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ブサイク、冒険者になる

 冒険者ギルドに着いた貞一は、ブーシィと別れ一人受付へと向かう。


 さて皆さんに質問でござるよ。冒険者ギルドの受付嬢っていったらどんな人物を想像するでしょ~か?


 ・・・正解! そう! 美人でござるよね!


 コンビニの可愛い定員さんと話すことさえできない拙者なのに、美人な受付嬢と話すことなんてできるでござろうか・・・? それも異世界の美人。きっと日本のコンビニではお目にかかれないレベルの美女のはず。アイドルや女優並みでござるよ。


 話す話せないは抜きにして、それはそれで目の保養になってありだなと思う貞一。


 それにやることは多いでござる。冒険者の登録だけではなく、どんな依頼があるかも教えてもらい、冒険者初心者セットは何を用意すればいいのか教えてもらい、おすすめの宿に道具屋に武具屋に魔法道具ショップまで聞くのでござる。


 今までの拙者であれば速攻匙を投げている案件でござる。しかし! 拙者は今までとは違うんでござるよ! ブーシィ殿はブスでござるが女性! すでにあれだけ会話できたんでござる! 美人な受付嬢だろうと、やってやれないことは無いんでござるよ!


 鼻息荒く、貞一は気持ちを高めていく。事前に心の準備をしておかなければ、貞一では美人な受付嬢に立ち向かえないのだ。貞一にとって美人な受付嬢は、あの恐ろしかったゴブリンよりもはるかに強大な相手に感じる。


 行くでござる! 男を見せるでござるよ! 拙者ッ!!


 貞一は受付へ向かって歩き出す。今は昼過ぎということもあってか受付は混雑しておらず、空いている場所もあった。受付が5つもあるため、きっと朝や夕方はもっと混雑しているのだろう。


「ようこそ冒険者ギルドへ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」


 爽やかなスマイルを浮かべ、受付嬢が問いかけてくる。定型文らしき台詞は、淀みなく聞き取りやすいはっきりとした声だ。その様はどうに入っており、受付嬢という仕事を誇りに思い、研鑽を積んできた努力と経験が伺えた。


 そんな受付嬢として完ぺきな対応をとる彼女を見て、貞一は恐れ、おののき、震えていた。その姿はまるで、眼を覆いたくなるような現実を突きつけられたかのように、絶望に染まっている。


 ど、どういうことでござるか・・・!? これが現実だとでもいうのでござるか!? 認めない! 拙者は認めないでござるよッ!!


 貞一の前でにこやかに微笑む受付嬢。


 彼女は―――ブスだった。




 ◇




 貞一はへたり込みそうになる足に喝を入れ、なんとか踏みとどまる。ブーシィに続き受付嬢までブスだとは、流石に予想外であった。


 完全な不意打ちでござる・・・。拙者でなければ死んでいたでござるよ・・・。


 思わず噴き出た冷や汗をぬぐい、貞一は希望を探す。


 たまたま・・・そう! たまたまでござる! たまたま拙者が並んだ場所が悪かったんでござる! きっと他の受付嬢は―――!


 希望を胸に他の受付嬢に視線を向ける。お揃いの制服を着込み、にこやかに接客する彼女たち。受付嬢は一人の例外もなく―――ブスであった。


 拙者は限界だと思った。


 この街の顔面偏差値ワースト5なんじゃないかと疑いたくなるほど、彼女たち5人はブスだ。地味で芋っぽいだけの田舎娘や、髪型や雰囲気がブスというわけではない。普通の顔だちの娘すらいない。全員、無情なほどブスなのだ。


 ・・・何でござるか? この世界にはブスしかいないんでござるか? こんなの誰得でござるか? 拙者ブス専ではないでござるよ?


 先ほどまで込めていた気合が、音を立てて萎んでいく。


 冒険者ギルドともなると野蛮な相手とも話すことがあるだろうし、可愛い子には務まらないんでござるかねぇ? それにしてもでござるよ。期待を大幅に裏切られた気分でござる・・・。ホームランを約束した選手がバントしたくらい裏切られた気分でござるよ・・・。


 冒険者であれば受付嬢と話すことはおかしなことではない。依頼について詳しく聞くことだって、命がかかっているのだから当然だ。故に、貞一にとっては受付嬢こそ美人と気兼ねなく話すことができる相手なのだ。いや、唯一の存在といっても過言ではないだろう。貞一が美人と話すには、『貴方と話すのは冒険者として必要なことだからでござる。べ、別に貴方と話したいわけじゃないんでござるからね! 勘違いしないで欲しいでござるよ!』という建前という名の心のプロテクトが必要なのだ。


