昼③ チンピラ2人復活
懐かし(?)の顔ぶれです。
「えーっと……『B-01 : 噓八百』……誰の異能だこれ?」
バトルロイヤル3回戦『異能シャッフル宝探し』
手元に現れたカードの内容を確認する俺、小間竜騎。
俺が探し出すターゲットとなる異能は、どうやら噓八百というらしい。
さて、一体どんな異能なのか分からないが、とにかく探すしかないな。
……このだだっ広いコンクリートジャングルの中を。
「何の当てもねぇ……。どうやって探し出せばいいんだ」
取り敢えず自分のスタート地点を見失わない様に、しばらくその辺を歩き回る。
「しっかし……人もいねぇし景色も変わり映えしねぇし、なんか飽きてきたな。か〇ぱえびせんの物真似でもするか」
暇人の極致に達した俺は、背中を曲げ、両足をくっつけ海老の様に飛び跳ねる。
「かーっぱかっぱかっぱかぱ。かーぱず……。あ、これ回転寿司の方か」
うっかりミスに気が付いた俺は海老の物真似を中断する。
「えびせんの歌ってなんだっけ」
なんとか思い出そうとする俺だったが全く思い出せない。
だが、ここである事に気が付く。
「……よく考えたら、俺海老好きじゃねーし、別にいいや」
3回戦への集中力を完全に欠いた俺は、辺りをぼーっと見渡す。
次は何すっかな。
そんな事を考えていた、次の瞬間。
「ん? ……うおっ! あっぶね!」
突如、頭上から2~3メートル程の瓦礫が勢いよく落ちてきた。
俺はギリギリでそれを躱す。
「し、死ぬとこだった……。なんでこんなもんが降ってくるんだ?」
「ククッ。意外とすばしっこいじゃねぇか。フルチンドラゴン!」
「この知性の欠片もないチンピラ声は……まさか」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきたので、俺は声のした方向に視線を移す。
そこには、黒い翼を生やした悪魔の様な怪物と、その倍はあるであろう図体の鬼の様な怪物の2人が立っていた。
「……誰?」
「おいおい。そのアホ面に相応しいお粗末な記憶力だな。イリスだよ。こっちはエリスだ」
「イリスとエリスだぁ? 2回戦と別人じゃねぇか。つかお前ら2回戦で負けたはずだろ。なんで生き返ってんだよ」
そこまで言って俺は思い出す。この3回戦では俺たちプレイヤーの邪魔をするモンスターが出現する事を。
そして、2回戦で黒騎士と戦った時に知った敗北者の末路を。
「なるほど。早速モンスターとしてこき使われてるって訳か」
「なんだ知ってやがったのか。その通りだ。まさか2度も生き返る羽目になるとはな。だがおかげで前世の姿で復活できたし、今度こそテメェをぶっ殺せると考えれば女神の手駒でもなんでも構わねぇよ」
「私はイリス様に従うのみだ」
「はっ。いよいよチンピラが板についてきたなお前ら。黒幕候補から女神のパシリとはな。まぁお前らは誰かの上に立てるタイプじゃねぇし、お似合いだと思うぜ」
俺の煽りに一瞬青筋を立てるイリス。
だが、すぐに冷静さを取り戻す。
「ククッ。まぁ何も知らねぇから無理もねぇか」
「あ? 何がだよ」
「お前もここで死ねば分かるさ。俺たちは所詮、女神の駒……いや、それ以下の玩具に過ぎないってことさ」
「玩具だと? どういう事だ」
「ククッ。知ってるか? 女神もトランプで遊ぶんだぜ? 意外と庶民的だよなぁ」
全く意味が分からない。下手糞な例え使いやがって。
もうちょっと分かりやすく……
「……ちょっと待て、トランプだと」
俺は今まで引っ掛かっていたものが、少しずつ解けていく感覚に陥る。
「まさか……あの枝番ってのは」
「ククッ意外と察しがいいじゃねぇか。人生最期の閃きになるだろうから、よぉく噛みしめとけ」
「はっ。お前らみたいな雑魚、俺の竜の前じゃカス同然なんだよ」
「竜ねぇ……。そりゃ、そのお粗末な棒切れの事か?」
イリスは人差し指の鋭い爪先で俺の股間を指差す。
棒切れだと? こいつ何言って……
「あっ」
やべ。今、何の異能も使えないって事すっかり忘れてた。
「……」
「ぶっはははは! おいまさか! お前自分が異能を使えないって事忘れてたのか!? はははっ! クソバカの極みだなぁ!」
「どわっははははぁ! 傑作ですね、イリス様!」
イリスどころか、普段寡黙なエリスまで大爆笑する始末。
クソ……腹立つがなんも言い返せねぇ。
いやそれどころじゃない。異能をまだ手に入れていない状態でこんな奴らと出くわすなんて最悪すぎる。このままじゃ確実にこいつらに殺される。
仕方がない。こうなったら奥の手だ。プライドは一旦捨てて、媚に媚びて見逃してもらおう。
「……あれっすよね。お二人共、真の姿に戻った方がダントツでかっこいいっすよね~」
「……」
真顔で俺を見つめる2人。
俺はさらに続ける。
「イリスさんの黒い翼はカラスみたいでかっこいいっすよね。鳥類でトップクラスに賢いカラスに匹敵する頭脳をお持ちのイリス様には大変お似合いです! エリスさんの筋肉は出来の悪い唐揚げみたいで美味しそうですよね! 脳みそはメロンパンでできてて体は唐揚げでできてるなんて、ま、まるで菓子パンとおかずのシェアハウスやぁ~! ……なんつってね。ははは……」
あれ。もしかして俺、人褒めるのド下手だったりする?
