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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
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 51話 祖母からの手紙と悪女

友人のお茶会を楽しみ、夕方近くにヴィクトリアがティアノーズ邸に帰って来る

「ヴィクトリア様、奥様の母君、ヴィクトリア様のお祖母様バアサマにあたる、アーシュトリア・ホルグヴィッツ様からお手紙が届いておりますよ」

出迎えたドルフェスがそう伝えると「お祖母様から?」ヴィクトリアは急いで部屋へと戻る


机にアーシュトリアからの手紙が置いてあり、ドキドキしながらまだ会った事もない祖母からの手紙を急ぎ封を切って内容を読む

手紙にはヴィクトリアが夜会での帰りに事故に遭い大怪我を負ったにも拘らず、一度も見舞いに訪れなかった愚かな祖母を許して欲しいと書いてあり、ズキンと胸が痛んだ

確かにヴィクトリアは、その事をずっと気にしていた


その理由は、ヴィクトリアの素行の悪さに辟易し、またそんな娘を侯爵令嬢として躾けないランドルに対しても呆れ、怒りに任せて縁を切ってしまったからだと書かれていた

(悪女はお祖母様にまで失礼な態度を取っていたのかしら?)

心配しながら手紙の続きを読むと、事故以来ヴィクトリアが記憶を無くし、悪女と呼ばれていた時とは正反対の人物になったと聞いた時はまさかと信じなれなかったけれど、色々とヴィクトリアの噂を聞いて一度会って話しをしたいとは思っていた事、けれどこちらから縁を切っておいて今更都合よく会いたい等と虫が良過ぎる事もあり、どうしたものかと悩んでいたと書いてあった


その内容に、ポロッと涙が零れるヴィクトリア

(お祖母様は、私に会いたいって書いてるのよね?孫である、私に会いたいって・・・)

その事がどれだけ嬉しいか、ヴィクトリは思わず手紙を抱きしめる

手紙には娘のエメルトリアが亡くなった時、まだ幼いヴィクトリアをこちらで引き取ろうか?と提案したら、ランドルがとても怒り、その所為で溝が出来て疎遠になったのだと書かれていた


ランドルは一人娘のヴィクトリアを手放す気は無かったが、もしこの時に、ヴィクトリアが公爵である祖母アーシュトリアに引き取られていたら、運命は大きく変わっていた

少なくとも悪女ヴィクトリアは生まれず、伯爵子息であるルシフェルとの婚約も無かった



それからずっと疎遠になっていたが、ヴィクトリアが侯爵令嬢として社交界デビューし夜会に姿を見せた時、正直どんな娘になっているのだろう?と楽しみにしていたのだと書いてあった

けれどあまりの傲慢な態度にランドルに苦言を呈した程だと書かれていて、それでもヴィクトリアの素行は変わらず酷いもので、正直この娘が自分の孫かと思うと酷く落胆し、疎遠だった事もありティアノーズとは関わりを絶ってしまったと正直に書かれていて、ヴィクトリアは深く溜息と吐く

(悪女ヴィクトリアは、お祖母様にまで嫌われてしまったのね・・・)


けれど記憶を無くし、今のヴィクトリアの噂は悪女と呼ばれていた時とは正反対で、本当に変わったのか?一目見て確認したいと切望する様になり・・・ホルグヴィッツの夜会に現れたヴィクトリアを見ていたと書かれていて、それを読んだヴィクトリアは衝撃を受ける

(あの夜会で、お祖母様に見られていたの?)

あの夜会では、自分はどんなだっただろう?と不安になる


ドキドキしながら続きを読むと、婚約者の男性に寄り添っている姿に確かに以前の傲慢な貴方ではないと確信した

そして、まっすぐ婚約者を見ながら嬉しそうにダンスを踊っていたヴィクトリアに

(ああ、貴方達はお互いに愛し合っていて幸せなのね)

心から安心し、嬉しくて涙が出そうになったと書かれていた

(お祖母様・・・)

ルシフェルとの仲を、祖母にも判って貰えて嬉しく思う


ヴィクトリアが母のエメルトリアと共に過ごした場所は、アルスラード避暑地のホルグヴィッツが所有している別荘で、ヴィクトリアならいつ来ても構わないと書かれていて、その手紙の内容に胸が高鳴るヴィクトリア

(それって、今すぐでも良いの?お祖母様に会いに行けるの?)

