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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
57/69

 50話 久しぶりに友人達に会う悪女

ピッピッピと目覚まし時計が鳴り、ルシフェルは珍しく時計に起されて目を覚ます

時計を止めると、まだぐっすりと寝息を立てて眠っている愛する婚約者を見て

(昨日は少し、疲れさせたからな・・・)

ルシフェルはヴィクトリア起こすと、まだ眠たそうにしながらシャワーを浴びに行くので一緒について行く


二人がさっぱりして食堂に入ると、ランドルが読んでいた新聞を畳む

「お父様、おはようございます。ごめんなさい、少し遅れたわ」

ヴィクトリアとルシフェルが席に着くと「ああ、おはよう」ランドルはヴィクトリアに笑い掛けるが、チラッとルシフェルには咎める様な目を向ける

(節度を保てと言いたいのか・・・?)


婚礼の儀式はヴィクトリアが二十歳を過ぎてからの約束だったが、ルシフェルは出来るだけ早く入籍したい

それというのも最近、たらとヴィクトリアの周りに、高位貴族の子息達が群がって来るので気が気でないからだ

実際、ヴィクトリアの美貌と妖艶な色気は、ルシフェルに愛され愛する事でより一層磨かれ益々美しくになっていく

その所為でアルフレドだけではなく独身の男性は勿論だが、婚約者が居る者や既婚者までも魅了している事

悪女の時も何組もの婚約者達を破談させて来たが、今は状況が違い自分達は愛し合い仲睦まじくしている

にも関わらずにその愛する婚約者に言い寄る公爵達が後を立たず、ルシフェルを不快にし不安を抱かせる


そんな時にヴィクトリアが二重人格だった事が判り、彼女自身がルシフェルに別れを告げ離れ様とした

(解消などしない。絶対に誰にも渡さない)

またいつヴィクトリアが自分に相応しく無いと言い出し離れ様とするかも、それを考えると一刻も早く婚礼の儀式を執り行い、愛する婚約者を妻にしたい



食事を終え、いつもの様にヴィクトリアはルシフェルについて彼の部屋へ向う

ルシフェルは部屋に入り鞄を持ち「ランドルに婚礼を早めてくれるように頼んでいるんだがな」いい返事が貰えない不満を吐露する

「それは・・・私が不安にさせたから?」

ヴィクトリアは二重人格を理由に一度ルシフェルと別れる決心をしたが、どうしても離れる事が出来なかった

「それもあるけど、俺が早くヴィクトリアと結婚したいんだ」

キスをして愛する婚約者の反応を見ると、ヴィクトリアは

「・・・それなら、私からもお願いした方が良いかしら?」

ルシフェルは嬉しそうに「そうだな。ヴィクトリアが頼んだら、ランドルも承知してくれるかもな」愛する婚約者を抱きしめる


ヴィクトリアは玄関ホールで待っていたランドルに「お父様、私達の婚礼を早く決めて欲しいのですが」と頼む

その場に居た使用人達がざわつく中、ランドルはルシフェルに(お前の入れ知恵か?)という目を向け

「ヴィクトリア、婚礼はお前が二十歳になってから行う。これは絶対だ」

ランドルにそうきっぱりと告げられ、ヴィクトリアはがっかりする

「ルシフェルにそう言う様に言われたのだろう?」

ランドルはギロッとルシフェルを睨みつけ、出て行こうとするので「違うわ、私がそうして欲しいからお父様に・・・」慌てて否定したが父親はさっさと出て行ってしまい、ヴィクトリアは心配そうにルシフェルを見るとルシフェルも残念そうに肩をすくめ出て行く


登城する馬車の中でルシフェルはランドルに小言を言われ

「でも、俺の気持ちも判って欲しいです。ヴィクトリアに群がって来る公爵達に、俺がどれだけ腹立たしく思っているか。俺はヴィクトリアを愛しているので」

貴方と違うとルシフェルもムッとしながら言い返す

ルシフェルに貴方とは違うと言われ、ランドルは心外だという様に「俺だって、エメルトリアを愛している」そう告げると黙り込んでしまう

ルシフェルはランドルの思いも寄らなかった言葉に(そうなのか?)と驚き、てっきり彼がずっと再婚せずに独り身なのはただ単に仕事が忙しいからだと思っていたので(違うのか?)と疑問を抱く



ルシフェル達を見送るとヴィクトリアは、ディジーアナことディジーのお茶会に招待されているので急ぎ支度をする

(本当は諦めていたんだけど、行ける事になって良かったわ)

