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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
26/69

 19話 伯爵令嬢の誕生パーティーへ行く悪女

夕方近く、ヴィクトリアは姿見鏡でドレスアップした自分の姿を確認しながらドキドキしている

友人の誕生パーティーなので派手過ぎず、青色に白をコーティングした爽やかなドレスを身に纏い、髪は編み込んだ三つ編みをアップにしてサファイアのバレッタで止め、ネックレスも同じサファイアで揃える

「・・・ヴィクトリア様は、ダイヤをされないのですね?」

以前の悪女ヴィクトリアは好んでダイヤを身につけていたが、今のヴィクトリアは「そうね」と素っ気無く答え

「何だかダイヤをつけていると鼻につく感じがして・・・私には似合わない様な気もするから」

「そんな、ヴィクトリア様ほどダイヤモンドが似合う方なんていませんよ!!」

アメニは本気でそう訴えるが、ヴィクトリアは「大げさね」と笑うだけだった


悪女ヴィクトリアはダイヤに目が無く、宝石箱にある大きなダイヤは特注の物で世界にあの大きさはそうは無い

父、ランドルが侯爵の権力を駆使し手に入れた最高級品なのだが、残念な事に今のヴィクトリアはそれを知らない


(今朝、ルシフェルに早く帰って来てとお願いしたけど、大丈夫かしら?)

ヴィクトリアは心配しながら時計に目を遣ると、十七時を過ぎている

不安な気持ちで愛する婚約者が帰って来るのを待つしかないが、ルシフェルが王城務めになり早五日が経つが毎晩遅くに帰って来ている

(疲れているのに・・・無理を言って申し訳ないんだけど)

ヴィクトリアはルシフェルに気を遣って「ティナ達も居るから、早くに帰って来るのが無理だったら、一人で出掛けても良いかしら?」と聞いてみたが、冗談だろう?という顔で「早く帰って来るから、心配しなくて良い」そう告げると出掛けて行った


時計の針は十八時を指すがまだ帰って来ない

パーティーは十八時に始まるが、友人達は十七時頃にキュアリスター邸に集まってプチパーティーをしている

誕生パーティーには大勢の来客が主役であるシルメラに挨拶に来る為、その相手をしなければならず友人ばかりに構っていられないので、早めに友人達だけを呼んで祝うのだ

十八時を過ぎて、漸くルシフェルが帰って来た

「遅くなってすまない」

急いで帰って来てくれた彼にヴィクトリアはホッとしながら「大丈夫、急いで帰って来てくれてありがとう」慌ただしく彼の身支度を手伝い、馬車に乗ってキュアリスター邸へと向かう

ルシフェルは友人の誕生パーティーにドキドキしている美しい婚約者を抱きしめながら、登城した初日の事を思い出す



登城初日、ルシフェルは『ウェンヴィッツ公爵に挨拶がしたい』と、二人きりで会う時間を設けて貰う

時間指定はルシフェルに任せるとの事だったので、昼休憩にウェンヴィッツの執務室でその時間会う事になった

怒りで震える気持ちを抑えルシフェルは時間より早めに訪れると、すでにアルフレドは一人で待っていた


冷たい目でルシフェルを見据えるアルフレドに、ルシフェルは単刀直入に聞く

「・・・ヴィクトリアを、私の婚約者を王城に呼んだ時、彼女に何をしたんですか?」

出来るだけ冷静を心掛けながらそう尋ねるルシフェルに、アルフレドは「ヴィクトリアが何か言ったのか?」逆に尋ねられ、イラッとしながら

「言わないから、貴方に聞いているんです!!」

押し問答などしたくない、さっさと答えろ!!そう心の中で叫ぶ


「彼女が話していないなら、私も教えるつもりは無い」

その言葉に感情を抑えていたルシフェルはキレ、アルフレドに掴みかかり

「ヴィクトリアを問い詰められる訳が無いだろう!?お前が答えろっ!!」

そう怒鳴るが、逆にアルフレドが掴んでいるルシフェルの手を握り返し突き離す

そして「・・・愛していると告白しただけだ」ルシフェルに冷やかな目を向けながら教えると、その言葉にドクンと心臓が波打ち凍りつくルシフェル

(ヴィクトリアはそれを俺に隠していた?・・・どうして?)


