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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
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 54話 公爵の夜会と噂の悪女(1)

朝、ルシフェルが目を覚ますと愛しい婚約者は自分に背を向けてぐっすりと眠っている

ルシフェルはヴィクトリアを後ろから抱きしめ、肩にキスをするがそれでも熟睡していて起きない

(昨日は寝るのが少し遅かったからな・・・)

このまま寝かせるか迷うが、自分だけ起きて着替える


着替え終わりベットに座ると、ぐっすりと眠っているヴィクトリアの耳元で

「ヴィクトリア、まだ寝てる?俺は食堂に行くよ?」

そう囁くと「んん・・」耳元で囁かれたヴィクトリアは寝返りを打ち

「もうちょっと・・寝てる」

昨日遅くまでルシフェルと愛し合いまだ眠たくて仕方がなくそのまま眠ってしまうので、ルシフェルはヴィクトリアのこめかみにキスをして寝室から出て行く


食堂に行き、新聞を読んでいるランドルに挨拶をすると「ヴィクトリアはどうした?」新聞をたたみながら聞かれ

「まだ、寝ています」

「体調が悪いとかでは無いだろうな?」

眉を潜めるランドルに「いえ、ただ・・・疲れているだけです」運ばれて来た紅茶を飲みながら答える


朝食が運び終るとランドルはドルフェス達を下がらせ、食堂にはルシフェルと二人だけになると

「今夜の夜会の主催者はシュルツ・ゼノヴィッツ、円卓の一人だ。前にも言ったが連中には気を許すなよ」

「それは気を付けろと言う事ですね。ご忠告、心に留めておきます」

「それと、二日後にヴィクトリアが屋敷に友人を呼ぶらしいな?」

「ええ。セインの居るイヴェラノーズにヴィクトリアが泊まりに行くより良いと思いまして」

「その日にまたクラブに連れて行く」

ルシフェルの都合を聞かずにそう告げると、二人は無言で食事を取る・・・すでにルシフェルは、紳士クラブに強制参加となっている


食事を終えるとランドルは

「ヴィクトリアと愛し合うのは構わないが、くれぐれも節度を守るように。まだ婚礼の日取りも決まっていないのだからな」

()()()()()()()忠告すると席を立つので「もし・・・ヴィクトリアが望めば?」ルシフェルは試しに聞いてみた

「それこそ、お前が言い聞かせ我慢させれば済む事だろう?・・・ヴィクトリアを利用しようとしているのか?」

その言葉にドキッとしながらも

「違います。ただ、彼女も同じ気持ちならと思っただけです」

「婚礼の儀を行う前に妊娠など、絶対に許さない。ましてや婚姻を早める為にわざと等以ての外だ。判ったな?」

ルシフェルの返答にランドルはそう忠告すると食堂を後にする


ルシフェルは自室に戻り鞄を持ちながら、ランドルの忠告は正しいのだろうと項垂れる

貴族では政略結婚が当たり前で、お互いが愛し合って結婚する割合は比較的低い為に結婚前の妊娠は珍しい

その為に入籍前の妊娠はあまり良しとされず、婚約中に妊娠した場合は公にはせず婚姻を早め誤魔化し体裁を繕う事がある

その為に急に婚礼の儀を早めると、そういう噂が流れてしまう


(俺だって、婚礼の儀を済ませてから子供が欲しい)

それがヴィクトリアにとっても一番望ましい事は判っている

それでも不安でどうしようもなく、一刻も早くヴィクトリアとの結婚を望むあまり最低な事を考えてしまう

ドアをノックする音とがしてガチャっとドアが開き、着替えを済ませたヴィクトリアが入って来る


「ルシフェル、ごめんなさい。私、起きれなくて・・・」

「いや、良いんだ。昨日は少し無理をさせてしまったから」

「ルシフェルは大丈夫?疲れてない?」

心配そうに聞きながら、彼の目が赤い事に気付き

「どうしたの?・・・もしかして、お父様に何か言われた?」

自分が食堂に行かなかっ所為でルシフェルが怒られたのかと思い心配すると、ルシフェルは心配そうに自分を見て来るそんな愛しい婚約者を抱きしめ

「大丈夫、何でもないんだ」

(俺の身勝手な気持ちでヴィクトリアを泣かせたり、傷つけるのは嫌だ)