 期待度が限りなく高かったため、貞一のショックはとても大きかった。それこそ、『これは神アニメでござる! 最高でござるぞ!! ブヒョーー!!』と騒いでいたアニメの最終話を、仕事の都合でリアルタイム視聴できずに録画予約せざるおえなく、残業を終わらせ意気揚々と美味しいご飯(アニメのお供)も買って再生したら、野球中継の延長でテレビショッピングが録画されていた時なみのショックさだ。


 なんでござるかこれ。拙者なにか悪いことでもしたでござるか? こうも期待を裏切られてブスばかり・・・。


 しかし、貞一はどん底に沈んでいた気持ちを何とか立て直す。


 いや、拙者はブスとはもう話せるでござる! いろいろ聞く必要があったし、逆に話しやすくてラッキーと思うでござる! 美女との会話(来るべき戦い)の前哨戦でござるよ!


 貞一は気合を入れなおし、受付嬢に向き直る。


 デーパからすでに冒険者登録の手続きについて、事前に確認を済ましている。貞一が気を付けることは一つ。『自身が魔法使いであることを伏せる』こと。


『魔法使いって、つまり貴族を指すのよね。ティーチが魔法使いって伝えたら騒ぎになるわよ。騒がれたくなければ、魔法使いってことは秘密にすることね。あ、ギルド長には私から伝えておくから、受付には適当言って大丈夫よ』


 とはブーシィ談だ。


 ブーシィ殿は拙者が騒がれたくないということを感づいているようでござるね。何か言ってくるわけでもないでござるし、提案に乗るでござるよ。


 ブーシィは貞一が王家の関係者であればこの内容で察するだろうし、囲われた村人であれば騒ぎになってチャチャが入ることが嫌なので、どちらでも問題ないこの提案をしたのだ。チャチャとはもちろん、本物の王家が出張ってくることだ。平民から産まれた魔法使いは祝福の子とされ、例外なく王都へ送られる。騒ぎになれば王家から派遣されている管理官・・・が横やりを入れることは必須であり、それではきたるだろう魔王との戦いに貞一を巻き込めないため、魔法使いであることを伏せさせたのだ。


 よし。冒険者になるでござるよ。いざ参らん!


「冒険者の登録をお願いしたいでござる」




 ◇




 冒険者ギルド。ここは冒険者に仕事の斡旋を行う場所だ。魔物の討伐に商人や貴族の護衛、採取の依頼や探索など、様々な仕事が日夜舞い込んでくる。


 危険な仕事も多いため粗野で野蛮な者もいるが、常識まで欠けている者は極少数だ。冒険者も信用が第一。信用を欠くような行動をすれば、斡旋しているギルドの信用も落ちてしまう。そのため、問題を起こすギルドメンバーにはギルドから依頼の斡旋をしてもらえず干されてしまう。逆に、人気が出れば名指しでの依頼もあるため、横暴な態度をとる者はいない。


 そんな冒険者たちの仕事を補佐する事務仕事に、受付嬢がある。彼女たちは新規の冒険者登録に始まり、依頼者の窓口、冒険者に合った依頼の割り振りなどが仕事だ。ただニコニコしていればいいだけではない。依頼の内容を精査し、冒険者がしっかりと生還できるようアドバイスや適正を見極めたりと、気の抜けない仕事だ。彼女たちは冒険者の命を預かり、魔物の脅威に怯える依頼者たちの命も預かっているのだ。思っている以上に神経を使う、大変な仕事なのだ。


 そして、冒険者ギルドの顔とも言える彼女たちは、能力だけでなく容姿も優れていなければならない。可愛い受付嬢がいる。それだけでその街に定着する冒険者の数が増えるのだから、男とは単純なものだ。


 そんな誰もが憧れる冒険者ギルドの受付嬢であるクラシィは、書類整理を行いながら誰にも聞こえないようにため息を吐く。


(はぁ・・・。同僚の彼氏カッコいい自慢がいい加減うざい・・・)


 同僚の話を思い出し、思わず顔をしかめそうになってしまう。


(あぁも自慢されると、素直にお祝いできないよ。まったく)


 クラシィの同僚は、幸せのおすそ分け(強制配布)を実施しており、その被害者であるクラシィは辟易へきえきしていた。


(私も彼氏つくればいいんだけど、ピンとくる男がいないのよねぇ)


 クラシィは受付嬢というスペックの高さとブランド力で、多くの男から口説かれている。しかし、どうにもこれだ! という男が現れないのだ。


 業務とは関係ないことを考えているが、この時間は冒険者も出払っており雑務を片付ける時間。その雑務も粗方終えてしまっているため、暇だったのだ。


 最近頻発しているゴブリンの目撃情報を纏めようかと、引き出しの書類に手をかけようとした時だった。自分の前に誰かが来た気配を感じる。受付嬢の前に来る者など決まっている。この時間では依頼の申し込みか、冒険者登録だろう。