アルフレドを何とも思っていないなら隠す必要ない筈、それなのに・・・そう考え青褪めるルシフェルに

「彼女には、お前を愛していると言われた」

アルフレドは辛そうにヴィクトリアを想いながら

「ヴィクトリアは優しいから、俺の告白をお前に言いたくなかったのだろう」

自分が振った男の告白を、彼女は言い触らしたりしないとアルフレドは忌々しそうにルシフェルを睨みつけ(こんな男のどこが良いんだ?)アルフレドには理解出来ない


「俺は正直、なぜヴィクトリアがお前を選んだのか判らない。アルバノーズの夜会で彼女を一人にし、危ない目に遭わせた愚か者。次の夜会では泣かせ、いつまで経ってもヴィクトリアに群がる虫共を追い払えないでいる」

イライラしながらアルフレドはルシフェルに怒りの目を向け

「俺を選んでいれば、そんな事とには絶対にならない。彼女に虫など近づかせない、泣かせない、不安にもさせない。アルガスター、お前にヴィクトリアは勿体無い!!」

そう言い切り、ルシフェルは(ふざけるなっ!!)という思いで

「勝手な事を言うなっ!!ヴィクトリアが泣いた理由を、お前は知らないだろう!?」

「どうせ女の派閥が原因だろう?俺の妻に、公爵夫人になれば問題なかった筈だ!!」

そう断言するとアルフレドは辛そうに


「・・・俺はヴィクトリアを愛している。この気持ちは変わらない」

そして宣戦布告するように

「今はお前が愛されているがな。彼女が少しでも俺に気持ちが揺らいだら、その時は遠慮なく奪いにかかる」

アルフレドはルシフェルを睨みながらそうきっぱりと宣言し「出て行ってくれ、目障りだ」冷たく失せろと告げるアルフレドに、ルシフェルは冗談じゃないと

「ヴィクトリアは俺の婚約者だ、誰にも渡さない。虫と言うがウェンヴィッツ公爵、貴方もその虫の一人ですよ!!」

そう睨み返し、執務室を出て行く


ルシフェルが出て行ったドアを睨みながら、アルフレドは忌々しく

(この俺が虫だと?言ってくれるな)

遠慮なく奪う・・・それはアルフレドにとっては本心だが、ヴィクトリアが自分に靡くとは思っていない

ただ、ルシフェルを前にして、激しい嫉妬からの挑発だった


アルフレドの言葉に、ルシフェルは苛立ちながら自分の執務室に向かう道中、心の中で『ふざけんな!!』と何度も叫ぶ・・・だが、相手はあのアルフレド・ウェンヴィッツだ

心がざわつき不安な気持ちを抱きながら、ルシフェルは(ヴィクトリアは絶対にお前に渡さない!!)そう心の中で誓う



キュアリスター邸では、シルメラの誕生日を祝う為に出席した大勢の客人達で賑わっている

「ティナ達はもう来ている筈なんですが」

キョロキョロしながらヴィクトリアは知り合いを探していると、そんな彼女と面識の有る貴族達がギョッと驚愕する

「あれ、ヴィクトリア様じゃないのか?」

「侯爵令嬢様がどうして?」

ざわざわしだし出した周りの好奇な視線を感じ、ヴィクトリアは恥ずかしくなりルシフェルにギュッとしがみ付く様に寄り添う


「ヴィクトリア、まずは主催者に挨拶に行こうか?」

優しくエスコートするルシフェルがヴィクトリアを主催者の居る処へと連れて行くので、周りが二人を好奇の目で見守る中、シルメラと挨拶を交わす

「あ、あの、シルメラ様、お誕生日おめでとうございます」

ドキドキしながらお祝いの言葉をヴィクトリアが伝えると、シルメラは嬉しそうに笑って「ありがとうございます、ヴィクトリア様」そう返し、彼女の隣に寄り添っているルシフェルを見てドキッとする


(うわぁ、本当に素敵な人・・・・)

ドキドキしながら、かっこいいルシフェルを意識しないようシルメラは笑顔を保っている

シルメラと友人達の多くがルシフェルと身分が同じ伯爵なのだが、大規模な夜会や催しでお互い参加していたとしても、交友の幅が限られているので、接点が無ければ交友や面識を持つ事は無い

