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第6章 (1/2)

第6章:

兵士ヴェルカは隊列の先頭で部下たちの報告を聞いていた。彼は冷静な表情で兵士たちの話を受け止め、時折頷いた。その整然とした態度と堅固な姿勢が、軍内で自然と信頼を得る理由だった。


「ヴェルカ様、兵士たちの中には最近、奇妙な現象を目撃したと報告しています。森で特定できない音が聞こえたそうです。」


報告を終えた兵士は、不安な表情を隠せなかった。ヴェルカは一瞬の沈黙の後、落ち着いて答えた。


「この森は私たちの予想を超える場所だ。全ての兵士に警戒を怠るなと伝えろ。奇妙な現象は、私たちが乗り越えなければならない試練に過ぎない。」


兵士は彼の言葉に頷きながら答えた。ヴェルカは部下の報告を後にし、隊列を率いて森のさらに奥へと進んだ。彼の表情には動揺がなかったが、心の中には説明できない不快感がじわじわと広がり始めていた。


森はどんどん深くなり、周囲の空気は重く沈んでいた。兵士たちは静かに歩を進めた。葉間から漏れる光は薄暗く、森の静けさが不安感を増幅させた。


「ヴェルカ様、ついさっき奇妙な影を見ました。」


別の兵士が声をかけた。彼の目は恐怖で見開かれていた。ヴェルカは兵士の目をじっと見つめて尋ねた。


「具体的に何を見たのか言ってみろ。」


「はっきりとはわかりません。人間のようでもあり、木のようでもありました。しかし、確かに動いていました。」


ヴェルカはその言葉を聞いて一瞬思索にふけった。そして、兵士に向かって断固として言った。


「恐怖は私たちを弱くする。心をしっかり持て。こんな状況での混乱は、すなわち死を意味する。」


兵士は彼の言葉に再び頷き、隊列に戻った。ヴェルカは兵士たちに冷静を求めたが、自身も感じる圧迫感から逃れることはできなかった。


夜が更けていった。兵士たちは森の中に小さな陣地を作り、焚火の周りに座った。ヴェルカは火の光を越えて森を見つめ、深い思索にふけっていた。その瞬間、誰かが彼の横に近づいた。


「ヴェルカ様、兵士たちの間で奇妙な噂が広がっています。」


部下の兵士が静かに囁いた。ヴェルカはその言葉を聞いてゆっくりと頭を回した。


「どんな噂だ?」


「森に何かがいるという話です。私たちを監視し、操ろうとしている何かが…」


ヴェルカは一時言葉を止めた後、断固として答えた。


「そんな噂はこれ以上広がらないようにしろ。今大切なのは兵士たちの士気だ。不安を煽るな。」


部下の兵士は頭を下げて退いた。ヴェルカは再び森を見つめ、思索にふけった。彼の表情は冷静だったが、その中でわずかに不安感が浮かび上がっていた。


森はどんどん兵士たちを圧迫した。ある兵士が木の蔓の後ろで何かを発見したと報告した。ヴェルカはその報告を聞いてゆっくりとその場所に近づいた。蔓をかき分けると、そこには何か奇妙な記号が刻まれていた。ヴェルカはそれを長い間見つめた。


記号は単なる模様のように見えたが、ヴェルカは何かを悟った。それは彼を凍りつかせた。


その言葉が彼の頭の中で反響した。彼の心臓は激しく打ち始め、手のひらには冷たい汗が流れた。彼は兵士たちに冷静な声で言った。


「何でもない。進み続ける。」


しかし、彼の目には不安が満ちていた。


森を歩いているとき、ヴェルカは自分の周囲から奇妙な音が聞こえてくるのを感じた。木の枝が折れる音、息遣いのようなものが彼の耳をかすめた。彼は急いで後ろを振り返ったが、何も見えなかった。


彼の耳元で低く、生々しい囁きが聞こえた。


「ヴェルカ... ヴェルカ...」


彼は心が凍りつくような感覚を覚えた。彼の視界はだんだんとぼやけて、周囲の木々が自分を取り囲んでいるような錯覚に陥った。


結局彼はもう耐えられなかった。陣地からこっそり抜け出したヴェルカは、森の中を狂ったように走り始めた。彼の足は草むらや木の枝に引っかかり、顔は土で覆われた。しかし、彼は止まらなかった。彼の心臓は破裂するかのように鼓動し、息は荒かった。


「ヴェルカ..... 戻れ...」


彼の耳元で響く声はだんだん大きくなり、彼は狂ったように叫んだ。


「放っておけ!」


その瞬間、彼の前に闇の中から形が現れた。それは彼自身の姿をした何かだった。彼は短剣を抜いてその形に向かって走り込んだが、短剣は空を切るだけだった。


ヴェルカは極度の恐怖の中で膝をついた。彼の目の前に広がる光景はますます恐ろしくなった。彼は短剣を握った手を振り上げ、震える声で囁いた。


「なぜ... なぜ私を...」


その瞬間、彼の後ろから足音が聞こえた。カチャ、カチャ。しかし、その足音は彼にどんどん近づいているようでありながら、不思議なことに一定の距離で止まっていた。


「ヴェルカ......」


その囁きは彼の耳元で生々しく響いた。彼は恐れて後ろを振り返れず、手に握った短剣を強く握っていた。


「帰るべきだ... 良い子は帰るべきだ...」


「帰るべきだ... 良い子は帰るべきだ...」


その囁きはまるで彼の頭蓋骨の中で響き渡るように生々しかった。ヴェルカは短剣を握った手を細かく震わせた。目の前の森は突然、形を失い、影と根で満たされた果てしない淵のように見えた。足が地に縛られたように動けなかった。


「誰だ!俺を放っておけ!」


「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第7章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

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