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夜④ 4回戦開幕!

最後の戦いが始まります。

生き残るのは誰なんでしょうか。


『明日の昼に行う予定だった4回戦ですが、急遽予定を変更し、今から1時間後に行う事となりました。1時間後、白いドアを通った先で待機していて下さい』


 バトルロイヤル3日目、夜のフェーズ。

 今までは休憩時間として設けられていたこの夜のフェーズだが、どうやら今回は違うらしい。


「はっ。休む暇も与えないってか。女神さまには人間の都合なんてお構い無しらしいな」


「あぁ。だがやる事は変わらん。海藤と砂肝を倒す……それだけだ」


 堂々と言い切る万丈。

 ……コイツ、仮に海藤と砂肝を倒したとして、その先の事は考えているのだろうか。

 まぁもちろん奴らを倒す事は簡単じゃないから、そんな状況になるかも分からないが。


「ところで小間、さっき何を言いかけたんだ? 何か思いついたのか?」


「ん? あぁ、なんでもねぇよ。わりーけど、先に行っててもらっていいか? 少し一人になりたい」


 本当は話しておきたかったが、その時になったらきっと分かる事だろう。


「あぁ分かった」


 万丈はそう言って俺の部屋から足早に出ていった。

 俺は、なんとなく自室を見渡す。


「このバトルロイヤルが始まってまだ3日目か……」


 一時はどうなる事かと思ったが、結果的に残り4人まで生き残ってしまった。


「……静かだな」


 夜は休憩時間だってのに、思えば随分と騒がしかったように思える。

 クレアにはボコられたし、気の迷いでデブスと一夜を共にしたし、変な夢を2日連続で見るし……。


「でもあいつら……もういねぇんだよな」


 少し寂しさのようなものを覚える俺は、ベッドで横になりぼーっと天井を見上げる。

 恐らく、この4回戦が最後の戦いになるだろう。

 魔王である海藤も砂肝も、結局途中で倒す事は叶わず、ついに直接対決を迎えることとなってしまった。

 

 俺は今、何を思っているのだろう。

 異世界に転生して、新たな異能を手に入れてこの股間の竜とおさらばしたいか? 異世界で新たな人生を謳歌したいか? ……そう自分に問いかけたが、どれもしっくりはこなかった。

 どうやら俺は、まだ自分という人間が生きている事が許せないでいるらしい。でも、今までの中でも死に迫るような危機は何度かあった。だがその度に俺は死を恐れた。恐れてしまった。

 理性では死を望んでいても、本能が死を拒んでいるのか。分からない、自分の事が何も。


「……あの野郎、()()()()()()()()()()


 その違和感は3回戦終了時からあった。心の中がどす黒い何かで埋め尽くされていく感じ。

 もしこれが外に溢れ出たら、恐らく俺は自分を保てないだろう。


「万丈……もしも俺と……」


 俺は、先ほど万丈に言いかけた言葉を思い出す。

 このバトルロイヤルの結果がどうあれ、俺は……


「いや、今はいいか……。まずは目の前の敵に集中する……」


 海藤と砂肝。戦っていくうちに、こいつら悪党を異世界に行かせてはならないという、ガラにもない正義感が芽生えていくのを感じた。だが、俺が万丈と違うのは、俺は断じて正義の味方なんかじゃ……勇者なんかじゃないって事。残念ながら、俺は間違いなくあちら側の人間だ。

 だがそれでも、あの2人の異世界転生は俺が阻止しなければならない。原因を辿っていけば、異世界や人間界があんな事になったのは俺のせいだ。なら、きちんとケジメつけねぇとな。


「……全部、壊してやるよ」


 俺はベッドから飛び起きたまま部屋を出て、白いドアへと向かった。



--------------------



「……なんだここ?」


 白いドアを通った先は、まるで無人島だった。そして俺の目の前には、既に他の3人のプレイヤーたちが立っていた。どうやら俺が最後だったらしいな。

 俺たちプレイヤーがいるのは、広大な海と島の波打ち際。足元はサラサラの砂で埋め尽くされている。島側には巨大な森林が、上には満点の星空が広がっていた。本当、バトルロイヤルには勿体ないくらいの絶景だ。


「つか海はともかく島デカっ……。どんだけ広いんだよここ」


「正確には島ではありませんよ」


「……毎度心臓に悪いな、女神」


 いつの間にやら接近していた女神がぼそっとそう言った。


「4回戦のステージは海ステージと地上ステージに分かれています。両ステージ共に広さは無限。皆さんには、ここで最後の戦いをしてもらいます」


「えっ? 無限って……」


 今までとは桁違いの規模に、流石に驚く俺。


「ハッ。ンなこたァどうでもいい」


 横から白いオールバックの男、海藤咲夜が不機嫌そうに口を挟んできた。


「女神サマよォ。全員揃ったんだし、とっとと4回戦のルールを説明しろよ」


 海藤がそう言うと、砂肝と万丈も耳を傾ける。

 今までも地味に面倒なルールが多かったからな。今回はどんな面倒なルールがあるのだろうか。


「あぁ。その件ですが、4回戦に細かいルールはありません。ライフがゼロになったら負け、最後の一人になるまで存分に戦ってもらいます」


 だが、女神の口から語られた4回戦の内容は、俺たちにとって予想外のものだった。

 拍子抜けというかなんというか。最後の最後で最もシンプルな戦いだな。


「ハッ。やっとバトルロイヤルらしくなったなァ。ちまちまとクソダリィルールばっかだったからよォ。これで思う存分コイツらをぶっ殺せるぜェ……」


「そうですね。まぁ今までと違う点が一つあるとすれば……ゲストがいることくらいでしょうか」


「ゲストだと?」


 女神の一言に反応する万丈。

 すると女神の背後から、少し小柄なゴスロリ少女がひょこっと姿を現した。真っ黒なゴスロリ衣装とは正反対の真っ白な肌。暗めのワインレッドのショートボブに、満月のような黄金の瞳、女神に勝るとも劣らない端正な顔立ち。そして小柄な体に不釣り合いな大きな胸。まさにロリ巨乳美少女と呼ぶに相応しい女の子だった。