そして今までルシフェルの交友関係に、シルメラの交友関係は接点が無かった


大体、いくら社交の場であっても婚約者が居る者が異性と親しく交友するのは憚れるので、ルシフェルは悪女ヴィクトリアと違って知人以外の異性との交友を持たなかった

そしてティナはヴィクトリアの為に開いたお茶会に面識の無いシルメラを呼んで居らず、たまたまティナのお茶会に呼ばれた友人の一人が『友人の為に、なるべく品行の良い令嬢を呼びたい』というティナに、それならとシルメラ達をティナのお茶会にたまたま同行して貰った



「シルメラ様、彼は私のこ・・・婚約者の、ルシフェル・アルガスターです」

ヴィクトリアは実はあまり婚約者と言い慣れてなく、顔を赤くしながら婚約者を紹介するので、その場に居た誰もが(可愛い・・・)とキュンとなる・・・だが、ルシフェルだけが(ライバルを増やしてどうするんだ!?)という気持ちになる

ルシフェルを紹介されたシルメラは、ドキドキしながらルシフェルに

「シルメラ・キュアリスターです。初めましてルシフェル様、よろしくお願いします」

そう挨拶すると、ルシフェルも「こちらこそよろしく」ニッコリと微笑み挨拶を返す

その笑顔に「きゃあっ」とルシフェルに見惚れていた周りの令嬢達から黄色い悲鳴が聞こえ、シルメラも顔を赤らめ(こんな人に溺愛されて・・・ヴィクトリア様、羨まし過ぎます)そう心から思う


シルメラとの挨拶が終わると、彼女は他の来客の挨拶にも忙しく応対し無ければ為らないので、ヴィクトリアはその場から離れ(誰か知り合いは居ないかしら?)再び周りをキョロキョロ見回す

キャロルとユアナが二人で話しているのを見つけ、嬉しそうに「ルシフェル、知り合いがいたので話して来ても良い?」そう聞くと、ルシフェルは「俺も一緒に行く」とついて来る


「キャロル様、ユアナ様こんばんは」

ヴィクトリアが声を掛けると二人も嬉しそうに「こんばんワッ!!」ヴィクトリアの隣の美形の男性に目を遣り驚く

(えっ?誰このかっこいい男性ヒトは!?もしかしてヴィクトリア様の婚約者?)

(すごい、美男美女過ぎでしょ・・・なに?このカップル)

初めて見るルシフェルに固まる二人に、ヴィクトリアは

「あ、あの・・・彼は私の婚約者の、ルシフェル・アルガスターです。ルシフェル、彼女達は私の友達で、キャロル・アルマイスター様とユアナ・オウガスト様です」

ドキドキしながら三人をそれぞれ紹介し(と・・友達に婚約者を紹介するって、恥ずかしいのね)初めての経験に、顔を赤くしながらも嬉しく思うヴィクトリア


「こんばんは、よろしく」

ニッコリと挨拶するルシフェルに、二人は顔を赤らめながらも「こ・・・こちらこそ、よろしくお願いします」そう答えながら内心では

(きゃあっ・・素敵過ぎでしょ!?この人に溺愛されてるって、流石ですヴィクトリア様)

