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昼㉑ 2回戦終了

新しく登場した異能


桃木ももき瞑亜めあ

異能:武器商人ウェルカム

   何もない場所から、あらゆる重火器を無限に生み出し、操る異能……?桃木は、マシンガンやロケットランチャー、さらにはパワードスーツや巨大ロボまで生み出して見せた。


万丈龍之介ばんじょうりゅうのすけ

異能:冥王星ヘルズマター

   触れたもの全てを消し飛ばす漆黒の物質「冥王星ヘルズマター」を生み出し、操る異能。防御力を完全無視した強力な異能だが、「冥王星ヘルズマター」を生み出すたびにライフが減少するのが弱点。減少するライフ量は、生み出した「冥王星ヘルズマター」の質量に比例する。また、生み出した「冥王星ヘルズマター」と同じ質量の物体しか消し飛ばせないため、質量を上回る攻撃は消し飛ばせない。



鳥皮好実とりかわこのみ

異能:攻撃ガード最大アンド防御ストーカー

   高密度のエネルギーである紫色のオーラを操る異能。オーラを纏っての、360度死角なしの鉄壁ガードが可能。また、オーラを巨大な腕や、剣のような形状に変えて攻撃することも可能。この異能の真骨頂は、「マーキング」をした対象者の座標へ瞬間移動できる、というもの。ただし、マーキングできるのは1人までで、新しく別の者にマーキングをすると、前のマーキングは使えなくなる。



 バトルロイヤル2回戦、モンスターハント。


 遡るほど50分前。

 俺、小間竜騎と紅クレア、天上ミコトのチーム6は、海藤咲夜に「黒結界ダークドーム」という魔術結界に閉じ込められてしまった。

 「黒結界ダークドーム」から出る条件は、同じく「黒結界ダークドーム」の中にいる、出部栖でぶすマキナと砂肝汐里すなぎもしおりを倒すこと。ただし、この2人は、海藤の魔術によって洗脳されており、正気を保っていない。説得は不可能であり、戦闘は避けられない状況だった。

 俺としては、さっさとこの2人を倒してこの結界から出たいところだったが、砂肝の友人であるクレアが2人を倒さないでほしいと懇願し続けたため、横這いの戦闘行為が続き、状況は一向に好転しなかった。


 しかし50分後、俺たちは、ようやくこの「黒結界ダークドーム」からの脱出に成功した。


「2人共、少し前に女神のアナウンスが流れたのは聞いてたよな?」


「……はい」


「……うん」


「アナウンスが流れてから大体30分が経った。つまり、例のボーナスタイムでの点数稼ぎを半分無駄にしちまったってことだ」


 ボーナスタイム。

 女神曰く、モンスターの点数が2倍になり、さらに、ダメージに応じて点数が加算されるボーナスモンスターが出現するらしい。これに30分乗り遅れたのは、正直かなり痛手だ。

 まぁそもそも、あのクソ結界の中で50分も過ごしちまった事自体が痛手だがな。


「あれ見えるか?」


「巨大な白い球体に……あれは、天使? あんなにたくさん……」


「勘だが、あのドでかい球体がボーナスモンスターだ。そんでその周囲にいる天使みてーなのは、高レベルのモンスターたちだ。今からあそこに行って、少しでも多くのモンスターを倒す。そして、その道中モンスターが出てきても倒す。とにかく1点でも多く稼ぐぞ」


「それなら私は、先にあそこに行ってるよ。私のせいでこんなことになってる訳だし」


「あぁ本当にその通りだな。さっさと行って来い」


 本当はクレアにもっとボロクソに言ってやりたかったが、今は時間がない。こんな所でごちゃごちゃ揉めている場合ではない。


「……2人共、本当にごめん」


 クレアはそう言うと、爆発な脚力で数百メートルほど飛躍した。

 そして、空気を蹴りながら、空中を高速移動しながら戦場へと向かっていった。


「すげーな。あいつ空気蹴っ飛ばして空飛んでやがる。あんなこともできるんだな。さて、俺たちも向かうとするか」


「……竜騎君、さっきのは少し言い過ぎだったんじゃ……」


「何が」


「クレアちゃんに対してですよ。相手がお友達だったんですから、こうなったのも仕方ないのでは……。今回はたまたまクレアちゃんのお友達でしたけど、もし、相手が竜騎君のお友達だったら、竜騎君は……」


