつく以外に、なんと形容するよ?」

すると黒羽四葉はいつも通り楽しそうに笑った。

いつも通りに。

「相変わらず、狐野君は面白いね。でも、飼い主たちはそれで癒しを得てるんだから、ウィンウィンってことでいいんじゃないの?」

僕は黒葉の目線を窺いつつ、会話を続けた。

「癒しってお前、あいつら可愛い顔して、僕たち媚売ってるって考えたらムカつくだろ?」

「いやいやいや。ペットたちだって、人間に媚びるために進化したわけではないでしょう?祖先の面影を大きく残しているわけだし。相変わらず、狐野君は捻くれてるね。」

そう彼女は、笑いを孕んだ声を僕に向ける。

「何とでも言え。世間から見れば僕は捻くれているのかもしれないけれど、僕からすれば、それは正しいんだよ。」

と、僕は反論した。

すると黒羽は、目を輝かせた。

輝かせた。

―――おかしい。

普遍的な女子高生であれば、僕の今の理路整然とした説明は、理解し難く、言ってしまえば、ドン引きもんである。目が輝くどころか、僕から一歩離れてもおかしくないし、そっちのが自然だ。

そして彼女は、僕のことを恨めしく思っていたんじゃなかったのか?

―――僕は何かを、見落としているのか?

そしてそれを知るには、もっと情報が要る。彼女の情報が。従って、僕は彼女との会話を継続し、彼女の様子を窺うことにしたが、現実とは、どこまでも非常だった。

始業を告げる鐘が、彼女を席に送還した。

エピローグは、まだまだ先のようだった。

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