心底羨ましく思い、心の中で大はしゃぎする二人


ヴィクトリアがそのままキャロル達と談笑していると

「ヴィクトリア」

ルシフェルは婚約者を抱き寄せ「トーマス達を見つけた」ダンスを楽しんでいる二人に目を遣るその仕草にも、キュンとなるキャロルとユアナ

「踊っていたんですね」

「俺達も踊ろうか」

ルシフェルは二人に軽く一礼しヴィクトリアを連れて行くので、そんな二人を見て

「あれは相当ハイレベルだわ・・・めちゃくちゃかっこ良くない?」

キャロルが心底羨ましく呟くと「あんな婚約者だったら、政略結婚万歳だね」ユアナも羨ましく思い頷く

そして二人は、優雅に踊っているヴィクトリア達に釘付けとなる


シルメラの誕生パーティーには伯爵は勿論、子爵や男爵来ているのだが、見た事も無い美男美女の二人に「一体何処の伯爵令嬢だ?」と囁かれた

上位貴族だけの夜会に子爵や男爵が参加する事はないので、その夜会にしか顔を出さないヴィクトリアを初めて見る彼等は、その美しさに釘付けになる

ヴィクトリアを知っている伯爵達が、あれが悪女と名高い侯爵令嬢ヴィクトリアだと教えると、誰もが(彼女が!?)と驚愕する


周囲の視線を浴びながらもヴィクトリアとルシフェルは踊りきり、ダンスホールを出るとトーマスとティナが待っていた

「いやあ、凄いね。あの視線を気にせず踊れるなんて」

可愛らしく笑うトーマスに「・・・気にはなりますけど」ヴィクトリアはチラッとルシフェルに視線を向け「ルシフェルが誘ってくれるので」そう恥ずかしそうに顔を赤らめる

「じゃあ、俺とも踊ろう!!」

嬉しそうにトーマスが誘うのだが「駄目だ」あっさりルシフェルに却下された


「いやいやいや。それ、ヴィクトリアが決める事だから」

不服そうにトーマスはルシフェルに抗議し、ヴィクトリアに

「ねえ、ヴィクトリア。踊ってくれる?」

甘える様に頼んで来るトーマスに、ヴィクトリアは笑って「ごめんなさい。私、ルシフェル以外とは踊らないので」そう断る

「そう言う事だ。あきらめろ」

ルシフェルはトーマスを睨むが、そんな様子も他の貴族達に注目されている


「ヴィクトリア、私はサロンに行くけど、どうする?」

ティナが聞いてくれるので、ヴィクトリアはルシフェルを見る

「行ってきたら?大事な友達が居るんだろう?」

優しく笑う彼にヴィクトリアは嬉しそうに頷き、ティナと一緒にサロンへと向かいそれを見送る二人

「ヴィクトリアは何処へ行っても、目立つからなぁ。あの美貌に、色気まで兼ね備えて・・・それで?ハイスペック公爵とはどうなった?」

ニヤニヤしながら尋ねる友人に「どうもなっていない」素っ気無く答える


(宣戦布告してきたんだ、本気でヴィクトリアを奪うと)

冗談じゃない!!そう思いながらルシフェルは、アルフレドの気持ちも判らない訳ではない

(ヴィクトリアが俺を愛してくれたのは、本当に運が良かっただけだ。もしウェンヴィッツと先に会っていれば、奴を愛していたかも知れない・・・)

そう思うと心底ゾッとする

(彼女が俺を愛してくれた事は本当に幸運だった。その幸運を、絶対に駄目になんかしない。絶対に奪われたりしない。ヴィクトリアは俺のものだ!!)

そう何度も自分に言い聞かせるが、ルシフェルの不安要素をまた一つ抱える事になり、それにも耐えていくしかない



サロンでは伯爵の他に子爵と男爵の令嬢達が楽しく談笑していたが、ヴィクトリアとティナが入って来た瞬間、ピタリと会話が止まった

(?)

どうしたんだろう?と思うヴィクトリアに「きっと、ヴィクトリアの噂をしてたのよ」笑うティナ

「えっ?」

と驚くが、どうもそんな感じがする・・・周りの令嬢達が、自分を見てこそこそと話しをしているのだから

「場違いなのかしら・・・?」

侯爵令嬢の自分が居る事に、少し心細く感じるヴィクトリアに

「こんな事で一々気にしてどうするの?これからも伯爵の催しに参加して行くんでしょ?」

ティナに励まされ(そうなんだけど・・・)ヴィクトリアはドキドキと不安げに周りを見る

(そうよね、ここでも友達を作らなければいけないのよね・・・)


「ヴィクトリア様、さっきのダンス素敵でした」

キャロルとユアナもサロンに来て一緒に談笑を楽しむので、その様子に周りの令嬢達が驚いた様にヒソヒソと噂する

「あの、アリメラ様はまだ来ていないの?」

ヴィクトリアは周りを気にしながら尋ねると、キャロルがクスクスと笑い

「婚約者のロミディオと一緒に来ていてね、他の人と挨拶するので一生懸命なのよ」

ユアナが「ヴィクトリア様の助言、歩み寄りを頑張ってしているみたいです」それを聞いてヴィクトリアは安心し

「そう、それは良かった」

(そうよね。どうせ結婚するなら、愛して貰った方が良いもの)

