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捻くれ者は静かに暮らしたい。  作者: 飽多諦
第一話 鬼憑き四葉
16/17

捻くれ者は、母の日に自身の失敗を呪う。

5月の第二日曜日。日本では、母の日と呼ばれる日である。母に感謝する日である。

それが自分を産んでくれた事になのか、家事などの勤労に大してなのかは分からないけれど、母に感謝する日である。

しかし、僕にはその感謝すべき、尽くすべき母親がいない。

かと言って、父親と共に母に何かしらの感情を抱くわけでも、祖母を敬するわけでもない。

つまりは、孤独なのである。叔父と叔母なら存命だが、僕と叔父と叔母の仲は、それ程良いわけでもない。つまりは孤独。

母と共に過ごした時間のないというか、覚えていない僕は、母の日に対して郷愁のような、切ない感情を抱く。道行く子供たちが、その母親らしき人物とハニカミ合っているのを見かけると、自分には母親がいなくて、それが少なからず異常であると再認識する。言ってしまえば、羨ましいのである。母と共に過ごせる子供が、母の暖かさに触れられる人間が、至極羨ましい。妬ましい。

しかし、かと言って、僕が彼らを羨んだところで、妬んだところで、僕の母親が、僕の元に現れ、僕を抱きしめてくれることも、頭を撫でてくれることもない。ないのだが、やはり僕は、彼ら彼女らを羨んでしまうし、妬んでしまう。

そんな風に実益のない感情を抱いてしまう自分がどうしようもないほどに、ガキ臭く思う。やはり鬼というものは、欲にまみれた、人間よりも欲にまみれた卑しい存在であるらしい。そんな自分が、嫌で嫌で仕方がない。他人の幸せを妬んでしまうような「鬼」であることを酷く嫌に、それこそ自殺したいくらいに思う。

従って、僕は今年から5月の第2日曜日は、外に出ないことにしていたのだけれど、やはり僕は、僕を呪う宿命にあったらしかった。

先日、買い出しに行くのを、忘れたのである。つまりは、冷蔵庫に食材がない。従って、今日食べる飯がない。独り暮らしも一ヶ月を越え、ある程度慣れたかと思っていたが、そうでもなかったらしかった。

まあ、「鬼」である僕は、別に何も食べなくても問題はないのらしいのだけれど、というか、人間の行う日常的に行う、習慣的な行動、つまりは食事、入浴、睡眠などを行わずとも、この忌まわしき体は、最高のコンディションを維持し続けてしまうらしいのだけれど、しかし僕は未だに朝食を抜けば力は入らないし、風呂に入らなければ、なんとなく落ち着かないし、睡眠を取らなければ、疲労感というか、身体が重くなる感覚が、僕を襲うのだ。従って、僕は鬼でありながら、人間的な食事は摂るし、入浴はするし、睡眠も多量にとる。取らざるを得ないのだ。

つまり、僕は本日、五月の第二日曜日に、母の日に、外に引きずり出されることと相成り、前述の様な感情を抱いているというわけある。つまりはあらすじ。

さて、今回も残念ながら、語り部は僕、狐野剃刀だ。人気者な黒羽四葉でも、ショートカット健康的美少女の木通最中でもないことを、実に申し訳なく思うが、今回のお噺は、実に滑稽で、餓鬼臭く、バカバカしいお噺である。きっと皆様のお腹に響いてくれるであろう、そんなお噺である。

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