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記憶を無くした悪女  作者: 浅海
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    プロローグ

天候は激しい雷雨だというのに、夜会は大勢の貴族達で賑わっていた

紳士や子息達は最近の経済や己の趣味や自慢話、貴婦人や令嬢達は男女の色恋沙汰、いわゆるスキャンダルや、最新の流行の話題と楽しそうに話しをている


そのスキャンダルの話題の中心に、必ずと言って良い程、悪女ヴィクトリア・ティアノーズの名前が挙がる

黒髪に少しきつい目つきをした紫の瞳の美女、この物語の主人公である


「今回のお相手は、公爵様だと聞いてるけど?」

「アルフレド様ではないでしょ?」

「まさか、アルフレド様が相手なさるわけ無いわ」


令嬢達のおしゃべりの中、優雅に現れたのは紫と赤の薔薇の刺繍が施された、身体のラインが判るピッタリした黒いドレスを身に纏った妖艶の美しさを漂わせたヴィクトリア

彼女をエスコートしているのは、最近令嬢達に人気の高いマルク・ディホンスター伯爵子息だった


「あら、今日はマルク様だわ」

羨ましそうな眼差しを向ける令嬢達に、気を良くするヴィクトリア

そんなヴィクトリアに一人の男性がダンスに誘うと、ヴィクトリアがその男の手を取る

「ヴィクトリア、最初のダンスは俺とだろ?」

不満そうにマルクは、自分を置いて行こうとする彼女の腕を掴む


掴まれたヴィクトリアは、冷たく言い放つ

「あら、エスコートをさせてはあげたけれど、ファーストダンスまでは約束してないわ」

「そんなっ・・・」

ショックを受けるマルクに

「貴方をエスコートに選んだのは、その容姿だけだもの」

そう笑うと自分を掴んでいる彼の腕を払い退け、誘って来た男性と行ってしまう


オルテヴァ-ル王国ではファーストダンスとラストダンスは、パートナー(婚約者や恋人)と踊る事になっている

つまりヴィクトリアにとってマルクは、ファーストダンスの相手として相応しくないという事だ

その後もヴィクトリアはいつもの様に、自分に群がる男性達を相手に楽しく過ごす・・・まるで女王様のように


その様子を羨ましく、妬ましく眺めながら令嬢達は囁く

「悪女ヴィクトリアは、いつか痛い目に遭うわよ」

「あんな女、きっとそのうち天罰が下るわ」

婚約者や恋人をヴィクトリアに奪われた令嬢達の恨みの篭もった視線さえ、彼女は小気味良かった


(何とでも言うがいいわ。美貌では、私に勝てないのだから)

事実、悪女と呼ばれていても彼女の美しさに群がる男達は後を絶たないのだから


夜会を十分堪能したヴィクトリアは、ティアノーズ家の馬車に乗り込み帰路に就く

雷鳴轟く大雨の中、高い木の傍を馬車が走って行く

そこへ運悪く大木に雷が落ち、驚いた馬の所為で馬車が横転してしまう

「うっ」

中に乗っていたヴィクトリアはその衝撃で強く身体と頭を打ち、気を失う


後にこの大事故は『悪女に神様の天罰が下ったのでは?』と噂される事となる

誤字報告ありがとうございます

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