「俺は相手が友人であっても、自分の命が懸かってたら迷わず殺す」


「……そうですか」


 何を訳の分からないことを言ってるんだ、この女は。

 自分の命と他人の命。天秤にかける必要すらない。そもそも俺に友人なんて呼べる奴は……まぁ、生前に一人だけいたか。あいつは今どうしているのだろうか。


「グオオォォォッ!!」


「うお! びっくりした!」


 突如、俺の股間の竜が咆哮をあげた。

 はっ、余計な事考えるなってか? 珍しくまともじゃねーか。


「行くぞ、ミコト」


 俺たちは、巨大な白い球体の元へ向かう。



--------------------



「ハハハァッ!!」


 同時刻、海藤咲夜は圧倒的な力で、レベル90の天使たちを蹂躙していた。


「流石に手ごたえあんなァレベル90は! さァもっと来やがれ! こんなんじゃオレは殺せねェぞ!? ハハハッ!」


「……あれ本当にかいどうちゃん? もっと爽やかイケメンって感じだったよねー?」


 2回戦開始前の海藤とのあまりの違いに驚きを隠せない桃木。


「あぁ、まるで別人だな。しかし、奴の異能は一体なんだ? さっきから炎に電撃、それに烈風……あれほど多くの力を操るなどできるのか?」


 海藤が使っているのは異能と魔術、万丈たちが知らぬのも無理はない。


「できるんじゃないのー? そういう異能なんでしょ。てか、かいどうちゃん強すぎ。まじで何者なんだろ」


「……なんでもいい。あのバケモノの大軍を倒してくれるなら。私は疲れた……」


 鳥皮は疲弊しきった様子で、地面に尻もちをついた。座る体勢を考える暇もないくらい疲れていたらしい。


「てか今さらなんだけどさー。バンジョーの「冥王星(ヘルズマター)」だっけ? あれたくさん使えば、ここらの天使たち全部消し飛ばせるんじゃないのー?」


「残念だがそれはできない。「冥王星(ヘルズマター)」は使うほどにライフを消費していく。あれら全てを消し飛ばすほどの「冥王星(ヘルズマター)」を使えば、俺は確実に死ぬだろうな」


「ふ~ん。それにしては、()()()()()()()()()()()()()?」


「そこまで使っていないからな」


「ふ~ん」


 あまり納得していない様子の桃木。


「……万丈さん。あまり無理はしないで下さい」


「心配するな鳥皮。俺には……2人共! 避けろ!」


 突如、巨大な岩石が3人目掛けて飛んできた。

 3人は間一髪でそれを躱す。


「なァに休憩してんだよオマエら」


 巨大な岩石を飛ばしたのは、戦闘中の海藤咲夜だった。


「残り30分切ってるんだぜェ? オマエらも殺しに来いよ」


「えー。こっちは疲れてるんだってばー。かいどうちゃんだけでやってよー」


「何か勘違いしてねェか? オレはオマエらの敵だぜ? オマエら3人だって全員同じチームじゃねェだろ。ぬりィこと言ってると殺すぞ」


 そう言った海藤は、天使たちの攻撃を躱しながら、サイコキネシスを用いて3人に攻撃を仕掛ける。

 だが、海藤がサイコキネシスを発動させた直後、空中から突如現れた紅クレアが、海藤の前に降り立ち、サイコキネシスを片手でかき消した。


「海藤ぉ!」


「……ほォ。オマエか。ここにいるってことは、どうやらお友達はちゃんとぶっ殺したみてェだなァ? なァ、お友達を葬るってのはどんな気分だったァ? イっちまうほど気持ちよかったかァ? あハハァ……」


「黙れゲス野郎。アンタはその内ぶっ飛ばしてやるから覚悟しときなさい」


「そうか? オレは今ヤリ合っても構わねぇぜ?」


「アンタに構ってる時間は無いのよ!」


 そう言ったクレアは、天使たちの群れに向かって走り出す。

 そんなクレアの目前に、破壊の天使と雷光の天使が現れる。


「(右の奴の攻撃は、ほんの少しでも食らったら終わりそうね……左はスピードがとにかく速い。黒騎士の斬撃以上のスピードだけど、攻撃をモロに食らわなければ……っ!)」


 クレアは僅かな時間で、相手の動きを見るだけでなく、第六感ともいうべき超人的な感覚を用いて、敵の戦力を分析する。紅クレアの戦闘センスは、もはや人間の域を遥かに超えていた。

