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第4章

第4章:


軍隊が森の中に入ると、次第に神秘的な光景に包まれていった。


木々は空を覆い尽くすほどに巨大で、葉の間から差し込む光がほのかに地面を照らしていた。風が吹くたびに葉同士が触れ合い、小さな鈴の音のような音が聞こえた。兵士たちは互いに囁き合いながら周囲を見回していた。


「この森は…本当に驚くべき場所だ。息を呑むほど美しい。」


ある兵士が感嘆の声を上げると、隣にいた別の兵士が笑いながら応じた。


「でも、これが良い兆候とは限らない。こんな場所で道に迷った者も多いって聞いたことがある。」


ルシエルは隊列の先頭で静かに歩を進めた。彼女は兵士たちの会話を聞いていたが、何の反応も見せなかった。まるで全てを知っているかのように、沈黙で答えるようだった。


アリデルは隊列の後方でゆっくりと歩を進めながらあくびをした。彼は何も言わずに周囲をちらりと見回したが、まるで自分の考えに没頭しているような表情をしていた。


---


しばらく歩くと、突然空気が冷たくなった。謎の霧が周囲を包み込み、現れてはすぐに消えた。兵士の一人が立ち止まり、不安げな表情で言った。


「何かが通り過ぎたように見えませんでしたか?霧の中で何かが動いているのが見えた気がします。」


別の兵士が手を振りながら答えた。


「気にするな。ここには俺たちしかいないさ。」


兵士たちは再び隊列に戻ったが、どこか不安げな様子は完全には消えていなかった。アリデルは霧が消えた方向をちらりと見たが、何も言わずにただ歩を進めた。


---


しかし、その瞬間、空から輝く花びらがゆっくりと降り始めた。花びらは空中で光を放ちながら、軍隊を包み込むように舞い散り、兵士たちは言葉を失いながらその光景を見上げた。


「これは…本当に信じられない場所だ。まるで伝説の中にしか出てこないような光景だ。」


ある兵士が呆然と呟いた。


兵士たちは魅了された表情で再び歩を進め始めた。森はますます深く、美しい姿で彼らを迎え入れた。彼らの足取りから感じられた不安感はいつの間にか消え去り、今目の前に広がる幻想的な光景に完全に心を奪われていた。


---


突然、隊列の中から一人の兵士が消えた。兵士たちの声が森の中に響き渡った。数分後、行方不明になった兵士が遠くからゆっくりと歩いてくるのが見えた。


「霧の中で迷ったみたいです。でも、もう大丈夫です。」


兵士の声は微かに震えていた。


ルシエルは彼をじっと見つめたが、何も言わず、手振りで隊列に戻るよう指示した。兵士たちは彼の様子を不審に思ったが、それ以上は何も言わずに歩を進めた。


アリデルは遠くからその兵士をちらりと見た後、ふっと笑みを浮かべ、うつむいた。


「面白いことが多いな。」


彼は何も言わず、再び眠気に身を委ねた。


---


森は次第により神秘的な風景へと変わっていった。巨大な木々が果てしなくそびえ立ち、空を覆い隠し、葉の間から降り注ぐ柔らかな光が地面を照らしていた。宙を漂う小さな光の粒が兵士たちの間を軽やかに通り抜けていった。


兵士たちはいつの間にか言葉を失い、この非現実的な美しさに魅了されていた。彼らの足取りは遅くなり、周囲を見回しながら呆然としていた。


ルシエルは依然として黙々と前方へ進んでいた。彼女の沈黙の中に感じられる重みが、兵士たちの警戒心を少しずつ取り戻させていた。


隊列の後ろをついていくアリデルは、静かにうつむきながら歩を進めていた。一本の枝を手に握り、彼はそれ以上何も言葉を発さなかった。その表情は穏やかだったが、その奥には何かを計算しているような気配が漂っていた。


---


森の風景はさらに圧倒的なものへと変わっていった。木々はますます巨大になり、静寂が深まり、風の音すらかすかにしか聞こえなくなった。兵士たちは、この森が果てしなく続くように感じ、次第に圧倒されていった。


一人の兵士が前を歩く仲間に低い声で囁いた。


「俺たちは正しい道を進んでいるのだろうか?同じ景色が繰り返されているような気がする。」


前を歩いていた兵士は答えず、ただ頷くだけだった。しかし、兵士たちの囁きは次第に消え、周囲の圧倒的な雰囲気が彼らの声をのみ込んでいった。


---


歩いている途中、周囲から一瞬奇妙な音が聞こえた。兵士たちの間に緊張感が走ったが、それが何であるか確認する者はいなかった。


一人の兵士が小声で呟いた。


「誰か…いや、何かが俺たちを見ている気がする。」


しかし、その言葉はすぐに消えた。再び静寂が戻り、兵士たちは互いに顔を見合わせ、無言で歩を進めた。


突然、空気がひどく冷たくなり、どこからともなく霧が一瞬現れ、また消えた。兵士たちはそれに気づく様子もなく、それがあたかも自然の一部であるかのように歩を止めることなく進み続けた。


アリデルは後ろから静かに追いながら、霧が消えた方向に一瞬目を向けたが、何事もなかったかのように歩を続けた。


---


森の中心部に近づくにつれ、光は次第に弱まり、木々の影が長く伸びていった。兵士たちはますます静かになり、その顔には得体の知れない緊張感が漂っていた。


ルシエルは足を止め、一瞬周囲を見渡した。彼女は何も言わなかったが、兵士たちを落ち着かせるために微笑みを浮かべていた。


兵士たちは彼女の態度に従い、静かに足を止めた。そして再び森の奥深くへと一歩踏み出していった。



「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第5章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

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