すぐにでも準備をと心躍らせるとドアがノックされアメニがルシフェルが帰って来たと知らせてくれ、ヴィクトリアは涙を拭い手紙をしまうと急いで出迎えに行く


いつもの様に出迎え「お帰りなさい」と笑顔を向けるヴィクトリアに、ルシフェルは驚いた顔をしそのまま彼女を抱き寄せ自室へと向う

「?」

いつもなら「ただいま」とキスをするのに、ヴィクトリアはルシフェルを怪訝に見る

ルシフェルもまた心配そうに愛する婚約者を見て「何か遭ったのか?」と尋ねる

「どうして?」

ヴィクトリアがキョトンとして尋ねると「泣いていただろう?」とルシフェルは心配そうに「何か遭った?」ともう一度聞き返すので(ああ)と、ヴィクトリアは「お祖母様から手紙が届いてね、それを読んでいたの」嬉しそうに答える

そんなヴィクトリアに(嬉しそうに答えているが、それで何で泣いていたんだ?)さっぱり判らないルシフェル


部屋に入り机に鞄を置くとベッドに座り、ヴィクトリアを膝に座らせる

「今日は化粧をしているな。何処か出掛けたの?」

嫉妬深い夫の様な聴き方をするルシフェルに「ええ、今日はディジーのお茶会に行ってました」そう答える

ルシフェルは(またお茶会か・・・)と苦笑し

「それで、手紙で泣いていたの?何か嫌な事でも書かれていたのか?」(その割には嬉しそうだが?)

「お祖母様がいつでも別荘に来てくれて良いって、そう書いてあったから」

それを聞いてドキッとするルシフェル


「それとね、お祖母様、ホルグヴィッツの夜会で私達を見ていたのよ」

嬉しそうにそう教えると、ルシフェルにキスをして

「お祖母様も、私達が愛し合ってるって判ってくれてるみたい」

祖母の手紙の内容がとても嬉しくて、ヴィクトリアはアドレナリンが出ている様にはしゃいでいる

「私、早くお祖母様に会いに行きたいわ」

その言葉に(やっぱりな。そう言い出すと思っていた)ルシフェルの心配は的中した


「ヴィクトリア、約束しただろう?一人では行かせられない、絶対に俺も一緒に行くって」

ギュッと愛する婚約者を抱きしめ、一人では駄目だと釘を差す

「でも、長期休暇が終ったばかりで、そんなにすぐ休みは取れないでしょう?ルシフェルに迷惑掛けられないし、ドルフェスについて来て貰ったら問題ないじゃない?アメニも連れて行くし、騎士の同行も頼んだら大丈夫よ」

最早、ヴィクトリアは行く気満々でルシフェルから離れて

「急いで支度しないと。あ、その前に手紙で返事も書かないと・・・」

そう言いながら部屋を出て行こうとするので、ルシフェルに腕を掴まれる


ルシフェルは驚いた目を向けて来るヴィクトリアに「ヴィクトリア、四日後には夜会があるだろう?どうするつもりだ?」恨めし気に尋ねる

(結局ヴィクトリアは、俺が居なくても良いんだな)

ルシフェルに尋ねられ、ヴィクトリアは「そうね・・・・夜会があったわね」心底残念そうに

「出掛けるのは四日後以降になるのね・・・まあ、騎士を手配したり、準備も有るからそれ位は我慢し無いといけないわね・・・そんなに心配しないで、ドルフェスとアメニが居るんですもの。それに女性騎士も就いて来て貰うから大丈夫よ」

ヴィクトリアは別荘に行く気満々でルシフェルに抱きつくと、抱きしめられたルシフェルは「良いよ、好きにしたら」怒った様に彼女を引き離し、部屋を出て食堂へと向う


(ヴィクトリアは何も判っていない。俺がどれだけ心配しているのか・・・)

何処へ行くにも目立つ美しいヴィクトリアは、常に男の視線に晒されている

(俺が居なくても、ヴィクトリアは平気なんだな・・・それにヴィクトリアに群がる男共を、ドルフェスや女性騎士だけで追い払えるのか?)

