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苦手な方はご注意ください。

小さな蟻の王国の話

作者: たけぼんだぬき

第一話 蟻と亀の格闘

第二話 オアシスの謎

第三話 宮廷の薔薇と栗の木

第四話 砂漠とキャラバン隊

第五話 王様と隊長

最終話 鷹と王国の最後


第一話 蟻と亀の格闘




むかし むかし


東の果ての 小さな国に


砂漠で覆われた 大地に


裕福な王国があったんだと



そこの王様は 古い角質に


おおわれた 大きな大きな


亀じゃった



人民の生き血を吸って


生きておった


満月の晩に 村人の中から


年老いた 人間を生贄に


せねば その村には


多額の税金をとりたてる


怖い 怖い番人がやってくるのじゃ



仕方なく それぞれの村には


誰を王様に差し出すか


決める儀式を行い


その犠牲としたのじゃった



そんな様子を宮廷の庭で


見つめていた 一匹の蟻がいた


亀の王様の怒鳴る声は


宮廷全てを包み込み


雷鳴の如く 響き渡った



そんなある日 蟻は


あの王様をやっつけてやろうと


考えて 生贄の老婆の髪に


隠れて 王様のいる


宮殿にやってきた



老婆の着物を全て脱がし


大きな皿の上に


その老婆を座らせた


番人は 王様に献上した



大きな亀の王様は


その老婆を旨そうに


平らげた


王様の体に入った


蟻は 隠し持っていた


剣を取り出すと



王様の大きな胃袋を


腹の中から手当たり次第に


切りつけた


のたうち回る王様の


悲鳴と暴れる姿は


まるで 天地がひっくりかえるかと


思えるほどに 揺れ動いた



しばらく暴れていた王様だったが


終に 口から驚くほどの


真っ赤な血を吐いて


息絶えた


口から出てきた蟻は


死骸となった 王様の上で


勝利宣言し 近くに仕えていた


高官たちに命令した


これからは 俺が


この国の王だ


俺様の 命令通りにしろと



言い放つと それまで


王様が座っていた


王座に登り そこに


座った



こうして新しい国


蟻国が誕生した


国民は 大喜びで


この王を歓迎し


盛大な宴会を


催し祝った



真っ赤な夕日が


西の空を染めていた


宴会は 毎日


朝日が昇り


夕日が沈み


空一面の星たちが


煌めく中


何日も何日も


続いたのだった



小さかった蟻も


その風格を 逞しくして


次第次第に ふくらんでいった


彼の中に それまでは


持たなかった 醜悪な


心が芽生えていった


彼自身 何も気づかぬうちに



つづく


第二話 オアシスの謎




亀の王国から 蟻の王国へと


移り変わってから 早くも


三年の月日が流れた



王国の住民たちは


堅固な城壁に囲まれた


水源豊かなオアシスに


よって その暮らしは


以前より少し 改善されていた



しかし この王国を守る


水源の水がどうして


湧き出てくるのか


住民たちは 知るすべもなく


城壁の向こうに 大きな


大河が流れていて そこから


来るのだと 信じられていた



そんなある日 大きな一羽の


鷹が 貧しい村の大きな木に


舞い降りてきた



大きな木の聖霊は


この鷹に話しかけた


お前は あの高い城壁の


向こうから飛んできたのか?


そう鷹に問いかけた



おう!!そうともよ


おれさまは この地上の


全てを高い空の上から


見てきたんだぞ!!