ただ、目の前の美しく、色気漂う最愛の婚約者に、どこまで自分が自制出来るのか?ルシフェルとしても辛く苦しい、理性と葛藤する日々を送っている



夕方前から夜会の支度を始めるヴィクトリアの今回のドレスは、上は銀のラメの入った藍色に肩を出したデザインで、スカートが赤から薄いピンクをグラデーションにした様な色にレースを重ねた仕様になっている

髪は左横に括りダイヤの髪留めをして、仕上げにルシフェルがくれた香水を付け化粧はあまり濃くならない様にして、ヴィクトリアは自身の姿を鏡で確認する

妖艶な美しさを漂わす主人に、いつもの様にメイド達もウットリしながら「本当にヴィクトリア様はお美しいです・・・」褒め称える

(・・・悪女には見えないわよね?普通に侯爵令嬢として、可笑しくないわよね?)

鏡で後ろや横を確認しながらヴィクトリアは「ありがとう」身支度を手伝ってくれたメイド達に笑顔でお礼を言うとルシフェルと父親の帰りを待つ


夕方に珍しく早く二人が帰って来てヴィクトリアはルシフェルの支度を手伝う為に彼の部屋に入ると、ヴィクトリアを抱きしめ「綺麗だよヴィクトリア」彼女の額にキスをするルシフェル

「ありがとう」

嬉しそうに彼にお礼を言い、着替えを手伝い正装に着替えたルシフェルに「ルシフェルもかっこいい、素敵よ」と褒める

支度が整いヴィクトリアは渋々大地の煌きをつけ、相変わらずの巨大なダイヤの輝きがヴィクトリアをより一層美しく輝かせる

そんなヴィクトリアの姿にランドルは満足しているが、ルシフェルは誰をも魅了する婚約者に不安が募るだけだ



シュルツ・ゼノヴィッツ公爵の夜会は、夜なのに以前訪れたホルグヴィッツに負けない昼間の様に明るくライトアップされ、城の中へと入ると絵画や骨董品など高価そうな美術品の数々を目の当たりにし圧倒されるヴィクトリアは、ルシフェルにエスコートされランドルと共に主催者でもあるシュルツの元へと挨拶に向う


「・・・公爵様の夜会って、何処もこんなに凄いのかしら?」

「まあ、ホルグヴィッツもゼノヴィッツも、公爵の中でも相当な権力があるから」

公爵の相変わらずな贅の限りを尽くしたこの夜会にヴィクトリアは萎縮しゼノヴィッツは他の公爵とは格が違うのだと示したいのだろうとルシフェル

(何せ円卓の賢者だから・・・)

審査で選ばれた高位貴族のみ会員になれる紳士クラブの幹部、円卓の賢者の権力は絶大なのだろうが、その幹部の一人にランドルも入っている

(いずれは俺もその円卓の幹部になるのか?それとも・・・)

