Kill you
少し長めです。
すみません…。
その男は勇者だった。
困っている人間であれば、誰彼構わず救いの手を差し伸べるほどのお人好しで、勇者としての高い実力を鼻にかける様子も無く、誰からも好かれるような好人物だった。
そんな人としても、勇者としても完璧な男だったが、ある大きな過ちを犯してしまう。
それは、悪魔貴族の女性に恋をしてしまった事。
そして、その女性と添い遂げてしまった事。
人間と魔族は水と油の天敵同士。その遺族間の恋はタブーとされていたが、2人はその禁忌を破ってしまう。
男は故郷を追い出された。魔族の女も同様の仕打ちを受けてしまい、2人には居場所が無くなってしまった。
だがそんな中、2人の間に娘ができた。
名前は「アリサ」。母親に似て、とても可憐な女の子だった。
故郷を追い出された親子だったが、辺境の地に家を建て、決して裕福ではなかったが、何不自由なく幸せに暮らしていた。
そんなある日の夜。
魔族と恋に落ちた異端の男と、人間を誑かした魔族の女、そしてその2人の間にできた人間と悪魔のハーフの娘をまるで害虫のように思っていた人間たちの手で、アリサの父と母は殺されてしまう。
間一髪、人間たちの目を盗んで逃走に成功したアリサだけはなんとか生き延びたが、大好きだった父と母を失ったアリサに待っていたのは、地獄だった。
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父と母が殺されたあの日から、もう何年経っただろうか。
私、アリサはあれから色んな地を転々とする生活をしていた。人間と魔族のハーフというだけで私を迫害する人間共のせいで、私は全てを失った。いや、正確には今も奪われ続けているか。生きている限り、これからずっとこんなことが続くんだろうなぁ……と、そんな事を思ったある日、私にある特殊な能力が備わっている事が判明する。
それは、他者を人形のように操る力だ。より正確には精神系魔術と呼ばれるものの一種らしいが、どうやら私はずば抜けてその力に長けているらしい。
まぁ操り人形とはいえ、私に協力してくれる他人の存在ができた事で、私の生活は大分楽になったというか、マシになった気がした。
そんなある日、森の中を歩いていた私の目の前に、2人の魔族が現れた。
「やっと見つけたぜ。ガラナ。このガキで間違いないんだな?」
「はい、クロウ様。その小娘が例の人形使いです」
ガラナと呼ばれた男は筋骨隆々の鬼のような魔族、クロウと呼ばれた男はカラスのような黒い翼を生やした魔族だった。私は2人を操ろうとそれぞれに魔術をかけるも、何故か弾かれてしまった。
「あーやめとけクソガキ。俺らとお前とじゃ魔力量が違い過ぎる。いくら能力が優れていても、俺たちを操ることはできねぇよ」
なるほど。確かにこの2人、今まで見てきた魔族の中でもかなり大きな魔力を持っている。魔族の中でも上位の存在、所謂上級魔族と呼ばれる者たちなのだろう。
「お前、名前なんていうの?」
「……アリサ」
「あ? あぁ、アリサか。声が小さすぎて一瞬聞き取れなかったぜ」
クロウは鋭い眼光をこちらに向けながら、話を続ける。
「単刀直入に言うぜ。アリサ、俺たちに力を貸せ」
「……ちから?」
「そうだ。まぁ立ち話もだりーし、飯でも食いながら話そうぜ」
クロウはそう言うとその場に腰掛ける。
「ガラナ。さっき殺したモンスターの肉出せよ」
「かしこまりました」
そう言うとガラナは、地面に魔法陣を展開し、そこから大量の生肉を出して見せた。
「……すごい、今のどうやったの?」
「空間系魔術だ」
ガラナは一言だけそう言った。どうやら私に理解させる気はないらしい。
「おいアリサ。腹減ったろ? 一緒に食おうぜ」
クロウが軽く指をクイッと曲げると、地面から大きな石が突き出てきた。続いて、クロウがその岩に触れると徐々に岩が熱を帯び始める。
「森でステーキってのも、乙なもんだろ」
クロウはそう言うと、先ほどの生肉を熱された石の上に乱暴に置く。