 クラシィは何回も繰り返してきた定型文を、機械的に爽やかな笑みを浮かべて告げる。


「ようこそ冒険者ギルドへ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付嬢クラシィは、新しくやってきた目の前の男を眺める。そして―――魂を奪われた。


 大きく立派な上背に、たくましくもっちりふくよかな体型。そして何よりもその顔!! イケメン揃いで有名な冒険者パーティ治癒姫のメンバーも霞んでしまうほどのかっこよさだ。


 クラシィは、目の前の男のあまりのかっこよさに、思わず見惚れてしまう。


「冒険者の登録をお願いしたいでござる」


(えーーー!? うそうそ! 何このイケメン!!! キャーーーッ!! 初めて見る人だ! 誰かの知り合い? 運命感じちゃうよ!! 止まらないよ!!??)


 さっきまでどこか気怠げだったクラシィだが、今は恋する乙女のように顔は赤く蒸気し心はふわっふわしている。クラシィは今まさに『世界に色が付く』という言葉を実感していた。


「あのぉ・・・? 登録したいんでござるが・・・」

「え? あ! ああ! すいませんボーっとしてしまいました!」


(貴方に見・惚・れ・て! キャーーー!!)


 顔に手を当ていやんいやんと振りたい気持ちを抑え、なんとか登録用紙を取り出す。


「それでは登録手続きを始めさせていただきますね。まず初めに冒険者についてと、注意事項をご説明いたします。それらを確認し、納得されましたら正式な登録を進めさせていただきます」


 冒険者の登録に来る者たちの多くは二つに分けられる。冒険譚に憧れ英雄を夢見る少年少女と、〝自由″をはき違えているならず者だ。前者には現実を、後者にはくぎを刺すのも受付嬢の仕事だ。


「まず冒険者という職業についてお話いたしますね。冒険者の仕事は何かご存知でしょうか?」

「魔物の討伐でござるか?」

「そうです。ですが、本質は命のやり取りです。魔物を殺すということは、魔物に殺されることもある、ということでもあります。冒険者の死亡率は高く、特に新人冒険者の5人に1人は依頼中に命を落とすと言われております」


 冒険者の仕事は危険が常に付きまとう。ベテランになればなるほど危険に対する対処や回避方法に長けていくが、それでもあっけなく死んでしまうことがある。冒険者とはそんな世界だ。


「もちろんそうならないように、ギルドとしても戦闘訓練をはじめ、依頼の注意点や魔物の特徴、魔境探索についてなどのレクチャーや斡旋する依頼の選別などバックアップはしております。それでも死んでしまう。そういった職業であることをご理解ください」


 冒険者は我が強い人間が多く、特に新人は自分の力を過剰に評価したり、功を焦る傾向にある。身の丈に合わない依頼は死を意味している。初めのうちに調子に乗ったら死ぬぞと教えておく必要があるのだ。


「そして、戦うのは必ずしも魔物だけではありません。盗賊・・・つまり人間とも戦うことがあります。護衛任務で盗賊に襲われての戦闘もあれば、直接盗賊の討伐という依頼もあります」

「に、人間でござるか・・・」

「はい。盗賊と戦うリスクのある依頼を避ければ問題ありませんが、魔境に出入りする冒険者を狙った盗賊もおりますので、必ずしも戦うことが無いとは言えません」


 ネスク・テガロの周囲に盗賊被害はあまりないが、ゼロではない。それに冒険者は街と街を転々とする者もいる。盗賊は街から離れた場所を拠点としていることが多く、異動の多い冒険者は盗賊との戦闘を避けては通れない。


「依頼の内容は多岐にわたりますので後程簡単に説明いたしますが、これが冒険者という職業です。剣一本で一獲千金も夢ではありませんが、皆様が思っている以上に努力が必要で、泥臭く地味な依頼をコツコツとこなす忍耐も必要になります。それでも、冒険者になる覚悟はありますか?」


 登録手続きの前置きがまるで冒険者になる人員を減らすような内容だが、それは違う。正しくは、「冒険者に登録するがすぐに辞める、またはすぐに死ぬ人員を減らす」だ。先も述べた通り、冒険者ギルドは新人の冒険者に対し、それなりに時間とお金をかけて育成するカリキュラムを構築している。手塩にかけて育てた新人が、『思ってたのと違う』といって姿を消したり、『魔物を倒すのが冒険者だろ!』と息巻いて消息を絶つのを防ぐのが目的だ。


「人間相手に・・・爆裂・・・・・・いや、無理・・・・・・でも・・・」


 受付嬢の話を聞いた男はブツブツと考え込む。話を聞き流さずしっかり聞くあたり、目の前の男は少なくとも新人のうちにすぐ死ぬリスクは少ないだろう。


(そうそう。そうやって考える人は結構冒険者を諦めちゃったりするのよね~・・・って!! それはダメよ!!! この御方が冒険者にならないと、私との接点が無くなっちゃうじゃない!!!)