イライラしながら食事を取る不機嫌なルシフェルに、使用人達は(また何か揉め事か?)と心配する

ヴィクトリアもルシフェルの不機嫌な理由が、彼を連れて行かない事だと判っているが

(だって、ルシフェルが休みを取るのを待っていたら、本当にいつになるか判らないもの・・・)

それを考えるとどうしても待ってられないヴィクトリアは、幾らルシフェルが怒っても祖母に早く会いたい気持ちを優先したい



ルシフェルが食事を終える前に先に入浴を済ませたヴィクトリアは、手紙の続きをドキドキしながら読む

『ぜひ別荘には婚約者も方も一緒に、二人で会いに来て頂戴。楽しみにしています』

「えっ?」

ヴィクトリア驚嘆な声を漏らし「そんな、ルシフェルも一緒って・・・いつになるのよ・・・」泣きそうになる

(私は一刻も早く、お祖母様に会いたいのに・・・・)

自分のベッドに泣き崩れるように打ちのめされながら・・・とぼとぼと寝室に向う

(どうしよう・・・ルシフェルと一緒だなんて)

ルシフェルと一緒にと書かれていたのは嬉しいが、問題はそれがいつになるかだ


寝室のベッドにどんよりと打ちひしがれる状態のヴィクトリアが座っていると、寝室に入って来たルシフェルはその姿に思わずビクッと心臓が飛び跳ねる

そんな彼を見てヴィクトリアは「ルシフェルは、すぐに長期の休みは取れないでしょう?」無理なお願いは出来ない、お祖母様には申し訳ないが自分だけで会いに行こうと考える

「判っている・・・なるべく早くに休暇を取るけど、それでも四、五日取れるかどうかだな・・・場所は何処なの?」

「確か、アルスラード避暑地って書いてあったわ。そこのホルグヴィッツの所有している別荘あるみたい」

「アルスラード避暑地!?アルスラードって言ったら、最高級リゾート地だ。王家が所有している領地なので、公爵位しか別荘を持てない場所だ」

「公爵しか・・・そんな凄い場所なのね」

(お母様と私は、そんな場所に居たのね・・・・)


「アルスラードなら、汽車で三時間以上は掛かるか・・・」

ルシフェルは不機嫌に「ヴィクトリアは俺が居なくても平気だろう?もし休暇が取れなかったら、ドルフェスを連れて行けば良いよ」さっさとベッドの中に入る

「・・・平気な訳じゃないわ。でも・・・これ以上ルシフェルに迷惑を掛けられないからよ」

自分の事でこれ以上ルシフェルに負担を、迷惑を掛けたくない

母との思い出の別荘に行く為に、忙しい彼にまた休暇を取らせて同行させるのは、きっと父や職場の人達にも迷惑を掛けてしまうだろうと判っている


「俺は、ヴィクトリアが心配だからついて行くって言ってるんだ。それなのに俺の気持ちを無視して、さっさと出掛ける気でいてるだろう?」

ルシフェルがイライラしながら責めると

「私はただ、ルシフェルに無理をさせたくないから、ドルフェス達について来て貰おうと思ってるだけ。ルシフェルは心配し過ぎなのよ」

ヴィクトリアは困った様にそう訴えると

「ヴィクトリアは鈍感だからな。男達の視線なんて気付かないで、暢気に列車に乗って別荘に行けばいい。俺はもう知らない!!」

ルシフェルは自分でもかなり最低な事を言っているのは判っているが、心配し過ぎと言われ、イライラと嫉妬のあまりつい突き放す様な言葉を吐き出す

しかも「知らない」と言いながら嫉妬の気持ちは抑えられず、心配で堪らないのだが


愛する婚約者が自分に背を向け「もう知らない」と突き放す言葉を告げるので、ヴィクトリアは深く傷つく

涙が零れ、そのまま寝室を出て行くと自室に戻りベッドに倒れ込み泣き出す

(ただ一刻も早く、お母様との思い出の別荘に行って、一度も会った事の無い(※記憶を無くしてから)お祖母様に会いたかっただけなのに・・・)

