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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
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 62話 写真撮影と悪女

ヴィクトリアが王女からの手紙を受け取る数日前に雑誌編集者であるアンリ・ディストルはアルメラーナ王女に呼び出され、城内のある一室で待たされていた

デパートで見かけた四大美女の一人に心奪われた彼女は、編集長に次の月間ビューティーは四大美女の特集をと懇願した

けれど編集長は難しい顔をして首を横に振り

「貴族様がそんな事を承諾する訳がない!!大体四大美女には王女も居られるのだ、承諾など得られる訳がないだろう」

今までも目立ちたがりの貴族だけが雑誌の取材に応じてくれたが、流石に四大美女は無理だと言う


(無理なのだろか・・・折角ビューティーの知名度を上げられると思ったのに・・・)

雑誌『月刊ビューティー』は、一般や貴族の若い女性によく読まれている人気雑誌『月刊プリティー』の少し年輩向けの女性雑誌として発行されたのだが、売り上げがイマイチで廃刊に追い込まれていた

その為にアンリは四大美女を取り上げ、何とか廃刊だけは免れたいと意気込んでいた


(王女が問題なら、その王女に頼んでみるのはどうだろうか?もう、こうなったら当たって砕けるしかない)

アンリはとんでもない数の手紙をその日からずっと王女宛に送った

本来、一般の雑誌記者が王族宛に手紙など送れる訳は無いが、王族、貴族と繋がりがある報道関係の部署は別で、彼女はその伝手を使い手紙を出したのだ

(下手な鉄砲数打ちゃ当たる、よ。王女が手紙を読んでくれて、運良く雑誌に興味を持ち協力して貰えれば特集が組める)


正直、とんでもない事を仕出かしているのは判っているがもう後には引けない

(もし、手紙を無視されるだけでなく、王女の不興を買ったら私の人生も終わる・・・)

アンリにとってはまさにビューティーと運命を共にする覚悟なのだ

そして手紙は奇跡的にアルメラーナの目に止まり、彼女は手紙の内容を読んでほくそ笑む・・・そしてアンリはすぐに王城に呼ばれ現在に至る



アンリが緊張した面持ちで待っているとコンコンとノックがあり、ガチャリとドアが開くとアルメラーナ第三王女が侍女と護衛を連れて入って来た

アンリはすぐに立ち上がり頭を下げ

「この度は、お忙しいにも拘らず、貴重なお時間を割いて頂き、誠にありがとうございます。アルメラーナ王女様」

震える声で丁寧に謝辞を伝えると、アルメラーナは

「本来ならね、貴方等、私と言葉を交わせる立場では到底無いのよ?」

そう告げるとニッコリ笑って「でもね、私は寛大だから特別に許してあげているの」そう前置きをしてアンリを見据える

「月刊・・何とかと言う雑誌に、私の特集を載せたいそうね?」

アルメラーナの言葉にゾクッとしながらも

「はい・・・あの、四大美女の方達の特集を組ませて貰いたいと思いまして。その件で図々しくも、寛大なアルメラーナ王女様にご尽力戴ければと思い、畏れながら手紙を出させて貰った次第です」


不興を買う様な粗相を絶対にしては駄目な相手、瞬時にそれを悟ったアンリは彼女を持ち上げる作戦に出る

「それにしても、本当にお美しいので・・・一瞬息を呑む程に驚きました。王女様のあまりの美しさに震えております」

実際は緊張と恐怖で震えているのだが彼女は王女を褒め称え、その言葉にアルメラーナは気分を良くし

「まあ、そうね。真の美しさを間近に見れば、そうなっても仕方がないわね」

クスリと笑う王女に内心ホッとしながら(これはもう、褒めまくって承諾させるしかない)覚悟を決めるアンリ



雑誌の写真撮影当日ヴィクトリアは深い溜め息を吐き、ドルフェスもまた同じ様に溜め息を吐く

「本当に、ドレスを着て行かれないのですか?」

ティアノーズ侯爵令嬢が雑誌に載るというのに、ヴィクトリアは白いワンピースに日焼け防止の為に薄い水色のカーディガンを羽織り、アオイナイトとアメジストのネックレスのみの洋装なので、ドルフェスとしてはせめて大地の煌きをつけるべきと進言するが

