第3章
出発の朝、軍隊は村の中心広場で出発準備を整えていた。兵士たちが整列すると、村人たちは歓声を上げ、激励の声を送った。子どもたちは手を振りながら大きな声で叫んだ。
“必ず戻ってきてくださいね!英雄様!”
“アリデル様、次は僕たちとも遊んでください!”
アリデルはその声に応えるようにゆっくりと手を振りながら答えた。「ああ、戻ったらな…多分な?」その曖昧な返事に子どもたちは笑い声をあげた。
ルシエルは兵士たちと村人たちに頭を下げて感謝の言葉を述べた。「皆さんの信頼と応援が私たちの力になります。必ず任務を果たして戻ってきます。」その声は断固として温かかった。
広場は歓声と温かい祝福に満ちていた。子どもたちは手に持った花束を振り、老人たちは祈りを捧げながら軍隊に向かって敬虔な笑みを浮かべた。そよ風が花びらをさらい、大地と空がまるで彼らを祝福しているかのような瞬間だった。
村の広場は活気と喜びに包まれ、子どもたちは色とりどりの花びらを空中に投げて遊び、兵士たちは村人たちの励ましに笑顔で応えた。ある年配の男性が手を振りながら言った。「あなたたちは私たちの誇りです。無事に戻ってくることを祈っています!」その言葉に兵士たちは元気よく応え、空気は温かさで満たされた。
出発後、最初の夜になると、兵士たちは焚火を囲んで簡単な食事を分け合った。ある者は家族の話を持ち出し笑いを誘い、また別の者は陽気な歌を歌って場を盛り上げた。アリデルは少し離れた場所で一人横になりながら夜空を見つめ、呟いた。「こんな平和も悪くはないな。」ルシエルは兵士たちの間を回りながら士気を高めていた。
出発から数日が経つと、軍隊は次第に森の境界に近づいていった。道は徐々に狭くなり、茂った木々が光を遮り、日差しさえもかすかにしか見えなくなった。兵士たちは長い道中でも軽い冗談や笑い声を交わしていた。
「アリデル様、今回は塔の上じゃなくてどこで寝るつもりですか?」とある兵士が冗談を飛ばすと、アリデルはゆっくり目を半分開けて答えた。
「うーん…今回は森のど真ん中かな?木陰が気に入ればそこにするさ。」彼はあくびをしながら気に留める様子もなく言い、兵士たちは大笑いした。
ルシエルは後ろを振り返りながら言った。「冗談はいいけれど、みんな集中して。ここから先はもう安全じゃないわ。」その声は厳格でありながらも温かみがあった。
兵士たちは互いの荷物を分け合いながら話したり、軽い悪戯で緊張をほぐしていた。ある兵士が仲間に幼い頃の失敗談を語り、全員を笑わせた。また、別の兵士は道端で見つけた野花を摘み取りルシエルに差し出して言った。「こんな美しいものは英雄様にお似合いではありませんか?」ルシエルは笑顔で応え、兵士たちの心を軽くしていた。
軍隊が森の入口に到着したとき、予想もしなかった奇妙な現象が彼らを迎えた。空気は重く湿り気を帯び、薄い霧が地面を覆っていた。兵士たちの中には奇妙な音を聞いたと話す者もいれば、自分たちが間違った方向に進んでいるのではないかと主張する者もいた。
ルシエルは兵士たちの間で何が起こっているのかを把握しようとした。彼女の指揮下にいる神聖術士の一人が前に進み出た。彼は静かに瞑想の姿勢をとり、やがてゆっくりと空中に浮かび上がった。目を閉じ、両手を胸の前で組んだ彼は、森の地形とエネルギーを感じ取ろうと試みた。
「森の構造を把握します。」神聖術士はそう言い、祈りを始めた。
しかし数分後、彼は地上に降り立つと首を横に振った。「森が反応しません。この場所のエネルギーが混乱しています。」
兵士たちの一人が不満げに呟いた。「いっそのこと、この森を力で消し去った方がいいんじゃないですか?」
ルシエルはその言葉を聞いて首を振った。その声は厳しくも優しかった。「こんな美しい森を破壊するなんて正しくないわ。命は大切なものよ。それに、この場所には私たちが知らない物語が隠されている。」
彼女はしばらく空を見上げた。目を閉じ、息を整える彼女の姿は光を受けてまるで太陽のように輝いていた。しかし、その表情には深い思索が浮かんでいた。
『この場所は大切な場所…守りきれなかった悲しい場所。今回こそ…この場所も…』彼女は心の中で呟き、胸の奥深くで決意を固めた。
ついに森に足を踏み入れたとき、彼らの目の前に広がった光景は驚くほど美しかった。巨大な木々が空高くそびえ立ち、柔らかな光が木々の間を流れて地面を染め上げていた。草の葉の上には小さな光が煌めき、空気には甘い香りが漂っていた。兵士たちの多くはこの壮麗な光景に呆然と立ち尽くしていた。
「こんな場所があるなんて…」ある兵士が感嘆の声を漏らした。
しかし、ルシエルは警戒を緩めなかった。彼女は落ち着いていながらも断固とした声で言った。「美しいからといって気を緩めないで。この場所はただの森じゃないわ。」
彼女の言葉に一部の兵士たちは我に返ったが、それでも周囲の景色を見つめる視線から驚きは消えなかった。ルシエルは深くため息をつきながら兵士たちを率いて進んでいった。
一方、アリデルはその後ろでゆっくりと歩きながら相変わらず寝言を言っていた。
「はあ…本当に面倒だな…でもこの輝く木々…素晴らしいな…」彼の言葉はまるで夢の中にいるようだったが、その視線は不思議と周囲を鋭く見回していた。彼は眠っているように見えたが、実際にはすべてを見透かしているかのようだった。
森の奥深くに進むにつれて、空気は次第に不思議な雰囲気に変わっていった。周囲の美しさはそのままだったが、どこからともなく説明のつかない圧迫感が漂っていた。ルシエルは足を止め、後ろを振り返りながら言った。
「私たちがここに来たことは、すでに誰かに知られているわ。みんな準備して。」
アリデルは彼女の言葉に肩をすくめて答えた。「わかったよ、太陽の女神様。それじゃあ僕は夢の中で準備しておくよっ」
ルシエルは彼の態度に微笑みを浮かべながらも、視線は依然として厳然としていた。彼女は再び前を向き、兵
「アスカリオンの書」を読んでくださった皆様、誠にありがとうございます!この物語が皆様の心に響くものとなっていることを願っています。ぜひコメントやご感想をお寄せください!皆様の応援や反応に基づき、第4章の公開を決定したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!