ルシフェルもランドルの後継者として一度円卓に招かれ、そしてまた二日後にも連れて行かれる


「ゼノヴィッツ公爵、この度はご招待ありがとうございます」

機嫌が良いのか、珍しくランドルはにこやかにシュルツに笑顔を見せて挨拶する

「娘のヴィクトリアと、いずれ婿入りしティアノーズを継ぐルシフェル・アルガスターです」

そう紹介され「ルシフェル・アルガスターです。どうぞよろしくお願いします」ルシフェルが頭を下げる

「ヴィクトリア・ティアノーズです。よろしくお願いします」

ヴィクトリアも同じ様に頭を下げると「これは、ヴィクトリアはますます美しさに磨きが掛かっているな」優しく笑い掛け

「益々母親のエメルトリアにそっくりになっていくな。髪が金だったら、まさに彼女そのモノだな」

シュルツに母の事を言われドキッとするヴィクトリア


シュルツはルシフェルを見て「ランドルの後継は大変だろう?」意味深な尋ね方をするので、ルシフェルは笑顔で

「ええ。日々勉強中で大変ですが、遣り甲斐はあります」

「ティアノーズの後継で満足か?もっと上を望むなら、ゼノヴィッツでお前を引き取ってもいいぞ?」

その言葉にゾクッとするルシフェルと、驚くヴィクトリア

「私にも娘が居る」

シュルツはチラッとヴィクトリアに目を向け

「ヴィクトリア程では無くとも、親の欲目から見てもなかなかの美人だ。お前がランドルより私を選ぶなら、娘婿として迎え入れゼノヴィッツを継がせても良い」

その言葉にヴィクトリアはズキッと胸を痛め、不安げにルシフェルを見る

ルシフェルは不安そうに自分を見て来るヴィクトリアに優しく笑い、シュルツに

「私はヴィクトリアと結婚して、ティアノーズを継ぐ覚悟ですので。失礼します」

怒りを押さえ頭を下げるとヴィクトリアを連れて行ってしまう


ルシフェルに連れられながら、ヴィクトリアは何故シュルツがあんな事を言い出したのか判らずにいた

(ゼノヴィッツ様は、どうしてルシフェルにあんな事を・・・)

ゼノヴィッツとティアノーズ・・・公爵と侯爵、どちらを選ぶ?と聞かれれば誰だって公爵を選ぶだろう

「ヴィクトリア?大丈夫か?」

シュルツの言った言葉に不安を抱き、泣きそうな表情のヴィクトリアを心配するルシフェル

「ゼノヴィッツ様・・・どうしてルシフェルにあんな事を言ったのかしら?」

(もし、ルシフェルが公爵様の方を選んでしまったら・・・)それを考えると胸が痛み泣きたくなる


「公爵の言った事なんて気にしなくて良い」

ルシフェルもヴィクトリアの前であんな無神経な事を口にしたシュルツに対し、腹立たしく思う

(円卓の賢者、幹部はどいつもこいつも嫌な奴ばかりか?)

義父になるランドルも褒めれた性格でない事は判っているので(類は友を呼ぶか・・・)とルシフェルは次の紳士クラブへの参加が憂鬱になる


ダンスホールに向いながら、表情を曇らせているヴィクトリアに「俺が愛しているのはヴィクトリアだけだから」そう優しく笑い抱き寄せる

(ルシフェルはいつも傍に居てくれる。私を安心させてくれる・・・病気の事も受け入れてくれた)

いつも自分の我が侭を聞いてくれる彼を、申し訳ないと思いながらも有り難く思っている・・・そのルシフェルを失うなど今まで考えて来なかったヴィクトリアは、シュルツの言葉で不安を抱く事になる


ファーストダンスをお互いに見つめ合いながら優雅に踊る二人は相変わらず貴族達の視線を浴びるが、その視線を羨ましく見つめているメリルシアナと、不快そうな目を向けるジュリアンヌが居た

ヴィクトリアが現れるまでは、二人がこの社交の場で貴族達の注目の的だった

そこへヴィクトリアが現れ、ルシフェルとダンスを踊り始めると貴族達の視線は二人に集まる

(まさかヴィクトリアがこの夜会に来るなんて・・・・運が良いわ)

メリルシアナはニッコリと笑いながら、二人がダンスを終えるのを待つ


ヴィクトリアとルシフェルがダンスを終えホールを出ると、また二人に拍手が沸いた

(・・・まさか、毎回拍手されるなんて事・・・ないでしょうね・・)

最近ダンスを終える度に拍手される気がして、ヴィクトリアは恥ずかしくて堪らない

そんな彼女を見てルシフェルは「ヴィクトリアが綺麗だから仕方が無いよ」頭にキスをして慰める


ルシフェルの行為にヴィクトリアが恥ずかしそうにしていると「()()()()()、アルガスター様」ニッコリと笑顔でルシフェルに話し掛けて来る綺麗な令嬢が、チラッとヴィクトリアに目を遣り

「私はエレノアラ・ゼノヴィッツ。シュルツ・ゼノヴィッツの娘ですわ」

にこやかに挨拶して来るので、ルシフェルは頭を下げ

「こんばんは、エレノアラ嬢。私をご存知ですか?初対面だと思うのですが」

「あら、貴族の社交界で貴方方二人を知らない人など居ないわよ?下位の者なら兎も角・・・・」


エレノアラはヴィクトリアを無視する様にルシフェルに近づき

「先程のダンスは素晴らしかったですわ。ぜひ、私とも一緒に踊って下さらない?」

彼女のその言葉に、驚くヴィクトリア。周りの貴族達も三人に注目している

(ルシフェルにダンスを申し込んでいる・・・それもゼノヴィッツの令嬢が・・・)