「極力、目立たない様にしたいの」

ヴィクトリアは却下し、お供のアメニを連れて王城へと向かう


「何だかドキドキしますね」

アメニが我が事の様に緊張するのでヴィクトリアも憂鬱に頷き

「本当に、どうして私が四大美女の一人なのかしら・・・」

自身の美貌に関心の無い彼女は気が重いのだが「ヴィクトリア様はオルテヴァール国一、お美しいです!!」アメニは自信を持ってそう断言する


城内に入り馬車から降りると、撮影場所である噴水の広場の所まで近くに居た男性に案内して貰う

ヴィクトリアが噴水広場は何処か尋ねると、彼は驚きながらもすぐに嬉しそうに案内を買って出てくれたのだ

「お忙しいのに案内して頂き、ありがとうございます」

「い、いえいえ・・・ヴィクトリア嬢は確か、四大美女の撮影に来られたのですね。わ、私も見学させて貰います」

顔を赤くしながら男性は「あそこです」と指を差すので、ヴィクトリアとアメニが巨大な時計台が設置された大きな噴水の広場に目を向け、ギョッとする・・・すでに大勢の見物人が集まっていたからだ


噴水の近くには大きなパラソルに円いテーブルが置かれ、四つ用意されている椅子には既にメリルシアナとジュリアンヌが座っていて注目の的だった

(もう二人は来ているのね。もしかして待たせてしまったかしら?)

申し訳なく時計を見ると、まだ十時になっていない


「ヴィクトリアだ!!」

誰かに名前を呼ばれドキッとするヴィクトリアに、皆の視線が一斉に自分に向けられる

「おお、相変わらず綺麗だ!!」「あれ?ドレスじゃないけど、あれで撮影するの?」「もしかして着替えるのか?何処で!?」

大騒ぎする見物人達にヴィクトリアは(嫌だ・・・こんな中で撮影するの?)恥ずかしさで立ち竦んでしまう


撮影の間、四大美女の護衛の為に派遣された紅の薔薇騎士団の一人がそんなヴィクトリアに近づく

「初めましてヴィクトリア様。私は紅の薔薇騎士団、副団長を務めておりますナディア・リフェスガストと申します。本日はご令嬢方の護衛の為に、お傍に控えさせて頂きます」

「紅の騎士団の副団長様ですか、初めまして」

ヴィクトリアは大勢の見物人に萎縮してしまっていたのでナディアが来てくれてホッとしながら挨拶をする

(これが噂の悪女ヴィクトリア・・・)

