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昼⑯ 虐殺

今話から海藤が割と多めです。


 チーム3のイリスとエリスは、前世の宿敵である海藤と対峙していた。


「今度はお前が死ぬ番だぜ! 海藤!」


 黒い翼をさらに巨大化させ攻撃を仕掛けるイリス。

 ただし、今度は翼そのものを使った攻撃ではない。翼を大きく羽ばたかせ、烈風の刃を海藤に放った。


「ハッ。扇風機にしちゃ上出来だな。心地いいぜェ!」


 だが、海藤はそれを片手を軽く振るうことであっさりとかき消す。

 そして、烈風をかき消すと同時にサイコキネシスで攻撃を仕掛ける海藤だったが、エリスがそれを体を盾にして防ぐ。


「イリス様には指一本触れさせん!」


「そうかァ。ならしっかり守れよォ!」


 サイコキネシスで浮遊させている岩を流星群の様に飛ばす海藤。

 一切隙間のない広範囲の攻撃。これを防ぎきるのは極めて至難の業。だが直後、イリスたちに放たれた流星群がぱっと姿を消した。


「あァ?」


 そして数秒後、森の奥の方から爆音が鳴り響いた。


「ひぃぃっ!」


 その爆音に人一倍怯える眼鏡の少年、チーム3の西園寺孝明さいおんじたかあき


「(あの眼鏡……確か小間たちと共闘した時にもいたな。チンピラ共と同じチームなんだろうが……)」


 そこで海藤は、イリスたちが小間の香水に邪魔されて戦線離脱した時のことを思い出す。


「(あの時、チンピラは眼鏡に何かを急かしていた。そして次の瞬間に、あいつらの姿が消えた……なるほどなァ。大体理解した)」


 海藤は僅かな時間で分析を済ませ、敵の力の正体を導き出した。


「今のはそこの眼鏡の異能だな? 瞬間移動の類……だが常に発動できる訳じゃない。何らかの感情をトリガーにして発動する……例えば、恐怖心とかなァ」


「はっ驚いたな。あの一瞬でこの眼鏡の力が割れちまうとは。サイコキラーのくせして探偵でも目指してんのか? テメェはどう考えても犯人ヅラだろうが」


「ククッ。犯人側はついさっき味わったからなァ。今度はオレが探偵サマだ」


 おどけて返す海藤。ふざけているが、西園寺孝明さいおんじたかあきの異能を暴くことにはほぼ成功している。


羊を以て牛に易う(エスケープゴート)

 西園寺が恐怖心を抱いた際に、「身代わり」を使って恐怖の対象から逃走する異能。

 この異能は使用者本人と身代わりの位置が入れ替わることで、恐怖の対象から逃走することもできるが、恐怖の対象そのものと身代わりの位置を入れ替えて逃走することもできる。

 小間と海藤と戦った際はイリスに脅されて恐怖を感じたため、森に落ちていた木の枝と自分の位置を入れ替えて逃走した。ただし、その時はイリスとエリスに腕を掴まれていたため、西園寺一人での逃走とはならなかった。今回の流星群は、森に落ちていた適当な木の枝と流星群の位置を入れ替えることで攻撃を回避した。


「恐怖心がトリガーとなって働くアポート&アスポート能力。中々面白れェ異能じゃねェか。かなり人を選ぶみてェだが」


「そう、この能力は前提として恐怖心を抱かなければ使えない。要はビビりほど使いやすいってこった。よかったな眼鏡。弱虫のテメェに打ってつけの力じゃねーか」


「うぅ……」


「弱虫かァ。それならオマエら全員似たようなもんだけどなァ」


「てめーの煽りはいい加減聞き飽きたぜ海藤。ここからは本気で殺してやる。エリス! あれをやるぞ!」


「分かりました」


「ほぉ。何を見せてくれるのかねェ。ククク……」


 イリスとエリスの肌がそれぞれ変色していく。そして、2人の変化は勢いを増していく。

 身にまとっていた黒いスーツが破けるほど筋肉が肥大化していき、頭部からは黒い2本の角がそれぞれ生え、目の色は赤く変色していた。

 その姿は最早人間のものではなかった。言うならば、イリスは黒い翼を持つ悪魔、エリスは筋骨隆々の鬼の様な姿へと変貌を遂げた。


「おォーおォー。そりゃ変身か? いや、それがキサマらの魔族としての真の姿か。だが、人間の体に転生したってのに、前世の姿に戻れるモンなのか?」


「いい事教えてやるよ海藤! 俺たちは前世の記憶を思い出すと同時に、前世の力を徐々に取り戻していく。そしてその力を完全に取り戻した時、一時的に前世の姿に変身することが可能になるのさ!」


