第三話 勇者の脳を書き換えろ!
レオンが変わった。
さっきまで膝を抱えて震えていた彼が、今は剣を握りしめている。
青いマントが風になびき、金色の髪が太陽の光を反射して輝いていた。
「俺……やってみる!」
レオンの目には、さっきまでなかった力強さが宿っている。
私は頷いた。「いいね、その調子。でも、ここからが本番よ。」
彼が最初に向かうのは、王都レグナスのすぐ外に広がる「影の森」。
そこに現れるのは、この世界でも有名な魔物——黒狼だった。
影の森へ!
森に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
昼間なのに、木々が異様に生い茂り、光を遮っている。湿った土の匂いと、遠くから聞こえる不気味なうなり声。
「これが……影の森……」
レオンの手が一瞬、震える。でもすぐに拳を握りしめた。
『大丈夫、俺はできる……成功した未来をイメージしろ……』
彼は脳科学コーチングの教えを思い出し、自分に言い聞かせる。
ガサッ——
「っ!」
低くうなる声が響いた。
茂みの奥から、巨大な黒い狼が姿を現す。
漆黒の毛並み、鋭い赤い瞳、鋭利な牙——こいつが、黒狼。
この世界の冒険者たちですら恐れる、最強の下級魔獣だった。
「レオン、深呼吸して。」私は冷静に声をかける。
「……っ、わかった。」
レオンは息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「よし……行くぞ!!」
恐怖を克服し、一歩を踏み出せ!
黒狼が低く身構える。次の瞬間——
ヒュンッ!!
音を置き去りにするほどの速さで、黒狼がレオンに飛びかかった!
「くっ……!!」
レオンは剣を構え、なんとか横に飛びのく。だが、狼の爪が彼のマントを引き裂いた。
「……す、すごいスピードだ……!」
今までのレオンなら、ここで完全に動けなくなっていただろう。
でも今の彼は違う——
「俺は戦える……!」
未来の成功をイメージし、脳に『できる』と思わせることで、恐怖に支配されることなく動けるようになっていた!
黒狼が再び飛びかかる。
「来い……!」
レオンは今度は避けず、正面から剣を構える。
脳内で、成功の未来を鮮明に描く——
『黒狼の突進を読んで、剣でカウンターを決める……』
すると——
脳が、体を自動で動かした!
「うおおおおお!!」
剣を振り下ろす——
ズバッッ!!!
黒狼の身体が大きく弾かれ、地面に転がった。
「……やった……!?」
レオンの剣が、黒狼の胸元に深く食い込んでいた。
狼が低くうなり、最後に一声吠えると、そのまま動かなくなる。
「俺……やったのか……?」
静寂が訪れた。
レオンはしばらく呆然としていたが、やがて——
「やったあああああ!!!!」
叫びながらガッツポーズを決めた。