穏やかな雰囲気のヴィクトリアを見て、以前団長が言っていた事は正しかったと思うナディア


ヴィクトリアが現れ、より見物人達が興奮し騒ぎ出すなかアンリは慌ててヴィクトリアに挨拶をする

「ヴィクトリア・ティアノーズ様ですね?この度は弊社の雑誌の取材に応じて下さり、誠に有難う御座います。本日はどうぞよろしくお願い致します」

深々と頭を下げるので、ヴィクトリアは戸惑いながらも「こちらこそ・・・よろしくお願いしますね」と笑顔を向ける

本当はもの凄く嫌なのだが、こんな風に頭を下げられ頼まれてしまったのだからせめて迷惑が掛からない様にしようと思う


メリルシアナ達は侍女達に化粧直しを念入りにさせている

「ヴィクトリア。貴方、そのメイクで撮影するつもり?」

ジュリアンヌが小馬鹿にし聞いてくるので「ええ、可笑しいかしら?」心配そうにアメニに尋ねる

「も、もう少し、しっかりとメイクをした方が良かったでしょうか?」

メイク道具をきちんを持って来ている二人を見て、アメニは申し訳なさそうにヴィクトリアに頭を下げる

「あの、こちらで用意しているメイク道具で良ければどうぞお使い下さい」

アンリが気を利かせ一応用意しておいたメイク道具で、女性の撮影スタッフとアメニでヴィクトリアにメイクを施す

簡易の道具なので少し綺麗にメイク直しした程度だが、その方がヴィクトリア様らしくて綺麗だとアメニは思う


しかし、予定された十時をとっくに過ぎてもアルメラーナ王女が現れない

日焼け防止にと用意されているパラソルに入りながら「ちょっと、まだ撮影は始まらないの!?」ジュリアンヌが苛立ちながらアンリ達スタッフに怒鳴る

「申し訳ありません。まだ王女様が来られていませんので」

焦りながらジュリアンヌに謝るアンリ達に「はあっ?何時まで待たせるの?さっさと撮影を始めなさい!!」イライラしながらジュリアンヌが不満をぶつける

スタッフ達が必死で頭を下げるそんな姿を見て、アメニは以前の自分を見ている気がして胸を痛める

悪女ヴィクトリアも、思い通りにならなかったら自分達に喚き当たり散らし、酷い時には折檻された


「ジュリアンヌ様、アルメラーナ王女が来なければ撮影は始めれないわ。雑誌の方達を責めても仕方がないでしょう?」

ヴィクトリアがそう宥めるが、ジュリアンヌは忌々しそうにヴィクトリアを睨み

「なに?記憶を無くして随分物分りが良くなった様ね?」

そう言いながら詰め寄る彼女に「駄目よ、揉め事は」メリルシアナがニッコリと笑ってジュリアンヌを窘め、その様子に周りからはどよめきが起こるが、当然これも彼女の計算だ


「折角こうしてまた三人で会えて、私は嬉しいわ」

ニッコリと微笑みを崩さずにそう告げるメリルシアナだが、けれどヴィクトリアは答えに困り黙っている

(私は・・・やっぱりジュリアンヌが苦手だわ・・・もう一人の悪女の私もこんな感じだったのかと嫌になるもの)

もしかしてジュリアンヌ以上かも知れないと思うとゾッとする



漸くアルメラーナ王女が現れたのは十時を二十分以上過ぎた時で、しかも彼女の隣にアルフレドが居た

豪華絢爛なドレスに眩いばかりの宝石を身につけ、これでもかと髪を飾りつけ得意げに現れたアルメラーナ王女とは対照的に、ウンザリとしながらも無表情なアルフレド

(この方が・・・アルメラーナ王女)

ヴィクトリアは何とも言えない気持ちで王女を見る


「まあ、アルメラーナ王女。何てステキなドレスなんでしょう、流石ですわ。とてもよく似合っております」

「ええ、本当に」

メリルシアナとジュリアンヌが褒め称えるので、王女は満足そうに笑いながらヴィクトリアに目を向ける

「あ、あのアルメラーナ王女様、初めまして。ヴィクトリア・ティアノーズです」

ドキドキしながら頭を下げると、アルメラーナは首を傾げ

「初めまして?面白い事を言うのね、ヴィクトリア。ああ、確か貴方、記憶を無くしているのだったわね」

思い出した様に「ふうん。そのお陰で、噂の渦中に常に居るのよね?貴方は」そしてメリルシアナとジュリアンヌに

「私も記憶を無くせば、ヴィクトリアの様に噂に事欠かなくなるかしらね?」

クスクスと笑うので、メリルシアナとジュリアンヌも笑う・・・しかなかった

ヴィクトリアは王女のその言葉に、ルシフェルが言った『距離を置くように』の意味が判った

(人の気持ちや、痛みが判らない人なのね)

記憶が無く、自分の事や傍に居てくれる人達が誰だか判らない事がどれ程に不安で、申し訳ないか・・・そうヴィクトリアは思い、ふとアルフレドと目が合う


「アルフレド様、こんにちは」

ヴィクトリアが頭を下げ挨拶をすると、アルフレドは優しく笑い掛け「ああ、ヴィクトリア。元気そうで何よりだ」そう言って近づくと「あら、アルフレドの事は覚えていますの?随分都合の良い記憶喪失だこと」アルメラーナは不機嫌そうにヴィクトリアに絡んで来るので

「いえ、アルフレド様とは以前夜会で・・・」

「アルメラーナ王女」

ヴィクトリアが説明するのを遮って、アルフレドが

「貴方の所為で時間が押しているんです。さっさと撮影を始めて下さい」

困った様にアンリ達が王女を見ているので「判っているわ、さっさと始めなさい」自分が遅れて来たから始められなかったのに、アルメラーナはムッとしながらそう命じる

アルフレドはヴィクトリアをアルメラーナから、撮影を理由に引き離してくれた



最初に四人の集合写真を取ってから、個人撮影に入る

集合写真は前方にメリルシアナとアルメラーナがイスに座り、ヴィクトリアとジュリアンヌが斜め後ろに立つ

ヴィクトリア以外は皆、夜会用の豪華なドレスで綺麗に着飾っていたので(これなら、余り私は目立た無いんじゃないかしら・・・)そう期待する

個人の撮影はまずアルメラーナからなのだが、彼女は事ある毎に口煩く注文をしては色々なポーズの写真を取らせ、とても時間が掛かった

(一人の写真を取るのに、一時間以上掛かるのね・・・大変だわ)

