第2戀 本 能 (1)
第2戀
ー 本 能 ー
1
ごくありふれたマンションの1室。
春の日差しが心地よい昼過ぎ。広くもなく狭くもなく、部屋の白さが眩し過ぎる
位にどこか暖かさを感じさせていた。
TVの音が静かに流れていた。
ッズジャーーーーっと。
勢い良く水の流れる音がした。と同時にトイレのドアを開け、億劫な
面持ちでアンナが出て来た。ドアを閉めそのままキッチンへ向かうと、水を出し
両手を洗い出した。肩まであろうかその髪を後ろで一つにまとめ、虚ろな眼差し
で手を洗っていた。
両手首には無数の傷跡…浅いものや深いものまで……幾度となく、繰り返し繰り
返し付けられた傷跡。洗っている今でも、ジワッと滲み出てくる紅い液体ーーー
女は手を洗い終えると側のイスに腰かけた。
「はぁ〜…………っっ…また…またやってしまった……………くそっ!!」
深いため息を履きながら、自己嫌悪に苛まれたか、勢い良くテーブルを叩いたそ
の両手で頭を抱え込んでしまっいた。
テーブルの上には散々たる食料の残りかす。ジュースやビールの空き缶。
しばらくうなだれた後、女は顔を上げ、テーブルのゴミを片付けはじめた。
乱雑に…粗々しく……
「っいやだ!いやだ!!もうぅまじ、いやっっ!!ほんっっとにいい加減にこん
な事辞めなきゃ!! ………何で!…何であたしだけっ!!??」
バスッっと……云々ながら、片付けだしたゴミに当てつけた。
黙ったまま女は立ち尽くし、鏡に映った自分を見て苛立ったよう鏡を裏返した。
「…はぁ〜。…痩せたい…痩せたいのぉ!!
…………絶対痩せてやる!!! 必ず痩せて、昔みたいなスリムな躰に戻って
やる! 絶対に絶対にぃぃ!!!! 痩せるんだっ!!!!」
女は自らに云々聞かせるように、声を荒げて叫んだ。
「そうだ!何かしなきゃ…躰を動かさなきゃ、そしたら食欲を押さえられる!
何か何か…何か!」
そう云々出すと、女はテキパキとゴミを片付け出し、空き缶を捨て、ストレッチ
に、腹筋、腕立て伏せ……トレーニングをし始めた。
虚ろな表情のまま……
1時間後ーーー。
女の姿は部屋にはなかった。
しばらくして、部屋の扉が大きく開いた。
入って来たのは、この部屋の主の女だ…両手に沢山の荷物を抱えて………
女は扉に鍵を掛けるとまっすぐキッチンに向かい、テーブルの上に食料を拡げた。
拡げながらTVを付ける女の表情は、あの虚ろな面持ちではなく、頬に朱みを帯び
た、嬉々とした表情だった。
TVの話題に独り言を返しながら、特大カップラーメンを開け、湯を注ぐ。
ーさぁ〜、何から食べようか? と、小さな子供のように物色する。
フライドチキン6本、にぎり寿司20貫、焼きそば1人前に天ぷら盛り合わせ…
気休めのサラダか…調理パン10個、ダイエットコーラ1.5×1本、ダイエット
ビール500×6本、お菓子にアイスクリーム、ケーキが数種類ーーーー。
これだけの量を、つい2、3時間前にも女はたいらげている。そして『食べてし
まった』と云う自己嫌悪で、全てを吐き出しているのだ。
1つ1つを味わいながら、食べている時こそが幸せだと云わんばかりに、女はがっ
ついて喰らっていた。
ーーーーーー餓鬼そのものの様に……
第2戀です^^));
なんだか思ったよりも長くなっちゃいそうだったので
間あけちゃいました〜〜た〜くさんの人が読んでくれると嬉しいな^^))♪