昼⑫ 残り……
全開のあとがきにクレアVS海藤!
なんて書いちゃいましたが、もう1話ありました。すみません。
「あれは、クレアちゃんじゃない」
海藤と万丈の前に現れた紅クレア。
アリサはその様子を少し離れた場所から見ていた。
「クレアちゃん可愛いから死んでほしくないのに、わざわざ殺されに来るなんて。ターゲットを回収するために戦いに来たのかしら? それとも私怨?」
ビルの屋上に座り、リラックスした状態でそう呟くアリサ。
実はこの女は現在、桃木瞑亜と絶賛戦闘中なのだが、ここまでリラックスしているのには理由があった。
「は~あ。きりないよー」
パワードスーツを身に纏う桃木は、妨害モンスターと化した敗退プレイヤーたちと戦っていた。この3回戦で現れるモンスターはプレイヤーを差別することなく襲うようにできているはずだが、何故かモンスターに襲われているのは桃木だけだった。
「あの女、相変わらず戦闘は人形に任せっきりで自分は高みの見物か~。魔王キル! そんなところ座ってないで私の相手しなさいよ~!」
「嫌よ。私、今あんまりチカラ出ないのよ。代わりにその子たちと遊んでてちょうだい」
モンスターがアリサを襲わない理由は至ってシンプル。アリサの魔術によって操られているからだ。
「ふふっ。しかし海藤の奴、思ったより浸食が進んでるわね」
万丈との戦闘前に見せた海藤の豹変ぶりを見て、アリサは嬉しそうに微笑んだ。
「あれなら復活も時間の問題ね」
「なにさっきからぶつぶつ言ってるの?」
「貴方には関係ないわ桃木ちゃん」
「関係無い事ないでしょー。アンタのせいで人間界は滅茶苦茶なんだからー」
ゆったりとした桃木の喋り方だが、そこには確かな敵意があった。
「ふふっ。勘違いしてるわよ桃木ちゃん。私が人間界を襲う前から、人間って生き物は滅茶苦茶よ。貴方が一番よく分かってるでしょ? 人間っていうのはね、自分たちの利益の為なら多少の犠牲は厭わないのよ。例えば、普通の10代の女の子を改造して、100年以上も兵器としてこき使ったりね」
「わ~。皮肉が効いてるね魔王キル。私カチンときちゃったよ」
「あら。まだ怒りの感情が残ってるなら良かったじゃない。あと、私魔王キルじゃなくてアリサだから。貴方たち人間が倒そうと躍起になっていた魔王キルは、私が操っていた人形よ」
「じゃあ、なんで魔王キルの姿でいるの? ややこしいよ」
「うふふ。それはキルに聞いてちょうだい」
「わけわかんなーい。人形しかお友達いないから頭ぱっぱらぱーになっちゃったのー?」
アリサと会話しながら、モンスターたちを倒していく桃木。
パワードスーツにより圧倒的な強さを誇っていた桃木だったが、数が多い上に一体一体が意外とタフなモンスター軍団を相手にしている為、アリサに近づくことができずにいた。
「……どーしよっかなー。こうなったらアレを使おうかな……」
『プレイヤーの皆さんにお知らせです。たった今、1名のプレイヤーがゴールしました。4回戦出場枠は残り3つです』
突如、ステージ上に女神のアナウンスが響き渡る。
「えーもう誰かゴールしたのー? はやいよー」
「……やっと着いたわね」
女神のアナウンスを聞いて、アリサは不敵に笑ったのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回こそ、クレアVS海藤!