一人の写真を取るだけで、精神的にも体力的にもクタクタに疲弊している雑誌のスタッフに感心するヴィクトリア


「あの、ティアノーズ様。今の内に少しインタビューさせて貰えますか?四大美女様方の私生活を記事にしたいので」

アンリはヴィクトリアの許可を貰い隣に座る

質問は普段何をしているのか、趣味は何かとそんな感じだった

「普段は・・・友人と出掛けたり、お茶会に呼ばれたりして過ごしています・・・趣味は、刺繍をしたり・・・かしら?」

ヴィクトリアが考えながらそう答えると、アンリは

(貴族令嬢って言うのは・・・本当に皆、優雅な生活を送っているのね)

こっちはあくせくと仕事をしてるというのに・・・と思いながらメモを取る


実際オルテヴァールでの貴族の令嬢や貴婦人は、女主人として邸を切り盛りしたり何か仕事等の役割を持つ訳ではなく、結婚すれば夫に尽くし、跡取りを産みさえすれば良い・・・この国ではそれが貴族女性の役目、存在価値だ

だからこそ出来るだけ好条件の相手を見つけ結婚する為に、未婚女性は必死になる

そして結婚して夫人に為れば夫の出世の為に、公爵や侯爵に取り入ろうと躍起になるのだ


アルフレドは四大美女から少し離れた所で護衛対象である王女を無視して、時折、いやずっとヴィクトリアを見ている

漸くアルメラーナは写真撮影が終わると事もあろうか、彼女はさっさと帰ってしまう

「私の撮影は済んだわね?それではご機嫌よう」

自分が呼び出しておいて帰ってしまう王女に、アルフレドは何も言わずに付き従う

「それではヴィクトリア、撮影頑張って」

優しく微笑み掛けてくれる彼に、ヴィクトリアも笑顔で「ありがとうございます」と答える

その二人の様子を忌々しく思うメリルシアナ

(あんな笑顔、私には一度も見せた事が無いくせに!!)

内心ではヴィクトリアに激しく嫉妬を抱きながらも、カメラの前でニッコリと美しい笑顔を絶やさないのは流石だ


彼女も一時間近く掛かり、次は家格で言えばヴィクトリアの番だが

「ねえ、貴方は随分我慢強いみたいだから、次は私の撮影で良いわよね?」

ジュリアンヌが当然構わないわよね?という感じでさっさと撮影場所に向う

「私もここは熱くて辛いので、これで帰るわ。それじゃあね、ヴィクトリア」

本当はもっと見学者達の注目を浴びたい所だが、秋とは言え晴天の所為で撮影中に汗も掻き、とても長時間居てられないとメリルシアナも帰ってしまう


「ヴィクトリア様、飲み物を用意しましょうか?」

三時間近くもこのパラソルで待機している主人にアメニが気を遣い、城内で売られている飲み物でも買って来ようとするのでアンリが

「あの、もし宜しければこちらで用意致しましたレモネードを召し上がって下さい」

紙コップを二つ並べ、水筒のレモネードを注ぐとおずおずと二人に差し出す

貴族相手に紙コップを出すこと事態がとても無礼なのだが、庶民であるアンリはその事に気付いていない


実はメリルシアナ達二人にもヴィクトリアが来る前に気を遣い用意したのだが『こんなもの、飲める訳無いでしょう!!』とジュリアンヌに怒鳴られた為に、ヴィクトリア達に出すか迷っていたのだ

(まあ、飲まないと言われても別に良いんだけどね)

アンリは心の中でそう呟き二人を見る


紙コップを見たアメニは(流石に無礼では?)と思い、ここは侯爵令嬢のメイドとしてアンリに注意すべきか?とドキドキしながら悩む

けれどヴィクトリアはアメニの分まで用意してくれた心遣いが嬉しく、アンリに「ありがとうございます」とニッコリと微笑んで、アメニに「頂きましょう」と嬉しそうに渡すので、アメニは大人しく紙コップを受け取る