「……テメェ、本気で死にてぇようだな」
「……イリス様。あいつ私が殺していいですか」
どうやら本気で怒らせてしまったようだ。
「……さて、そろそろ日課のランニングでもしますかね。……2人共おつかれっ!」
俺は小声でそう言うと、イリスとエリスとは真逆の方向に全力ダッシュした。
「逃がす訳ねぇだろコラァ!」
「待てクソガキッ!!」
復活したチンピラ2人に追い掛け回される俺。
バトルロイヤル3回戦の本筋とは関係ないモンスターに追い詰められた俺、小間竜騎の運命は如何に!?
次回に続く!
「……あれ!? 引き延ばされねぇ!」
完全に次回に続く流れだったろ!
くそ! 次の話にいく間に策を練ろうと思ったのに!
「何をゴチャゴチャ言ってんだブチ殺すぞコラァ!」
チンピラ2人がさらに加速し、俺との距離を一瞬で詰める。
「うっそ!? 頼むそれ以上速くならないでくれぇ!」
なんとか2人を振り切ろうとする俺。
だが、勝利の女神は俺には微笑まなかった。
「あでっ!」
股間から竜が生えてた時の変な走り方が癖になっていたせいか、中々お目にかかれないこけ方で地べたに顔面からダイブする俺。
起き上がると、チンピラ2人は既に俺の目の前に立っていた。
「あー終わった……」
俺は諦めてゆっくりと地べたに寝っ転がる。まるでテレビでも見るかのように肘をつきながら。
「ククッおいおい……。まさかあのタイミングで転ぶとはな。クソだせーなお前」
「本当それな。あーもう……はい」
全てを諦めた今、最早言い返す気力も残っていない。
あぁ、生前も死後もロクな人生じゃなかったなぁ。
「最期に言い残すことはあるか?」
「特にないなぁ。あ、最期に10回だけでいいから腕立て伏せしていい?」
「ダメだ。死ね」
イリスは俺に人差し指を向ける。
するとイリスの指先がバチバチと放電し始めた。
「あばよクソ野郎」
赤い稲妻がイリスの指先に凝縮され、一つの赤い光となる。
そして赤い光はビーム状になって、俺の頭をつらぬ……
「避けろエリス!」
直後。イリスの叫びによって朦朧としていた意識を覚醒させる俺。
目の前にチンピラ2人はいなかった。巨大な光の剣が、先ほどまでチンピラ2人が立っていた地面を寸分の狂いもなく直線に切り裂いた。
「全く世話が焼けるな。お前とは協定を結んだばかりだというのに」
チンピラ2人から俺を庇う様に、俺の目の前に移動してきた男がそう言った。
黒い短髪に、猛獣の様な厳つい顔つき。190センチ近い筋骨隆々の大男。
その外見は完全に武闘派ヤ〇ザそのもの。
今まではとても勇者なんて信じられなかったが……
「誰だテメェ。邪魔すんならお前も殺すぞ」
「イリス様! この男は……」
「俺は万丈龍之介。元勇者だった男だ」
元勇者カインの魂を持つ者、万丈龍之介は堂々とそう言い放った。
初めて、このコワモテが勇者に見えた瞬間だった。
お読みいただきありがとうございました。
次回、万丈VSチンピラコンビ!