それなのにルシフェルを怒らせ「もう知らない」とまで言われてしまった


ヴィクトリアはルシフェルが無理して休暇を取る事は判っているから、迷惑を掛けてしまうと今回はドルフェスについて来て貰った方が良いと判断した

けれどルシフェルの心配がヴィクトリアがモテ過ぎる事にあると判っていない為、お互いの気持ちがすれ違ってしまった


「ううっ・・ヒック・・・・」

ヴィクトリアは一番恐れていた、ルシフェルに愛想を尽かされて、嫌われてしまったのでは?と思い、泣き疲れて眠るまで泣き続ける

ルシフェルもまた、ヴィクトリアが怒って出て行ったのだと思い「知らない」と言った事を後悔し、自分を責めながら眠る



翌日、目を覚ますルシフェルは、いつもなら自分の横で眠っている愛する婚約者が居ない事に深い溜息を吐く

ヴィクトリアと言い合いになり、思わず「俺はもう知らない!!」と言ってしまったルシフェルは、彼女を怒らせたあげくに寝室を出て行かれてしまった

(まだ、怒っているだろうな・・・)

着替えを済ませ、自分から謝りに行くか悩むが、結局ヴィクトリアの部屋を訪れる事にする


ヴィクトリアの部屋の前でアメニが心配そうに立って居て、ルシフェルに気づくと

「旦那様、ヴィクトリア様がドアを開けてくれないのですが・・・何か遭ったのですか?」

いつもの様にヴィクトリアの部屋で着替えや洗面の容易をして待つつもりだったアメニだが、ヴィクトリアは自室で夜を過ごし、鍵まで掛けてしまっていて中に入れずに困っていた

そこへルシフェルが部屋を訪ねて来たので、夫婦喧嘩をした事は判りアメニはルシフェルにその理由を尋ねる


ルシフェルは溜息を吐き(これは、暫く掛かるかもな・・・・)そう思いながらアメニを遠くへと下がらせてドアと叩く

「ヴィクトリア、昨日は悪かった。機嫌を直して、ドアを開けてくれないか?」

(確かに言い過ぎた事は認めるが、ヴィクトリアだって悪いだろう?)

ドアが開かないので(暫く、そっとして置く方が良いか?)と考えながら「ヴィクトリア」もう一度ドアと叩くと、ガチャっとドアが開き、泣き腫らした目をしたヴィクトリアが出て来る


「・・・ルシフェルが謝る事じゃないから・・・私の方こそごめんなさい・・・」

ヴィクトリアはルシフェルに「もう知らない」と言われ、愛想を尽かされ嫌われたと思っている

「朝食は、お父様と二人で食べて・・・私は要らないから」

そう告げるとドアを閉めようとする彼女を、ルシフェルは抱きしめ「ごめん、俺が悪かった」と謝る


ヴィクトリアが怒っているとばかり思っていたルシフェルは、まさか彼女がずっと泣いていたとは思っていなかった

(また、泣かせていたのか?)

ヴィクトリアはルシフェルに抱きしめられながら首を振って「ルシフェルは悪くないわ・・・・私が怒らせて、嫌われただけだもの・・・」また泣き出してしまう

「嫌ってなんかいない。だからこうして会いに来てるだろう?」

ルシフェルはヴィクトリアを慰めるが「でも、もう知らないって・・・」あの言葉にヴィクトリアは深く傷付き、ルシフェルに嫌われたと思ったのだから


「言い過ぎた、ごめん」

ルシフェルはヴィクトリアを抱きしめながら謝り「愛しているから、怒ったんだ。それは判ってくれる?」そう尋ねる

「私の事・・・嫌いになったりしてない?」

「嫌いになる訳が無いだろう?怒ったのだって、ヴィクトリアが本当に心配だからだ」

仲直りのキスをして愛する婚約者を安心させると、アメニを呼び戻し着替え終えるまで部屋の外で待つルシフェル



二人で遅れて食堂に入ると、ランドルは不機嫌そうにルシフェルの方へと目を向け

「ヴィクトリア、どうした?目が赤いが・・・ルシフェルに泣かされたのか?」

直球で聞いてくる彼に、使用人達の方が震える

「い、いえ。これは・・・私が勝手に泣いて・・」

ヴィクトリアは否定しようとすると「少し、痴話喧嘩をしただけです。仲直りしましたので、ご心配なく」ルシフェルがそう答え、ヴィクトリアは顔を赤くしながら運ばれた朝食を食べる