 クレアは破壊の天使の攻撃を、敢えて距離を詰めて躱し、カウンターを決める。そして、カウンターを決めた勢いで体を捻り、雷光の天使に回し蹴りをお見舞いした。

 クレアの攻撃を食らった2体の天使が、粉々の肉片となって砕け散った。


「うっわー天使を素手で……。あの子なにもの?」


「……クレアは格闘戦においては無敵だから」


「およ。とりちゃんの友達?」


「……うん」


「すごいね……バケモノがもう一人だ」


「だが、いくら格闘センスがずば抜けているからといって、それだけであの天使たちは倒せまい。恐らく身体能力を増強させるタイプの異能を持っているんだろう」


 冷静にクレアを分析する万丈。


「ククッ。やるじゃねェか女ァ」


「うるさい話しかけんな!」


 一瞬だけ会話し、すぐにそれぞれ別の方向へと走り出す2人。

 クレアは異能を用いた肉弾戦で、海藤はサイコキネシスと魔術を用いて、天使たちを狩り尽くしていった。

 そして10分後、無数にいた天使たちは、ついに2人の強者の前から姿を消した。


「残りはあのデカいボールだけね」


「ライフが無限……あれがボーナスモンスターかァ。殺しても死なねェサンドバックってのはいいもんだなァ!」


 数キロメートルに渡って大空に君臨する、巨大な白い球体「終焉の大天使」。

 海藤はサイコキネシスを使った高速移動で、終焉の大天使の元へ飛んで行った。


「色々あるから、お好みのモノを選びなァ……」


 海藤は、終焉の大天使の目前で静止すると、自らの周囲に炎、水、風、雷を発生させた。

 そして、それらを全て、終焉の大天使に向かって放った。

 爆発、巨大な水しぶき、衝撃波、落雷音……あらゆる災害が同時に発生したかのような、出鱈目な現象が巻き起こる。そして、それらを食らった終焉の大天使を観察する海藤。


「……なるほどなァ。無属性モンスターか。どの攻撃でも効果は変わらず……か。なら、サイコキネシスのフルパワーでぶちのめしてやるよォ!」


 海藤はそう言うと、終焉の大天使のさらに上空に飛び、そして、両腕を空に向かって上げた。

 瞬間、大地がビキビキと割れ始める。森の木々や割れた大地が、海藤の遥か上空に集められ、凝縮されていく。

 そしてそれは、まるで小さな隕石のような姿となった。


「はっはははァッ!! 下の奴らもまとめて蟻んこみてェにぶっ潰してやるよォ!! げっひゃははァ!!」


「あの男! あの隕石で俺たちごと潰す気か!」


「デカすぎて今から逃げても間に合わないねーー! 迎え撃つしかないかーー!」


 そう言った桃木の体に、先ほどのパワードスーツよりも遥かに巨大な黒鉄の鎧が装着されていく。

 巨大なパーツが組み合わさっていく姿は、さながら戦隊モノの巨大ロボ合体シーンの様だった。


「じゃーーーーん!! 巨大ロボ完成! 向こうがフルパワーなら、わたしもフルパワーだぁーーーー!!」


 100メートル以上の巨大ロボの両腕を隕石に向かって伸ばす桃木。

 巨大ロボの両腕が、青白く輝き始める。


「皆ぁーー! あの隕石と白いボールに向かって一斉に攻撃だぁーー! じゃないとわたしたち皆、あの隕石にぶっ潰されて終わりだよーーーー!」


 珍しく大声でそう伝える桃木。


「それしかないようね。万丈さん、好実! まだいける!?」


「……大丈夫だよクレア!」


「問題ない。あれほど巨大な隕石だと、「冥王星(ヘルズマター)」で消し飛ばせるかは分からんがな」


 クレアは腰を軽く落とし、正拳突きの構えを取る。万丈は「冥王星(ヘルズマター)」を最大限使って、全てを消し飛ばす漆黒の太陽を生み出し、鳥皮は紫のオーラを巨大な剣のような形状へと変え、力を溜め始めた。

