第7章
第7章:
ベルカは冷たい闇の中で、ゆっくりと意識を取り戻した。
目を開けると、彼は手足を固く縛られ、冷たい石の床に拘束されていた。
体はほとんど動かせず、わずかに呼吸するのが精一杯だった。
暗闇を破り、揺れるかすかな炎の明かりがちらついた。
その光の中から、薄気味悪い笑みを浮かべたアルハンが姿を現した。
しかし、どこか違和感があった。
確かにアルハンの顔だが、何かが違う。
まるで、彼でありながら、彼とは別の存在のようだった。
アルハンはゆっくりとベルカに近づき、
冷たい声で問いかけた。
「お前は...誰だ?」
ベルカは歯を食いしばり、何も答えなかった。
ただ、強い決意を込めた目で、アルハンを睨み返すだけだった。
「答えろ。お前の正体を聞いているんだ。」
ベルカは固く唇を閉じ、首を横に振った。
すると、アルハンは錆びた金属の鈍器を持ち上げた。
その表面には、不気味な模様が刻まれていた。
アルハンはゆっくりとその鈍器を振り下ろした。
ゴンッ!
ベルカの肩に打ち下ろされたが、奇妙なことに身体に傷はつかなかった。
しかし、痛みだけは恐ろしく鋭く、骨を砕かれるような感覚が全身を駆け巡った。
「ぐっ...あああああっ!!」
ベルカは叫び声を上げて身をよじったが、拘束はさらに強く締め付けられた。
「まだ口を割らないのか?」
アルハンは鈍器を床に置き、次に鋭い金属の鉗子を取り上げた。
ベルカの指を一本ずつ広げ、鉗子をじわじわと締め付けていく。
ミシッ...
指の関節に鋭い痛みが走った。
だが、身体には依然として傷は現れない。
ベルカは歯を食いしばり、叫んだ。
「お、俺は...何も知らない!」
「嘘だ。」
アルハンの声はさらに冷たく、
重く低い音に変わっていった。
「隠しているだろう?お前は知っている。
知っていて、なお隠しているんだ。」
ベルカは激痛に震えながらも、首を横に振った。
拷問は続いた。
不思議な道具が次々と使われたが、
どれも体を傷つけることはなく、
ただ痛みだけがますます耐えがたいものになっていった。
ベルカの意識は次第に朦朧とし、
荒い息をつくことしかできなくなっていた。
それでも、彼の瞳にはまだ何かを隠しているような光が宿っていた。
「言え。
お前の正体を、目的を。
なぜこの森に来た?」
それでも、ベルカは苦しみの中で声を絞り出した。
「知らない...
何も...知らない...!」
アルハンの目がわずかに歪み、
より深い狂気を帯び始めた。
数時間の拷問が続いた後、
ベルカはすでに意識を失いかけていた。
だが、その唇からはなお、微かな嘲笑が漏れた。
「お前は...アルハンじゃないな...」
その言葉に、アルハンの手が止まった。
彼の顔が一瞬、歪んだ。
「...何だと?」
ベルカは血走った目でアルハンを見つめ、
苦しげに言葉を絞り出した。
「アルハンは...そんなやり方で拷問しない...
それに...お前の目、声...
あいつは...そんな卑劣な奴じゃなかった...」
アルハンの顔はさらに歪み、
やがて異様にねじれた笑みを浮かべた。
「フフフ...
思ったより観察力が鋭いな。
だが、まだ私の問いに答えていない。」
ベルカは力なく笑った。
「お前は...一体何者だ?」
その瞬間、アルハンの顔がさらに不気味に変形した。
皮膚は不自然に白くなり、
声はさらに深く、
そして不協和音のように不気味に響いた。
「お前が知る必要はない。
だが、お前はここで死ぬことになる。」
アルハンは再び鈍器を振り上げた。
しかし、その瞬間、ベルカは機を逃さなかった。
拷問で緩んだ拘束の隙間から、
最後の力を振り絞って手首を解き放ったのだ。
「はぁぁぁぁっ!」
ベルカは叫び声を上げながら、
足でアルハンの腹部を蹴り飛ばした。
アルハンは少し後ろへよろめいたものの、
すぐに嘲笑を浮かべながら立ち直った。
その瞳からは、もはや一切の人間的な感情が消えていた。
「逃げられるとでも思ったか?」
ベルカは床に転がった拷問道具を掴み、
荒い息をつきながらアルハンを睨みつけた。
「お前は...何者なんだ...!」
アルハンはゆっくりと近づきながら、
さらに低く、異様に響く声で囁いた。
「私は誰だ?
それはお前の恐怖が教えてくれるだろう。」
ベルカは極限の恐怖を感じながらも、
再び歯を食いしばり、構えを取った。
しかし、アルハンはゆっくりと、
冷酷な笑みを浮かべたまま、
彼を見下ろしていた。
「お前の恐怖が...とても甘美だ。」
アルハンは最後に、
囁くようにこう呟いた。
「もう終わりだ。」
ベルカは拷問道具を振り下ろしたが、
アルハンはそれを容易く避けた。
そして、静かにささやく。
「お前はすでに答えを知っている。
言え、これが最後の機会だ。」
その瞬間、
部屋の闇がさらに深まり、
全ての光を飲み込んでいくように感じられた。
ベルカは最後の力を振り絞り、
血走った目でアルハンを睨みつけながら叫んだ。
「俺は...まだ...終わっていない...!」
「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第8章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!