 いつものように新人を脅し、ある種(ふる)いにかけていたクラシィは衝撃の事実に気づく。もし目の前の美男子・・・が冒険者を諦めれば、美人受付嬢とイケメン冒険者という王道カップルが崩れるどころか、名前すら聞けずに別れてしまうかもしれないのだ。


 そんな悲劇、冒険者ギルドが許してもクラシィは許せない。


「で・す・が!! ネスク・テガロ周辺には盗賊はめったに表れないので戦うリスクはほぼありませんし、見たところとても豊富な魔力をお持ちのようですので、魔境であってもよほどの相手でもない限り遅れをとることはないのではないでしょうか! それに! もし冒険者が合わないと思われましたら脱退することも可能ですので、ぜひ! ぜひ一度ご登録をお勧めいたします!!」

「でも、死ぬ覚悟はまだないでござるし・・・」

「やらぬ後悔よりやる後悔!! まずはご登録し、冒険者という職業を体験されてみるのがいいのではないでしょうか!? ギルドはあなたを全力で支援します!! 誰も見たことのない景色を! 素材を! 武器を手に入れ! 仲間たちと共に数多あまたの困難を打ち砕くッ!!! それこそが冒険者! それ故に冒険者!!! そんな冒険者に! あなたは!! 登録、しますよね?」

「・・・フ、フゴッ」

「ご登録、ありがとうございま~す♪」


 男はクラシィの圧に気おされ、思わず頷いてしまう。周囲からはクラシィの演説に対する拍手がまばらに聞こえてくる。


 こんな無理やり登録させるようなことは本来許されるはずもないのだが、様子を窺っていた他の受付嬢たちは、絶世美男子を引き留めたクラシィに対し、惜しみない賞賛を込めてサムズアップをしていた。


「あ、それと登録の前の確認といたしまして、犯罪履歴はありますか? 後に発覚した場合は重大なペナルティが課せられます」

「犯罪はしたことないでござるよ」

「今後犯罪に手を染めた場合、除籍処分になりますのでお気を付けください」

「心得たでござる」


 犯罪を犯し逃走すれば、冒険者ギルドにも追われることになる。信用第一の冒険者ギルドは、犯罪者に厳しいのだ。


 これが冒険者ギルドが治安維持の一端を担っているといわれる理由でもある。冒険者の様にハイリスク ハイリターンな仕事は、どうしても気性の荒い者が多く集まる傾向にある。そういった者は、冒険者ギルドに所属しないと盗賊や犯罪組織に所属するパターンが多い。冒険者ギルドがそういった者たちの受け皿となり、犯罪を犯さぬよう目を見張らせているのだ。


 過去のデータとしても、冒険者ギルドができてからは盗賊の数が減っていっているという実績もある。


(ま、もう私の心を盗む窃盗罪はしてるんですけどね!! ペナルティで私の彼氏にしちゃうぞ☆)


 そんなアホなことを考えながらも、クラシィは登録手続きを進めてゆく。


「では登録を行わさせていただきます。まずはじめに、登録料として5,000ゴールドをいただきます」

「5,000ゴールドでござるか。これでいいでござるか?」


 そういって男は真新しい10,000ゴールド札を背負っていたリュックから取り出した。


 当然の行動ではあるが、それによって男の評価が一段階上がる。


 冒険者に登録するほとんどの者はお金を持っていない。当然だ。これから金を稼ぐために冒険者に登録するのに、なぜ金を払うのか。たった5,000ゴールドでも、彼らにとっては惜む金額なのだ。


 それもそのはず。彼らは田畑を継げなかった農家の次男や三男、それに根無し草だっている。職を得るのに頭もコネも運も必要とせず、一発逆転の夢さえある冒険者になるために訪れたのだ。なけなしの金を出し渋るのも、無理もない。


 この登録費はギルドで保管する登録用紙と、発行する冒険者証の代金だ。必要な経費だが、かといって払えずに追い返すのは忍びない。本当に金の無い者たちには、ギルドの雑用を任せることで登録費とする救済措置もある。