ルシフェルと別れる為に屋敷を出ると決めた時、友人達にはどう伝えようか困っていたがその必要が無くなり心から良かったと思う

髪をおろしダイヤの髪飾りをつけ、ルシフェルにデパートで買って貰ったネックレスを首に掛ける

(このネックレスも、またつけられて良かった)

ルシフェルとの別れを決心した時は、彼から貰った物は全部返すつもりだった


「ヴィクトリア様、とても綺麗です」

主人の相変わらずの美しさに、メイド達もウットリしているので「ありがとう」ヴィクトリアは笑ってお礼を言って自分の姿を鏡で確認する

(本当に、またこの生活に戻れるなんて、ルシフェルのお陰だわ)

彼が自分との婚約の破棄を拒否し『絶対に別れない、愛している』と言ってくれたから、別れずに済んだのだと感謝する

支度が整い、ヴィクトリアは馬車に乗ってフェイスター家へと出掛けて行った



フェイスター伯爵の屋敷で開かれたお茶会に、ヴィクトリア・ティアノーズ侯爵令嬢が現れ、そこに居合わせていた令嬢達が大騒ぎし騒然となる

「嘘、ヴィクトリア様だわ」

「ヴィクトリア様が伯爵のお茶会に来るって聞いていたけど、本当なのね」

「わ・・私、初めて拝見するわ・・・」

伯爵令嬢もだが、子爵や男爵の令嬢達は恐れ多いと離れてヴィクトリアに羨望の眼差しを送る


下位の爵位の中では侯爵というだけでとても目立つのに、ヴィクトリアは一際美しく輝いて見える為に余計に注目を浴びる

(どうしよう・・・相変わらずの視線を感じる・・・皆、何処に居るのかしら?)

注目を浴びるのが苦手なヴィクトリアは、顔を赤らめながら友人達か知り合いを探すと「ヴィクトリア!!」ティナがヴィクトリアを見つけて呼んでくれる

ティナの傍には、キャシー達お馴染みの友人達も居てヴィクトリアは嬉しそうに彼女達の傍に向う

「ちょっと、今ヴィクトリア様を呼び捨てにした?」

「はあっ?なんなのあの子。ちょっと図々しいわ」

ティナに対して嫉妬の目を向ける令嬢達は、ヴィクトリアが嬉しそうに彼女の元へ向うのを妬んで睨みつける


「久しぶりね。もう私達下位の令嬢とは会わないのかと思ったわ」

意地悪っぽくティナが言うと、ヴィクトリアは

「違うのよ。本当に忙しくってなかなか会えなかっただけよ。手紙にも書いたでしょう?」

そんな事無いわと必死で否定すると、友人達は笑いながら「判ってるわよ。それよりどうだった?ルシフェル様の御両親は」それが聞きたいと尋ねると「とても優しいご両親だったわ。何とか気に入って貰えたみたい」嬉しそうに楽しかった三日間の話しをするヴィクトリアに友人達は

(相変わらずのラブラブだったようね)(・・・ご両親が居ても関係ないのね)

ある意味この二人は、それが自然なんだと納得する

ヴィクトリアが友人達と嬉しそうに話しているのを、伯爵と子爵と男爵令嬢達は羨ましそうに見つめている


「私は相変わらず、アスランに振り回せれっぱなしね。やれこの夜会に行くから、今度は芝居に連れて行ってあげる。これから一緒に食事に行こう」

苛立ちながらディジーは鬱憤を晴らす様に

「急に来られても、こっちだって都合があるし、支度だって要るのよ!!」

アスランは思い立ったらすぐ行動という性格なのか、ディジーの都合などお構い無しの様で「それで今日は都合が悪いと言えば、浮気を疑うし」イライラしながら友人達に愚痴を零す


憤慨するディジーの話しを聞きて、ヴィクトリアは不思議そうに首を傾げる

(もしルシフェルが突然でも誘ってくれたら、私は嬉しいんだけど・・・ディジーは違うのかしら・・・?)