ズキンッと胸が痛むヴィクトリアと、ルシフェルは驚きながらもエレノアラに


「申し訳ありませんが、私達は誰とも踊らないと誓っていますので」

そんな誓いなどしていないが、すぐににこやかに爽やかな笑顔を向け頭を下げると「行こうか」不安そうにしているヴィクトリアに、優しく笑い掛けてダンスホールを出る

「・・・ゼノヴィッツ様の言っていた娘って、あの方なのね」

確かに綺麗な人だと思ったヴィクトリア


エレノアラは栗毛に茶色い瞳の美人で、ルシフェルとは一つ下の二十一歳、結婚適齢期だがまだ誰とも婚約をしていない為、その美貌から常に男性からアプローチを受けている

エレノアラは当然ルシフェルも喜んでダンスの相手をしてくれると思っていたので、断られて驚くが傍に婚約者のヴィクトリアが居たのだから仕方が無いと考え直し、今度は一人の時を狙って声を掛けようと考える


(これは・・・ゼノヴィッツに仕掛けられているのか?)

ルシフェルはエレノアラに声を掛けられた事を不審に思いゾクッと警戒するが、そんな彼を不安そうに見るヴィクトリア

ヴィクトリアが不安げに自分を見ているのに気付き、ルシフェルは優しく「何か飲む?」ウェイターを呼びアルコール度数の低い果実酒を渡すと自分はシャンパンを飲む


「ヴィクトリア、お久しぶりね」

今度はヴィクトリアに声を掛けて来るので後ろを振り返ると、ニッコリと笑ってメリルシアナが立っていた

「メリルシアナ様・・・」

まさか彼女に会うとは思っていなかったヴィクトリアだが、公爵の夜会なのだから彼女が居ても可笑しくない

「ねえ、折角だから向こうで話さない?」

公爵令嬢が自ら誘いに来ているのだ、無碍には断れない

(公爵様とも歩み寄ると決めたのだもの・・・頑張らないと)

ヴィクトリアは彼女が自分を利用しようとしている事は判っているが、少し話そうかと決心する


「申し訳ないですが、ヴィクトリアは俺と・・・」

ヴィクトリアの代わりにルシフェルが断ろうとするのを

「あの・・・折角なので、メリルシアナ様と話をして来ても良い?」

そう尋ね驚く彼に「私は大丈夫だから・・・」と、彼女と二人で何故か注目の集まる中央ホールの近くで話をする事に

(えっ?ここで?)

てっきりサロンに行くのかと思ったので、人の視線の集まる中央に来るとは思わなかった


中央ホールの後ろには、主催者のゼノヴィッツと父ランドルが居る

「サロンでは怖い思いをしたのでしょう?知ってるわ、フェリスアーラには困ったものよね」

メリルシアナは同情した表情で「ここなら、皆の目が有るから、貴方も安心でしょう?」ヴィクトリアに気を遣った様に見えるが、当然自分が周囲の注目を浴びたいからだ

「え、ええ・・・」

けれどヴィクトリアは注目されるのが嫌なので、恥ずかしそうに周りの目線に俯きながら顔を赤らめる

(うふふ、思った通り。ここに集まっている貴族達の視線が、私達に注目して向けられているわ)