 だが、目の前の男は当然のようにお金を、それも真新しい(・・・・)10,000ゴールド札を出してきた。


 これが意味することは、事前に冒険者の登録について情報を仕入れていたか、金に困っていないかの二択だ。前者であれば事前に情報を得るという冒険者にとって必要不可欠なスキルが身についていることがわかり、後者であれば、金の心配がない環境にいながら、あえて命の危険がある冒険者を選択したことになる。


 どちらでも冒険者として将来が期待できる。ギルドとしては万々歳の人材だ。


「10,000ゴールドですね。では、こちらお釣りの5,000ゴールドとなります。それでは、こちらの用紙に記入をお願いします。代筆はご希望いたしますか?」

「代筆をお願いするでござる」


 冒険者の中には、文字をかける者は少ない。各々が自分の将来なりたいものにのみ注力するのが普通だ。商人を目指すなら物の良し悪しを学んだり計算を幼いころから勉強するし、冒険者を目指すならペンよりも剣を握って修行するのが常だ。


 ただ、クラシィは目の前に立っている絶世の美男子に疑問を抱く。


(う~ん、身なりも綺麗だし、これだけイケメンなんだから魔力だって豊富。ってことは名家の出かと思ったけど、字が書けないとなると違ったかな?)


 見たところ、装備は腰に佩いている短剣しか身に着けていない。ちらりと手を見ても、剣ダコはおろか屋外の作業をしたことがないのではないかと思えるほどきれいな手をしている。魔力量が多く、身体強化の魔法が強い証だ。


 一般に、顔が美形であればあるほど魔力の総量は上がっていき、醜くなるほど魔力は枯渇していくと言われている。現に、魔法使いである貴族は、全員が美男美女だと言っても過言ではない。その法則から言えば、目の前の男は魔法使いなのではないかとさえ思えてしまう。


(ま、それはこれから根掘り葉掘り聞けばいいわね!)


 業務の一環として目の前のイケメンの情報を知ることができる受付嬢になれたことを、クラシィは深く感謝した。


「記入すると言っても、書く内容は多くありません。お名前と、戦闘スタイル、それと特記事項の三つだけです。あ、性別は男性でよろしいですよね?」

「男でござるよ。名前は貞一ていいちでござる」


(やっぱり聞いたことない名前ね。こんなにイケメンだったらこの辺一帯で噂になってるだろうし、東領以外から来たのかしら。・・・となると、訳ありの匂いがしますよ! 訳ありのイケメン! やばい・・・鼻血出そう・・・。あ、もう出てた)


 クラシィは貞一にバレることなく高速で鼻血を拭い、ペンを走らせる。クラシィの思考は暴走しているが、これまで何十回何百回と書き続けてきた記入用紙のため、手だけは問題なく動かせていた。


「ティーチ様ですね。男性っと」

「いや・・・」

「どうかしましたか?」

「なんでもないでござる」


 目の前のイケメン、ティーチが何か言いたそうにしていたが、気のせいだったようだ。


(お名前はティーチ様・・・なんて素敵な響き・・・! ミステリアスな冒険者の彼と、そんな彼の帰りを健気に待つ受付嬢の私・・・キャーーーーー!! お似合い! お似合いよクラシィ!!)


 未だ頭の中はお花畑にトリップしているクラシィ。強靭な精神を持って、なんとか澄ました笑顔を維持することに成功しているが、限界は近かった。


「次に戦闘スタイルですね。前衛、後衛などのざっくりとしたものでも構いませんし、弓や片手剣など装備を詳しく書く方もいらっしゃいます。他には、薬草や解体の知識がある、レンジャーをこなせるなど、ご自身の冒険者としての長所を記入いたします。特に決まっていなければ、未定でも構いません」

「未定でもいいんでござるか?」


 村から出てきたばかりの新人は、自分がこれから扱う武器すら決まっていないこともざらにある。そういった者たちは、新人のうちに自分に合った武器を選び、戦い方を学んでいく。


「ですので、登録時は未定としおいて、遅くとも冒険者ランクの昇級までにこちらの欄を埋めることも可能となっております」

「なるほどでござるよ。なら拙者は未定でお願いするでござる」


 この新人も例にもれず、これから冒険者としての方向を探っていくことになるのだろう。


「質問でござるが、最後の特記事項とは何を書けばよいのでござるか?」

「そうですね。冒険者は仕事中に命を落とすこともありますので、遺品の届け先や相続について書かれることが多いですね」


 親や故郷と離れ活動する冒険者でも、多くが遺品をそういった故郷へ届けてほしいという者がいる。冒険者の装備は、基本的に拾った者に所有権が渡る。そのため、遺品などは身分証明となるタグや金にならないモノだけだ。特記事項に書ける内容は、そういった金にならない遺品の受取先か、拾い主が装備を売った際の優先購入者を指名するくらいだ。


 それでも遺品を遺したいというのは、自分が生きた証を残したいからだろうか。


「う~ん、特記事項に書くことは特に無いでござるね」


(やっぱり訳ありなのね・・・! 最高すぎるわ!!)


