表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/103

昼㉒ 結果発表ォ~

ようやく終わった2回戦の結果発表です。


『皆さま、お疲れさまでした! 只今をもって、2回戦を終了致します!!』


 女神の声がフィールド全体に響き渡った。

 瞬間、目前には緑が生い茂る草原が広がっていた。


「ここは……最初の集合場所か」


「……終わったんですね。2回戦が」


 ひとまずは激闘を乗り切ったことに、ミコトが安堵する。

 俺は周囲を見渡し、他のプレイヤーの存在を確認する。


「2回戦開始時の人数が27人……あそこから10人以上減ったって訳か」


「小間っち!」


「……無事だったのか、松笠」


 何故だか久しぶりに会う気がする松笠剛平。少し小柄な体に、こげ茶色のオールバック、不愉快なゲス顔は健在のようだ。松笠の周囲を確認するが、松笠と同じチームの栗原悟くりはらさとる宮本鉄也みやもとてつやの姿が見当たらない。

 ……そうか。松笠の奴、()()()()()()()()()()


「なんとか生き残ったでやんすよ。というか、小間っちはやらなかったでやんすね」


「あぁ。実行するタイミングがなくてな」


「そうでやんすか。なんだかおれだけ得する形になってしまってすまないでやんすねぇ~」


 ゲス顔に拍車をかけてそう言った松笠。相変わらず不愉快な顔だ。


「小間ァ!」


 松笠と話していると、海藤が鬼気迫る顔で俺の前にやって来た。


「あれ。君は確か爽やかイケメンの海藤君でやんすよね? なんか雰囲気が……」


 ゴッ!

 ……という鈍い音と共に、松笠が海藤に殴り飛ばされる。

 松笠は一撃で意識を失った。可哀想に。


「なんの用だよ海藤。無関係な松笠まで殴り倒して」


「どういう事だ」


「それは俺が聞きたい」


「どうして……どうしてあの2人が生きてやがる!? オマエ、どうやって黒結界ダークドームから出やがった!?」


 海藤の目線の先。そこには、出部栖でぶすマキナと砂肝汐里すなぎもしおりがいた。

 瞬間、デブスと目が合う俺。するとデブスは、肥満体を揺らしながら俺の元へやって来た。


「ヴふん! だぁーりぃん♡ 助けてくれてありがとねん♡ ヴふん!」


「キモいからダーリンって呼ぶなよブス」


「オマエ……小間ァ……」


 珍しく怒りの表情を浮かべる海藤。

 怒ってるコイツを見るのは、正体を明かす前を含めても初めて見たかもな。


「まぁそう怒るなよ。あとで教えてやるから。てか、そろそろ女神様が話したそうにしてるぞ」


 俺の一言で、海藤だけでなく周囲のプレイヤーたちが、いつの間にか出現していた女神の存在に気が付いた。

 しーん……という効果音がぴったりな静寂が流れる。


「こほん。皆さまが静かになるまで3分かかりました」


 女神がやや拗ねた顔をしながら、小学校の教師みたいなことを抜かし始めた。


「わざわざ待ってたのかよ女神様。さっさと声かけりゃいいのによ」


「いえ、今来たばかりなので特に待ってはいませんが」


 なんやねんこいつ。


「気を取り直して、皆さま、2回戦お疲れさまでした。只今から、2回戦の結果発表を行いたいと思います」


 ついに来たか。3回戦に進めるのは平均点が高い上位4チーム。とはいえ、俺の思っていた以上に脱落者が多いみたいだから、ここにいる奴らからあぶれるのはせいぜい1チームほどだろう。


「では、ここにいるチームの平均点を高い順に発表していきます」


 全員が息を飲み、女神の次の一言を待つ。


「第1位。チーム8。平均点は4027点。生存者は万丈龍之介ばんじょうりゅうのすけさん、鳥皮好実とりかわこのみさんの2名です」


 1位となったのは、昨日大浴場で少しだけ話した万丈と、クレアの友人その2である鳥皮のチームだった。1人脱落者が出たということは、平均点は総合点の2分の1。しかし、2分の1の点数でも4027点か。想像以上に高いな。

 そして、当の万丈と鳥皮はと言うと、生き残れたことを特に喜ぶ様子もなかった。


「続いて第2位」


 女神は、そんな俺たちのことなんてどうでもいいといった様子で、淡々と続けた。


「チーム4。平均点は3826点。生存者は空木勇馬からきゆうまさん、桃木ももき瞑亜めあさんの2名です」


「やったで~! なんとか生き残ったで! メアちゃん!」


「うるさいな~ゆーまちん。わたしのこと見捨てたくせに。ボーナスタイムで活躍したのはわたしなんだから、感謝してよね~」


「いやーホンマすまんの! おおきに!」


 微塵も悪びれた様子の無いエセ関西弁の空木と、微塵も怒った様子の無いロリ美少女の桃木が、薄っぺらいやり取りをしていた。まぁ2人共、心底では仲間だと思ってないからこそなんだろうな。

 そして、続けて女神が口にしたチームは……


「続いて第3位。チーム1。平均点は3522点。生存者は海藤咲夜かいどうさくやさん、砂肝汐里すなぎもしおりさん、出部栖でぶすマキナさんの3名です。」


「……チッ。カス共のせいで点数が下がったか」


 3位は海藤のチーム。海藤の言う通り、デブスと砂肝が生き残ったおかげで、点数は3分の1となった。だが恐ろしいのは、3分の1の点数の割には、2位のチームとそれほど点差が無いということ。もし海藤の目論見通り、黒結界ダークドームでデブスと砂肝が俺たちに倒されていたら、間違いなくこいつがぶっちぎりの1位だっただろう。


 さて、3回戦の出場枠はあと一つ。この場でまだ呼ばれていないチームは俺とクレア、天上ミコトのチーム6。もう一つは、松笠1人となってしまったチーム2。このどちらかのチームが3回戦出場となる。

 そして、ここで呼ばれなかったチームは当然敗退となる。


「……ミコトさん」


「クレアちゃん……」


 俺の隣で心配そうな表情を浮かべるミコトの元へ、とぼとぼとクレアがやって来た。その表情は心配……というよりも、50分も時間を無駄にした原因を作ってしまった罪悪感に満ちていた。


「続いて第4位」


 俺たちチーム6と松笠が息を飲む中、女神は冷たい表情で言葉を放った。


「第4位はチーム2。平均点は3019点。生存者は松笠剛平さん、1名です。」


「……え?」


 第4位は松笠一人のチーム2。

 ここで呼ばれなかった俺たちのチーム6は第5位、俺たちの2回戦敗退が決定した。



お読みいただきありがとうございました。

次回、脱落者とお別れします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