アメニは性格上、人に注意や苦情を言うのが苦手だ

けれど撮影終了後にアンリに『今後、貴族の方の撮影時には、紙コップでお茶を出すのは無礼なのでお気を付け下さい』彼女の為に頑張って忠告しておいた

アンリは驚き、顔を赤くして『失礼しました、ご忠告感謝します』と頭を下げる


ヴィクトリアとアメニは喉が渇いていたのでレモネードを飲み

「冷たくて美味しい」

「本当ですね、スッとします」

二人が嬉しそうに飲んでくれるので、アンリはホッとして「好きなだけお飲み下さい」水筒をテーブルに置く

ジュリアンヌの撮影も長く、漸く終わった時には十四時を過ぎていた

「申し訳ありません、ティアノーズ様。大変お待たせしました」

アンリ達スタッフは疲弊しながら、長時間待たせたヴィクトリアに頭を下げるので「いえ、大丈夫ですよ」そう言って、撮影場所の噴水の所へ向う


見物人も流石に減っているだろうと思っていたら、何故だか更に人数が増えている気がする

(皆、居なくなってくれればと思ったのに・・・)

ヴィクトリアが写真撮影に入り、見物側からは漸く本命が現れたみたいなどよめきが起こるので、その所為で恥ずかしそうに写真を取られるヴィクトリア

「すみません、恥ずかしいのは判るのですが、もう少し自然体でお願いします」

カメラマンの無茶振りに、ヴィクトリアは困りながらも笑顔だけは向ける

(これは・・・相当恥ずかしい)

大勢の見物人が居る中、カメラの前でポーズを取る事の恥ずかしさに(皆、よく平気だったわね・・・)恥ずかしくなかったのか?と感心する


なかなか緊張が取れず、恥ずかしそうに写真を取られるヴィクトリアに、アンリは野次馬達を追い払おうかとも考えたが、相手は貴族なのでそれは無理だと諦める

するとアメニがヴィクトリアの傍に駆け寄り「旦那様が居られますよ」と、ルシフェルの姿を教えてくれる

「ルシフェル!!」

ヴィクトリアは撮影を見に来てくれている最愛の婚約者の姿に

「あの、婚約者が見に来てくれているんですけど、こっちに来て貰っても良いですか?」

嬉しそうに頼む彼女にアンリは頷き、アメニがルシフェルを連れて来るのを見ながら

(長い間待たしてしまっているのだから、少し休憩しましょう・・・)

本当は大分時間が押しているのだが、それはヴィクトリアの所為ではないのだから


「ヴィクトリア、一人なのか?」

不振な目をアンリ達スタッフに向けルシフェルが尋ねると「ええ、皆は先に撮影を済ませて帰ったの」一人残されたヴィクトリアを見て(成る程)と納得するルシフェル

「ルシフェルも見学に来てくれたのね」

嬉しそうに愛する婚約者を見つめるヴィクトリアを見て「今の彼女を取って」アンリがカメラマンに指示し、カメラマンは言われるままヴィクトリアを撮影する


「今日はヴィクトリアが撮影に来ているから、一段落したんで様子を見に来たんだ。流石にもう終っているだろうと思っていたんだが、まだ撮影してたんだな」

ルシフェルとヴィクトリアの仲を見て、見物人達が嫉妬して喚く

「アルガスター!!ヴィクトリアから離れろ!!」「ヴィクトリア!!俺の方が君を愛してる、絶対幸せにするよ!!」「伯爵子息なんかじゃ釣り合わないよな、身の程を知れ!!」