と一人 威張って木の聖霊に


話しかけた



では お前様はこの国の


あの涸れる事のない


豊かな水はどこから


来ているのか 知っておるか


と背を仰け反らせ 威張っている


鷹に問いかけた



ああ 知っているともよ


お前らが旨い 旨いと


飲み続けている 水の事じゃろう



ああそうだ と木の聖霊は


枝を揺すって答えた



お前らは知らぬだろうが


あの水は この国の


周りを取り巻くように


敷き詰められた 黄金に光る


膨大な砂から 出来ているんだ



木の聖霊はその話を聞いて


驚いた


何を馬鹿な事を言っている


砂から水が出るわけなかろう


何も知らんと思うて


馬鹿にしおってから



あのなあわしはこれでも


何千年と大地に根を張り


生きてきた


水は空から キラキラと


煌めきながら 落ちてくる


ものなんじゃ


人々はそれを 雨とか


呼んでおるがのう



アハハ・・・・・


鷹は馬鹿になったように


大声で 笑った



何も知らぬのなら


教えてやろう


お前らが ありがたいと


言って飲んでいる水は


砂たちの 汗と 涙なんだ


朝日が昇る大地の上に


太陽を見て 砂たちは


泣くんだ また俺たち


砂は 真っ赤に焼けた


火箸をあてられたような


灼熱の地獄を味わう



それが毎日 毎日


朝日が昇ると始まり


巨大な夕日となって


沈むまで続く



その苦痛さは


言葉では言えないくらいだ


その事を嘆いて 流す涙なのだ


そう鷹は言い放つ



そんな事は嘘だ


木の聖霊は そういうと


鷹をふるい落とそうと


乗っている枝を揺り動かした



おいおい まあ話を聞けよ


鷹は 落ちまいと 見事な


翼を広げて バランスをとっている



何だ また嘘を言おうというのか


その研ぎった立派な嘴を


へし折ってやろうか


と木の聖霊は 大きな幹を


揺さぶりながら そう言った



この城壁の向こうには


その黄金の砂と 無限に続く


乾ききった砂漠としか ないのだよ


言うような大河は存在しないのさ



その砂粒は この大空の果て


無限に広がる 星ゞよりも


数が多く それが全て


カラカラに乾ききっている


水どころか 多くの動物たち


迷ってしまった 人たちの


人骨の山 動物たちの墓場さ



この国に辿り着けなかった


人々は 誰にもみとられず


気づかず 哀れな最後を


遂げるだけさ



その人たちの未練が


この国へと 集まり


城の中に入れずに


周囲を取り囲んでいる


それが あの 黄金の砂だ



その砂一粒には彼らの血が


包まれている


流す涙も また血だ



なんならここの王様に言って


その黄金の砂を集めて


大きな搾り機にかけてみなよ


真っ赤な血がその黄金の砂を


覆い尽くし その最後に出てくる


出口からは 透き通った綺麗な


水が滴り落ちる事だろうよ



まあ ここの王様は


自分の食い分だけあれば


満足しているような


小さな蟻だ 国中の


人々の幸せなんか


願ってもいないし


屁とも 感じていないだろうがな



そうか そうだったのか


その血を吸って この国の



人々は 否 この俺様でさえ


生きてきたのか・・・・


そう震える声で 木の聖霊は


嘆くように言った



高い所からじゃないと


見えない事がある


また 大地にひれ伏さねば


聞こえぬ 声もある



そう鷹は 不思議な言葉を


残して また飛び立って行った



木の聖霊は あまりのショックに


全ての枝を垂れて 震えていた


この国は この国を慕い 求める


人々の血で支えられていた


そう分かったからであった




つづく


第三話 宮廷の薔薇と栗の木



蟻の王室から良く見える


庭の中に 巨大な噴水がある


その噴水は 以前の王


亀が 元々暮らしていた


噴水だった


水量は豊富で 涸れたことがない



大量の水を守る その泉の周りは


様々な彫刻に飾られた 大理石で


出来ており 苔むしては


いるけれど 立派な泉であった



夕方と 朝の二回


泉の中央 噴水からは


地上 数百メートルにも


なろうという 水の柱が


出現するのだった


水飛沫は 泉に落ちる前に


大きな虹をその上に架けた



王室の吹き抜けの窓から


見ると その虹の架け橋が


よーーく見えた



その泉の周りに 咲き誇る


数々の花々たちが


大きな木々に混じって


宮廷を 色どり飾っていた



花たちは種類ごとに 分けて


植えられていたが 手入れを


するものがいなくなってからは


だんだんと 入り混じり


今では 乱舞する花たちに


足の踏み場もないほどに


なっておった



ひと際目立つ 一輪の薔薇


長く伸びた 花軸の先に


直径一メートルはあろうかという


花びらが その威容を見せていた



その花の脇に 大きな栗の木が


豊かな実を 実らせていた



栗の木は その薔薇の花に


声をかけた


なあ お前 大きな花を


つけているが 重たくはないのか


と 心配そうにそう言った



薔薇は太陽の方を向いていて


声をかけられたのに 気づかずにいた



なあって!!


