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夜② 謎

勇者は来るのか…


 自室に入った俺、小間竜騎はシャワーを浴びて、全裸でベッドに寝っ転がる。

 ちなみに俺の股間の竜はというと、例によってぐっすりと爆睡していた。


「こいつは夜は使い物にならないからな。いや、そいや途中で起きてたっけか」


 確か、砂肝と鳥皮と女湯の前で揉めていた時に起きたんだっけ。あんときは松笠もいたっけか。懐かしいな、もう死んだが。

 

 しかし思えば、この股間の竜も含めて、色々分からないことだらけだ。

 2回戦開始前に見たチーム分け、プレイヤーの横に書いてあった枝番のこと。

 黒騎士が俺の異能を「ジョーカー」と呼んだこと。

 そして、かつて異世界で海藤と戦った元勇者・カインが一体誰なのか、ということ。

 というか、まさか元勇者の奴、2回戦で死んじゃいねーだろうな。

 なんて考えていると……


 コンコン


 ……と、自室のドアを叩く音が聞こえてきた。

 俺は2回戦終了時、プレイヤーたちに勇者カインを呼び掛けた。正直、来るかどうか半信半疑だったが、まさかこんなに早く来るとは。

 俺はベッドから起きて、ドアを開けて来客を迎える。

 このドアの向こうにいる者が勇者カイン、一体誰が勇者なのか。


「……やっほ」


「……クレア、お前なのか?」


 ドアの向こうにいたのは、2回戦で俺と同じチームで戦った紅クレアだった。


「え、何が? ……てか、何でアンタ全裸なのよ?」


「風呂上がりだから」


「はぁ、まぁいいけど。少し入ってもいい?」


「え? あぁ、どうぞ」


 俺はクレアを部屋に迎え入れる。2回戦で下半身裸の俺に見慣れたせいか、全裸の俺を見てもさして驚く様子の無いクレア。

 いや、そんなことよりもだ、このタイミングでこいつが来たってことは、クレアが元勇者カインなのか?

 予想外の登場に驚きを隠せない。


「クレア、確認したいんだが、お前が勇者カインなのか?」


「え? なんの話?」


「……なんでもないです」


 やっぱり違かったか。一瞬、嘘をついているのかと思ったが、嘘をつく位なら俺の部屋に来る必要が無いし、何より「え? なんの話?」の時のアホヅラがひどすぎて、とても嘘をつけるほどの知能を持ち合わせているとは思えなかった。


「今、なんか失礼な事考えてなかった?」


「いやなにも」


 頭は悪いが野生の勘は鋭いみたいだな。マジゴリラだわ。


「というより、何の用なんだ? 俺に抱かれに来たの?」


「アンタに抱かれるくらいならゴリラに抱かれた方がマシよ」


「マシってか、お前にとっちゃ同族なんだから普通のことだろ? それ」


「殴るわよ」


 普段だったら、この後絶対殴られていただろうが、今回は殴られなかった。


「……今日は本当にごめん」


「え?」


「海藤に、あの黒い結界に閉じ込められた時、私のせいで大変な目に遭ったこと……」


「あぁそれか。何かと思えば、くだらない」


「……でも、私は」


「確かにあん時はムカついたが、勝ったんだからいいだろ。それに次からはまた敵同士だ。いちいちそんなこと気にしても仕方がないだろ」


「……本当にドライだよね、アンタって」


「知らねーよ。過程はどうあれ、結果的に俺が生き残れればそれでいい」


 しばしの沈黙が流れ、クレアが再び口を開く。


「アンタってさ、友達いなかったでしょ」


「なんで」


「思いやりゼロだし、性格悪いし、友達でも敵になったら容赦しないじゃない。その……松笠君とかさ」


「松笠? あーあいつか」


「ほらもう忘れてる」


「死んだ奴なんて覚えていても仕方ないだろ」


「死んだって、松笠君を嵌めたのアンタだけど……」


「つか、俺が松笠を失格にしなきゃお前もまた死んでたんだぞ? むしろ感謝しろよ俺に」


「そうなんだけど、手段が手段だからちょっと複雑というか……。ねぇ、アンタって、元からそうなの?」


「そう、とは?」


「生まれた時から顔も性格もゴミクズで人を人とも思わぬクソ野郎だったの? ってこと」


 クレアにしては落ち着いたトーンで話してるなぁ、なんて思っていたら、これ以上ないくらいの罵詈雑言を浴びせてきた。俺が言えることじゃないけど、コイツ女の癖に口悪いよな。


「そうなんじゃねーの? ずっとロクなもんじゃなかったぜ」


 適当にはぐらかすつもりが、何故か最後にいらんことを言ってしまった。


「ふぅん……。そういえば、アンタと最初に話した時にも聞こうと思ってたんだけど、アンタってなんでここに来ちゃったの?」


 この神の間に来た理由、つまりは前世の死因が聞きたいんだろう。


「まぁ言いづらかったらいいんだけどさ……ここに来る人ってやたら交通事故で亡くなってる人多いし、アンタもそうなのかなって……」


「……オーバードーズだ」


 本当、誰にも話すつもりはなかったんだがな。

 気が付けば、俺は口を開いていた。


「おーばー……どーず?」


「薬物の過剰摂取のことだ。俺の場合は「ハッピーホワイト」ってヤクのやり過ぎだな」


「……え。ヤクって、な、なんで」


 流石に驚いた様子のクレア。

 こんな話を聞かせたところで何になる。そう思っていたのだが、自分の意思とは正反対に、俺の口が止まることはなかった。


 仕方ない。ついでだから、少し付き合ってもらうとしよう。

 俺を俺たらしめるワケ、そんなクソみたいな昔話に。



お読みいただきありがとうございました。

次回は小間竜騎の過去のお話。

結構重めです。

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