 クラシィは近くにいた同僚に記入用紙を渡し、冒険者の身分証明となるネームタグの作成をお願いする。


「以上で登録用紙の記入は終わりです。ネームタグができるまでに、冒険者のランクについて説明いたしますね」


 直視できないほどにティーチは輝いて見えるが、受付嬢としての経験でなんとかティーチの目を見ながら話すことができている。クラシィはティーチのご尊顔を超高画質の8K動画で脳に焼き付けているため、脳内HDDが容量オーバーで悲鳴を上げていた。


「冒険者のランクは全部で5つあります。上からミスリル、ゴールド、シルバー、カッパー、アイアンとなっております。ティーチ様は登録したばかりですので、一番下のアイアンからになります」


 魔力量が多い者は、一人いるだけでパーティのランクが一つ上がるとまで言われている。冒険者のランクごとに魔力量を見ていけば一発でわかるのだが、アイアン・カッパーなどは魔力量が少ない冒険者で埋められ、シルバー以上は総じて魔力量が格段に多い冒険者しかいない。


 この世界では性別や年齢を問わず、魔力量が強さを測る指標となっている。どれだけ鍛え上げようと魔力量が少なければ、魔力の多い子供にすら力負けしてしまう。それほどまでに魔力による身体強化の魔法は強力であり、それ故、この世界では何よりも魔力量が重視されている。


 そのため、魔力量が多い者はアイアンから始まることに不満を持つ。『なんで俺よりも弱い奴がカッパーやシルバーなんだ』と。これは新人が驕り大口を叩いているわけではなく、事実として新人の方が強いのだ。自分よりも高給取りが無能であれば、思わず文句の一つでも言いたくなるのと一緒だ。


 冒険者パーティ治癒姫のブーシィも、その一人だ。パーティメンバーは侯爵家お抱えの騎士団の団員のため精鋭であるし、ブーシィは魔法使いのため文句を言いたくなるのもわかってしまうが、規則は規則だ。例えいくら強かろうと、冒険者としての知識は不足しているのだからしょうがない。


 それでもギルド側が配慮に配慮して、治癒姫がシルバー級になったのは登録してからわずか1年足らずだ。例外措置ではあるが、冒険者パーティ治癒姫がそれだけの能力があることをギルド側も確認しているからこその措置だ。まぁ、そもそも街の守護者である魔法使いが冒険者になること自体が例外中の例外のため、こういった対応も頷ける。


 目の前の男の魔力量は、見ただけでも相当あるとわかる。きっと彼も気分を害しているだろうと、クラシィは下げた頭を上げ、恐る恐るティーチの顔を見る。


「もちろんでござるよ! 拙者は右も左もわからないでござるし、アイアン級で冒険者のイロハを学ぶでござる!」


 しかし、予想に反しティーチは当然とばかりに頷いていた。その様子には皮肉も怒りも失望も感じられなかった。『当然でござろう? むしろいきなり高いランクに入れられても困るでござる』という雰囲気さえ感じられた。


(・・・紳士ッ!!! なんて紳士なの!? ・・・やばい。もうなんか分かんないけどヤバすぎるよッ!!)


 興奮しすぎて視界が霞んできたクラシィだが、そんな様子は一切感じさせない気配でティーチとのやりとりを続ける。


「そう言っていただけますと助かります。冒険者のランクですが、アイアンは新人、カッパーは中堅、シルバーは一流、ゴールドは超一流、ミスリルは伝説級という位置付けです」

「伝説級でござるか」

「そうです。歴史上数える程しかいません。ミスリル級は特別で、国の危機や種の存亡をかけるような戦いで目覚ましい活躍をした方がなれるランクです。現在ミスリル級の冒険者はおりませんので、基本的にゴールド級が一番上だと思ってください」


 ミスリル級は、いわば名誉ランクのようなものだ。狙って成れるものではなく、魔物たちの王である魔王によって大規模な被害を被った街を救ったり、それこそ貴族でさえ被害を被る魔王の討伐くらいしないと与えられない称号なのだ。


「そして、ゴールド級は王国に数えるほどしかいない存在です。残念ながら、ここネスク・テガロにはゴールド級の冒険者はおりません。ですがシルバー級は4パーティと、中級魔境の中では多く在籍しております」

「シルバー級でも4パーティしかいないんでござるか?」

「そうです。冒険者の多くはカッパーかアイアンで、その分同じランクでも強さにばらつきがございます」


 アイアン5年、カッパー10年という言葉があるほど、冒険者のランクは上がりにくいのだ。


「なんでそんなにランクが上がらないんでござるか?」

「その理由は、アイアンのほとんどが素人だからです」


 今までくわしか握ったことがない農家の三男や四男。棒っ切れや錆の浮いた剣で素振りのみ繰り返してきた者。弓矢で村近くに生息する野ウサギや鳥のような小さな獲物を仕留めたことがある者。


 そんな素人同然の者がいきなり魔物と戦えるだろうか?