と栗の木は 棘のある実を


薔薇の方へ飛ばそうと


わが身を揺すって 一粒の


栗の実を薔薇のそばに落とした



大地に ドサッという音と共に


イガグリが落ちた


薔薇はちょっと驚いたが


誰だ イガグリを落としたのは


と栗の木の方を見た



ああ 俺様だよ


と栗の木は 薔薇に話しかけた



危ないじゃないか 棘が


花に当たったら 枯れちまうじゃあないか



いやあスマン スマンと


栗の木は 大きな幹を


揺らして謝った



だから揺するのは


止めてくれ またイガグリが


落ちてくるから


と薔薇はそういうと


近くに落ちた イガグリを


睨みつけた



何か用か?


薔薇は栗の木に話しかけた



ああそうだ。あのなあ


お前大きな花を付けているが


重たくはないのか?


と栗が尋ねた



平気だよ 俺はこの花が


いのちなんだ 茎には


痛いとげがある


せめて 花くらい綺麗な


色を見せないと 摘まれてしまう


今度王様になった蟻は 元々


俺様の花の蜜を吸って


生きていたんだ


今では大きな顔をして


あんな立派な宮殿に


住んでいるが 元は


気の弱い 小さな奴だった



それを考えると 羨ましくなってな


俺だって こうして大きな花びらを


付けられるんだと 見せつけて


やっているのさ


一体誰のおかげで 生き延びられて


きたと思ってるんだ


と薔薇はそういうと 花びらを揺すり


太陽の光が良く当たるように


揺すって見せた



そうか そうだったんだな


俺なんか イガの中にある


実が いのちみたいなもんだ


あの噴水のこぼれた水のおかげで


ここまで成長できたんだ


お前のように 大きな花は咲かせられない


雌花だって茎の髭のようだ



かっこ悪くて しようがない


お前は良いなあ そうやって


自分を主張できるから



と栗は悲しそうに言った


それに その良い香りは


花から出ているのか?


人々はそれを 香水にするらしいじゃあ


ないか 羨ましいよ まったく


と栗の木は続けた



何が羨ましいものか と薔薇は


吐き捨てるように言った


精一杯咲かせても 果実が実るまでの


短いいのちさ 果実になっても


小鳥が啄んで 持って行ってしまう


まあ そのおかげで 子孫が


別の場所で根付く事が出来るんだが


お前さんのように 長く生きたいもんだよ


と感慨深げに 薔薇は言う



だからさ あの小憎たらしい


蟻の無様なさまを目に焼き付けて


おきたいと思ってな



王様はそんなに無様か


と栗は問う



ああ無様さ 砂糖ばっかり


食いやがるから ブクブク


太って 身体だけは 大きく


なりやがった


それに 前にいた 亀と


変わらなくなってきた


おうへいなあの態度


あいつの心には


亀をやっつけた頃の


正義感はかけらも残っていない



自分が世界で唯一偉いと


思ってやがる


家来たちや 国の住民が


どんな思いで 毎日暮らしているか


考える 脳みそもないんだ



ああなると 行く末見えたって


感じかな


また次の 正義感を持ったものが


蟻をやっつける


そしてまた そのものが


この国の王になる



そうして この王国は


繰り返される


誰一人として 立派な王


などは望んでいない


ただ毎日 平和で


安泰な 日々を願ってる


それが この国の


人々なのさ



そうだろう エッ!!


ちがうか!?


そう感慨深げに言うと


また太陽の方を向いて


しまう薔薇なのであった



国の正義とは


国に捧げるとは


一体何なのだろうか?