好き勝手に喚きながら叫ぶ公爵や侯爵達に、溜め息を吐くルシフェル


「それじゃあ、俺は職場に戻るよ」

頑張ってと笑う彼をヴィクトリアはギュッと抱きつき「来てくれてありがとう、凄く嬉しい」にっこりと笑顔を向けお礼を言う

本当は人前でこんな風にルシフェルを抱きしめるのは凄く恥ずかしいが、周りのルシフェルに対する中傷に、彼が傷ついていると思ったからだ

ルシフェルもヴィクトリアのその気持ちが判り「撮影、頑張って」と額にキスをして嬉しそうに職場へと戻って行く

見物人の男達は、ヴィクトリアがルシフェルに抱きついたのを見てショックを受け静かになった

アメニはいつもの光景で見慣れているが、アンリ達スタッフの方が(人前で恥ずかしくないのか?)と動揺しながら撮影を再開する


ヴィクトリアはルシフェルに『撮影、頑張って』と応援されて、少し緊張が解かれ自然な感じで撮影は終った

「お疲れ様でした、長時間掛かってしまって申し訳ありません」

アンリが再度謝罪して来るので、ヴィクトリアは

「いえ、そんなに気にしないで下さい。皆様の方がお疲れでしょう?それじゃあ」

ヴィクトリアは撮影が終わり、早々と帰ろうとするので

「あ、あの!!雑誌の発行日に、雑誌と一緒に撮影の謝礼金をお送りしますので」

アンリがそう伝えると、ヴィクトリアは驚いて「謝礼金?それってお金が貰えるの?」嬉しそうに聞き返す


「勿論です。ただ・・・その、そんなに多くは無いのですが・・・」

申し訳なさそうに告げる彼女に、ヴィクトリアはアメニに「凄いわ。私、自分でお金を稼いだ事になるのね?」嬉しそうに喜ぶ

そんなヴィクトリアを見て、アンリは不思議な人だなあと思う

他の四大美女三人は謝礼金など目もくれず、ただ自分達が雑誌に載る事に興味を示していた

それなのに目の前の美女は雑誌に載るより、自身でお金を稼いだと嬉しそうにメイドに報告しているのだ

アンリはこの変わった侯爵令嬢に興味を持つ



夜にルシフェルが帰って来るとヴィクトリアは嬉しそうに「お帰りなさい」と笑顔で出迎える

「ああ、ただいま」

ルシフェルも嬉しそうにヴィクトリアの頬にキスをし、いつもの様に自室に向いながら彼女の撮影での話を聞く

「それでね、その雑誌の撮影のお礼にって謝礼金を貰えるの、凄いでしょう!?」

撮影料を貰うのは当たり前なのだが、嬉しそうに報告する彼女にルシフェルも笑顔で「良かったな」ギュッと愛する婚約者を抱きしめる


ヴィクトリアは恥ずかしそうに

「あ、あのね。いくら貰えるか判らないけど、それでね、何かルシフェルにプレゼントするわ」

ドキドキしながら「いつもルシフェルに貰ってばかりだから」嬉しそうに言うと、ルシフェルは『何も要らないよ、その気持ちだけで十分』と言おうとしたが、彼女の気持ちを尊重して

「そうだな。それじゃあ何か、二人の記念になるものでも買おうか?」

そう提案すると、その提案にヴィクトリアは目を輝かせ嬉しそうに頷く

(可愛い・・・)

ルシフェルはそんな愛しい婚約者にキスをする



後日、月刊ビューティーの『独占・オルテヴァール四大美女特集!!』は発売される前から貴族だけでなく、国民の間でも話題となり、予約ですでに完売するという異常事態になる

大急ぎで増刷しても追いつかない事態に、印刷業社が休み無く増刷を急ぐ始末

この雑誌は人気の月刊プリティーに比べてあまりにも知名度も人気も無く、廃刊の危機にあったが雑誌を手がけていた編集者の生命を賭けた四大美女特集を実現させた事により、前代未聞の驚愕の二億超えの部数の売り上げを叩き出す

(※これはオルテヴァール国民、一人当たりニ冊以上持っている計算)

そしてこの雑誌は海外からも注目され発注を請ける事になり、オルテヴァール四大美女は世界にも知られる事になってしまった


ヴィクトリアはその雑誌と謝礼金を受け取り、雑誌に載った自分の写真を確認して何より嬉しかったのは、大きく一ページに自分とルシフェルの写った写真が載っているのを見たからだった

嬉しそうに愛するルシフェルに笑い掛ける自分の写真を額縁に入れて部屋の壁に飾る程に

それは当然ルシフェルも同じで、彼は職場と自室に飾る(※つまり二冊購入した事になる)

これはアンリの、文句を言わずに撮影に協力してくれたヴィクトリアに対してのささやかなお礼の気持ちでもあったが、その写真を雑誌に載せたもう一つの理由がある


一方で、ヴィクトリアと婚約者が写った写真を雑誌に載せた事に対し抗議や苦情の手紙が多く送られて来て、わざわざ直接に出版社に出向いて文句を言いに来る者も居た

『美女特集なのに、あんな男と写っている写真など要らない!!』『あの男は邪魔でしかないだろう!?』と怒鳴り込む彼等に、社員達は挙って説明すると、皆黙って帰って行く


アンリが二人の写真を乗せた理由

『あの写真に写っている彼女が、一番綺麗で輝いていたので』

そしてその文言は次の月刊ビューティーで、先月の四大美女に対しての苦情についての謝罪コメント欄で載る事になる

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