夜④ 疑念
またもやあの男が……と思いきや?
「汐里! マキナさん!」
俺、小間竜騎と紅クレアの前には、床から生えた巨大な棘の様な物で串刺しにされた砂肝汐里と出部栖マキナがいた。
「この棘は……」
俺は眠っている股間の竜を両腕で持ち、巨大な棘に触れた。すると、巨大な棘がボロボロと崩壊し始めた。
「この棘、異能か魔術で作られたものみたいだな」
股間の竜で無効化できたということは、そういうことで間違いないだろう。
「2人共! 大丈夫!?」
「夜のフェーズでプレイヤーが死ぬことはない。心配しなくても直に治る」
「……誰がこんなことを」
怒りに体を震わせるクレア。全てを焼き尽くしてしまいそうな威圧感を感じた俺は、何故か何も悪い事をしていないのに恐怖に震え上がった。
「お、俺じゃないですよ」
「分かってるわよ。なんでわざわざ怪しまれること言うの?」
「でへへ。す、すいやせん」
賊の下っ端の様な情けない謝罪をする俺。いやぁ、非常に不甲斐ない。
「とりあえず俺の部屋で休ませるか」
「そうね」
俺とクレアは、倒れて意識を失っている砂肝とデブスを部屋に運び出す。
つかデブス重っ。改めて思い出したが、俺は昨日コイツと寝たんだよな……。我ながら自分の性欲が恐ろしい。
そして、待つこと10分弱。ついに砂肝とデブスが目を覚ました。
「ここどこぉ……?」
「汐里! よかった気が付いた……」
「ヴふん。だぁりぃん♡ またあたしを連れ込むなんて大胆ねぇん。クレアちゃんとしおりちゃんも入れて今日は4Pかしら?」
「うるせぇ寝てろ」
俺は抱き着いてきたデブスを払いのけ、2人に話を聞くことにした。
「お前たち2人共、俺の部屋の前で巨大な棘で串刺しにされてたんだが、一体何があった? 誰にやられた?」
「……」
すると突如、砂肝が涙をぽろぽろと流し始めた。
嗚咽を漏らす砂肝に代わって、デブスが俺の質問に答え始めた。
気丈に振る舞ってはいるが、デブスの唇も震えていた。
「さくやちんよ」
「咲夜……海藤の奴か」
あの野郎……恐らく2回戦の仕返しのつもりなんだろうな。
はっ、随分と器の小さい魔王様だな。
「あたしとしおりちゃんの2人で歩いていたら、突然さくやちんに異能の力で、部屋に無理矢理引きずり込まれたわ。そこでひどい拷問を受けたわ。そして、意識を失って気が付いたらこうなっていたって訳」
「あいつ……」
怒りに体を震わせるクレア。
「だーりんの言ってた通り、あいつは想像以上に危険な男よ。人を苦しめ、殺すことになんの躊躇いもない。それどころか、本当に心の底から楽しんでる。あいつは悪魔よ」
まぁ海藤なら当然そのくらいはやるだろうな。
すると、砂肝がようやく口を開いた。
「……海藤。わたし……あいつに……無理矢理襲われて……乱暴されて……ひぐっ」
感情が安定しない中、必死な様子で言葉を絞り出す砂肝。
無理矢理襲われて、乱暴された。つまりはそういうことだろう。
しかし、あの海藤がそんなゲスなことをするとは……。
まぁクソ野郎ではあるんだが、何かが引っかかる。
「海藤の奴、絶対許さない! ぶん殴ってやる!」
堪忍袋の緒が切れたクレアが俺の部屋を飛び出そうとする。
俺はクレアの腕を掴んでそれを止める。
「何よ!」
「落ち着け」
「友達がこんな目に遭ってるのに落ち着いてられないっての!」
「クレアはこの2人が落ち着くまで一緒にいてやってくれ。砂肝は特に、お前がいてくれた方が安心するだろ。傍にいてやれ」
「それは……そうかもしれないけど、小間はどうするの?」
「とりあえず海藤のところに行く。あいつの狙いは俺だ。行くのは俺一人でいい。それに、少し引っかかることがある」
「……うん。分かった。気を付けて」
「あぁ。デブス、海藤の部屋何番か分かるか?」
「えっと、確か12番だったはずよん」
「分かった」
俺は自室を出て、海藤がいる12番の部屋に向かう。
「ここが17番、18番だから……こっちか」
12番の部屋があると思われる廊下に足を踏み入れようとした、その直後だった。
「なるほどなァ。ククッ。いい趣味してやがんなァ」
曲がり角の向こう側から、海藤が誰かと会話をしている様子が聞こえてきた。
俺は曲がり角に身を隠し、その様子をそっと覗き込む。
俺は、海藤と会話している相手の姿を確認し、衝撃を受けた。
海藤の金髪よりも、さらに白に近い金髪。きめ細やかな白い肌に、凹凸のはっきりした理想的なスタイル。
俺はその女をよく知っている。何故なら、2回戦で同じチームで戦ったプレイヤーだからだ。
海藤と会話をしていたのは、天上ミコトだった。
お読みいただきありがとうございました。
何故ミコトが海藤と一緒に……!?