 答えは否である。最下級の魔物どころか、野生の獣に殺されてしまうのがオチだろう。ひどい者など、魔境はおろかただの森の中で迷いそのまま飢え死にするなんて者もいる始末だ。笑い事ではなく、これが結構多いのが実情だ。


 冒険者の英雄譚を聞いて英雄に憧れ、自分でも英雄に成れると思っている者は、特にすぐ死んでしまう。自分の理想と現実の能力の乖離かいりが激しすぎるのだ。そういう者は難しい依頼を受けたがり、魔物の脅威を低く評価しがちだ。


 冒険者の世界は、魔力の多さでだけでのし上がれるほど甘くない。魔物の特性や弱点、森や洞穴での探索の仕方や戦い方、アイテムの使いどころや引き際など、実に多くのことが冒険者には求められる。


 アイアン級では、森の歩き方や魔物との戦い方、装備の良し悪しや旅の基本など、冒険者としての基礎を積む期間なのだ。もちろん、すでにノウハウを心得ている者ならば昇級は早いが、そんな者は滅多にいない。


 こういった事情から、アイアン級になりたての冒険者とカッパー級に手が届きそうな冒険者では、実力に大きな差が出てきてしまうのだ。アイアン級になりたての冒険者など、言ってしまえばその辺の農民と大差ないのだ。


 そして、冒険者として一端いっぱしと認められたカッパーも同じようなものだ。アイアンの卒業は、冒険者としての基礎を固め、ある程度の魔物と戦えるというだけ。未知の領域への探索や、様々な魔物と戦う知識は持ち合わせていない。


 カッパーでは依頼の幅も増えるため、討伐をメインにするか採取をメインにするかなど、自分の目指すべき姿を描きながら鍛錬を積んでいく。アイアンで培った基礎を活かし、特化型に自分を成長させていくのがカッパーである。もちろん、多くの依頼をこなしているため基礎も万全である。


 クラシィは、このことを噛み砕きながらティーチに説明をした。


「ただ、魔力量が多く強さに問題のない冒険者であれば、昇級もすぐにできると思いますよ」

「そうなんでござるか?」

「アイアンの冒険者は、強さも素人同然です。ですので、アイアンで一から鍛えなおす必要があるんです。魔力が多ければ、強さの方は問題ありません。ですので、冒険者としての基礎知識さえつけていただければ、すぐにカッパーに上がれるでしょう」


(そうです。ブーシィ様と同じく、ティーチ様の昇級も早いものとなるはずです)


 クラシィは大きく頷く。ティーチの紳士な対応を見れば、しっかりと基礎を固めていずれはゴールド級の冒険者になるだろうと。


「あっ! アイアンのプレートができたみたいですね!」


 プレートの作成を頼んでいた同僚が戻ってきた。手渡された黒鉄くろがね製のプレートには、ティーチの名前とネスク・テガロの文字が彫られている。


「これが冒険者の証となるプレートでございます。身分証明だけでなく、万が一(・・・)のときの身元確認にも使われますので、必ず身に着けておいてくださいね」

「わかったでござるよ。しっかり首にぶら下げておくでござる」


 ティーチはそういうと、さっそくプレートを首に下げている。その動きだけで、クラシィは目眩がしてしまいそうなほどくらくらしてしまう。


(はぁ・・・尊い・・・)


 クラシィはすでに悟りの境地まで行きかけていた。


「あ、依頼の種類や、アイアンが受けられる依頼について教えてほしいんでござるよ」

「依頼の種類ですね。依頼は討伐、採取、護衛、助力の4種類です」

「助力でござるか?」

「そうです。お手伝いとかお買い物とか揶揄されることもありますね。単に人力が必要だからという場合もありますし、ティーチ様のように多くの魔力を持っている人を必要としている方や、魔物の知識を求めている方など様々です」


 万屋よろずやみたいでござるね・・・とつぶやくティーチ。全くもってその通りである。だからこそ、冒険者ギルドは街になくてはならない存在なのだ。


「それと、依頼とは別に自身で魔物の討伐や採取を行い、得られた素材を売却することもできます。毎回いい依頼があるとは限りませんので、定期的に素材採取のために魔境へ赴く方も多いです」


 魔境ではただの森では入手できない希少な素材が数多く存在する。実際、冒険者への依頼の多くは魔境がらみであり、魔境で素材を得られれば生計を立てられる。


 その他にも、好きなように自由に旅をし、道中で立ち寄った魔境での素材を街で換金する旅人のような冒険者もいる。冒険者の形は人それぞれなのだ。


「なるほど。わかったでござる。あと最後にこの街でおすすめの宿と、冒険者として必要な物が買える場所を教えてほしいでござるよ」


(や、ややや、宿ですってーーーーー!!!!????? それは、私の・お・う・ち♡ キャーーーー!!! やっばーーーーいいいッッ!!!)