 そして、3人全員が隕石を迎撃する準備を始めた、その時……


「やっと着いたぜ! サンキューミコト! ゴールデン不死鳥フェニックスの背中に乗って一緒に飛んでなかったら、間に合ってなかったわ!」


 ゴールデン不死鳥フェニックスに乗った、小間竜騎と天上ミコトが姿を現した。


「大丈夫です! それより竜騎君!」


「あぁ! 海藤のクソ野郎、あの隕石で俺らごと白い球体をぶっ潰そうってハラだな! つかなんだあのロボット!? クソかっけぇなオイ!」


「小間ぁ! ミコトさん!」


「うるせぇわーってる! あの隕石かき消せばいいんだろ!?」


 巨大ロボに気を取られつつも、一瞬で状況を理解する小間。

 とはいえ、あの隕石をどうやって破壊するか……小間が思考を巡らせていた、その直後、女神の透き通る声がフィールド全体から聞こえてきた。


『皆さんお疲れ様です。バトルロイヤル2回戦も、残すところ1分となりました。残り僅かですが、思う存分戦って下さい!』


「クソ! もう1分かよ! ミコト! ありったけの黄金の炎をあの隕石にぶつけろ! 俺もフルパワーのドラゴンブレスをお見舞いしてやっからよ!」


「はい!」


 ゴールデン不死鳥フェニックスは口内に膨大な量の黄金の炎を蓄え始める。

 そして、小間も股間の竜に炎をチャージさせ始めた。


「クハハハァッ!! 来やがったか小間ァ! だがもうおっせェんだよォ! ギャハハハハハァ!!!」


 そして海藤はさらに巨大になった隕石を、終焉の大天使、そして、その下にいるプレイヤーに向けて放った。


「来やがった! やるぞお前ら! あの隕石を消し飛ばせ!」


「なんでこかんちゃんが仕切ってるか分からないけど、やるぞーーー!」


 小間に続いて、叫ぶ桃木。

 そして、桃木の巨大ロボによる極太レーザービーム、紅クレアの全力正拳突きの拳圧による衝撃波、万丈の最大級の「冥王星(ヘルズマター)」、鳥皮が持つ巨大な剣から放たれる斬撃のような波動……全員のフルパワーの攻撃が、巨大隕石に向かって放たれた。

 ……小間のドラゴンブレスを除いて。


「なっ!? あんた何やってんのよ!?」


 あまりに急な展開に驚くクレア。


「お前らはあの隕石を止めてくれ! 俺はチームに貢献するために、白い球体のダメージを稼ぎたいと思います、はいぃっ!!」


 小間のドラゴンブレスが、終焉の大天使に直撃する。


「この状況で裏切りに来るなんて……完全にだまされたよーーーー」


「まさか俺たちを足止めに使うとは、あの男……」


「……小間竜騎、やっぱり最低」


 桃木、万丈、鳥皮がそれぞれ小間に対して悪態をつく。


「こんのっ……私までだます必要あんのかぁーーーーーー!!」


「お前は正拳突き打ったんだから、手持無沙汰だろ! さっさと白い球体タコ殴りにしろや!」


「あぁそうだった!」


「アホかあいつ……ミコトは流石、俺がやろうとしてることが分かってたか」


「竜騎君が素直に協力プレイするはずありませんから」


「そりゃまた、素敵な信頼関係だ」


 そう言ったミコトは、小間に続いて、ありったけの黄金の炎による光線を、終焉の大天使に向けて放った。

 小間が放った伝説の竜による紅蓮の炎「ドラゴンブレス」、ミコトが放った太陽の様な輝きを放つ「黄金の炎」、この2つが混ざり合った「黄金のドラゴンブレス」とも言える一撃必殺級の攻撃が、終焉の大天使にダメージを与え続けていた。

 そして……


「いけ! クレア!」


「クレアちゃん!」


「はああああああぁぁぁぁぁっ!!」


 爆発的な脚力で、上空にいる終焉の大天使まであっという間に距離を詰めたクレアは、上昇の勢いを利用した強力なアッパーを、終焉の大天使の向かって放った。


「くたばれ白玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 巨大隕石とフルパワー攻撃の衝突、そして、終焉の大天使に向けて放たれた、チーム6全員による渾身の一撃。

 それぞれから、辺り一帯を消し飛ばすほどの巨大な爆発が巻き起こった。


 そして、爆発から数秒後……


『皆さま、お疲れさまでした! 只今をもって、2回戦を終了致します!!』


 女神の透き通る声で、バトルロイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』の終了が宣言されたのであった。



お読みいただきありがとうございました。

次回、遂に完結! 2回戦が!

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