「前世の姿だとォ……?」


「まぁ、しばらくしたら転生後の姿……元の人間の姿に戻っちまうがな。だがそれで十分だ! 俺たちのフルパワーでテメェを挽き肉にしてやるよ! 海藤ぉ!」


「ククッ。それはいい事を聞いたなァ。ならオレも力を完全に取り戻せば、元の魔王の姿に戻れるってワケか」


「魔王……だと?」


「ん? あァそうかそうか。オマエらはまだ人間だった頃のオレに殺されたから知らねェのかァ。オレはあの後、人間やめて魔王になってよォ。あンときァ楽しかったなァ。今までと比べモンにならない数の人間をぶっ殺してよォ……あは♡」


「聞き捨てならねーな。俺には魔王になるって野望があったんだ。あと少しでそれを叶えることができたんだ。テメェにさえ殺されなきゃな!」


「フフ、そうかよ。逆恨みもいいところだなァ。なら丁度いい。お前が魔王に相応しいかどうか、このオレが査定してやるよ」


「どこまでも上からだな海藤……マジで殺してやるよ」


 瞬間、海藤の視界からイリスとエリスの姿が消える。

 目にも止まらぬ高速移動で海藤の背後に回ったイリスは、海藤を空中へと蹴り上げた。

 一方、エリスは蹴り上げられた海藤目掛けて上空から高圧の重力波を放ち、海藤を押し潰した。

 重力波で押しつぶされた地面は丸く抉られていた。


「はっ! ぺしゃんこだなぁ海藤!」


 だが海藤は意に介さない様子で、すっと立ち上がる。

 首をゴキゴキと鳴らしながら、不敵な笑みを浮かべる。


「ククッ。こりゃ重力魔術か? 中々面白いチカラだなァ」


 エリスはそんな海藤を無視して、2度、3度と重力波を海藤に向けて放った。

 だが、海藤の足が地面に少しめり込むだけで、ダメージを負っている様子は一切見られなかった。


「フン。サイコキネシスの膜を常に全身に展開しているのか。それが自動防御の役割を持っているようだな」


「なんだ。お前喋れたのか鬼ゴリラ。悪魔ホストのペットにしちゃ流暢に話すじゃねェか」


 鬼ゴリラとはエリス、悪魔ホストとはイリスのことだろう。


「貴様……私はともかく、イリス様を侮辱することは許さん!」


 そう言ったエリスは紅蓮の炎を纏い、炎の球体をマシンガンの様に海藤に連射した。

 それと同時にイリスも特殊な赤い電撃を両腕に纏い、海藤に連続突きを放つ。

 前世の姿に変身し、真の力を取り戻したイリスとエリスによる全力の連携攻撃。


「ハハハッ! サウナに電気マッサージかァ? キモチィねェ! 銭湯でも始めたらどうだチンピラコンビがァ!!」


 だが、イリスとエリスの攻撃をまるで意に介さない海藤は、右手で巨大な水の塊を発生させ紅蓮の炎を消し、さらに地面を腕の様な形状に変形させ、赤い電撃をかき消した。


「な、なんなんだよテメェは……。俺たちは上級魔族だぞ!? いくら元魔王だからって、こ、こんなことがあるはずがねぇだろうが!!」


 自分たちの全力をあっさりと踏みにじる海藤に、怒りと動揺を隠せないイリス。


「当然だろ。オマエ風に言えば、元魔王のオレは最上級魔族だ。雑魚が2人集まったところで、差が出るのは当然のことだろォ?」


「……ふざけんな」


「あァ?」


「なんで俺たちの魔術が効かねぇ! なんでノーダメージなんだよ! クソクソクソ! 意味分かんねぇんだよ! こんだけ攻撃ぶち込んでんだから死ねよ! 死ね死ね死ねクソがっっ!!」


