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ブサイク男の下剋上~ブサイクが逆転世界で、賢者と呼ばれるまでの物語~  作者: とらざぶろー
第三章 魔鋼厳選編

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ブサイク、行いが報われる

 ネスク・テガロを出発して早一週間。旅路はいたって快適であった。


 魔境で野営もできるほどに、アウトドアになった貞一だ。街道の脇で野宿するなど、容易いもの。


 辛いことと言ったらお風呂に入れないことくらいだが、幸い今の季節は秋。段々気温が下がっていくこの季節は、汗っかきなデブにとってとても過ごし易い季節。水筒という無限に水を生成する魔道具のおかげで、お風呂には入れないが毎日身体を拭けるので我慢できるレベルだ。


 1週間も経ったのでだいぶ食料が減ってきたが、肉などのたんぱく質は時折狩りをして調達している。街道沿いにある雑木林や、初級魔境と言われる魔物はいるがデスゾーンなど無い山には獣がいる。毎日ではないが、そういった場所を見つけたら肉を確保して進む、なんともワイルドな旅だった。


 昨日の蛇はなかなか美味しかったでござるね。上品な鶏肉のような繊細な味だったでござる。


 貞一は昨夜食べた蛇の塩焼きを思い出す。長さ2メートルはあったナミヘビで、アオダイショウのような地味な色をした蛇だった。背が高い草むらなどに生息しているようで、毒もなくよく見かける蛇とはレリア談。


 そして、なんとその蛇。解体は貞一が担当したのだ。蛇の解体は割と簡単で、首の周りに一周切れ目を入れれば、後はするすると鱗ごと皮を剥ぐことができる。


 貞一は蛇をネスク・テガロの魔境で食べたことがあった。レリアが魔境で捕まえた蛇で、栄養価が高いということで食べてみたのだ。しかし、その蛇は1メートルに見たいな程の小ぶりだったためか、味は悪くないのだが小骨が多くとても食べづらかった。昨日食べた蛇も骨は多いが、骨自体も大きく容易に取り除け、美味しい身の部分をしっかり味わうことができた。


 この世界に来るまでは蛇を食べるなんてもってのほかで、そもそも解体どころか触ることすら無理だっただろう。それを考えると、貞一のたくましさの向上と言ったら、男子三日会わざればってやつである。


「それにしても、凄い穀倉地帯でござるね」


 貞一は首をぐるりと回して周囲を観察する。道の両脇には、遠くまで見通せないほどの畑が広がっていた。


 今通っているあたりは麦だが、芋や野菜などの畑もあった。秋という季節から多くは収穫されているが、まだ実りを付けた畑もある。それを見るだけで、今年は豊作だったのだろうと思えるほど、麦の穂は黄金色に輝いていた。


「今から行く街は初級魔境が二つ、近場にあるらしい。なんでも、その二つのどちでにもゴブリンが出るらしくてな。この辺りは東領の中でも指折りの穀倉地帯らしいぞ」


 魔境に生息している魔物はランダムだ。同じ初級魔境でも、レリアの故郷の村の近くにあった初級魔境では、コボルトやビッグラットなど素材としての価値の無い魔物しかいなかった。


 逆に、この辺りにある初級魔境はゴブリンが現れるらしい。初級魔境では魔力が少ないために魔境の近くに畑を耕しても、魔境の恩恵は受けられない。しかし、ゴブリンは別だ。


 ゴブリンは優秀な肥料であり、ミンチにして畑に撒けば、どんな痩せた土地でも豊作間違いなしと言われるほど畑に栄養を与えてくれる。ゴブリンの恩恵を、この辺りでは十二分に受けているようだ。一面に広がる麦畑が、それを証明している。