しばらくして、肉が程よく熱されていく。
「こんぐらいでいいだろ」
そう言ったクロウは、指を軽く動かし、直接触れずに肉を3等分にして見せた。
「おら食えよ」
クロウはそう言うと、小さな魔法陣から出したフォークを私に渡してきた。
「……いいの?」
「いらねぇなら食わなくていい」
ここ数日、ロクな食事をしていなかった私は、火傷するのもお構いなしにステーキにフォークを突き刺し、思い切りかぶりついた。
「……美味しい」
「そりゃ良かったな」
その肉は、熱さが気にならないくらい美味しかった。噛むたびに肉の繊維がぷつっと切れていき、大量の肉汁が口の中に溢れる。旨味で口の中が満たされていくと同時に、私の心も何か温かいもので満たされていくのを感じた。
「……あったかいごはん、久しぶりに食べた」
「……」
何故か私の目から、たくさんの涙が溢れ出ていた。
クロウとガラナは黙ってそれを見ながら、同じように肉を食べ始めた。
そんな風にしばらく無言で肉を食べていると、クロウが口を開いた。
「アリサ。人間は嫌いか?」
「……うん」
「だよな。俺らもそうだ」
残りの肉を蛇のように丸呑みし、クロウが続ける。
「何故かこの世界では、魔族は生まれながらに悪とされている。おかしな話だよな。俺たちは、あいつら人間が襲ってくるからそれを返り討ちにしてるだけだ。だが、そんな行動が魔族の悪いイメージをより増長させていき、人間はさらに俺たちを殺そうと襲い掛かってくる。俺たち魔族は、一生アイツら人間のヒールって訳だ。この悪循環から、世界は未だに抜け出せてねぇ。このままじゃ、ずっと同じことの繰り返しだ」
「……」
クロウが言っていることに、深く共感する私。今まで生きてきて、私がずっと抱いていた気持ちとなんら遜色ない。そっか、同じ事を思っている魔族が他にもいたんだ。
クロウはそんな私を見て、話を続ける。
「だから俺が変えてやる」
クロウは、強い意志を感じさせる目でそう言った。
「だが、その為には力がいる。悪魔貴族ってだけじゃまだ弱ぇ。魔族の頂点である「魔王」になって、世界を魔族のものへと作り変えるのさ。そこでアリサ、お前の力が必要ってわけだ」
「……私の?」
魔王になる、というクロウの野望に何故私が必要なのだろうか。
こんな人間の血が混ざった魔族の雑種なんかに。
「お前の力で多くの魔族を操って、魔王城に攻め込む。そして俺が魔王となって、人間共を抹殺する」
「……でも私……」
頼ってくれるのは嬉しい。けど、私は1日に1人しか他者を操ることができない。
まして、先ほどのクロウとガラナのように、魔力量に大きな差があり過ぎると、そもそも通用すらしない。たくさんの魔族を操るなんて、私には無理だ。
「ククッ。魔力量が足りないのを心配してんのか?」
口にしていない私の思いを、目を見ただけで察したクロウ。
「安心しろ。俺とガラナがお前に魔力を貸してやる。そうすれば、何の問題もねぇ」
「……でも」
「人間が嫌いなんだろ? 一緒に魔族の為の世界を作ろうぜ」
クロウはそう言うと、私に手を差し伸べてきた。
その言葉は、私の心を大きく揺れ動かした。
ずっと世界を憎んでた。人間を憎んでいた。こんな世界でずっと生きていかなきゃいけないのかと、何度も絶望した。けど違うんだ。嫌なら変えてしまえばいい。人間が魔族を嫌い、力ずくで排除しに来るのなら、私たちも力で人間を排除すればいいんだ。
「……」
私は無言で、クロウが差し伸べてくれた手を取った。クロウの野望に賛同したのも勿論そうだが、何より、誰かに頼られる事が今まで無かったので、単純にその期待を裏切りたくない、という気持ちもあった。
「よし。決まりだな。これからよろしくな」
「……うん」
にっ、とお互いに笑って見せる私とクロウ。
直後、クロウの頭が潰れたザクロのように真っ赤に砕け散った。
「……え?」
私はあまりに惨烈な光景に、何が起きたかを理解できずにいた。
ドサッ、と首の無い人形のように無機質に倒れるクロウ。
その背後には、大量の返り血を浴びた男が無表情で立っていた。
