「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
チェックメイトしたつもりがチェックメイトされた
「ね~副会長、会長って彼女いるんですか~?」
数字にめっぽい弱いくせに、会長に近づくためだけに会計になった後輩の香恋。おかげで私の仕事が増えているんだけどわかっているのかしら?
「なぜ私に聞くんです? そもそも我が校は男女交際禁止なんですよ。早く仕事しなさい」
「だって先輩って会長の一番そばに居るじゃないですか~。なんか知っているんじゃないですか~?」
「……知りません」
「本当ですか~? 会長が彼女と一緒にいる所見たって噂で持ちきりなんですよ今」
「なんですって!?」
それは由々しき事態だわ。生徒の模範たるべき生徒会長が規律を乱すような行動。断じて容認できません。
「わかりました。その件は私が確認しますので、貴女は仕事してください」
「へいへい、わかりましたよ~。でも先輩、あんまり怖い顔してると老けて見えますよ?」
くぅ……気にしていることをずけずけと。
とにかくまずは会長の件を確かめなければ。
「やっと尻尾を出したわね」
尾行を始めてから一週間。ついに彼女と密会する瞬間に遭遇する。
夢のように可愛らしい美少女。なるほど、これは仕方がないかもしれないけど、規則は規則。
「会長!! 上手く隠せていると思っているなら大間違いですよ、チェックメイトです!!」
「く、黒崎!? なんでお前がここに……?」
まさに現行犯、言い逃れ出来ませんからね。
「黒崎? ああ、お兄ちゃんが大好きな黒崎さんってあの人でしょ? 特徴そのまんまだからすぐわかっちゃった!!」
「ば、馬鹿、なんで今それ言うかな!?」
「ふえっ!? だ、だだだ大好き!? お、お兄ちゃん!?」
頭がパニックで状況が頭に入ってこない。
「……えっと、整理すると、彼女だと思われていたのは妹さんで、会長が大好きなのが私ってことですか?」
「お、おう……そうなんだけど、面と向かって言われると恥ずかしいな」
ま、まさかの展開だわ。ど、どうしよう……心の準備が全然できてない。
「はい、チェックメイト~!!」
「「え!? か、香恋!?」」
「話は全部聞かせてもらいましたよ。お二人のことは黙っててあげますから、男女交際解禁よろしくです~!!」
まさかこの子が生徒会入ったのって、会長じゃなくて最初からそれが目的だったの?
「最初は会長狙いだったんですけどね。先輩に勝てそうもないんで方針転換です~!!」
まったく……勝てないわね。
「わかりました。良いですよね、会長?」
「え? でもそれって」
「OKってことです、馬鹿」