小気味良く笑うメリルシアナ


「ヴィクトリア、私のお茶会は楽しくなかった?」

悲しそうに尋ねるが、これも彼女の計算だ

「い、いえ。そんな事は・・・ただ、あまりにも立派なお茶会で、気後れしてしまって・・・」

恥ずかしそうにそう答えるが、本当はカトリナーヴァに言われた事が気になり避けていた

メリルシアナは美しく微笑み(侯爵令嬢が、あのお茶会に気後れって・・・下位の令嬢とばかり付き合ってるからよ)そう馬鹿にしながら

「まあ、そんな事。気後れしないで、また来てね?貴方が来てくれると、とっても嬉しいのよ」

「え、ええ。はい、ありがとうございます」

ヴィクトリアは(私が来ると嬉しいの?)それは素直に喜んで良いのだろうか?そう思いながら二人で話をしていると

「メリルシアナ様、こんばんわ」

メリルシアナに声を掛け傍に来たのがジュリアンヌだったので「!!」ヴィクトリアは驚き凍りつく


表情を強張らせるヴィクトリアにメリルシアナは

「大丈夫よ、私が居るのだから。彼女は貴方に何もしないわ」

怖がるヴィクトリアを安心させる為にジュリアンヌにそうよね?と笑顔を向けると、ジュリアンヌはヴィクトリアに

「この前は悪かったわね。でも、公爵様とも仲良くするべきなのは、貴方だって判ってるでしょう?」

にっこりと笑って見せ、周りの貴族達もざわめき出す


オルテヴァール四大美女の内、三人が揃って話をしているのだからこの場に居た貴族達は大騒ぎする

「嘘、あれヴィクトリアじゃない!!」「さっきダンスをしていたから、この夜会に来てるのは知ってたけど」「まさか四大美女の三人が話してるのを見れるなんて」「素敵・・・あの三人の所だけ雰囲気が違う、迫力だわ!!」

メリルシアナの取り巻きも近づけない程(正確には近づくなとメリルシアナに言われている)三人の周りは特殊な魔法でも掛かっているように誰も近づけずに居る


(何だか・・・凄く視線を感じる・・・と言うか、どうして皆こっちを見ているの?)

恥ずかしそうに俯きながら話をしているヴィクトリアを、より一層(可愛い)と見つめる男性陣は「ヴィクトリアは本当に綺麗だなあ。あの二人より一層輝いている」「あの胸元で光っているダイヤ。あれだろう?第三位の大きさを持つダイヤって」「ヴィクトリアに似合ってるよ。最高だなあ」それからはヴィクトリアの噂で社交場は盛り上がってしまう

「・・・それで、彼女自身が囮になって、色ボケ伯爵を捕まえたって話しだ」

最近の専らな噂は、セルドスター伯爵の事件だ


「私が知っているのは、侯爵の夜会でのサロンでの戯れ事件ね。公爵様の戯れの犠牲者になる所だった令嬢を、ヴィクトリア様が助けたのよね。しかも、公爵様相手に不愉快って啖呵を切ったんですって。普通そんな事言えないわよ?流石よね」

「そうそう、見ていた他の公爵様も感心していたって。そして、その不愉快とか言われた公爵様は、良い笑い者になったみたいよ」

クスクスと公爵や侯爵令嬢による噂も盛り上がる・・・令嬢達は一々に令嬢を付けるのを省き、例えば公爵令嬢ではなく公爵様と呼んでいる


自分の噂で貴族達が盛り上がっているなど思もしないヴィクトリアは、なかなか解放してくれないメリルシアナに困惑する

ジュリアンヌも、記憶を失ってから最初に出会った時のあの威圧的な態度とは違って、笑いながらメリルシアナとの会話を楽しんで・・・振りをしている

この三人の中で一番楽しんでいるのはメリルシアナだけで、貴族の視線を一身に受けているのはヴィクトリアでも彼女は満悦している


(最高だわ。ヴィクトリアが傍に居てくれれば、ずっとこの視線を浴び続ける事が出来る)

他の公爵令嬢達は妬ましい、嫉妬の視線をメリルシアナに向けて来るが、その嫉妬の視線は彼女にとって言葉にならない、ゾクゾクする程に堪らない快感なのだ

けれどヴィクトリアは段々、周りからの視線に辛くなってくる

(どうしよう・・・これで失礼しますって言って、離れても良いかしら?)

ヴィクトリアはキョロキョロとルシフェルの姿を探す

(ルシフェル・・・何処に居るの?)

あのエレノアラの事も気になり、不安に思いながら周囲に目を遣る

(まさか・・・一緒に居るなんて事・・・無いわよね?)