「き、きさまああああああああっっ!!!!」
直後、目にも止まらぬ速度で、謎の男の元へと移動したガラナは、丸太のような太い腕で渾身の一撃を叩き込む。しかし……
「が、あ、れ……?」
その前に、ガラナの体は、謎の男の手によって簡単にバラバラになってしまった。
ガラナの体から吹き出す大量の鮮血を浴びる私。
思考がまとまらない。私の目の前で、何が起きているんだろう。
「あーァ。腹減ったァ」
上級魔族であるクロウとガラナを、蟻でも潰すかのように簡単に殺害した男は、獣のような唸り声でそう言うと、まだ調理されていない大量の生肉の方へと歩いていき、獣のようにそれを食べ始めた。生肉の中には骨が付いている部位もあったのだが、そんなことお構いなしだ。
「バリボリグチャッ……あー美味かったァ」
まさかこの男、ただ腹が減っていて肉が食べたいから、そんな理由であの2人を殺したというのか……。
私は目の前の男に恐怖心を抱きながらも、何故か目が離せないでいた。
「あン? なんだこのガキ」
じーっと見ていると、男と目が合ってしまう。
見ているだけで深い闇へと引きづり込まれてしまいそうな、真っ赤な瞳。なんて眼力だろうか……。体が硬直して全く動けない。そして私のような子供でも見ただけで分かるほど、この男の魔力量は桁違いなものだった。上級魔族であったクロウとガラナが霞むほどだ。でも……
「……あなた、人間?」
「そうだ」
信じられない。こんなバケモノじみた魔力を持った人間なんて、初めて見た。
「……あなた、名前なんていうの?」
余計な事を喋れば殺されるかもしれないのに、何故か私は気になった事を聞かずにはいられなかった。
「蟻道冷人だ。世間じゃ「史上最悪の異世界転生者」なんて呼ばれてる」
「……い、いせかい……?」
「まァ、要は悪人ってこった」
男は退屈そうにそう言った。私が思っていた以上に、男はこちらの質問に応じてくれた。あんなに簡単に人を殺すような狂人だから、喋ったら私も殺されるかと思ってた。いせかいてんせいしゃ……っていうのはよく分からなかったけど。
「つーか、オマエ……」
突如、男は私をじっと見つめ始める。ただ見られているだけなのに、何故か私は全てを見透かされた気分になった。
「なるほどねェ。人間と魔族のハーフ。それに、精神系魔術の能力がずば抜けて高い……まだガキなのに大したモンだ」
どうやら、本当に見透かされていたようだ。どうしてバレてしまったのかは分からないが、恐らく男の能力か何かなんだろう。
「ちょうどいいな。おいガキ。オマエの力、俺に貸せ」
なんだか似たようなやり取りをさっきもしたような気がする……。
この男も、クロウと同じように魔王城に攻め込むつもりなのだろうか。
「……魔王城に行くの?」
「ほォ、よく分かったな」
「……クロウ……さっき話してた人もそう言ってたから」
「ふゥん。という事は、ソイツもやりたい事はほぼオレと同じだろうな」
「……魔族をたくさん操って、魔王城に攻め込むの?」
「話が早いな、そういう事だ。まァ雑魚の掃除さえしてくれりゃあとは用済みだけどな。魔王とはオレがサシでやる」
蟻道という男は、嗜虐的な笑みを浮かべながらそう言った。
「……なんで魔王を倒したいの? 蟻道も、魔王になりたいの?」
「あン? いや、ただの暇つぶしだ」
蟻道はあっけらかんとそう言った。この男にとっては、上級魔族も魔王も等しく餌にすぎない……なんとなくそんな気がした。
「まァ細かい事はオマエが知る必要はねェ。とっととその力を貸せ。そしたら、まァ気が向いたら解放してやる」
「……嫌だ」
「ア?」
「……私は人間が嫌い。あなたも人間だから協力したくない」
クロウとガラナを殺されたから……という理由ではない。
単純に人間に協力するつもりはないというだけだ。この人の要求を飲まなければ、私は殺されるだろうが、別に構わない。どうせこれからもロクな人生じゃないんだ。なんならここで殺されてもいいくらいだ。
「なるほどねェ……」