ヴィクトリアもルシフェルの愛を失いたくない

だから、なるべく役には立てなくても、彼に迷惑を掛ける事がない様、気を付けないと・・・そう思っている



「シルメラ様はお友達が多いのね・・・羨ましい」

大勢の貴賓客に、ヴィクトリアは自分とは大違いだと心から羨ましく思う

「あら、ティアノーズで夜会やお茶会を開いたら、それこそ皆、目の色変えて参加したがるんじゃない?」

ティナの言葉に、ヴィクトリアはそうかしら?と首を傾げるので「だってティアノーズ侯爵様って・・・・」そう言ってから、ティナはヴィクトリアに

「あ、あの、気を悪くしないで欲しいんだけど・・・ただ、ほら、貴方のお父様って、こう社交界とかに興味がないみたいだからね?それで、・・・人嫌いなんだろうって噂で聞いててね」


彼女なりに言葉を選びながら

「だから、仮にティアノーズでパーティーなんか開いたら物凄く貴重な体験、レアな感じがするから」

そう伝えると、ヴィクトリアは驚きながらも頷き

「そうね。言われたら確かに、私が記憶を無くしてからティアノーズに人が来たのは、ルシフェルとティナだけだわ」

その言葉に三人は思わず顔を伏せる

(ヴィクトリア・・・)

(ヴィクトリア様・・・)

ヴィクトリアが記憶を無くしてから、一体どれ程の時が経ったのか?

「あ、もう一人居たけど・・・送ってくれただけだし・・・」

アルフレドを思い出したが、彼の場合は違うなあと思うヴィクトリア

「・・・やっぱり、二人だけだわ」ヴィクトリアの言葉に「うん、判った」と頷くティナ達


「・・・もし、私がお茶会を開くとしたら・・・ティナ達は来てくれる?」

思い切って尋ねると、ティナは「もちろん」と答えるがユアナは黙っている

「呼んで貰えるなら、行ってみたいです」

キャロルも目を輝かせ答える。侯爵のお茶会に呼ばれる事は、伯爵令嬢には憧れなのだ

伯爵令嬢の二人を羨ましいと思いながら、黙っているユアナ

「それなら・・・お父様にお願いしてみようかしら?」

お茶会はティナが来て以来なので、ドキドキしながらヴィクトリアは考える


「まずはティナと、この前親しくなったキャシ-様達でしょう?それからキャロル様達・・・十人位ね。すごいわ、何だか楽しみ」

(侯爵令嬢が催すお茶会に、たったの十人って!!)

喜んでいるヴィクトリアを見ながら、友人だけの集まりなら兎も角と三人は心の中で突っ込んだ

「・・・ヴィクトリア、もし良ければ私の友人を呼んでも良いかしら?勿論、十人でも構わないんだけどね。折角お茶会を開くなら・・・もう少し人数を増やしても良いんじゃないかと・・・」

大勢来たらヴィクトリアも大変だろう・・・けれど、侯爵令嬢のお茶会に十人だけとは流石に可哀想だとティナは気を遣って提案する


「本当?それなら、もう少し人数が増える事も考えないといけないわね?」

「あ、それなら私も友人を呼んで良い?侯爵様のお茶会なんて、こんな機会もう無いかもしれないから」

嬉しそうに、キャロルも聞いて来るので「勿論よ、大勢の方が楽しいわ」ヴィクトリアは喜んで承諾する

(本当に、沢山の令嬢達が集まって私のお茶会に来てくれたら、こんな嬉しい事はないわ)

自分が開くお茶会の事に胸を躍らせる


そんな盛り上がっている三人を羨望の眼差しで(私も行きたい)と近くで会話を盗み聞きし窺っている伯爵令嬢達

シルメラに頼んだら、自分達もあのヴィクトリア・ティアノーズのお茶会に参加出来るかもしれない?そう考える

下位派閥の令嬢達には『侯爵以上の催しに参加した』それだけで社交界で自慢出来るのに、その相手があのヴィクトリアとなったら羨望の的になるに違いないと


「ユアナ様も、是非お友達を連れて来て下さいね」

ヴィクトリアがずっと黙ったままでいるユアナに声を掛けるので、自分にも声を掛けてきてドキッとしながらユアナは遠慮がちに

「あ・・いえ、私は、その・・・子爵ですので、お茶会には」

子爵の自分では身分が違い過ぎる為、流石に図々しいと思ったユアナは自分は招待されても行かないつもりでいた

「そんな事は関係ないので、是非来て下さいね」

ヴィクトリアがそう言ってくれるので、ユアナは一応頷く


「大丈夫よ、私の友達の子爵の子も来るんだから」

ティナの言葉に「えっ?」と驚くユアナに「あら、アリメラ様だって人数に入ってるもの、子爵はユアナ様だけじゃないわ」ヴィクトリアも頷くので、ユアナは

(そうなの・・・?アリメラも、参加するの?・・・それなら)