「東領でも指折りの穀倉地帯? ・・・ゴブリン・・・肥料・・・つまりネスク・テガロで食べた野菜も・・・ゴブリンが・・・」

「ん? どうしたティーチ様」

「・・・いや、何でもないでござるよ。レリア殿は精神衛生上聞かない方がいいでござる」


 貞一は衝撃の事実に気が付いてしまったが、それはそっと胸の内にしまっておく。原材料は考えたら負けなのだ。美味しい。それだけわかればいいじゃないか。


 のどかな麦畑のはずが、血みどろのゴブリン汁にまみれた一面に見えるのは、きっと貞一が慣れない長旅のせいで疲れているからなのだ。そうに違いない。


 そんな悲しい事実と向き合いながら歩いていくと、目的の町が見えてきた。この街はイコ・ルマンの街ではない。イコ・ルマンまでは歩いて1ヶ月ほどかかるが、その間にも街はある。


 予定では1週間に一度、道中の街に寄っていく日程になっている。本日は旅をして初めて訪れる街で、ここで食料の買い足しや情報収集をする予定だ。久しぶりにベッドで寝れるかと思うと、足取りも軽くなる。


 広大な麦畑にポツンポツンと家が見え始めると、徐々に畑よりも家が多くなり、やがて街へと足を踏み入れた。


 ネスク・テガロが栄えた地方都市だとすると、この街は過疎化の進んだ田舎町と言えばいいだろうか。この辺りに住む人たちは自分が管理している畑の近くに家を建てているため、この街に住む人は少ないようだ。道中には大きな倉庫などもあったが、街の中では見かけない。


 この一帯はあくまで生産拠点で、ここから各地に出荷されていく。

 そのため、この街にいるのは街に近い畑を持つ農夫や買い付けに来た商人、周囲の初級魔境で活動する新人冒険者くらいなものだ。ネスク・テガロのような活気あふれる様子はあまり見られない。


 この街が栄えていない最も大きな理由は、周囲に初級魔境しかない。それに尽きる。


 初級魔境は魔物は出るが、魔王は現われない。つまり、貴族が街にいないことを意味している。

 貴族がいれば必然的に街を統治する管理官も派遣され、便利な魔道具なども王立魔道具研究所から融通してもらえる。そして、貴族がいるということは近くには中級以上の魔境がある。つまり魔境の素材が街に流れ込んでくるということだ。


 これらのことでわかる通り、この世界で発展している街は、すべからく周囲に中級以上の魔境を抱えている。それ以外の街は管理官もいないため、寄合が街の自治を行っていたりする程度だ。街と言うよりも、大きな村といったニュアンスの方があっているかもしれない。


「そういえば、入場確認をする衛兵がいないでござるね」

「そう言ったことをするのは、貴族様が守護している街だけだぞ」


 新人冒険者だろう若者が、街に続く道で警備をしている。しかし、ネスク・テガロの様に冒険者証の確認はされない。彼にやる気がないとかではなく、レリアのいう通り確認する必要がないのだろう。彼の仕事は怪しい者の取り締まりや、警邏けいらくらいのものか。


 街に入るとそれなりに街道を行きかう人はいる。これなら食材なども売っている場所もあるだろうし、十分食料の補充はできそうだ。


「まずは冒険者ギルドに行こうか」


 そう言って、レリアは警備をしている新人冒険者に声をかけた。


「すまない。冒険者ギルドはどう行けばいいだろうか?」


 こういった街には冒険者ギルドが無かったりすることもあるのだが、この街はしっかりギルドがある。ゴブリンが出ることで冒険者の需要が高いためだ。


「うん? ロストがギルドに何のって、すいません!! この通り沿いに行けばギルドがあります!」


 新人冒険者は、初めレリアに突っかかるような態度をとったが、すぐにレリアがカッパー級だと理解したようでしっかりと対応してくれた。冒険者は強さが全てであり、階級がモノを言う世界。例えロストであろうとも、自分よりもランクが高ければ従うのが冒険者だ。


 というのが普通なのだが、中にはロストやそれと同じくらいしか魔力量のない者を下に見る新人もいる。この新人はちゃんと道理を弁えた冒険者のようだ。


 レリア殿はよく躊躇せずに知らない人に話しかけれるでござるよね。拙者も見習わなければ、いつまでもコミュ障のままでござるぞ。


 大分コミュ力が付いてきたとはいえ、まだ知らない人に道を聞くのはハードルがある。聞くくらいならまずは歩いて探してみるほうが、気が楽なのだ。


 道に迷うようなこともなく、二人は冒険者ギルドへ入る。ネスク・テガロと比べると小さく、冒険者も一組しか中にはいなかった。時間は小腹が空き始める15時頃。混み始める前に来れてよかった。


