第七話 呪われた森の真実——「思い込みをぶち壊せ!」
「ここが……呪われた森か。」
レオンが剣を握りしめながら、薄暗い森を見つめる。
私たちはエルム村の近くにある「呪われた森」にやってきた。
村人たちは皆、この森のせいで作物が枯れ、村が衰退していると信じている。
でも、私はまだ納得していない。
(本当に呪いなの? それとも、ただの“思い込み”?)
「……行きましょう。」
私はレオンとともに、森の奥へと足を踏み入れた。
呪いの痕跡?——違和感を探せ!
森に入った途端、空気がひんやりと冷たくなった。
木々はねじれるように歪み、地面には黒ずんだ葉が落ちている。
確かに、普通の森とは違う異様な雰囲気がある。
「……なんか、不気味ですね。」
レオンが辺りを警戒しながら進む。
(でも、何かがおかしい……。)
私は慎重に地面を観察した。
——そして、ふと気づいた。
(この枯れた草……呪いじゃない。)
私はしゃがみ込み、土をすくった。
「レオン、この土……妙に湿ってない?」
「え?」
彼も地面に手を当てる。
「……確かに。普通の土とは違うな。」
「それに、ほら。」
私は、森の奥に続く小川を指さした。
「水が……黒い?」
レオンが眉をひそめる。
「まさか……!」
私は水をすくい、慎重に匂いを嗅いだ。
(この匂い……村で使っていた油に似てる。)
私はハッとして、レオンに言った。
「これ、“呪い”じゃなくて、水が汚染されてるだけよ!」
「呪いなんかじゃない!」——真実を突きつけろ!
「汚染……?」
レオンが驚いた表情で聞き返す。
「ええ。たぶん、どこかで油か何かが流れ込んで、それが川を通じて森全体に広がってるの。」
「だから、作物が枯れて……!」
私は確信した。
「これは呪いなんかじゃない。環境の問題よ!」
(でも、なぜこんなことに……?)
「よし、川の上流を調べよう!」
レオンとうなずき合い、川沿いを遡る。
やがて、私たちは驚くべき光景を目にした。
「これは……!?」
なんと、上流に壊れた製鉄所があったのだ。
壊れた製鉄所の秘密——「誰も確かめようとしなかった」
「ここ、昔は鍛冶屋が使ってた製鉄所ですね……。」
レオンが建物を見上げる。
壁は崩れかけ、内部は放置されている。
そして——
「見て!」
私は、地面から漏れ出している黒い油を指さした。
「これが川に流れ込んでたんだ!」
「……ってことは、呪いなんかじゃなかったんですね。」
「そうよ。」私は腕を組んだ。「でも、村の人たちは誰もここまで確かめに来なかった。」
「“どうせ呪いだから”って、思い込んで……。」
(これこそ、“思考の呪い”ね。)
何か問題が起こったとき、人はすぐに「どうせ無理だ」と諦めてしまう。
でも、問題の本質を見極めれば、解決できることは多い。
「陽菜さん、これ……村の人たちにどう伝えます?」
「もちろん、現場に連れてくるわよ。」私はニヤリと笑った。
「自分の目で見てもらわないと、“思考の呪い”は解けないからね!」
村人たちを連れて、真実を見せる!
「嘘だろ……これが呪いの正体だったのか……。」
製鉄所に連れてこられた村人たちは、驚きの声を上げた。
「ここから流れた油が水を汚してたんです。」
私は村長の前に立ち、はっきりと言った。
「村の作物が枯れたのは、呪いじゃなくて、この汚染のせいです!」
「……そんな。」
村長は頭を抱えた。
「今まで、私たちは……何もせずに、ただ嘆いていただけだったのか。」
「そうです。」私は優しく微笑んだ。「でも、大丈夫。今ならまだ間に合います。」
「この油を取り除き、川を元に戻せば、村の作物も復活するはずです。」
村人たちが顔を見合わせる。
「……やるしかないな!」
「俺たちで、この村を立て直そう!」
村人たちが一致団結し、行動を始めた。
「よかった……!」
レオンが安堵の表情を浮かべる。
私は静かに呟いた。
「“思い込み”を変えれば、未来は変わるのよ。」