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昼⑱ 100倍返し

クレア可哀想


 海藤咲夜と紅クレア。

 2人の戦いの影響で、辺り一帯のビルは瓦礫の山と化していた。

 まるで世紀末のようなその光景を作り出した2人の激戦は、突如終わりを迎えた。


「くっ……」


 地面に這いつくばるクレア。いや正しくは、突如変化した海藤の右腕によって地面に抑えつけられていた。


「なによ……その巨大な黒い腕は。本当にバケモノじゃない……」


 変化した海藤の右腕は、以前とはまるで別物だった。右腕の全長は5メートル近くもあり、その色は黒一色。まるで悪魔の腕だった。


「ククッ。オレはもう少し楽しんでも良かったんだがねェ。()()()が早くしろってうるさくてよ」


「コイツって……アンタ一体……」


 海藤と話しながらも、腕から脱出するべく色々と動いてみるクレアだったがビクともしない。超人的な力を、天性の格闘センスで極限以上に引き上げたクレアでさえ、この腕の前では無力だった。


「まァとはいえ、いつまでもチンタラ戦うってワケにもいかねェしなァ。お遊びは終わりだ」


 すると海藤は左腕をスッとクレアに向ける。


「魔道処刑具・レキラ」


 海藤がそう言った直後、レキラと呼ばれるはりつけのようなものが地面を割って現れた。

 それと同時にレキラの後ろから何本もの鎖が飛び出し、クレアを縛り付け、そのまま磔にしてしまう。


「何すんのよ! くそ、全然解けない!」


「無駄だ。レキラの拘束は一度捕まったら最後。拘束された人間の手で解除することは不可能だ」


 海藤は右腕を元の姿に戻す。

 そして、そのまま地面を叩きつけた。


「黒魔術・へ・ドロ傀儡くぐつ


 ぼこぼこと……生物のように脈を打ち始めた地面から、墨汁のように真っ黒な泥の人形が現れた。

 人形から徐々に泥が落ちていき、その姿は、紅クレアの姿を模し始めた。


「私の……人形?」


「そうだ。このへ・ドロ傀儡くぐつは、相手の姿と技をコピーした人形だ。まァつっても、一目見ただけでコピーできるほど簡単じゃなくてな。特に技に関しては、いちいちオレの目で確認しねェと、この人形にデータを落とし込めねェ」


 海藤は首をゴキゴキ鳴らしながら続ける。


「ただまァ……この技に関しちゃ、しっかりとコピーさせて貰ったぜ」


 海藤がそう言うと、クレアの姿をしたへ・ドロ傀儡くぐつが右腕を引き、構えを取る。

 そして……


「!? ぐっっふ!!?」


 ドォンッ!! と、クレアの顔面目掛けて、思い切り右ストレートを放った。


「クハハハァッ!! 今のはオマエが最初に打った右ストレートだ。よく再現できてるだろ?」


「かはっ! ぐっ……うぅ」


 クレアの整った鼻筋が、人形の一撃のせいでぐにゃりと折れ曲がる。


「さァて女ァ。オレが最初に言ったこと覚えてるかァ? この痛みは100倍にして返してやるってよォ。今のでそのまま1発分。残り99発だァ……」


 続けて構えを取る人形。

 2発、3発……と、クレアの顔面、腹部に右ストレートが叩き込まれる。


「ギャッハハハハハァッ!! おっと。お陀仏にはまだ早ェぜ?」


 海藤はそう言うと、左手に緑の光を灯し、クレアに当てる。

 クレアの傷は徐々に治っていき、折れた鼻も元に戻る。


「安心しろ。死にそうになったら、こうしてオレが回復させてやるからよォ。100発全部食らうまではきっちり面倒見てやるからなァ? ゲハハハハァッ!!」


「うぅ……」


 ただでさえ一撃必殺級の威力を誇るクレアのパンチを、残り97発も食らわなければならない。

 最早、拷問以外の何物でもなかった。


「うっ……うっ」


 全身に浸透する激痛に、クレアは静かに涙を流し始める。


「ギャハハハハハァッ!! いい顔で泣くじゃねェか女ァ! ゲハハハハァッ!!」


 すると海藤は、クレアの顔に自分の顔を近づける。

 より正確にはクレアの耳元付近に。


「あと97発だァ……これが終わったらァ、じーっくり料理してやるからなァ、楽しんでくれよォ? 女ァ」


「うっ……うっ」


 クレアの耳に獣の唸り声のような低い声で、そっと囁く海藤。

 あまりの恐怖に震えと涙が止まらないクレア。


「おい女ァ……ったく聞こえねェのか? じゃあこんな耳なくても変わらねェよなァ?」


 そう言うと、海藤はクレアの耳に噛みつき、そして嚙み千切った。


「ぎっ!!? いやあああああああああああっっ!!?」


「ぐちゃぐちゃっ! ゴクン……。なんだァ、血が出ねェからなんの味もしねェな」


 海藤はそのまま、噛み千切ったクレアの耳を飲み込む。

 人間の肉片を飲み込むその姿は、同じ人間のものとは思えなかった。


「いたいいたいいたいいたいいだぁぁぁいっっ!!」


 感じたことの無い激痛のあまり、声を抑えられないクレア。


「なんだうるせェな。どうしたんだよ。大丈夫か?」


 他人事のようにあっけらかんと言う海藤。

 その直後、再び人形の右ストレートがクレアの顔面に炸裂した。

 脳みそが吹っ飛びそうになるほどの衝撃に、声を上げられなくなるクレア。


「安心しろよ。耳はオレの回復魔術で治してやるからよ。さァて。残りあと96発……あァ? 今、何発だったっけかァ。仕方がねェ、もう一回100発やり直すかァ」


「!!?」


「さァ、もっと叫べ女ァ! 絶望と苦痛の断末魔ハーモニーを奏でてくれ! その悲痛に塗れた叫びこそが、オレをさらなる闇へと引きづり込んでくれるんだからなァッ!! ギャアハハハハハハハッァ!!!」


 地獄の悪魔は高らかに嗤う。

 少女の地獄は、まだ始まったばかりだ。



お読みいただきありがとうございました。

次回、万丈&桃木VSアリサの戦いが…!?


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