「冒険者ギルドへようこそ。いかがされましたか?」


 受付嬢はややブス。つまりこの世界で言えば学年で10番目くらいに可愛い女子と言ったところか。ネスク・テガロのような大都市ではないため、受付嬢のレベルも街の規模の影響を受けている。


「イコ・ルマンへ行く途中なのだが、イコ・ルマンの魔境やゴーレムについての情報が欲しい。資料などはないだろうか?」

「・・・イコ・ルマンですか。となるとネスク・テガロは経由されましたか? 残念ながらここにはネスク・テガロ以上の情報はございません」


 受付嬢はロストのお前じゃなく、後ろのイケメンと話させろという気持ちを笑顔と言う名の仮面で隠し、返答する。返答に一拍必要なあたり、ネスク・テガロの受付嬢とは顔だけでなく質も劣るようだ。いやクラシィも大概だった気もするが。


「そうか・・・。一応資料室は見させてもらっていいか?」

「もちろん構いません。資料室はあちらの部屋になります」


 各冒険者ギルドには、魔物や魔境に関する資料が保存されている。先達が残していった資料で、どれも貴重な情報源だ。


 ほとんどの資料は、ギルドが担当している魔境に関する物だが、中にはほかの魔境についての資料もあったりする。イコ・ルマンについては無くとも、知識は蓄えておくだけ損はない。


「他に何かございますか?」

「私はもう大丈夫だ。ティーチ様はあるか?」

「あ、ならおススメの宿を教えてほしいでござるよ」


 レリアに話を振られ、貞一も会話に参加する。臨時のパーティだった頃は貞一の後ろで待機することが多かったレリアだが、正式にパーティを組んでからはレリアが率先して聞き込みや店員との対応をやってくれるようになった。レリアなりに、パーティの一員として役に立とうと考えているのだろう。


 そのおかげで貞一はレリアの後ろにいればオッケーな状態になってしまい、コミュ力の経験値が全然入ってこない。


「カッパー級でしたら金の稲穂亭がおススメですが、こちらはロストの方は泊まれません。ロストの方が泊まれる宿ですと、ひだまり亭しかございませんね」


 この街は新人冒険者が活動することも多い。新人とは言い換えれば、弱い冒険者たちが多いということだ。もちろん、魔力量も豊富で中級魔境に行くまでの腰掛けとして活動する冒険者がほとんどではあるのだが、中には魔力量が少ない者たちが恒常的にこの街で冒険者活動をしている者もいる。そのため、この街ではロストが泊まれる宿も完備されていた。


 多くの街では、ロストが泊まれる宿は無かったりする。というのも、魔力無ロストのため彼らは魔道具が扱えないのだ。


 魔道具は部屋の光を燈す物もあれば、用を足したときに水を流す物もある。ロストが泊まれる宿と言うのは、トイレは共同でかつ水桶が用意されており手動で流す造りになっていたり、蝋燭を手渡されて夜を過ごすような宿だ。


 水桶を用意する手間も必要であれば、蝋燭の煤の掃除も余計に手間がかかる。結果、多くの宿ではロスト自体の受け入れを禁止していたり、掃除も不十分な粗悪な宿しか泊まれなかったりする。


 そもそも、まともな職にもつけないロストが旅をして宿に泊まれるような金銭的余裕がある者など滅多にいなく、レリアがとても珍しい存在なのだ。稀な存在のロストに配慮した宿など、滅多にないのは仕方ないだろう。


「ならひだまり亭の場所を教えてほしいでござるよ」

「ひだまり亭はこの道をこう進みまして、この裏路地にございます」


 受付嬢は街の地図を取り出して道を教えてくれる。観光地のホテルのようだ。


「ありがとうでござるよ! では行くでござるか」

「あれ、金の稲穂亭の場所はご存じでしたか?」


 もう用はないと資料室に向かおうとする貞一に、受付嬢が疑問の声を上げる。


「拙者もひだまり亭に泊まるから、大丈夫でござるよ」


 その言葉に、レリアも受付嬢も衝撃が走る。ロストが使える宿屋と言うのは、言わば最低ランクの宿ということだ。場合によっては、野宿の方が快適と思える場合も少なくない。


 その宿に、魔法使いである貞一が泊まる?