ルシフェルはヴィクトリアの都合を聞いた上で誘うので、自分勝手にヴィクトリを振り回したりしない

ヴィクトリにとって男性は、そんなルシフェルが基準だからアスランの身勝手さが判っていない

だから皆が同情する中ヴィクトリアだけが共感出来ずにいて、ディジーは友人達に愚痴を零し少しスッキリした様だった


アリメラは休日に二回、ロミディオとデートしたと話す

「デートって言っても、その、今度の夜会に着ていくドレスを・・選んで貰っただけなのよ。それで、選び終わったら、帰っちゃったし」

アリメラは一回目のデートの話をしながら顔を赤らめる

「二回目は彼の上司の薦めで、美術館に行ったの。それで・・・少しお茶をして帰ったわ」

アリメラがそう話すと「ロミディオ様ってどんな人?」ユアナが尋ねる


友人達はロミディオと面識が無い為、まったく彼のイメージが出来ないでいる

「ど・・どんな人って・・背は平均より少し高い?かしら。どんな人って言われても・・あまり話しをする人ではないわね」

そう答えながらアリメラは恥ずかしそうに「こ、今度の夜会に来てくれたら、紹介出来るわ。四日後よ、皆来てくれるわよね?」心配そうに尋ねると皆「楽しみ」と頷く

他にも、キャシーとマリーナとエルザベスとユアナとキャロル、婚約者が居ない令嬢で集まって(アリメラも参加)、休暇中お泊り会をキャロルの屋敷でした事、ここに居ないシルメラは家族旅行を楽しんだと皆それぞれの休暇の報告をする


ヴィクトリアは久しぶりに友人達に会うのでドキドキしていたが、いつもと変わらない彼女達との交友は心から楽しい

「ところで、そのネックレス。ルシフェル様のプレゼントでしょう?」

ティナは目敏くヴィクトリアのネックレスの事を聞き、皆も当然それに気づいて笑っている

ヴィクトリアは顔を赤くしながら

「そうなの。どうしてもネックレスを贈りたいって言うから、彼に選んで貰ったの」

嬉しそうにアオイナイトとアメジストの石を触るその仕草に、周りの令嬢達はキュンッとときめく 


ルシフェルがどうしてもネックレスを贈りたいというその言葉に友人達は

(よっぽど、あの木彫りから開放されたかったのね・・・)

ルシフェルとしても不本意だったんだと、この時に判った彼女達は正直(今頃?)とは思った・・・けれどそれはルシフェルが忙し過ぎたからだ


他の伯爵令嬢達がディジーに挨拶に来ると皆がヴィクトリアを紹介して欲しいと頼むので、仕方なくヴィクトリアとの橋渡しにされてしまった

ヴィクトリアが優しくニッコリと笑顔で「よろしくお願いしますね」と挨拶してくれるので、伯爵令嬢達はそれだけで嬉しそうに喜ぶ

「あの、ヴィクトリア様に笑い掛けて貰えた!!」

下位の令嬢達にとってはすでに憧れの存在になっている事など、ヴィクトリアは夢にも思わない


殆ど全員と挨拶を交わす事になったヴィクトリアは、困惑しながらもそれでも嬉しそうにずっとニッコリと笑顔を向ける

そんなヴィクトリアに(良くあの笑顔を保っていられる、流石だわ)彼女が自分に挨拶してくれる令嬢達を本当に嬉しく思っている事は判っているから、友人達は黙って見守っている


漸く紹介から開放されたディジーは、ヴィクトリアに謝る

「あら?挨拶に来てくれてるのに、どうしてディジーが謝るの?」

彼女達が直接自分に挨拶してくれれば良いのだが、侯爵の身分である自分に気安く話し掛けられない事を判っている

だからヴィクトリアは、橋渡しをする羽目になったディジーの方が迷惑だったでしょうにと同情する



一通り挨拶も済んで、ホッとしながら友人達と軽食を取る事にし「ところで、ティナは休暇中どうしてたの?」キャシーがからかう様に尋ね、婚礼を控えたトーマスと楽しく過ごしたのだろうと皆もドキドキして興味を持つ

けれどティナは溜息を吐きながら「ずっと貴婦人会って言う、既婚者達の集まりに参加してたわ」ウンザリ気に話す


友人達はその貴婦人会に釘付けになり「貴婦人会?それってどんなの?」ドキドキしながら聞いてくる友人達に

「嫌味のオンパレードよ。口を開けば、まあ、今のうちよ、楽しいのは。結婚すれば判るけど、夫の良し悪しで幸せが決まるものよ。せいぜい自分の夫を出世出来るように、しっかりと躾ける事ね。たかが伯爵では底が知れてるけど・・・」