「こんちわっす。今回のバトルロイヤルの観戦にきましたー。よろしくでーっす」


 外見からは想像できない軽い口調。女神の事務的な喋り方とは正反対だ。


「初めまして、小間竜騎です。このバトルロイヤルで俺が生き残ったら、向こうで俺と暮らさない?」


「は? いやマジありえないんすけど人間の分際で。てかなんで下半身全裸でチン〇竜になってんすか? キモいっす。さっさと負けて死んでくださいっす」


 開始早々口説きにかかるも、残念ながら返って来たのは罵詈雑言の嵐だった。

 だが、このレベルの罵詈雑言など俺にとってはこそばゆい程度のものでしかない。


「でも人間の分際でって事は、俺が嫌いってより人間が嫌いなんだろ? ならまだ可能性ありそうだな。これから俺と一緒にいれば気が付くはずだぜ? 人間の素晴らしさってやつにさ」


「人間の中であんたが一番生理的に受け付けないっす。さっさと死ねっす珍獣」


「はぁ素直じゃねぇな。じゃあ死ぬ前におっぱい揉ましてくんない?」


「頭イカレてんすか!?」


「小間……本当にお前のメンタルはどうなってるんだ」


 心底呆れ顔の万丈。何に呆れているかは知らんが、まぁ疲れてるんだろ。(適当)

 まぁそれはさておき。


「女神様。誰だよこのクソ生意気なチビ」


「あーーっ!? 今チビって言ったっすね!? 人間の分際で!! 許さないっす!」


「そこのチビは、私の後輩である邪神です。私がここに来る前に女神をやっていた者です」


「女神センパイまで!? きっついっす!!」


「あ? ちょっと待て、元女神だと?」


 先代の女神って確か……。


「よォクソチビ。今回は表に出てこないんじゃなかったのか?」


「あー4回戦だけ観戦許可が下りたんすよ。レイト、負けたら承知しないっすよ」


「ア? オレが負けると思ってんのかよ」


「あはは。全然思ってないっす。折角見に来たんだから、楽しませてくださいよ?」


 海藤と愉快そうに会話するゴスロリ邪神。

 やはりか。先代の女神って言ったら、確か海藤を異世界へと転生させたせいで女神をクビになったっていう女だ。どうしてそんな奴がこんな所にいるのかは知らないが、今の会話から察するに、やっぱり女神たちは俺たちを使って……


「もういいですか邪神さん。始められないので」


「はーいセンパイ。すんませんっすー」


 適当に返事したゴスロリ邪神は、スキップしながら女神の横へ移動した。


「では改めまして。準備はよろしいですか皆さん」


 誰も女神の一言には返さない。

 いちいち聞くまでもない……といった様子だ。


「それでは最後の一人になるまで存分に戦って下さい! 4回戦スタートです!」


 女神がそう言うと、女神とゴスロリ邪神が宙に浮き、一瞬で上空の方へと移動した。

 今までは、戦闘開始を宣言した瞬間にどこかへ消えていた女神だったが、どうやら今回は事の顛末を見届けるつもりらしい。


「さァて……やっと始まったか」


 首をゴキゴキ鳴らしながら、楽しそうに嗤う海藤。


「随分楽しそうじゃねーか海藤」


「そういうテメェは随分と殺気立ってるじゃねェか小間ァ。3回戦でオレに殺されたあの赤髪の女の仇討ちでもしようってかァ?」


 赤髪の女……あぁクレアの事か。


「そんなんじゃねーよ。仇討ちなんて俺のガラじゃねーし。ただ俺はお前らが気に食わねぇだけだ」


 同族嫌悪ってやつなんだろうか。

 自分の汚い部分を客観的に見てるみたいで、凄まじく気持ちが悪い。

 本当、汚くて汚くて……


「テメェらくっせーんだよ。汚ぇ悪の匂いがプンプンしやがる。臭くてしょうがねぇから、俺が便所にまとめて流してやるよ」


「小間、あまりむやみに挑発するな」


「クク……クハハハハハッ!!!」


 何が面白いのか知らんが、可笑しくてしょうがないといった様子で大爆笑する海藤。


「ククッ。それは構わねェが、オマエ、そんな萎えきったイチモツでどうやって戦うんだァ?」


「は? なにが……」


 そこで俺は自分の股間を見て、とんでもない事に気が付く。4回戦が夜に開催するという急な変更のせいで、すっかり忘れていたのだ。

 冷汗が止まらない。心臓の鼓動が速くなるのを感じる。これは紛れもない命の危機だ。

 なんせ、俺の股間の竜は夜のフェーズ中……


「Zzz……」


 俺の異能の象徴である最強の竜は、気持ちよさそうに爆睡していた。


「マジか……」


 最終決戦であるバトルロイヤル4回戦は、頼みの綱である異能が使えないという、最悪のスタートを迎えることとなった。




お読みいただきありがとうございました。

頼みの綱の伝説の竜が爆睡。

次回、どうなる!?

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