「ティーチ様は金の稲穂亭に泊まったほうがいい」

「そうですよ! ひだまり亭は新人冒険者たちが多く利用してますので、うるさいですよ!」

「それならレリア殿も大変でござるよ。レリア殿だけそんな宿に泊まらせるのは忍びないでござる」


 二人から止められるが、ロストが泊まれる宿がそこしかないならパーティである自分もそこに泊まると貞一も引かない。ネスク・テガロでは初めから別々の宿に泊まっていたため気にしなかったが、旅先では違う。


 友人と旅行に行き、自分は旅館に泊まるのに友人はカプセルホテルに泊まるようなものだ。それなら自分もカプセルホテルに泊まると思うだろう。貞一も同じ気持ちだ。


 押し問答が続くが、どちらも折れるつもりはないようだ。


「な、なら! 金の稲穂亭に紹介状を書きますので、お連れのロストの方も泊まれるよう頼んでみます!」


 受付嬢が折衷案を用意する。せっかくこの街に来てくれた貞一イケメンには、どうせならいい宿に泊まってもらいたい。彼女のホスピタリティが前面に押し出された結果だ。


「いいのでござるか?」

「ええ、もちろんです。ただ、渋られるかもしれませんので、そのあたりは交渉次第ですから、あなたも頑張ってくださいね」


 受付嬢がレリアに思いを託す。お互い貞一にいい宿に泊まってほしいという思いが一致していた。


 サラサラと紹介状という名のお願い状を書き上げる受付嬢。貞一はそれを受け取り、資料室へと向かった。




 ◇




 カルマの法則はご存じだろうか。良いことも悪いことも、最後は自分に返ってくる。それがカルマの法則だ。


 貞一は地球で過ごした30年間、いじめを受け嘲笑ちょうしょうされさげすまれて生きてきた。恨みこそしたが、貞一はやり返すことはせずに生きてきた。


 やり返す度胸が無いという話ではない。もちろん、いじめていた本人たちにやり返すことは怖くてできなかったが、他の人に対してもその当てつけをしないで生きてきた。


 例えばオンラインゲーム。敵のプレイヤーに対して舐めプや煽り行為もしてきてない。例えばSNS。匿名にかこつけて心無い言葉を投げつけることもしない。それは一重に、自分がされて嫌だからこそ、他人にもすることはなかった。


 何でこんな話をするかって?


 つまり、カルマの法則にのっとれば、貞一にはそろそろいい事が起きてもいい頃だということだ。


 ああ、ゴッドよ。ついに拙者にもこの日が来てしまったのでござるよ。


「すまないティーチ様。まさか私と同じ部屋になってしまうとは」


 申し訳なさそうにするレリア。場所は金の稲穂亭のツインの一室。その部屋に、貞一とレリアはいた。


「いいいいや? 気にすることはななないでござるよ? しょうがない、そう! これはしょうがないんでござるよ、うんうん」


 部屋に入ったというのにバッグもおかず、キョドキョドと視線を彷徨わす様は、模範的な童貞のそれ。貞一はとうとう、レリアと共に同じホテルに泊まるという快挙を成し遂げたのだ。


 さかのぼること少し前。金の稲穂亭に訪れた時のことだ。


 受付嬢からもらった紹介状を見せると、露骨に渋りだす店員。ロストを泊めるということは、他の客に対してもいい印象を与えないのだ。


 かつて海外で黒人の宿泊禁止をしていたホテルがあるように、この世界ではロストが差別の対象とされている。格式が高いホテルはなおさらロストの受け入れを拒絶する。まるで、ロストが泊まるだけで品格が落ちるような、そんな空気が当たり前の様にできてしまっている。