栗の木は 大きな体を


揺すり 大地にイガグリを


落とした


他の花たちは 太陽の光に


包まれて 良い気持ちで


うたた寝している


気持ちよい風が宮廷の中を


吹き抜けてゆく


うららかな 昼下がり


噴水の水が 吹きあがるまで


まだ時間がある


綺麗な虹が天にかかるまで


花たちはしばし眠るのだ



煌めく様な 露が


一滴 薔薇の花弁から


大地に落ちた


キラキラと 宝石のように


光りながら・・・




(つづく)




小さな蟻の 王国の話


(創作昔話)


第四話 砂漠とキャラバン隊



見渡す限りの 砂漠の中を


一組のキャラバン隊が ひたすら


東を目指し 進んでいる



どれだけの距離を 歩いてきたのだろう


砂漠の上には 長く続く 足跡


西の国から やってきたのだろう


太陽は頭上にあって 容赦なく


彼ら一行の身体を焼き付ける



照り続く太陽の 青い空には


綿菓子のような 丸い雲


いくら空を仰いでも


雨の降る様子はない



隊長の足元は 一歩踏み出す度に


ぐずぐずと 砂の中に沈み込み


歩くのさえ 大変なのだ



砂丘の頂上を一行は進む


一列になり 誰一人


無駄口を話すものなどいない



彼らの目指す土地は


商人から 聞いた


砂糖1kgを砂金1kgと


交換してくれる国がある


という噂話のようなものだけだ


ただ東へ砂漠を越えてゆけば


それはあるという



ただその言葉だけを信じて


彼らはいのちがけでやってきた


この辺りまで来ると 沢山の


動物の骨 飢え死にして


死んでいった 頭蓋骨等が


散乱している



自分も今ここで 諦めたら


あれと同じ運命が待っている


死への恐怖と闘いながら


進んでゆくのだ



この砂漠では


方位磁石は通用しない


北を指すべき 針は


クルクルとまるで


独楽のように廻るだけだ


東へ行くには 昼間は


太陽に頼り 夜は星が


頼りなのだ



そうして 身勝手な行動を


一人がとれば それは


キャラバン隊 自体の


遭難につながるのだ



どんなに辛くても


隊長の指示の通り


進むしかないのだった



夜には 暑さがしのげる為に


出来るだけ夜移動する


昼間の一番熱い時間は


テントをはって


日陰を作り そこで


身体を休める



そんなある日 一人の


隊員が 大声をあげて


テントから飛び出した


意味不明の言葉を


吐きながら 数歩


歩いたかと思うと


灼熱の砂の上に


うつぶせに倒れた



隊長が駆け寄ると


彼の首には サソリが


針を突き刺していた


棒を使って追い払うと


彼のそばに駆け寄ったが


もう既に彼の息は途絶え


死んでいた



また一人隊員を失った


彼にとっては 一番


大切な隊員なのだった


まだ 国は見えないか


そういうと あたりを


ぐるっと見渡した


その時 ある地点で


緑の葉を豊かにたたえた


大きな木を見たような


気がした



目を凝らしてじっと


見つめる隊長


陽炎のように 揺れ動く


木が確かに見えている


もしかして あれは?


