平川くんと愉快な仲間たち
目を覚まし、ゆっくりと伸びをする。これが朝のルーティーンとなっている。目覚めが良く、今日も新しい1日に期待をする。しかし、そんな期待は10秒も持たなかった。1階にあるリビングかいつも以上に活気があり、嫌な予感を感じながらドアを開けた。
「よぉ、豪三」
「人んちに何用だ? 優里に琲世」
「飯食ってる!」
「……そうか」
われもの顔で人んちに上がり込みやがって。琲世に至っては、ご飯に夢中になって俺に気づいてすらない。
こいつら俺の朝ごはんの分まで食べてることに気付くと思わず右手に力が入る。
「豪くん。おはよう」
「おはよ、母さん」
「元気な子たちねぇ」
こいつらを元気の2文字で片付けるのは無理があるよ。
「そう…かもね」
「恵子さん、ご飯美味しいです。恵子さんのご飯毎朝食べたいです」
「ほんと…///」
「琲世おめ、俺の母さんを口説くなぁ!」
「遊びじゃない、僕は本気だよ」
「尚更駄目に決まってんだろ!」
「ポチョン」
「気持ち悪い効果音つけるな」
優里とやりやってる間に母さんと琲世の距離が近づいてる。
「おもろ」
「なんも面白くないわ!」
朝から血糖値上がりそうだ。あぁ夢であってくれ。
学校の帰り道琲世が突然言い出した。
「あだ名付けよう」
こいつあれかまたテレビの影響受けたのか。昨日は月曜日か。
「あだ名か」
「そうそう。僕が居たとこではやめましょうみたいな風潮あったから」
「ガキの頃のあだ名で言えば、俺はかっちゃんとかだったかな」
「あざといあだ名だな」
「俺に言うなよ!?」
名前から文字るのはベタであるが全然ありだと思う。
「夏水優里だから、カスだな」
「いいあだ名www」
「お前らひでぇーな!」
何が駄目なのだろうか。ちゃんと名前から文字っているのに。
「贅沢な奴だな、琲世なんかある?」
「……そうだね。エティッチとか」
何を言ってんだ、こいつ。感性がぶっ飛びすぎて理解の範囲外に飛んでった。
「逆にカスがシャリバーンにあだ名をつけよう」
「そのあだ名本採用なのか!?」
しばらく考えた後に目を見開きこれだと言わんばかりの顔をしている。
「琲世シャリバーンなんで、敗者」
「人の名前使っといて悪口か、君は」
「お前もさっきカスで笑ってたろ!」
いがみ合っているのを横目に見て深々と思い染みる。
「俺らあだ名つける才能ないな」
「締めに入るな豪三」
「そうだよ。君のあだ名がまだじゃないか」
「いや俺は遠慮しておくよ」
「何言ってるですか。僕たちは友達じゃないですか」
「マブダチだろ」
言ってる言葉だけを見れば青春系のドラマにでも使えそうなセリフなんだけどなぁ。
「じゃ、まずそのにやけ顔どうにかしろよ!」
「平川豪三か」
「……」
「……」
「……」
「面白みないですね」
「だな」
「お前らの方が余っ程酷いじゃねーか!」
「あのさ、話変わるけどいいか?」
「僕は良いよ」
「よくはねぇーよ」
「それならこいつは置いといて」
「置いとくな」
人の名前微妙に弄っていくだけで、放置は流石にあんまりじゃないか。
優里が間を空けてから口を開く。
「好きな女のタイプって何?」
「話変わり過ぎだよ」
「僕は恵子さんですかね」
敗者は、本当にブレないなぁ。なんでそんなに固執するんだろうか。
「敗者はなんで母さんなんだ?」
「あの母性の塊であり、誰にでも隔たりなく優しいし、それにあの身体。少しだけ話したけど1番は、あの笑顔かな」
「なるほど、お前をここでやっとくべきだな」
「あまり嫌われたくないんだけどぁ。未来の息子に」
「プロとして───。遺言ぐらい聞いてやるよ」
「俺は教室の隅っことかでひっそり本読んでたりする、物静かな子かな」
先程までやり合っていた俺たちはカスが言った言葉で一度休戦となる。
「カス、お前めっちゃピュアやん」
「別にいいだろ」
「僕の次ぐらいにね」
「で、本音はどうなんだ?」
「本音なんてねぇーよ」
そう今カスが言った答えはカモフラージュされている。言わば合コンの時に性欲を隠しつつ、見た目の派手さのギャップを狙った80点ぐらいの回答である。
「お前みたいなませてるエロガキが、そんなことは無いだろ」
「バレちゃーしょうがねぇ。そうだエッチなことは興味無いみたいな振りしてるけど人並以上に興味津々な子がいい」
「ほら見ろよ。でもいいよなそういう系」
「熱く語ってましたね」
「次は無の番だ」
無とは? まさか俺のことを指してるのか。だとしても何処から持ってきた。
「無って何?」
「面白みのない名前だから虚無の無」
「張り倒すぞ」
「無は、どんな人が好き?」
「そーだなぁ、スポーツっ子かな」
「そうだな、クラスのやつで言うと金田とか?」
「そうだけど、どっちかって言うと櫻井の方が好みかな」
「へぇ〜。櫻井のことそういう目で見てるんだ」
「べ、別にいいだろ」
「そうですよ。カス、無だって夢ぐらい見るんですよ」
「敗者、お前も大概だ。それだったらカスだってそういう目で見てるだろ」
「それが何か」
うわ、肯定しやがった。女子に知られたら人気ガクッと落ちるのになんてやつだ。
「それならそういう目で見てるカスくん。クラスの女子で胸の大きさランキング作ってよ」
勿論、後学のためにね。別にやましい気持ちは全くないんだよ。ほんとだよ。
「勿論無理だ!」
「な、なんだって〜!」
「女性に対して失礼だぞ」
「紳士的ではないですね。僕は興味ありますけどね」
「敗者!」
でもそうか。コンプレックスなどにも成りうるデリケートな問題を、面白半分で言うのは駄目だな。そこは反省しないと。
「そもそも俺首から下しか見てねぇから、ランキング作れねぇ」
「お前それでよく俺に説教できたな!」
先程の反省を返して欲しい。
「この話はおわずけになりますね」
「だなー」
「おわずけか、でもさこれって短編だから続きはないよな?」
「そうですね」
「なら10万字の小説+後日談を!」
「欲張りすぎだろ」
「それじゃ、どちらかと言うと今回が後日談になりますよ」
「次回もお楽しみしとけよ」
「次回はないって!」