第3戀 追 憶 (2・3)
第3戀
ー 追 憶 ー
2
【ジョージの日記】より
聞いた。私の耳は間違いなく、彼女の声を聞いたのだ!
美しい白百合の蜜の様に甘い吐息が漏らした一つの言葉。間違い様のない
ただ一つの言葉だ! 彼女は云ったのだ! 『申し受けると』!!
何たる喜び、何たる幸福! 神の御前で今すぐ跪き、共に生きる証の印を
築きたいのに! 時はなんと緩やかに流れて行くのだろうか…待ち遠しい
……彼女の返事を待った時以上に、待ち遠しい。
二人が共に生き始める最初の日が!!
1900.4.8.
【ジョージの日記】より
この日、この時、この気持ちを、私はどれほど待ち望んだ事か!
生きている喜びを噛み締めながら、愛する人と真実を解ち合う。
たとへ全世界が朽ち果て様とも、私は彼女だけを見つめて、守り続けて行
くだろう。出逢いから最後の時までも、私は彼女と共に悩み、悲しみ喜び
慈しみ、そして祝福し合うだろう。 この貧しい時代ではあるけれども、
自由と平等を勝ち取るべき背景思想のただ中で、私は彼女だけを、私の人
生の残り全てと引き替えてでも守って行く!
この決意が、私の生きるべき導となるであろう。
1900.6.13.
【マルガの日記】より
式の準備など、どのようにすれば良いのか全く解らなかった。周りの人達
に手伝ってもらいながら、やっと事が運べた。
愛する父と母に、今日この日の姿を見てもらいたかったのに、私を育てて
くれた父と母は、もう他界してしまった。本当の父と母も……もうとっく
に他界してしまっているのかもしれない。あたしはこの世でただ独りだっ
たけれど、今日からは違う、ジョージがいる! 彼がいれば、どんな困難
だって乗り越えてみせるわ。彼となら生きて行ける!
……この日記を付けるのは、おそらく今日で最後になる事にしよう。
ジョージとの新しい日々は、きっと言葉にして書き残す事の出来ないほど
素晴らしく幸せに満ちているから!
鍵をかけて…あたしの心の安らぐ場所へ埋めてしまおう。
さよなら、あたしを育ててくれた、父と母へ………
最後の言葉になるかも……………
1900.6.20.
3
「ジョージ・スペンサーとマルガレーテが結婚したよ。」
暗闇の中、男の声が響いた。
冷たく透き通った若い声と、もう一つ……
「きゃつには告げん方がいいじゃろうて……」
嗄れた声。
「…ふむ。じゃ、この事を知っているのは、俺とあんただけになるんだ。」
「じゃな。」
「くれぐれも神祖に告げ口はせんようにな。」
男は笑いながら、更に闇の奥へと消えて行った。
嗄れた声の主は複雑な面持ちで、ただその場に立ち尽くしていた。風だけが、
何かを語りながら通り過ぎて行った。
ーーー夜。
若い男と若い女が手を取り合って、月明かり差し込む野道を走っていた。
時間だけが空虚に過ぎて行く。刻々と……
誰も気付かぬよう、誰にも解られぬよう、男と女は走り続けた。
何処までも、何処までもーーーーー
闇夜。
遠い昔、誰かが云っていた。この世の終わりとあの世を結ぶ黄泉路が、月の
笑いによって示されると。
二人を導くのは月。
月がニタリと笑う、その真下で紅い服を着た、目も鼻も無い少女がニタリと、
合わせて笑った。
第3戀 成 就
つづきで〜っす^^)♪
やばい!(2)で終わる予定が終わらなかった…
(3)があるので待っててね〜〜って
文字足らずだったので一緒にしちゃいました…
すみません;;))