と隊長が叫ぶ



他の隊員たちもその方角を


見つめている


そうですよ 隊長


あれはきっと 噂の国じゃあないですか



ここにテントを張り


基地にした


何人かの人間を 先発隊として


その木のある方角へ 出発させた


もしあれが 陽炎であったなら


もう彼らは戻ってこない



行きずりの途中で 死ぬか


うまくすれば ここへ


帰ってくるか 全員の死を


きらった隊長は そう判断したのだった



もし砂漠の真ん中で迷えば


それはすなわち 死を意味する


それほどの覚悟で 出てきたのだ



他の隊員たちは テントの中で


休ませた 彼自身は砂丘の一番


高い所へ登り 大きな旗のついた


竿を 立てた


この旗を頼りに 帰ってきてくれと


心で念じながら 倒れぬように


しっかりと竿を立てたのだった


彼は一時も休むことなく


炎天下の中 竿を握りしめ


立っていた



ぼうーーーとする頭の中に


幻想がわいてくる


大地に倒れた 先発隊たちの


死骸の道だ



休ませていた別の隊員が


大きな瓶を持ってやってきた


隊長水です 飲んでください



おう。ありがとう


そういうと 水瓶を受け取り


ゴクゴクと旨そうに飲んだ


お前も飲め!と隊長は言った


いただきます。というと


彼も旨そうに飲んだ


後一時間頑張ってください


交替をよこさせます



おう頼むぞ!!


隊長の元気のある声は


その隊員を励ました


必ず先発隊は戻ってくる


それまでの辛抱だ!!


隊長は 希望を口にした


いやむしろ 願いといっても


いい言葉だった



こうして彼らは 数時間


交替しながら 旗を守り通した


遠くから 隊長!!と叫ぶ声が


聞こえてきた


夕日が迫る 時刻


先発隊は その国を見つけ


帰ってきたのだった



隊長は彼らをねぎらい


大切な水と 食料を


彼らに分け与えた


彼らは 嬉々として


その国の有様を語った



大きな城壁がある事


そのなかは 豊かな


植物と 動物たちの


楽園のようであった事


その中央に 巨大な


城郭がそびえ立ち


見事な国である事を


隊長に報告した



まずは 身体を休めよ


その後 夜遅くに出発する


と隊長は隊員たちに告げた


彼は この数日 睡眠不足に


陥っていた 色んな雑事に


追いまくられ わずかな時間しか


眠れなかったのだった



さあ夜なかになるまで


ゆっくりと身体を休めよう


そういうと テントの中に


消えていった



隊長!!出発の時刻です


隊員が起こしにきた


ああ さあみんな 出発だ


そういうと またキャラバン隊は


動き出した


薄暗い夜のしじまに


大きな木の陰が見えている


空には 丸い月が出ていた



少し寒いくらいの夜の風


昼間とは うって変わった


風景に 隊員たちも


足が軽くなる



次第しだいに 木が


大きくなってくる


そうして やっと


堅牢な城壁が彼らの目に


入ってきた


時は もうすぐ朝を迎える


城壁に取り付けられた


アーチ型の 門の前に


ようやく彼ら一行は


立ったのだった



城にある鐘が なるまで


彼らはそこに立ち


待ち続けていた


隊長は 国王との


対峙を楽しみにしていた


どんな国王だろうか


彼の頭の中に 想像する


国王は 立派な人だと


そう思っていた


なぜなら こんな綺麗な


国を作った人だからと


勝手に思い込んでいたのである


やがて鐘が鳴り響き


城壁の門が大きな軋む音と共に


開いた


ギギギギギ・・・・



キャラバン隊は胸を躍らせて


城壁の中に入って行った



(つづく)



小さな蟻の 王国の話


(創作昔話)


