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エッセイ集

あなたの処女作は黒歴史ですか?

作者: いぷしろん

はい、私の処女作は黒歴史です。

いいえ、私の処女作は黒歴史ではありません。


 僕の結論からお伝えしよう。


 はい、黒歴史です。


 その作品は今でもフォルダに未完成のまま眠っている。総文字数は二十万字弱。執筆を始めたのは高校一年生の二月。タイトルは確か『(偶然ではあるが有名曲の歌詞と一致していたので念のため記載せず)』だったと思う。


 書籍化されたら「あのあの」なんて略されるんだろうなぁと考えていたのを今でも思い出せる……思い出してしまう黒歴史だ。


 その作品を執筆するとき、今思えば初めてにしてはなかなかしっかり準備していたと思う。

 まず、プロット(自称)を用意したのだ。そして一日の執筆スペースなども考えて、半年で完結まで書いてどこかの投稿サイトに投稿しようと思っていた。


 ――思っていたのだが、ふたを開けてみればそんなうまくはずもなく。

 先に僕の名誉のために言っておくが、半年間キーボードに触れなかった日はなかった。しかし、半年間で進んだのは想定の二割ほど。理由は単純、途中から別の小説を書き始めていたからだ。

 やはり、所詮は素人のプロット(自称)で次々に矛盾が見つかったり、そもそも思ったような速さで執筆できなかったりと、ままならないことが多かった。当然のごとく二作目もエタり、そこらへんで短編に方針転換したというわけだ。

 ……もっとも、その短編もここしばらく投稿できてないわけだが。


 閑話休題。


 お気づきかもしれないが、まだ僕の処女作が黒歴史たるゆえんをお話できていない。ここからはいよいよその本題について語っていきたい。


 実のところ、その作品がはれて黒歴史入りしたのは比較的最近のことだ。

 というのもフォルダを読み返していて、数字だけが振られた簡素なタイトルのファイルを見つけたので「1」を開き、それで久しぶりの邂逅を果たしたのである。

 拙い文章力ではあるけれど、自分の思い出の作品であることも確か。そう思って読み始めると、思いのほか手が止まらない。


 もちろん、おもしろかったからでは断じてない。いや、ストーリーは今でも良いと思っているがそういうことではない。


 ではそれはなぜなのか。

 そう、文章が――本当に文章がひどいのだ!


 この時点で、僕は割と羞恥心で死にそうになっていた。みなさんも覚悟の上でこの先に目を通してほしい。


 まず最初に表記ゆれ!

 モブとはいえ同一人物の一人称ぐらい統一させろよ! というかそもそもモブにしゃべらせすぎだろ!

 あと地の文の文体は合わせろ!


 次に展開!

 今でも良いと思えるようなストーリーをどうしてこんなふうにできちゃうの!? おいそこ描写する順番おかしいだろ! あぁっ! そこは伏線にすればもっとおもしろくなるのに……!


 続いて語彙力と描写!

 お前ほんっとに同じ表現を使いまわしてるな! 調べてもいいからずらせよ! この話だけで何回「にも拘わらず」って使った? それ好きだね!? というか逆接は多用すると本当に伝えたいことがわからなくなるんだよ!!

 ってか描写もだよ! なんか淡々としすぎ! もっと感情入れようぜ?


 そして極めつけが突然の恋愛描写!

 いやもうこれに関しては勘弁してください。ここに書いたらしんじゃいます。

 特にキスするところとかぁぁぁぬぅうぎゃあ!!!





 ……失礼。取り乱してしまった。

 さて、そんなこんなで阿鼻叫喚の地獄絵図の中でツッコミの嵐をするという稀有な状況を体験していたわけだ。


 楽しかった。そして、嬉しかった。


 読めば読むほどダメ出しができる。それはかなり快感だったし、楽しかった。


 つまるところ、自分が成長しているという事実が嬉しかったのだ。

 短編を書いていく中で自分に得るものがあったのだと、そう思ってどこかほっとしたような、やっぱり無駄じゃなかったとわかって嬉しかったのだ。



 黒歴史であることに変わりはないけれど、それもまた僕の「歴史」の一部だ。僕は、僕の処女作を黒歴史だと思っているし、少なくとも今の状態では死ぬまで誰にも見せないだろう。


 でもたぶんきっと、忘れたころにまた読み返すんだろうなと思う。


あなたの処女作は黒歴史ですか?

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