ユアナだってヴィクトリアのお茶会に行きたくない訳ではないが、何しろ侯爵家なので敷居が恐ろしく高過ぎる

「パーティーの準備や、日程や招待状の出し方とか色々相談に乗るわよ?」

ティナが任せてと張り切ると、キャロル達も頷いてくれるので「ありがとう、頼りにしてるわ」ヴィクトリアはお茶会を開く気満々で張り切る


シルメラが漸く休憩がてらにサロンに顔出しに来たので「ねえ、少しなら話せるの?」ユアナが尋ねるとシルメラは頷き「もう、疲れたわ」溜息を吐きながら思い出した様に

「そう言えば、アリメラが婚約者のロミディオと挨拶に来たわ」

クスクスと思い出し笑いをしながら、シルメラは

「最初、緊張の所為か仏頂面したロミディオだったけど、アリメラが笑い掛けた時だけ、少し笑ったのよね」

まあ、その後はまたムスッとしてたけどと付け加え、その後は一度だけ踊ってさっさと二人で帰ってしまったらしい



主役のシルメラは来賓客の相手でとても忙しく、あまり話せなかったのが残念だが遅くなってもルシフェルに申し訳がない為、ヴィクトリアも早めに帰る事にする


ティアノーズ邸へと向っている馬車の中、ヴィクトリアを抱きしめながらルシフェルはぐったりと疲れた感じだった

「・・・疲れているのに、今日はありがとう」

ヴィクトリアは彼の腕の中で、誕生パーティーに付き合ってくれたお礼を言う

「いいや、構わないよ」

優しく笑う彼に(・・・相当、疲れているのね)抱き寄せられている彼の胸に顔を埋め申し訳ないと思う


確かにルシフェルは疲れていた

ヴィクトリアとティナがサロンへ向った後、我先にと伯爵や子爵、男爵までが押し寄せて来てルシフェルに挨拶に来たからだ

トーマスは『俺、関係ないから』と、さっさと他の知り合いを見つけるとその場から逃げ出し、ルシフェルはずっとその群がって来る貴族達の挨拶に、一人愛想笑いで対応していたのだ

(疲れた・・・俺のパーティーじゃないのに、なぜ群がって来る・・・)

そう思いながらも、ルシフェルは次期ティアノーズ侯爵になる立場なので、彼等がここぞとばかりに顔を売りたいのは判らなくもない


シルメラの誕生パーティーから帰って来た二人に、アメニはルシフェルの部屋にお茶を用意して出て行く

「今日は本当にありがとう、お疲れ様でした」

ルシフェルが上着を脱ぐと、その上着を受け取るヴィクトリア

ベッドに座って、シャツのボタンを外しながらルシフェルが「ヴィクリアも疲れただろう?俺の事はいいから、着替えてきて」そう告げると、ヴィクトリアは上着をハンガーに掛けながら頷き部屋を出て行く


浴室でアメニや他のメイド達に手伝って貰いドレスを脱ぎ、アメニが用意してくれた浴槽にゆっくりと浸かってから寝室に戻ると、ルシフェルは疲れて眠っているだろうと思っていたが起きて待っていてくれていた

「疲れているのに・・・先に寝ていてくれて良かったんですよ?」

申し訳なさそうに、まだ完全には乾いていない彼の髪に触れる


「・・・俺はそんなに草臥れて見えるのか?」

苦笑しながらヴィクトリアを抱きしめるルシフェルに

「忙しいのに、今日は無理なお願いも聞いて貰ったから・・・身体が心配なんです」

愛する婚約者をベッドに寝かせると「今日はゆっくり休んで下さい」キスをして「おやすみなさい」優しく微笑む

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