「ヴィクトリア?どうしたの?」

自分達と話をしているのに周囲に目を向けるヴィクトリアに優しく笑い掛けるメリルシアナと、何してるの?と目が笑っていないジュリアンヌ

「あ、あの・・・お話し出来て良かったのですが、これで・・・」

そい言いながらルシフェルを探すヴィクトリアに

「まあ、折角こうして会えたんですもの、もう少し話しましょう?今度の私のお茶会には、是非また来てね?絶対よ」

メリルシアナは、ヴィクトリアを離さない


(ルシフェル・・・)

傍にルシフェルが居ないだけでこんなにも心細く不安になるなんてと思うが

(もしかして・・・本当にあの人と一緒に居るんじゃ・・・)

そんな事は無いと自分に言い聞かすが、近くに居ない彼に不安が募る

(どうしよう・・・)

不安で段々息苦しくなり、すぐにでもこの二人から離れたいと思っていると、自分の腰に優しく手を回され、嗅ぎなれた匂いがして後ろを振り返ると、ルシフェルが「ヴィクトリア、悪いけど挨拶回りに一緒に来てくれる?」そう頼むと、メリルシアナとジュリアンヌに一礼し、ヴィクトリアを連れて行く


ヴィクトリアはルシフェルに寄り添いながら、泣きたくなる程嬉しい反面、少し気になり

「・・・ルシフェル、近くに居なかったみたいだけど、何処に居たの?」

「ゼノヴィッツと話していた。ホルグヴィッツの事もあるから、俺と、特にヴィクトリアには関わらないでくれって」

それを聞いて、ヴィクトリアは驚く

ヴィクトリアがルシフェルを見つけられなかったのは、自分の後ろでシュルツとランドル、二人と一緒に居たからだった


「俺も気をつけるけど、ヴィクトリアも何か遭ったら一人で考え込まずに俺に相談して」

良いね?そう言ってくれる頼りになる彼に、ヴィクトリアはキュンッとときめく

(やっぱりルシフェルは頼りになるし、優しい)

かっこいいだけじゃなく、頼りになる優しい彼をヴィクトリアは益々好きになる

そしてそんな二人を(ふーん)とつまらなそうにエレノアラは見ている


ヴィクトリアがメリルシアナと話すのでルシフェルから離れた時、チャンスだと思いもう一度彼に声を掛けた

するとルシフェルは明らかに迷惑そうな顔をして「私は婚約者以外と、踊る気は無いので」そうはっきりと断られ、父シュルツに声を掛ける彼を見て驚く

まだ侯爵になっていない立場の彼が、公爵の父と話をしているのが不思議でならなかった

特に、気位の高い父が普通に会話をしている事にも驚く


(ルシフェル・アルガスター。いずれはあのヴィクトリアと結婚して、ティアノーズを継ぐのでしょうけど。もし、ゼノヴィッツ当主の娘である私が本気で婚約したいと告げれば、絶対に私を選ぶに決まってるわ)

そうなれば、いつも周囲の注目を浴びるヴィクトリアに一矢報えるかもしれないと考える彼女

(愛する婚約者を奪われたら、貴方どうするかしらね?悪女だった貴方が散々して来た報いを受けると良いわ)


実はエレノアラは愛する婚約者が居たが悪女ヴィクトリアに奪われていて、後でその婚約者からもう一度やり直したいと懇願されたがすでに気持ちは冷めてしまい断った

(男なんて、結局は裏切るものなのよ・・・どんなに愛していてもね)

エレノアラは、悪女ヴィクトリアの所為で男性不信になっていた


そんな彼女の気持ちを知らずに、ヴィクトリアはルシフェルに寄り添いながら公爵や侯爵達に挨拶をして回る

皆、美しいヴィクトリアを間近で見られ、嬉しそうにルシフェルとの挨拶を交わす

「いつもヴィクトリアが傍に居てくれるから、助かるよ」

「ルシフェルの役に立ってるの?それなら嬉しい」

ただ傍に居るだけで役に立っているのなら、こんな嬉しい事はないわと張り切るヴィクトリア

そんな二人に「私には、挨拶してくれないのかな?」声を掛ける者が居て、その声にゾワッとするルシフェルと、笑顔を向けるヴィクトリア

声を掛けて来たのは太陽の貴公子と呼ばれる、アルフレド・ウェンヴィッツだった

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