ティナは貴婦人達の言葉を真似ると、それを聞いて友人達は食欲を無くす


「貴婦人ってあれね、嫌味を言う大会でも開いてるんじゃない?それで、その大会の為に常に嫌味の言う練習してるの」

ティナはそう言うと、お皿に盛った料理をフォークで突き刺し

「お母様があまり貴婦人会の集まりに、行きたがらないのが判るわ。あれはまともな婦人の行く所ではないわね」

きっぱりそう言い切るとパクッと口に入れるので、友人達も黙々と自分のお皿に盛った料理を食べる

「でもね。気心が知れた、親しい友人だけで集まるお茶会は楽しかったわ」

嬉しそうにティナは、自分が参加した母の友人達とのお茶会の事を話す


「面白いのよ。音楽を掛けてね、女性同士で手を繋いで踊ったりするのよ」

それを聞いて友人達も「楽しそう」と興味を抱く

「果実酒とか、お酒も飲んでね。歌を歌ったり、大人達が令嬢に戻った様にはしゃいで、あれは楽しかったわ」

それは母に連れられた伯爵以下の、気心の知れた友人達だけで集まった貴婦人会だった


「ねえ、私達もこのメンバーで、いつか貴婦人会を作りましょうよ?」

「それ、良いわね。私達の友情が続く為に」

ティナの提案に皆が目を輝かせ、貴婦人になってもこの友情を続かせる為に、自分達だけの貴婦人会を作る事を約束するヴィクトリア達


ヴィクトリアはティナに、トーマスがルシフェルの秘書になった事を嬉しそうに話すと

「本当に、ルシフェル様も物好きだと思ったわ。あれに秘書が務まるのか心配で頭が痛い」

ティナは溜息を吐き、額に手をやる仕草をするのをヴィクトリアは笑って

「ルシフェルが、気心が知れてる人が良いって言ってたわ。私もトーマス様が秘書になったって聞いて、嬉しかったのよ」

「まあ、ルシフェル様ならトーマスの扱いは慣れてるものね。思いっきりこき使って下さって構わないからって言っておいて」

そう言って二人で笑うその時、少し怒った様にティナに詰め寄り「ねえ、貴方。さっきから随分、ヴィクトリア様に失礼な口の聞き方をするわね?」と、三人の令嬢が窘めながら睨んでくる


突然口を挟んで睨んでくる令嬢達に「えっ?」と驚くヴィクトリアと「はぁ、何?」と睨み返すティナ

「幾らヴィクトリア様が寛大だからって、少しは遠慮したらどうなの?」

赤毛の女性が睨みながらティナに苦言を伝えると、周りの令嬢達も「そうよ」とティナを睨む

「あら、ヴィクトリアは気にしないと思うわよ?」

ねえ?とヴィクトリアに確認するティナに、ヴィクトリアは困惑しながら「ええ。彼女は私の友人なので、口の利き方なんて気にしないわ」そう答える


「ヴィクトリア様は優し過ぎます!!伯爵の彼女が、侯爵のヴィクトリア様と対等であろうだなんて、身の程を弁えるべきですのに!!」

キッと睨みつける彼女達に、ティナは呆れながら

「そんなの、私達の問題で貴方には関係ないと思うけど?」

「私、伯爵とか侯爵とか、そういう立場で友人を選んだりしたくないの。気の合った、友達になりたいと思った人と交友を深めたいと思ってるのよ。だから伯爵であるディジーのお茶会にも来ているのよ」

ヴィクトリアも睨んでくる令嬢達に、誤解を招いていると思い、そう説明して「だから友人達に対しては、爵位関係なく付き合っていきたいので、口の利き方なんて気にしないわ」と伝える


そしてヴィウトリアはその令嬢に「貴方も、私にそんな丁寧は言葉遣いをする必要な無いのよ?」ニッコリと笑う

ヴィクトリアに微笑まれて、顔を赤くしながら「そ、そんな訳には、いきませんわ。ヴィクトリア様は侯爵様ですもの!!」そう言うと、キッとティナを睨みながら彼女は去って行く

「なんなのよ?あれ」

ティナはフンっと去って行く三人組を見据える

「驚いたわ・・・本当に一体何だったのかしら?ティナの私への口の聞き方が、あの人達に何か問題でもあるのかしら?」

ヴィクトリアが不思議そうに首を傾げるので「違うわ。ヴィクトリア様と親しくしているティナが、嫉妬されただけよ」クスクスと笑うディジーに、ティナはフンッとまた鼻を鳴らす


「ヴィクトリアは今じゃ、令嬢達の憧れの的ですからね。私も気を付けようっと」

軽口を叩くキャロルに「私が憧れの的?」キョトンとしながら、何を言ってるの?と首を傾げるヴィクトリア

「ヴィクトリアは、自分がどれだけ羨望の眼差しで注目を浴びてるか自覚してる?」

「と言うよりかは、どうして自分が注目を浴びてるのか判ってないでしょう?」

クスクスと笑う友人達に「・・・私、もう悪女の不名誉は払拭されたと思っているのだけど・・・違うの?」不安そうにそう尋ねると「今の貴方はね、社交界での注目の的。常に貴族達の噂の渦中にあるのよ」噂好きのマリーナがそう教える


