昼⑳ モンスターパーティ2
予想外の犠牲者が…
「お前たち……ケガはないか」
レベル95の巨神兵を一刀両断してのけた万丈龍之介は、チーム4の桃木と葉山に向けてそう言った。
「助かった~あんがと。えっと~名前なんだっけ?」
「万丈でいい」
「お~。さんきゅ~バンジョー」
桃木は脱力した様子で礼を言った。
「万丈君。助けてくれたのはありがたいんだけど、なんで俺たちを助けてくれたんだい?」
葉山は別チームである自分たちを助けたことに疑問を抱く。桃木と葉山はチーム4、万丈はチーム8の為、至極当然の疑問と言える。
「理由はない。今は特に争う理由がないだけだ」
万丈は淡々とそう答える。
「万丈さん! やっと見つけた……」
「全く。ここにいたんすか。急にいなくなられたら困るっすよ」
「すまないな。鳥皮、高本」
万丈の元へ、同じチーム8のメンバーの鳥皮好実、高本慎太郎が現れた。そして……
「あ~! ゆーまちん! 無事だったんだね~」
「いやーすまんなーホンマに。森でモンスターから逃げ回ってたところをこの人らに助けてもろてな。ホンマおーきにやで」
つぎはぎの関西弁でそう答える空木勇馬。
「てか、そんなこと話してる場合じゃないっすよ。こいつらをどうにかしないと」
高本は天使の大軍を指差してそう言った。
だがその直後、高本の指が正反対にへし折れた。
「は? い、いってえええええええっ!?」
何が起こったのか理解ができない高本。その付近には、いつの間にか破壊の天使が近づいていた。
そして破壊の天使は、高本の首筋に軽く触れる。
それだけで、高本の首が粉々に吹き飛んでしまった。
「なんやこれ!? どうなっとんのや!」
「そうか、そういうことか!」
「なんや葉山君! 何が分かったんや!?」
「あの天使たちはそれぞれ1つの能力に特化しているんだ! 破壊の天使は攻撃力、守護の天使は防御力! そして、雷光の天使はおそらくスピ」
直後、葉山の首が別の天使の飛び蹴りによって吹き飛ばされた。
電光石火で葉山の首を吹き飛ばしたのは、雷光の天使だった。
「理解したで……この雷光の天使はスピードに特化しとるんやな」
「で、でも! スピード特化型なら、なんでけんちゃんは一撃でやられちゃったの!?」
「レベル90の基礎ステータスはそれだけ強力ってことだ」
空木の代わりに万丈がそう答えた。
万丈、桃木、空木、鳥皮の4人は死角を作らぬように背中合わせになる。
「いいか、天使の攻撃は全て躱せ。特に破壊の天使は、基本的に触れたらアウトだと思え」
「じょーだんきっつ~。めがみさまはわたしたちを全滅させる気なのかな~」
「これなら森にいたほうがマシやったかもなぁ……」
「……万丈さん。どうしますか?」
「破壊の天使は最も攻撃力に優れているが、反面、防御力は著しく低い。遠距離型の異能を持つ者は破壊の天使を重点的に狙え。だが、雷光の天使の超速攻撃を貰わぬように、常に防御態勢は怠るな。守護の天使はその防御力故、ほとんどの異能が通用しないが、俺の『冥王星』なら消し飛ばせる」
「さっすが万丈君やな。ちなみに、攻撃手段を持たない場合はどうしたらええ?」
「それは同じチームの桃木と相談してくれ」
「なら、ボクはここで失礼させてもらおかな。桃木! あとは任せたで!」
そう言った空木の姿が、徐々に透けて消えていった。
「マジかゆーまちん! お~い! あぁ……幻術で姿くらましちゃった~」
「行かせていいのか?」
「え~? 別にいいよ。そもそも最初から仲間じゃないし~それに……」
突如、桃木の体が黒い光沢を放つ鎧のようなものに包まれていく。足、胴体、腕、頭……と、徐々に桃木の姿は見えなくなり、身長140センチ弱の小柄な桃木が、その倍以上の体格の黒い鉄人に姿を変えた。
「さいきょーはわたしだからね! 一人で十分ってもんよ!」
大木の様な太さの腕、顔面を含む全身を覆う黒鉄の装甲。所謂、パワードスーツに全身を包んだ桃木は、勝気な様子でそう言った。
「ほんじゃいっくよ~~!」
パワードスーツの後背部から、大量の小型ミサイルが放たれる。小型ミサイルは自動で破壊の天使を追尾し、次々と撃破していく。
「やりぃ! お次はレーザービームだぁ!」
今度は桃木の掌から青白い光線が放たれる。光線を直接浴びた破壊の天使が跡形もなく消し飛んでいく。そして、光線が被弾した地面は巨大な爆発を巻き起こした。
「凄まじい火力だな……俺たちも行くぞ! 鳥皮!」
「……はい! 万丈さん!」
万丈はその大柄な体格からは想像できない速度で、天使の群れの中を突っ切る。
そして、守護の天使の目前まで迫ると、掌から漆黒の球体を出現させた。
「冥王星!」
すると、漆黒の球体に触れた守護の天使の頭部が一瞬で消し飛んだ。
「俺の冥王星は触れたものを全て消し飛ばす。防御力がいくら高かろうと無意味なんだよ」
だが、そんな万丈の背後を雷光の天使が捉える。
目にも止まらぬ電光石火。あとほんの0.1秒以下の時間で、万丈の頭は蹴り飛ばされる。
しかし……
「万丈さん!」
鳥皮が一瞬で、万丈の背後にいる雷光の天使を、拳で地面に叩きつけた。
正確には鳥皮の拳ではなく、鳥皮が纏っている紫色のオーラが……だが。
「……万丈さんには指一本触れさせない!」
「すまない。助かった、鳥皮」
「うへぇ~。一瞬でバンジョーのところに移動するなんて~すごいスピード。てかワープ? とりちゃんすご~い」
破壊の天使は桃木が遠距離から倒し、守護の天使は万丈が消し飛ばし、雷光の天使は鳥皮が倒す。それぞれの異能の長所を活かし、なんとか応戦し続ける3人。だが、無限に思えるほど増え続ける天使たち相手に、3人の体力は限界に近づいていた。
「くっ……倒しても倒してもキリがないな……」
「パワードスーツも雷光の天使のせいでボロボロだよ~。あと何分で終わるの~?」
「……万丈さんは……私が」
だが、3人の疲弊など余所に、天使たちの無慈悲な攻撃は止むことはない。
「……やるしかないか」
誰かがそう言った、その直後だった。
天使の軍勢の中心に、何かが衝撃と共に落下してきた。
衝撃波によって吹き飛ばされる天使たち。
「ここか。随分盛り上がってんじゃねェか」
爆煙と共に現れたのは、ここにいる天使たちとは正反対の悪魔だった。
「オレも混ぜてくれよ」
海藤咲夜。
狂気を孕んだ笑みを浮かべた悪魔は、純白の天使の元へと闊歩していく。
バトルロイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』
残り30分
モンスターパーティ参加者:チーム1(海藤咲夜)
チーム4(桃木瞑亜)
チーム8(万丈龍之介、鳥皮好実)
お読みいただきありがとうございました。
次回、ついに2回戦ラストです!