激昂してすぐに殺しに来ると思っていたが、意外にも蟻道は何かを考える素振りをしてそう言った。
「なら丁度いい。試したい事があったんだよなァ」
そう言った蟻道は愉快そうに、魔術の詠唱を始める。
「黒魔術・グー・ジャキランタン」
蟻道の詠唱と共に、巨大な真っ黒な壺が地面から出現した。
壺の口の部分が、無数の鋭い牙を生やした獣の口のようになっており、なんとなく自分がこれからどうなってしまうのか察しがついてしまった。
「さァーて……」
蟻道は、クロウとガラナの無惨な血肉をなんらかの魔術で浮遊させ、そのまま壺の中に入れていく。
「ジャキジャキジャキキキキッ!!」
虫の羽音のような、獣の遠吠えのような、人の叫び声のような、出鱈目な鳴き声でクロウとガラナの血肉をぐちゃぐちゃと咀嚼し始める黒い壺。
それを見た蟻道は、悪魔のような笑みを浮かべてこう言った。
「準備はできた。この中に入れ。まァ拒否権は無いけどなァ」
すると直後、私の体が勝手に浮き始め、勝手に黒い壺の中に入ってしまった。
「うっぷ……」
壺の中は血生臭い真っ赤な海になっていた。激臭の為、呼吸することすらままならない。
あつい……。不思議な感覚だ。体が徐々に溶けていくような、固体から液体へと体が変化していくような、そんな感覚。頭がぼーっとしてきた。しばらくすると、私の意識は完全に途絶えてしまった。
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「やっとできたか。調理完了だなァ」
グー・ジャキランタンにクロウ、ガラナの死体とアリサを入れてから数十分後。グー・ジャキランタンが2つの塊を吐き出した。その塊の内一つは、少女アリサへと姿を変えていく。そして、もう一つの塊は、アリサによく似た、くすんだ銀髪の少女の姿へと変わっていった。
そしてしばらくして、くすんだ銀髪の少女が目を覚ました。
「……なに、これ?」
「目ェ覚ましたか」
蟻道は胡坐をかいて、銀髪の少女の前に座る。
「ガキの魔族の血と、2人の魔族の血肉を使って新たな肉体を作り上げ、能力を全てこっちの肉体に移させてもらった」
「……え?」
「つまりオマエは完全な魔族へと生まれ変わったという訳だ。あそこに転がっているのが、完全な人間と化した元のオマエの体だ」
アリサの人間の部分と魔族の部分を切り離し、それぞれ新たな生命として誕生させた……という、悪魔じみた所業をなんなくやってのけた蟻道。
「オイ、オマエ名前は?」
「……名前? あれ、思い出せない」
「やはり、記憶は無いか。直に思い出すのかは分からないが、まァ好都合だなァ。用があるのはオマエの能力だけだからな」
蟻道は愉快そうに嗤う。
「オマエはオレに殺され、そして生まれ変わった。今日からオマエの名前は「キル」だ」
「……キ、ル?」
「あァ。とにかくついて来い」
「……? 分かった……」
蟻道とキルは、森の奥へと消えていった。
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「……ここ、は?」
私、アリサは暗い森の中で目を覚ます。
確か、クロウとガラナという上級魔族の2人と一緒にお肉を食べたところまでは覚えているが、そこからの記憶がまるでない。
「……私、なんで裸なの? しかも、なんか血の匂いがすごい」
森の奥に向かって行き場も無く歩いていると、小さな川を発見した。
取り敢えず、この体中にべっとりと付いた血を流したいと思い、川で体を洗い始める。
「……冷たい……」
ただでさえ夜は冷え込むというのに、川の水でさらに体温が下がっていく。
「……私、なんで生きてるんだろう」
もうこのままここで死んでしまおうか。そんな風に考えていると……
「お、おい! 君、なにやってるんだよ!」
私と同い年くらいの金髪の少年に声をかけられる。
「……え? 誰?」
「こっちの台詞だよ! こんな時間に川に入って! 凍え死ぬよ!?」
「……え、うん」
「取り敢えず、出なよ!」
金髪の少年は私の手を引いて川から上げると、持っていたタオルで髪を拭いてくれた。