「おォーおォー。クソガキみてぇに喚き散らしやがって。惨めだなァ、悪魔貴族の坊ちゃんよォ」


 どうやら海藤はイリス、エリスの2人と前世で会ったことを思い出したようだ。


「悪魔ホスト。確かオマエは悪魔貴族の王子で、そっちの鬼ゴリラはそのボディーガードだったよなァ」


「ようやく思い出したかマヌケが……。前世で……なんで俺たちを殺した? まぁつっても、どうせ俺たちに懸けられた賞金が目当てだろうけどな……」


 力の抜けた様子のイリス。どうやら海藤との圧倒的な実力差の前に戦意喪失してしまったようだ。

 今のイリスにできるのは、前世で何故自分たちが殺されたのか、その理由を問う事だけだった。


「はァ。懸賞金ねェ」


「すっとぼけんな。どうせ金目当てだろうが」


「いやァ。オレは金には興味ないんでねェ。欲しいものがあったら殺して奪えばいいしなァ。そもそもオマエたちが賞金首なのも今初めて知った」


「あ? じゃあなんで……」


「あァーなんだっけか……そうそう思い出した。腹ァ減ってたんだよ、あの時」


 一瞬、思考が止まるイリスとエリス。

 海藤が言っていることが、本当に理解できなかったのだ。


「あの時、オレは破壊と殺戮を楽しみながら、旅をしていた。その道中、偶然オマエたちを見かけた。そしたら、オマエたちが旨そうなモンスターの肉を持ってたのが見えてなァ。その肉が食いたくなったから、殺して奪った、って感じだなァ」


「は? 肉が食いたかった……まさか、そんだけの理由で?」


「あァ。確かそうだったはずだ」


 腹が減っていて肉が欲しくなったから殺した。あまりにも身勝手な殺害理由を他人事のように話す海藤を見て、戦意喪失していたイリスは再び怒りと憎しみを露わにした。


「……ざけんな。ナメてんじゃねぇぞクソ野郎がっ!!」


 イリスは黒い翼をさらに巨大化させ、海藤に斬撃を放つ。だが……


「それはもう見飽きたなァ」


 海藤が軽く腕を振るうと、巨大な黒い翼が一瞬で霧散した。


「イリス様ぁ!!」


 危機を察知し、イリスの元へ向かおうとするエリスだったが……


「なんだこれは!? 金縛りか? 体が動かぬっ……!」


「ククッ。そこで大人しくしてろ」


 海藤はそのまま、人差し指をイリスの額に当てる。

 額に当てた指が、ずぶずぶと沈んでいく。


「……ぁ……ぁ……」


 抵抗することはおろか、もはや声を上げることもできなくなったイリスは、その様子をただただ傍観することしかできなかった。


「ククッ。じゃあな」


 イリスの頭部が、風船のように膨張していく。

 そして、頭部が元の倍ほどの大きさまで膨らんだ直後、バァン! ……という破裂音と共に、イリスの頭部が砕け散った。イリスのライフゲージが完全に尽き、そのままイリスの体は砂になって消えた。


