昼⑲ モンスターパーティ1
いよいよ佳境
バトルロイヤル2回戦、モンスターハント
チーム4の桃木瞑亜と葉山健は、大空のど真ん中に突如として現れた「終焉の大天使」という名の白い球体の存在に驚愕していた。
「終焉の大天使。レベル99でライフが無限か……あんなの一体どうやって倒すんだ」
「倒すんじゃないよけんちゃん。多分あれがボーナスモンスターってやつなんじゃないかなー?」
「なるほど……それならライフが無限なのも頷けるね」
ボーナスモンスター。与えたダメージに応じて点数が加算されるという特殊なモンスター。
ボーナスタイム中に出現するということ以外は何も分かっていなかったが、ライフが無限ということは、恐らくこの大天使がボーナスモンスターなのだろう……となんとなく推測する桃木。
「じゃあ先手必勝だねー。他のチームが来る前に稼ぎまくろうよ~」
その直後、ロケットミサイルや機関銃、ライフル等……無数の重火器を装着する桃木。どうやらこれが、桃木の異能の力らしい。
「ほいよっとぉ~」
締まらない声とは裏腹に、怒涛の勢いで射出される弾丸とミサイルの雨が、終焉の大天使に降り注いだ。
大天使の周辺の雲を吹き飛ばすほどの大爆発が起こる。
「さっそく飛ばすねメアちゃん」
「ん~だけどライフゲージがないから、正直効いてるのか分からないね~」
重火器の雨を食らった大天使だったが、特に変わった様子はなく、大空の中心に君臨し続けていた。
「確かにね。それに大天使まで距離がかなりあるから、俺の異能じゃ大天使にダメージを与えられなそうだ」
葉山がそう言った直後、終焉の大天使の周囲に、白い天使の様な造形をしたモンスターが無数に現れた。
「破壊の天使 : Lv90」
「守護の天使 : Lv90」
「雷光の天使 : Lv90」
「……うへぇ~。全部レベル90……さっき森で会った80超えが可愛く見えるね」
「あの数相手じゃ逃げるのも難しいね。やるしかないか……」
今までとは数もレベルも桁違い。
桃木と葉山は、死を覚悟しつつ、無数の天使を迎え撃つことを決心した。
そして、そんな桃木と葉山に向かって、天使の軍勢が動き出した。
「来るよけんちゃん!」
桃木は再び無数の重火器を装着する。引き金を引いていないにも関わらず、銃弾やミサイルが自動で放たれる。レベル90のモンスターたちにこの程度の攻撃なんて効果がないだろう。そう考えていた桃木だったが、意外にも天使の何体かが一撃で倒され、青白い砂になって消えていった。
「あれ! 意外といけるよけんちゃん!」
「そうだね。けど油断しないようにね!」
そう言った葉山の体から、黒紫色の毒々しい液体が発生する。
毒々しい……というより、毒そのものだが。
葉山の毒を食らった天使の体が、ボロボロに崩れ落ちていく。
「やるねぇ~けんちゃん」
「あぁ。だが……」
葉山の毒を食らった天使たちだが、毒の効果に個体差があるのが気になった。
ある個体は一瞬で溶解して消えているのに対し、別の個体は多少毒が効いている様子を見せているものの、ライフはほとんど減っていなかった。
「この天使たち……各々持っている能力が違うのか?」
「けんちゃん! あれ見て!」
「全く……天使たちの分析も済んでないっていうのに、勘弁してほしいな」
桃木が示す方向には、天使たちをそのまま巨大化させたような、約40メートルほどの巨人が君臨していた。
「巨神兵 : Lv95」
「はは。レベル90超えが次々と……これはモンスターパーティだね~」
「……冗談言ってる場合じゃないよメアちゃん。これはヤバすぎる」
「やだな~。こう見えてわたしもビビりまくってるよ~。おしっこちびりそうだよ~」
「女の子がそんなこと言うもんじゃないよ、メアちゃん」
割と冷静そうに見えるやり取りをする桃木と葉山だったが、実際は巨神兵というモンスターのあまりの威圧感に押しつぶされそうになっていた。
そんな2人のやり取りを無視するかのように、巨神兵が桃木と葉山目掛けて拳を振り下ろした。
40メートルの巨神兵から放たれる拳の一撃、それはまさに破壊の鉄槌と呼ぶに相応しい一撃だった。
「くっ! ここまでか!」
「やばば~! こうなったらアレを……」
桃木が言いかけたところで、振り下ろされた巨神兵の拳が、ピタっ……と静止した。
そして直後。
巨神兵の体が、巨大な漆黒の刃によって真っ二つに切断された。
「レベル95のバケモノを一撃で……一体誰が……?」
疑問に思う葉山だったが、すぐにその疑問は解消されることとなる。
巨神兵が砂となった背後から、屈強な男が姿を現す。
「お前たち……ケガはないか?」
その男は、チーム8に所属する、万丈龍之介だった。
バトルロイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』
残り50分
モンスターパーティ参加者:チーム4(桃木瞑亜、葉山健)
チーム8(万丈龍之介)
お読みいただきありがとうございました。
2回戦もそろそろ終わりそうです。