すると友人達は次々と

『悪女が、聖女に変わった奇跡』『太陽の貴公子との三角関の行方』『公爵令嬢の戯れに毅然と立ち向かって、令嬢を助けた侯爵令嬢』『ヴィクトリアのお茶会に誘われたい』

他にもいろいろと、ヴィクトリアの話題を挙げていく友人達に「なによ、それは?」顔を赤らめ、そんなに噂されているとは思っても見なかったヴィクトリアは「全部、どうでも良い事じゃない!!」と叫ぶと、友人達は笑いながら「ヴィクトリア様だから、楽しいんじゃない」と笑う


(私はそんな、皆に憧れを抱いて貰える様な、そんな立派な人間じゃないわ・・・)

自分の二重人格を友人に隠している、卑怯な人間なのだから・・・それを考え顔を曇らせるヴィクトリア

(知られたくない・・・もしかして、気持ち悪く思われるかも知れないもの・・・)

知られてしまったら、目の前に居る友人達が自分から離れて行くのでは?とそれが怖く、不安で仕方が無い



夕方近くになりお茶会も御開きになる頃に、また令嬢達がヴィクトリアに挨拶に来るのでニッコリと笑いながら挨拶を交わすと

「あ、あの・・・私のお茶会にも、是非御出で下さいませんか?」

ドキドキしながら令嬢達が少しでもお近付きになりたいと誘って来るので「ありがとう」と返事をする

それだけで伯爵令嬢達は舞い上がり、子爵以下の令嬢達は羨ましそうに見ている

「本当、ヴィクトリアは人が良いわね。いちいちあの人数の令嬢を相手に、よくずっと笑っていられるわ」

ティナは呆れながらも、彼女なりに一生懸命に友人を増やそうとしているのは判ってはいる


「ヴィクトリア様って何て言うかこう、優しい雰囲気がある所為か、つい傍にふらふらっと寄って行きたくなるのよね」

「そうね、誰にでも笑顔で、嫌な顔せずに接してくれるものね。子爵の私のお茶会にも、来てくれたし」

ディジーの言葉にアリメラも頷き、伯爵ならともかく子爵令嬢のお茶会にもヴィクトリアが現れ、アリメラの母親が慌てて恐縮しながら挨拶に出向いて来た

令嬢といえど相手は格上過ぎる侯爵なので、無礼が無い様にアニメラの母親が夫である家長の代わりに気を遣い挨拶に現れたのだ


「たかが侯爵令嬢の自分に、アリメラのお母様がわざわざ出て来て挨拶に来るなんて、何だか迷惑を掛けてしまったわね」

申し訳なさそうにするヴィクトリアに、アリメラは「いえ、お誘いしたのは私ですし、来てくれて嬉しいです」そう告げるが、子爵令嬢に侯爵のヴィクトリアが申し訳なさそうにするのが可笑しかった

そんな事を思い出し友人達が語らっていると、ヴィクトリアが漸く伯爵令嬢達の挨拶を終わらせ彼女達の傍に来ると「お疲れ様」友人達は笑顔で労う


「いつも思うのだけど、やっぱり侯爵っていう立場は凄いのね。皆、侯爵の私に挨拶に来てくれるけど、そんなに気を遣わなくても良いのに・・・」

どのお茶会に行っても競う様に伯爵令嬢達が自分に挨拶に来るので、自分に気を遣っているのだと解釈するヴィクトリアに

「侯爵だから挨拶に来るんじゃなくって、ヴィクトリアに挨拶に来てるのよ」

「そうよ。格上の令嬢に挨拶するなら、嬉しそうになんてしないわよ。緊張で顔を強張らせる」

ティナとキャシーは、口を揃えてそう言うと「ヴィクトリア様だから、皆我先にと挨拶に来るんですよ」アリメラも同意する


ヴィクトリアは顔を赤らめ「そうかしら・・・それなら嬉しいけど」(なぜ、私に挨拶したがるのかしら?・・・噂の渦中にいるから?)皆、噂好きなのねと笑う

友人達と今度はアリメラの夜会で会う約束をして「全員揃う事って中々無いから、夜会では皆揃って会いたいわね」ディジーの言葉に皆頷きながら帰って行く

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