「……あれだなァ。頭を吹っ飛ばしても血が出ないのは、この神の間の数少ない欠点の一つだなァ。味気ねェぜ、こりゃ」


「……海藤、貴様あぁぁぁっ!!」


 サイコキネシスの拘束を強引に解いたエリスは、その巨体に似合わぬスピードで海藤目掛けて飛んで行った。


「ほう。中々やるじゃねェか」


「よくもイリス様を! 許さぬぞぉ!」


 エリスの岩のような剛腕から放たれる、目にも止まらぬパンチラッシュ。そのあまりの衝撃に、余波だけで周囲の地面が砕け、地割れを起こしていた。

 だが、海藤はその場から一歩も動かずに、その様子を退屈そうに眺めていた。

 エリスの連続攻撃は、海藤に一発も当たっていなかった。


「全く……。なってねェよオマエら。全然なってねェ」


 海藤はそう言うと、エリスの鳩尾に掌底のような一撃を食らわす。たった一撃で、エリスの胸部に風穴が開いた。


「ごばぁっっ!!?」


 ダメージが大きすぎたのか、エリスは立つことすらままならなくなり、そのまま仰向けに倒れてしまった。

 そんなエリスを見下しながら、海藤が口を開いた。


「オマエらは魔術の力を過信しすぎだ。せっかく異能を手に入れたってのに、使う素振りがまるでない」


 海藤は吐き捨てるように続ける。


「異能は1人につき1つまで。一見、多種多様な魔術の方が使い勝手がいいように思える。だが、異能には魔術にない大きな利点がある。魔術を使うには魔力がいる。だから魔力が底を尽きれば、当然魔術は使えなくなる。だが異能にはそれがない。基本的には無制限に使うことができる。こんな便利な力を使わずに魔術一本で戦うなんて、センスの欠片も感じねェよ」


「……知った風な口を……。貴様は……力を完全に取り戻していないから、異能に頼り切るしかないだけだろうが……」


 瀕死の状態のエリスが、そう反論した。


「まァ、確かに力は完全に戻ってねェ。けどなァ、これがオマエらとオレとの差でもあるんだぜ?」


「差……だと……?」


「簡単な理由だ。膨大なデータのロードにはそれ相応の時間がかかる。オマエらはこの2回戦でほぼ全ての力を取り戻した。つまり、その程度の力だったってことだなァ」


「おの……れ」


「あァそうだ。これに答えるの忘れてたな」


 海藤はまた何かを話し出すつもりらしいが、肝心の話し相手であるエリスの方をまるで見ていなかった。

 会話は成立しているのに、会話相手のことをまるで気に留めていない。異様な光景だった。


「オレには炎、水、雷、風、土……この5大属性の加護が付いている。オマエらは自分たちの魔術が効かないのは、オレのサイコキネシスの防御によるものだと勘違いしていたみたいだが、とんだ見当違いだな。5大属性の魔術は加護で無効化し、無属性の物理攻撃はサイコキネシスで防御する。これが異能と魔術の併用だ」


「5大属性の加護だと……。信じられん。それでは……ほぼ無敵ではないか」


 属性魔術の加護。1つの属性魔術を極めし者のみが会得できる、対属性魔術の無敵耐性のこと。

 才を持つ魔術師が一生分の年月を費やしても、1つの加護を会得するのがやっとだと言われている。

 だが海藤は、前代未聞の桁外れな才により、僅か数年で5大属性の加護を会得した。

 平たく言えば、今の海藤には、炎、水、雷、風、土属性、またはそれに準ずる攻撃は通用しないということである。


「まァ総じて言えば、テメェら2人共魔王の器にはほど遠いってことだ。これが査定の結果だ。伝える前にあいつを殺しちまったから、オマエがあの世で伝えておいてくれ。じゃあな」


 言うだけ言って、海藤はエリスに完全に興味を無くしてしまったらしい。


「ま、待て! お前に聞きたいことがある! お前の仲間は他にも……」


 エリスの言葉を無視し、人差し指をエリスに向ける海藤。

 その瞬間、ゴシャ……と肉が潰れる音と共に、エリスの体は砂となって消えてしまった。


「さァてェ……残るは眼鏡クンだけだなァ……あァ?」


 辺りを見渡す海藤だったが、眼鏡の少年、西園寺孝明さいおんじたかあきの姿は無かった。

 どうやら、海藤たちが戦っている隙に、『羊を以て牛に易う(エスケープゴート)』を使って逃げたらしい。


「やけに静かだと思ったら、そういう事かァ。ククッ、いいねェ。獲物ってのは追い回している間がなんだかんだで一番楽しいんだぜェ?」


 そう言って不気味な笑みを浮かべる海藤は、臆病な一匹の子羊を探しに、森へと向かったのだった。



バトルロイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』


残り1時間8分

脱落者  :イリス(チーム3)、エリス(チーム3)

脱落チーム:チーム5(土井恭平どいきょうへい山下やましたトミカ、唐沢和也からさわかずや

      チーム7(斎藤連(さいとうれん)渡辺亮(わたなべりょう)塩浜聖(しおはまこうき

      チーム9(白崎祥吾しらさきしょうご、レックス、終始おわりはじめ


お読みいただきありがとうございました。

次回、謎の人物登場?

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