 だが、貞一が魔法使いと知ると、店員も無碍むげにはできなかった。


 魔法使いを泊めるというのは、宿にとって最高の宣伝文句となる。貴族は魔境の管理が仕事であるため、万が一に備え普段領地から出ることは無い。出たとしても、王都に召集がかかった時や、魔王を討伐して得た素材を納めに行く時などだろう。


 だからこそ、滅多に訪れない貴族は是が非でも泊めたい。しかし、タイミングが悪かった。


 今の季節は収穫時の秋。買い付けに他の街から商人が多く訪れており、繁忙期だ。そのため、空き部屋も少ない。


 そして、ロストに一室貸せば、それは宿がロストを受け入れお客様としてもてなすということを意味する。差別を差別と思わず、それが常識と認識しているからこそ、そんな対応は宿側にとっては絶対にしたくない行為だ。


 そこで宿側が提案したのが、同じ部屋に泊まるのならばいいと言う条件だ。つまり、『私たちはあくまで魔法使い様を泊め、ついでに使用人も宿に入れてあげるだけだよ』という体裁を取りたいということだ。そのため、食堂は貞一だけしか利用できない制約などもある。


 その提案を貞一はもちろん諸手もろてを挙げて歓迎し、今に至る。


 既に買い出しも済ませ、夕飯も外で済ませてきた二人。後やることといったら、身体を清めて寝るくらいなものだ。


 ネスク・テガロには銭湯があったが、残念ながらこの街にはない。そのため、部屋にあるシャワールームのような小さい部屋で魔道具から水を出し、身体を拭ってお終いだ。そう言った用途に使う部屋のため、きちんとタイル張りで撥水もするし、排水口も床の隅にある。


 当然魔道具は魔力無ロストのレリアでは扱えないが、貞一が強化魔法をかければレリアでも魔道具を扱えるようになるため問題ない。


「そそ、それじゃあ強化魔法をかけるでござるね」

「ああ、ありがとう」


 いつまでも直立不動の貞一とは違い、レリアは荷物を置き、すでに身支度を整えていた。普段目深に被っているフード付きのマントも外し、飾り気の無い仮面も取り外している。


 つまりレリアは『状態:女神』になっており、正視させられお礼を言われれば、貞一の貞一も直立不動になってしまう。


「【オゥフ】」


 若干発音が異なっているが、問題なく魔法は発動したようだ。ついでに貞一の貞一も魔法が暴発してしまったようだ。腰を屈めて先にシャワールームへ行く様は、オナニーデストロイヤーの面目躍如(やくじょ)と言ったところか。


 残念ながらテレビもないこの世界で宿ですることは少ない。荷物の整理をし、シャワールームで身体を清めて衣服の洗濯を行い、装備の汚れなどを掃除するくらいだろう。洗濯や装備の点検などは常日頃しているため、手間もかからずすぐ終わる。


 それが終わってしまえば、やることは無し。いや、ヤることはある。あるのだが・・・


「それじゃ、もう寝よう」

「は、はひ」


 レリアは灯りをともす魔道具を切ると、部屋には暗闇と静寂が訪れる。部屋という密室は、野営をしているよりもずっと鮮明に離れたベッドで眠るレリアを感じることができる。


 全神経をもってレリアを意識している貞一は大変・・・大変気持ち悪いのだが、寝込みを襲うようなことはしない。いや、出来ないと言ったほうが正しいか。


 そんな度胸を貞一が持っているはずも無い。妄想でさえ、自分がレリアを襲うことはせず、何故かレリアが迫ってきて手取り足取りしてくれる。そんな童貞感丸出しのマグロ男妄想しかしていないのだ。


 結局、せっかく同じ部屋に泊まっているのに何か進展があることもなく、ただただ貞一が夜中にトイレに頻繁に閉じこもるだけで終わる結果であった。

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