 クラシィはすでに何度も意識がブラックアウトしており、今まで何度も繰り返してきた受付嬢としての振る舞いをトレースするだけの傀儡かいらいと化していた。




 ◇




「はふぅ~・・・」


 クラシィは熱く艶っぽい溜息をこぼす。いつも事務的な対応しか取らないクラシィがそんな態度をとっているのだ。周囲にいる男どもは、皆生唾を呑み込みながらクラシィにくぎ付けとなっている。


 ティーチに安くて食事の美味しいおすすめの宿を教えたり、武器や防具を扱う武具屋などを紹介すると、ティーチは感謝の言葉とともに颯爽とギルドを後にしていった。もちろんおすすめの宿はクラシィの家ではない。冒険者ギルドでも評判の宿だ(クラシィズハウスの近く)。


 そんなティーチが出て行った扉を、クラシィは物憂げに見つめている。


(行ってしまわれた・・・。あんなにドキドキしたのは産まれて初めてじゃないかしら)


 初めてシルバー級のイケメン冒険者に声をかけられたときでも、こんな興奮はしなかっただろう。


「はぁ~・・・」


 思い出すだけでため息が出てしまう。見た目からして豊富な魔力を持っていることが伺え、そんな成功が約束されているのにもかかわらず、一介の受付嬢にも親切に対応してくれる紳士な態度。冒険者についての説明に、目を輝かせて聞いていたあどけない素顔。そして何より、見ているだけで浄化してしまいそうになるほど整った顔立ち。


 そのどれもがクラシィを捉えて離さなかった。


「な~に溜息はいてんだい? 幸せが逃げちまうよ?」


 溜息を吐き続けていたクラシィに、声をかける者がいた。


「ピグーさん。どうしたんですか?」


 治癒姫の一員であるピッグバーナー。遊び人という噂が多い男で、クラシィも声をかけられたことがある。しかし、クラシィはピグーが愛しているのはブーシィだけということを知っていた。以前はそれでも一度くらいならご飯に付き合ってもいいかな、なんて思うこともあったが、今はそんな気が一切わかなかった。正直、ピグーとティーチでは纏っているオーラですら段違いなのだ。


「さっき冒険者登録をしにきた男がいなかったか? えらい面のいい男で、ティーチって名前の人なんだけど」

「ティーチ様ですか? 先ほど私が担当して登録をいたしました」

「あちゃ~! 入れ違いになっちまったか!」


 クラシィはまたもティーチとのやり取りを思い出し、意識が飛びそうになってしまう。


「・・・なるほど。ティーチさんも罪な男だな」


 ピグーはクラシィの様子がおかしいことの原因がわかり、やれやれと首を振る。


「それで、ティーチさんがどこに行ったかわかるかい?」

「え? ああ、はい。おすすめの宿を聞かれましたので、今晩はそちらにいるかと思いますが」

「そいつは助かった! ティーチさんにはちょっと頼みたいことがあってね、その宿教えてくれない?」


 ピグーが爽やかな笑顔を浮かべながら、クラシィに問いかける。普通の女であれば二つ返事で教えているところであるが、ティーチと出会ったクラシィにはピグーの甘いマスクも効かなかった。


 いくらシルバー級の冒険者であるピグーであろうとも、おいそれと他のギルドメンバーのプライベートを明かすわけにはいかないのだ。特に、冒険者は貴重な装備やアイテムを所持している場合が多い。もしピグーがティーチの何かを狙っているとしたら、宿を教えたクラシィまで共犯になってしまう。そんなこと、クラシィの恋心が絶対に許さない。


「そう警戒しないでくれ。これはギルド長も絡んでる案件なんだ。信用できないなら、一度会議室に来てくれ」


 ピグーがそこまで言うなら本当なのだろうが、念には念を入れ会議室に同行することにした。


(ティーチ様・・・。また明日お会いできることを楽しみにしております・・・!)


 恋に恋する受付嬢クラシィ。

 彼女はとうとう、運命の相手に出会ったのだった。

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