傘
>呪われた傘
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遠い昔、傘を作るのがとても好きな傘職人のもとに、奇妙な服を着た二人組がやってきた。
「誰だい、お前さん達。」
「「フフッ、実験、ですよ。アナタにコレを渡したらどうなるのか。」」
二人組が声を揃えて言う。
そのうちの一人が、黒い塊を渡してきた。
傘職人が怪しそうに見ていると、
「「コレは欲望の塊ですよ。コレをどう使うかはアナタ次第。フフッ。」」
一人が傘職人に塊を握らせ、フフッ、と笑いながら二人は去っていった。
傘職人はしばらく塊を見つめた後、何にも目をくれず、傘を作り始めた。
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数十年後。権力が欲しいと願う貴婦人がその傘を買った。
(かわいい傘。しかもとても安かったし。運がいいわね)
手にして歩き始めてから数秒後。
貴婦人は傘をしばらく見つめた後、傘を持って政治家の元へ向かった。
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それから数十年後。金が欲しいと願う男がその傘を手に入れた。
(こんな綺麗な傘がタダだなんて...今日はツイてるな)
雨が降っていたので傘をさそうとしたとき。
男は傘をしばらく見つめた後、近くにあった包丁を持って銀行へと向かった。
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それからさらに数十年後。宝石が欲しいと願う貧乏人がその傘を手に入れた。
(雨が降っていてどうしようと思っていたところだ。タダだったしもらっちゃった)
傘をさしてから数秒後。
貧乏人は傘をしばらく見つめた後。警官から拳銃を奪い、宝石店へ向かった。
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「フフッ、皆欲望に忠実だ。そして最後は破滅していく―――」
「兄上。次は何をします?」
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現代。
「傘 無料で譲ってます」
と書かれたチラシがあなたの郵便受けに入っていた。
一作目です