表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第6章 (2/2)

「誰だ!俺を放っておけ!」


彼の叫び声は、森の中で反響した。

しかし、返ってきたのは、柔らかくも冷笑的な笑い声だった。


そのとき、視界の端にぼんやりとした形が浮かび上がった。

それは、確かに人間の姿をしていた。

だが、徐々に近づき、鮮明になるにつれて、

ベルカの心臓は激しく鼓動を打ち始めた。


その形は、まるで鏡の中から現れた自分自身のようだった。


しかし、その姿は歪んでいた。

額には裂け目が入り、鮮血が流れている。

口元には、血に染まった不気味な笑みが浮かび、

その笑いは冷たく、嘲りに満ちていた。


「やっと対面できたな、ベルカ。」

その形はそう言った。

声はベルカ自身のものだったが、

それは深く歪んだ闇のような響きを帯びていた。


「お前は何者だ!」

ベルカは短剣を構え、叫んだ。


その形は彼をじっと見つめ、静かに笑った。


ベルカは叫び声を上げながら短剣を振り下ろした。

しかし、その攻撃は空を切るだけだった。

形は消え去るのではなく、

今度はベルカのすぐ背後に再び現れた。


「ベルカ...ベルカ...ベルカ...」

その形は彼の耳元で、囁くように言った。


その瞬間、ベルカの足元の地面が突然揺れ、割れた。

地面から突き出た木の根が彼の足首を掴み、

絡みつくようにして彼の体を締め付け始めた。


「放してくれ!離せ!」

ベルカは必死にもがいたが、

木の根はどんどん力を強め、

彼を締め上げていった。


肺が酸素を失い、息は詰まり始める。

視界は次第にぼやけていった。

目の前の形は彼を嘲るように首を傾げ、こう言った。


「彼らはお前を利用しただけだよ。」


視界が揺れ、暗闇に覆われていく中、

最後に聞こえたのは恐ろしい笑い声だった。

そして、耳元で響く冷酷な囁き声。


「いい子は帰るべきだ...

だが、お前が帰る場所はもうない。」


ベルカは短剣を落とし、膝をついた。

彼の意識は薄れ、木の根が彼の体を完全に絡め取り、

闇の中へと引きずり込んでいった。


冷たい金属音が、静寂の森を裂くように響いた。

ベルカの膝は折れ、地面に崩れ落ちる。

手のひらで地を支える彼の体は震え、

額から流れる冷たい汗が土に染み込んでいく。


木の根は、彼の足首を締め上げ、

まるで生きているかのようにゆっくりと絡みつき、

その体をさらに強く締め付けた。


ベルカの息は荒くなり、

視界はさらに薄れていく。

意識を保つこと自体が、

彼にとって苦痛でしかなかった。


「ダメだ...このまま...終わるわけにはいかない...」

彼の声は虚しく空に響いた。


しかし、森は答えなかった。


そのとき、背後から低く鋭い声が聞こえた。

「まだ意識があったのか?」


ベルカはゆっくりと振り向こうとした。

だが、その声は、

振り向くよりも速く近づいてきた。


暗闇の中で鈍い音が響き、

何かが彼の後頭部を打ち下ろした。


強烈な痛みが彼を貫き、

完全な暗闇に飲み込まれる直前、

彼はぼんやりとした形を目にした。


その形はアルハンだった。

闇の中で、彼の顔が徐々に明らかになった。

目は狂気に歪み、口元には冷たく残酷な笑みが浮かんでいた。


アルハンは血に染まった棍棒を、

指でゆっくりと拭いながら、こう言った。


「どれだけ強く見えても、結局これだけか。

弱々しいな...」


ベルカの血はアルハンの顔に飛び散った。

彼はその血を手で拭い、

血の温もりを楽しむように、

狂った笑い声を響かせた。


「森がお前を食い尽くす前に、

もっと楽しませてもらわないとね。

でも...これで終わるのも悪くないか。」


ベルカは完全に意識を失い、

木の根に巻き込まれ、ゆっくりと闇の中に消えていった。


アルハンはその姿を見つめながら、微笑んでいた。

彼の目は冷たく、異質な光を放っていた。


森の静寂が再び戻ってきた。

それは単なる静けさではなく、

獲物を飲み込んだ捕食者の満足感に近いものだった。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第7章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