「常に持ち歩いてるタオルだから少しボロいけど、風邪ひくよりマシだろ? これで我慢してくれよな」
「……ありがとう」
「それと、これ」
金髪の少年は上着を脱ぐと、私にそっとかけてくれた。
「……ありがとう」
「君、名前は?」
「……私、アリサ」
「アリサか。僕はカイン、よろしく。取り敢えず僕の村に行こう。帰るとこないんだよね?」
「……うん。でも、私……」
「どうしたの?」
私は人間と魔族のハーフだ。人間の住む村に行ったら、どうせまた追い出されるに決まってる。
そう思ったのだが、直後、私の体に異変が起きていることに気が付く。
魔族の血が感じられない。それに、他人を操る力もすっかり消えてなくなっている。何故かは分からない。恐らく、クロウとガラナと肉を一緒に食べてから、起きるまでの記憶が一切無い事が、何か関係しているのだろうが、今はどうでもいい。感覚で分かる。私は、完全な人間になったんだ。
「……なんでもない」
「? そっか。じゃあいこっか」
金髪の少年カインは私の手を引き、村に向かう。
温かい……。なんとなく、カインはどこかお父さんに似ている気がする。今日会ったばかりだけど、カインには、何か運命的なものを感じていた。
しばらく歩いて村に着くと、村人たちはこんな私を温かく迎えてくれた。
それからの村での生活は本当に楽しかった。カインの家族の仕事を手伝い、美味しいご飯を食べて、何気ない話で笑いあう。私の人生に、光が灯っていくのを感じた。
だが数年後、私たちの村は魔王軍の襲撃を受けてしまう。
村は跡形も無く焼き尽くされ、家族同然だった村の皆は全員殺された。生き残ったのは、私とカインだけだ。
魔王の名は蟻道冷人。元は人間だったらしいが、当時の魔王を倒し、新たな魔王として君臨したらしい。
魔王である蟻道冷人に復讐を誓った私とカインは、魔王討伐の旅に出ることになる。
そしてついに、この旅の数年後、私たちは魔王・蟻道冷人と対峙することとなる。
だが、魔王のあまりの強さを前に、私たちは命をかけて魔王を封印することを決意する。だが封印は失敗。私たちは魔力を失い、命を落としてしまった。
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あれからどれくらいの時が経ったのだろうか。
次に私が目を覚ましたのは、真っ白な空間だった。
「ここは……?」
「鳥皮好実さん。あなたは死んだのです」
「……?」
目の前にいる銀髪の美女が、私に向かってそう言った。
話を聞くと、どうやら私は死後の世界とやらに来てしまったらしい。しかも、鳥皮好実という全くの別人に生まれ変わって。しかも、ここに来たのは私だけではないらしい。一体、何が始まるのだろうか……。
しばらく周りを見渡していると、私は意外な人物を発見する。
「……カイン?」
その姿は、黒い短髪に筋骨隆々の大男。生前のカインとはまるで別人だったが、私には分かる。かろうじて使えた「心眼」で見たところ、カインと全く同じ魔力を持っていた。間違いない……カインも生まれ変わってここに来たんだ。よかった……また、会えるなんて……。
「……カイっ」
「やっほぉ、こんにちはぁ」
「……?」
少し遠くにいるカインに声を掛けようとしたところで、何やら陽気そうな女の子に遮られてしまう。
「……なに。悪いけど、後にして」
「まっさかこんなところで会うと思ってなかったよぉ。アリサちゃん♡」
「……!? あなた、何者?」
「ひどいなぁ。元々は私たち一つだったのにさぁ」
陽気な少女は、何故か私の前世について知っている様子。
それに、元は一つだったって、どういう……。
「動揺してるねぇ。残念だけどぉ、今からアリサには私のお人形さんになってもらうよ」
「……何をっ!」
「バイバイ♡」
その少女の一言と共に、私は強い眠気に襲われる。
直後。私の意識は無くなり、再び真っ暗な闇の中へと……
お読みいただきありがとうございました。
次回、あの男が再び目覚める…!