第五話 王様と隊長



キャラバン隊隊長は 立派な宮殿に


案内されて 入って行った


王様のおなりーーーー


召使いのものの 大きな声が


宮殿に響き渡る



大きな扉が 開く


隊長の目の前に 立派な玉座が


見えた


玉座は 様々な宝石で飾られ


キラキラと光っていた


そして豪華な衣装をまとった


王様が座っている



その大きさは 巨大で


吹き抜けの宮殿の天井に


シャンデリアが 飾られているのだが


それに頭が付きそうなくらい


王様は大きく 衣装の下の


身体は ぶくぶくと肥り


醜い姿である



王様 お目にかかれて 嬉しく思います


隊長は大きな声で 敬服したまま


そう言った



お前は 色んな所を 旅をして


きたんじゃろう


話を聞かせてくれ


そう王様は言った



はい この度は 王様が求められている


砂糖を運んでまいりました


欲しいだけの量を 言っていただければ


納める事が出来ると存じます


砂糖 1kgと城の周りにある黄金の砂


1kgと交換致します


そう隊長は言った


王様は そうか そうか うんうん


と大きな頭を振って満足そうに言った



こうして キャラバン隊の隊長は


ひとまず 宮殿を去った


そして 高官と共に黄金の砂がある


場所まで移動して 砂糖と砂金との


交渉に入った



砂糖は 何頭もの ラクダの背に


積まれラクダは重そうに運んでいた



荷を解き 王国の荷車に積まれてゆく


その数は 沢山ある


袋に入った砂糖をどんどん荷車に積み


宮殿に運んで行った



そして 隊長は 大きな量りのある


場所で 黄金の砂をすくっては


袋に詰め込んでいく


こうして 一昼夜作業が続き


ラクダの背には 沢山の


砂袋が結びつけられていた



黄金の砂が この王国の


水源である事など 知らぬ


王様と 仕えるものたち


実は この砂こそ彼らの


いのちそのものであるのに



王様一人の為に 大切な


水源を売っていたのであった


キャラバン隊は 一か月ほど


滞在し 水や食料を十分に


確保したのち 王国を去って行った



その後 宮廷にある噴水の噴き出す


水の量が少なくなり 噴き上がる


高さも 以前より 低くなった



そしてあの見事な虹も小さくなった


王様は砂糖を食べる量が 日に日に


増えていって 王国を圧迫する程に


なっていた


太りに ふとった王様は玉座から


降りる事も出来なくなった


一日中そこで 窓の外を眺め


砂糖を頬張っていた



彼にとって 王という大切な仕事すら


出来ない身体になってしまった



あのキャラバン隊は 西の国で


砂金を 使って物資を買い


みんな大金持ちになっていた


豊かな暮らしは 彼らの生活を


一変させるほどであった



そして、次第に王国は 廃れてゆく


誰も気づかぬ速度ではあったが


確実にさびれていったのであった




(つづく)


最終話 鷹と王国の最後



想像を超えるほど 大きく


太ってしまった 蟻の王様は


もう自分の細い手足では


身体を支える事も出来なくなって


ただ 玉座に座ったまま


終日を暮らすはめに


なってしまったのでした



それでも彼は 色々な所へ


行きたいという願望がありました


そこで召使いに命じて 玉座に


体重を支える 車輪を取り付けさせ


担げるように 担ぎ棒まで取り付けさせ


部下たちに 神輿のように担がせて


城の外へ出たり 宮廷を見て回ったり


しておりました



そんなある日 大空をまたあの鷹が


舞って 王国を偵察していました


おぉ あれは 村人ではないか


なにやら 以前より 痩せて


貧弱な身体になっておるな



それに 宮廷の様子もおかしい


以前来た時より 草花が元気がない


どうした事じゃろう



そういうと 前に止まった大きな木に


止まって 木の聖霊に問いかけた



おーーい!! 木の聖霊


聞こえておるか!!


と木に声をかけた



おぉ 久しぶりじゃのう


鷹よ お前さんは これまで


何処に行っとったんじゃ


見かけなかったが


と木の聖霊は言った



あの後 西の国へ行ったんじゃ


港を持ち 船の行き来が多くて


沢山のものが運ばれてくる


それはそれは 豊かな国じゃ


食い物も食べ放題


よく太った猫


ねずみ 犬等


なんでも食べ放題じゃ



あまりに栄養が良くて


動きが鈍い すぐに


俺様の餌になる



おかげでちょっと


太ってしまった


食い物が豊富なのも


問題じゃわい



そういうと 少し


出っ張った腹を見せて


大笑いした



所で 話は変わるが


村の衆や 宮廷の草花は


どうしたのかの?


