第2戀 本 能 (2)
2
「ーーー…何でだろう…なんで食べちゃうんだろう……
食べたくないのに… 食べちゃいけないのにっ!!
なんでよっ!!!!」
既に食べきって、既に吐き出し、また繰り返し己を罵っている。
「やせたい……やせたい、やせたい!やせたい!!たせたい!!!
やせたい!!!!やせたい!!!!!やせたい”っ!!!!!!」
叫びながら、鏡の前に屁たれ込む女。
両手の甲には、『吐きだこ』があかく膨らんでいた。近くにあったクッションに
顔を埋め、ありったけの声で張り上げ叫んでいた。
ふと女は顔を上げ、キッチンへと歩き出した。
再び宿った虚ろな眼差しの先には、しっかりと包丁が握りしめられていた。
魂のない抜け殻の様に、女はふらふらと鏡の前に立ち、自らの醜い姿を見つめて
いた。
「…そうだ……そうなんだ…無理にやせなくてもいいよ……
ここ…と、ここ、ここも……………………………切っちゃえ…」
云々ながら女はニタリと笑うと、包丁を持った右手を振り上げた。
刹那!!
…………辺りに飛び散る血しぶき。女は取り憑かれた様に、何度も何度も右手を
振り上げては、己に着いた肉をそぎ落として行く。
「はっ…はは…はははは…!!! 見て! 見て見て見てよ!!!
ほらぁ、ほら!見て見てっ! こんなに細くなったって!! ははは!
きゃははははははっっっ!!!! 見てよ〜〜っ! 昔みたいに戻った!もう
食べても大丈夫だよっ!! ほらぁ〜〜こんなに細いんだもん!!最高だよ!
はははっ!ほんと〜〜細いよ〜〜!!!」
リビング中に飛び散る血。春先の生暖かい空気が血臭っをおびて、より一層生臭
さを漂わせる。鉄臭くーー鉛臭い………
「あは!あははははははははは!!!!やせた、やせた〜!!見てみて!!
こんなに…こんなに綺麗になって!!! はははは!!!」
女は嬉々として、鏡の前で小躍りしていた。
「あはははは!!
!??きゃっ!!!」
ドスッと……突如女は自らの血で足を滑らせ、尻もちをついた。
女は何事が起きたか把握できないまま、両手にネメリとまとわりつく、生暖かく
紅い液体を見た。ワインゼリーの様に凝固し、己の手の中で小気味良く震える物
体……女は両手に、否己を取り巻くありとあらゆる光景に。凝固した物体が散乱
しているその場所を、恍惚に見つめた。
「………は、ははっ……何…何これ……??
はははははは………な、何よぉぉ!!これっ……!!!あ”……あ・たし…」
い”やあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
ーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
このマンション中。
この地域中。
日本中に響き渡ると思えるほどの絶叫………
だが、その叫びは何処にも届きはしない。誰にも気付かれはしない。虫の音様な
虚しい轟きだった。
女は全身を丸め込み、踞りながら、わななく様に震えきっていた。
フローリング一面に拡がる真紅の海ーーー。その中に散らばるどす黒い肉の塊。
ヌメヌメとした不気味な沈黙が、空間を臭わしていた。
春の日差しが心地良く、部屋一面を包んでいた。
暖かさが混じった空間は、異様なまでの鉄臭さを放ち、肉が腐りだす異臭を漂わ
せ始めていた。
鏡の前に丸く横たわる一つの塊…
己が犯した過ちか?己の意志が正しかったと云うのか?
女はニタリと笑ったまま、涙と汚水の混じわる血の海の中、何も語らず、動かな
くなっていた。
ただ一言、鏡にその血で残した……
『ワタシハエランダ』
第2戀:成 就
第2戀〜終わりました^^))気持ち悪くなられた人はいないでしょうか??申し訳ないです;;)「何処が恋だ!
」ってつっこみ入りそうですが〜恋ですよ恋^^)
「自欲」って名のね^^))ひゃぁ〜〜〜逃げろ〜〜〜
では、また^^));