昼⑲ 再び合流
誰かが合流します
一方。
万丈龍之介と桃木瞑亜は、魔王キルの姿と化した万丈の幼馴染、アリサと戦っていた。
より正確には、アリサが操るモンスターたちと……だが。
「2回戦で負けたプレイヤーがモンスターになって襲い掛かってくるなんて、めんどくさすぎるよー」
「しかも2回戦の時の異能をそのまま使えるのが厄介だな。モンスター化の影響なのか身体能力も増しているしな」
モンスターたちの攻撃を躱しながら、会話をする桃木と万丈。
「ふふっ。それだけじゃないわよ。そのモンスターたちはここにいる人形の『血の惨劇』という異能でゾンビ化している上、私の魔力でさらに強化されている。貴方たちといえど、そう簡単に倒せる相手ではないわ」
そう言ったアリサの横で、モンスターと化した白崎祥吾がゾンビモンスターを操っていた。
「前世でもそうだったな。貴様は人形を操るばかりで一向に自分の手で戦う事はしなかった。この卑怯者が!」
「あら酷い事言うわね。こう見えても私、精神系魔術と空間系魔術に関してだけは、あの男よりも上なんだから」
「!? ……桃木! 避けろ!」
「え? うわあぶなっ!」
突如、万丈と桃木の頭上に渦のようなものが現れ、その中心部から極細のワイヤーのようなものが飛び出してきた。
「糸引……よく躱したわね。躱せていなかったら、今頃貴方たちも私のお人形さんだったのに」
「今、距離を無視して攻撃を仕掛けてきた……空間系魔術で攻撃をワープさせたのか」
「モンスターたちの相手をしながら、突然現れる糸にも注意しなきゃいけないのー? めんどいよー」
「……仕方がない」
万丈はそう言うと、自身の背後に黄金の不死鳥を召喚した。
そして、伝説の剣「アテナ」に光を纏わせる。
「桃木! 目を閉じてろ!」
黄金の不死鳥と「アテナ」の膨大な光を纏った万丈のその姿は、まるで太陽そのものだった。
「光属性魔術・終焉の太陽!!」
「ガ、グギャアアアアアァッ!!!」
神々しい光を球状に放つ万丈。その光と共に、アリサが操っていたゾンビの体は一瞬で崩壊し、光と共に消えていった。
「ぐっ!!?」
アリサは黒いバリアで膨大な光のダメージを軽減させたが、それでもダメージは十分あったようだ。
体中から、焦げ臭い黒煙をあげるアリサ。
「やっぱりキルの姿を借りている状態だと、光属性の攻撃がかなり効いちゃうわね……鳥皮の姿に戻っていればよかったわ……」
「すごいじゃんばんじょー! ゾンビ全滅したし、キルにも相当ダメージ入ったよ! てか、なんで最初からそれやんなかったの!?」
「この魔術は魔力をかなり消費する。できればもう少し温存させておきたかった」
黄金の不死鳥では魔力の回復は不可能なため、一度魔力を消費してしまうと、回復までに時間を要してしまうのだ。
「くっ……思ったより効くわね。私の魂にまでダメージが入ったじゃない……。回復魔術を使っても、万全な状態になるには時間がかかりそうね……」
苦しそうにそう言ったアリサ。
どうやら万丈の攻撃が想像以上に効いているらしい。
「闇・空間魔術・暗黒の扉!」
アリサがそう叫んだ直後、直径2~3メートル程のブラックホールのようなものが、アリサの背後に出現した。
「悪いけど、今はここまでにしておくわ……」
「なっ!? 待て!!」
高速でアリサとの距離を詰め「アテナ」で斬りかかる万丈だったが、タッチの差でアリサを逃してしまう。
アリサの姿は、黒い渦の中に消えてしまう。
「ばんじょー!」
「あぁ。これは奴を倒すチャンスだ。絶対に逃がさん!」
--------------------
「がはっ!!」
暗黒の扉を使ってワープを行ったアリサ。
想像以上に大きなダメージと、魔力の消費のせいで、ワープした直後に膝をついてしまう。
「あれほどの光属性魔術が使えるなんてね……流石は勇者といったところかしら」
「何をぶつぶつ言ってやがる。勇者サマとチビに負けて、おめおめと戻ってきやがったのか。無様だな、オマエ」
アリサがワープした先は、海藤とクレアが戦っている場所だった。
だが、今は戦いというよりも……
「可哀想にクレアちゃん……。これじゃ拷問ね」
アリサの目に映っていたのは、海藤が召喚した泥人形に殴られ続け、涙も枯れ果てたクレアの姿。
その目には、最早生気は宿っていなかった。
お読みいただきありがとうございました。
次回、小間も…!?