みんな元気がないようだが


そう言うと 木の聖霊の


声のする方を見た



ああ あれはなあ


蟻のおかげで 水脈が


枯れそうなのじゃ


噴水の水も もう今では


1mも上がらん


次第に枯れ果てようとしとる



このままではここは


砂漠に逆戻りじゃ


と情けなさそうに言った



なんでだ? 水脈はあの黄金の砂


無限にあるはずだろう


それともあの砂を誰かが


盗んだのか それにしても


それには もっと日数がかかるだろう


と鷹は不思議そうな顔で


木の聖霊に問うた



この原因は全てあの馬鹿王のせいさ


余所から見た 商人に 砂糖と引換えに


いのちの砂を与えたのじゃ


このままでは 全ての生き物は


死に絶えてしまうぞ



水のない国になど 誰も住もうとは


思わん その当たり前の事が


能無し王には分からんのじゃ


と木の聖霊は 言った



そうかあの王はそこまで


落ちぶれたか


もうあの王を殺すしかあるまい


と鷹は言った



殺すって また能無し王が


変わるだけで 何も変わるまい


と木の聖霊は言った



いやあ彼の国で 良い方法を


見つけてきた 国民がそれに


理解を示せば うまく行くはずだ


と鷹は言った



ほう そんなうまい手があるのか


教えてくれ と木の聖霊は言ったが


鷹は まあ見ていてくれよ


みんなの意見がまとまらない時は


助けてくれるか?


鷹は聖霊に頼みごとをして


了解を得ると また高く飛び上がった



どうやら 宮殿の方へ飛んでいくようだった


木の聖霊はちょっと不安になったが


今は あの鷹に任せてみようと


思い立ち じっと成り行きを見守っていた



鷹は 長い行列を整えて


宮殿へ帰ろうとする 蟻の輿を見つけた


高いところから見下ろすと


無様な体型の 蟻は 担ぎ手に


指示を出している


ちょっと嘴を羽で撫でて


尖った先を磨いた


その瞬間 一気に王めがけ


急降下した



蟻はすぐそばまで下りてくるまで


気づかず 見つけた瞬間には


ただ うわーーーーーと


叫び声を上げるのが


精一杯だった



パンパンに膨らんだ 彼の身体は


嘴が突き刺さった瞬間


バーーーーーーン と大きな音を


立てて破裂した


その身体は 飛び散ったかに見えた



鷹も満足げに ヨーーシ!!と


声をあげた


だが 蟻は なんと大量の砂糖の中に


元の小さな姿のまま生き残っていた


そうして 砂糖の中で 悶えていた



膨らんでいたのは全て 砂糖


大きな体の中に 詰まっていたのだった


鷹は驚いた


コラ!! 蟻よ お前は生きているのか


と鷹は大声で言った



小さな蟻に戻った王様を見て


部下たちも 呆れかえった


こんなものを王にしたのは


俺たちの責任だ 腰を投げ捨て


城に帰って行った



味方がいなくなった蟻は


鷹に助けてくれと懇願した


ならばと 鷹は 今から


宮殿に戻り みんなの前で


宣言しろ と言葉を託した


一つ 王の地位は 放棄する事


二つ この国は これから先

共和国とする事


三つ まつりごとは 全ての

国民の代表が相談して決める事


四つ 全ての国民は 平等であり

誰一人 奴隷となる事を許さない


五つ 城の周りを取り囲む城壁は

全てとりはらう事


六つ 城壁の石を使って 東の果てにある

海まで道を作り 余所との交易を行うこと


七つ そこから得た利益は 国民全員で

分配すること


と七つの条件を蟻に納得させて

城へ戻してやった


蟻が みんなを集めて


この七つを発表した


国民は 大歓声をあげて喜んだ



こうして蟻は またあの庭の


薔薇の花のある所へ帰って行った


鷹は満足げに 城の周りを


飛び回り また何処かへと


飛び去って行った



共和国となった 国は


その後 貿易を中心に発展し


黄金の砂も また次第に


増えていった あの噴水の水は


元の勢いを取り戻し 旅人たちの


潤いの場所となり 村人たちも


貿易のもうけで 豊かな暮らしが


出来るようになった



何か問題あれば 村人たちが


宮殿に集まり 議論して


決定した


こうして この国は 世界一


豊かな国となったという事じゃ



(終わり)




六話完結創作昔話です。

お楽しみ下さい。

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