「ヴィクトリア、アーシュトリア夫人・・・つまりはお前の祖母に当たる人だが、彼女から手紙が来たのだろう?」

「はい。アルスラード避暑地に、いつでも来て良いと書いてありました」

ランドルに聞かれヴィクトリアはそう答えると、思い切って

「あの、お父様・・・その別荘に、ルシフェルと二人で来て欲しいと手紙に書かれていたんです。それで、忙しいのは判っているんですが、ルシフェルに長期のお休み頂けませんか?」

父なら何とかしてくれるだろうか?そう思って頼んでみると

「・・・夏季休暇の後だ、そう簡単には休ませられない。だが、考えておく。暫くルシフェルには残業して貰う事になるがな」

判っているな?とルシフェルを見るランドルに「はい、それで構いません」と納得する


朝食を終え、鞄を取りにルシフェルの自室に入ると

「ごめんなさい、ルシフェルに負担を掛けてしまって・・・」

「俺がヴィクトリアの傍に居たいからそうするんだ。ヴィクトリアが謝る事じゃないよ」

ルシフェルはヴィクトリアを抱きしめ「俺にとっては、ヴィクトリアが全てだから」最愛の婚約者にキスをして、寄り添う様に部屋を出ながら(ヴィクトリアには何度もそう言ってるのに、全く伝わっていないのか?)深い溜息を吐く

昨夜、ヴィクトリアが自分に嫌われたと思いずっと泣いていた事を知って、ルシフェル自身も泣きたくなった


(未だに俺が、ヴィクトリアを嫌うと思われているのか・・・)

確かに愛し過ぎて、ヴィクトリアの他の男に対する鈍感さにイラッとする事はある

ルシフェル自身だって、ヴィクトリアが他の男を好きになるんじゃないかと心配で堪らない

「それじゃあ、行って来る」

ヴィクトリアの頬にキスをすると、ヴィクトリアは赤い目をしながら「行ってらっしゃい、気を付けてね」笑顔で見送る



二人を見送ったヴィクトリアが部屋で祖母へ手紙の返事を書いている頃、使用人達が今朝の二人の遣り取りを話していた

「昨日の夕食の時に、旦那様が物凄く機嫌が悪かったのよ」「どうも夫婦喧嘩して、ヴィクトリア様が泣きながら自室に戻って行ったらしいの」「それでヴィクトリア様の目が赤かったのか・・・」「でも、旦那様が今朝、ヴィクトリア様の部屋まで謝りに来てなんとか仲直りしたみたい。アメニは追い払われてしまって、謝ってる所は見てないらしいけど・・・」「わあ、それは見たかったなあ・・・」「旦那様は結局、ヴィクトリア様に弱いものね」

最後にはクスクス笑い合う使用人達

「でも、いつも仲直りしてくれるから、本当に助かるわ」

「お二人の仲が良くないと、この屋敷が暗くなるものね」

自分達の働き易い環境は、ヴィクトリアとルシフェルの仲の良さで決まるのだと使用人達は判っている


そんな使用人達の会話を知らずに、ヴィクトリアは祖母に宛てた手紙に心を込めて丁寧に自分の気持ちを綴る

ただ、悪女ヴィクトリアとの関係は書かずにおこうと思う

(二重人格だなんて書いたら、お祖母様はどう思うかしら?・・・やっぱりショックを受けるわよね?)

やはり黙っていようと考え、会いに行くのは婚約者のルシフェルが長期休暇を取れてから二人で訪れる書く


手紙を書き終えた頃は昼を過ぎていて、そんなに長い間一生懸命夢中で書いていたのかと自分でも驚く

自分の祖母が会いたいと言ってくれている・・・それだけで、ヴィクトリアは自分には気遣ってくれる身内が居ると安心出来嬉しかった

(他にも親戚の人達の中で、私に会いたいと思ってくれている人が居るのかしら?)

ヴィクトリアは居て欲しいと願い、アメニに手紙を渡し投函してくれるよう頼む

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