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昼⑮ イラつき

今回はガラが悪い人が多めです。すみません。


 海藤咲夜かいどうさくや

 元魔王、蟻道冷人ぎどうれいとの生まれ変わり。

 

 俺、小間竜騎はこいつの正体を暴くことには成功したものの、奴の魔術によって結界に閉じ込められてしまった。この結界「黒結界ダークドーム」から出るには、結界の中にいるチーム1のデブスと砂肝を倒さなくてはならないらしい。


「クソ! デブスと砂肝の奴、なんで動きがこんなに人間離れしてやがる!」


「ククッ。言い忘れたが、そいつらは俺の魔力によって身体能力が強化されている。ちんたらやってるとバラされちまうぞォ? クハハハハ!!」


 結界の外から愉快な様子で俺に話しかけてくる海藤。


「ちっ、うざってぇな!」


「あああああああっ!!」


 人ならざる雄叫びを上げながら、人間離れした動きで俺との距離を詰める砂肝。その動きに無駄はないが、叫び声からも分かる通り、精神状態の方はとても正気とは言い難いものとなっていた。

 砂肝から俺の顔面を狙った一撃が放たれるが、俺は股間の竜でそれをガードする。


「……あれぇ? 私、一体何を……」


 股間の竜による魔術の無効化が働いた為、一瞬正気を取り戻す砂肝だが……


「私……あれ。あれあれあれあれあああああああああああああああああっっっ!!」


「クソ!」


 さっきからずっとこんな調子だ。こいつらの攻撃をオートガードし、魔術による洗脳を解除するが、数秒経つとすぐに戻っちまう。


「ククッ。そいつらの洗脳も、オレの魔力がある限り永続的に続く。お前たちがそこから出るには、もうその2人を殺すしかねェんだよ」


 ごちゃごちゃと似たようなことばかり喋り続ける海藤。

 うるせぇな。そんなことは分かってんだよ。俺一人なら……いや、ミコトだけならまだ説得して、一緒に戦うことができた。だが……


「お願いやめて! 2人には手を出さないで!」


「邪魔だクレア! そこどけ!」


 デブスや砂肝に攻撃を加えようとする度に、こんな感じでクレアに邪魔されちまう。

 ちっクソ偽善者が。百歩譲って砂肝は友人だったらしいからまだ分かるが、デブスはお前にとっちゃなんでもないだろうが。


「あー……うぜぇな」


「クハハハッ! 足手まといがいると大変そうだな小間ァ」


「ははっ。ここ出たらお前はマジで殺してやるよ。海藤」


「そうイラつくなよ小間ァ。オレは同情してんだぜ? そこの足手まといさえいなきゃ、お前はとっくにその結界から出れてただろうによ」


「あ? 俺の事知った風な口利いてんじゃねーよ」


「いいや分かるぜ? 最初にオマエを見たときから思ってたからな。オマエはオレと同類だ。他人のことなんざなんとも思っちゃいねェし、邪魔なら平気で切り捨てる。それに対する罪悪感も皆無。オレと同じ、最悪の部類の人間だ」


 コイツは何を言っているんだ?

 俺がてめーみたいなサイコクソ野郎と同類だと……?


「反吐が出るな」


「まァ。自覚がねェなら仕方ないな。ならせいぜいその結界の中で、善人にも悪人にもなれない半端モンのままくたばっちまいな小間ァ! ヒャハハッハ!!」


「……イラつかせやがる、どいつもこいつも」


「さァて。このままオマエらが足掻き続けるのを見物するのも悪くはねェが……このバトルロイヤルもまだ2回戦。ここで負けちゃ面白くねェよなァ」


 欠伸をしながら退屈そうに独り言を言う海藤。


「オレはそろそろ行くとしよう。その素敵な檻の中で、存分に殺し合いを楽しんでくれ。ギャハハッハハ!」


「海藤……後でぶっ殺してやるからよぉ。楽しみにしとけや」


「クハハハッ! そうか、楽しみにしてるぜェ! 小間ァ!」


 海藤はそう言うと、一瞬で何十メートルも跳躍し、そのまま別の場所へ飛んで行ってしまった。

 あいつの異能は確かサイコキネシスだったはず。なら、あれはサイコキネシスの応用で自分を飛ばしてるのか? あるいは魔術かもしれないが。

 どのみち、あそこまでの機動力を持つ相手を一度逃がしたらもう終わりだ。これで2回戦で海藤を倒すことはほぼ不可能になったと言っていい。


「クソが……」


 イラついてまともに思考が働かねぇ。そもそも俺は何にイラついてやがる。

 この期に及んで、友達だなんだとぬかす紅クレアにか。

 それとも、クソみたいな手で足止めしてきやがった海藤の野郎にか。

 あるいは……この状況を前に何もできない俺自身にか。

 考えたところで、このぐちゃぐちゃな思考がまとまる訳がなかった。


「竜騎君! 後ろ!」


「え?」


 ぼーっとしているとミコトの叫び声が聞こえた。後ろを振り返ると、そこには禍々しいオーラを纏った状態で俺に攻撃を仕掛けようとするデブスと砂肝の姿があった。



--------------------



「ククッ。さァて、モンスター共はどこにいるかねェ」


 ジェット機に匹敵する速度で飛行し続ける海藤。空からステージ全体を見渡し、モンスターがいそうなポイントを探していたのだが……


「よぉ空中散歩か? のん気なもんだな、クソ勇者が!」


「あァ?」


 いつの間にか海藤の背後には、黒い翼を使って飛行しているイリスの姿があった。


「ほう。お前か」


「俺に狙われてると知って1人でお散歩とは、いい度胸してんなコラ!」


 イリスは黒い翼を巨大な刀のような形状に変化させ、海藤に突きの一撃を放った。

 凄まじい勢いで空から地面へ叩きつけられる海藤。その衝撃は凄まじく、地面に激突した海藤を中心に、半径10メートル以上にかけて地割れを発生させた。その衝撃をモロに食らった海藤は、全身を地中深くまで埋め込まれてしまい、身動きが取れなくなってしまう。


「やれエリス!」


 地中の海藤にすかさず拳の一撃を放つエリス。先ほどのイリスの一撃以上の衝撃波が発生し、大地は裂け、近隣の木々がなぎ倒される。その勢いはまるでハリケーンだった。

 イリスとエリスの本気の一撃。普通ならば、食らってまともに生きていられるわけがない。それどころか、原形を留めぬほど全身がバラバラになってしまうだろう。

 だが……


「いい攻撃だなァ。寝起きにはぴったりの刺激だ」


 地中にめり込まれながら、エリスの拳を片手で受け止める海藤。

 その姿には、傷一つなかった。


「クソ! バケモノめが!」


「クハハッ! 次はこっちの番だぜェ」


 海藤がそう言った直後、エリスの体が不可視の何らかの力によって吹き飛ばされる。

 ロケットミサイルの様な勢いで、数十メートルと吹き飛ばされたエリスだったが、空中で衝撃を押し殺しその場に留まった。


「ほう。中々やるじゃねェか」


 瞬間、海藤を中心に爆発のような衝撃が起こる。

 爆発で地面ごと吹き飛ばし、地中から上がってくる海藤。

 その周りには、粉々になった地面や岩が浮遊していた。


「サイコキネシスか。ここまで使いこなすとはな。やっぱさっきは手加減してやがったかクソ勇者が」


「まァな。だがもう正体はバレちまったし、その必要はなくなったがなァ」


「はっ。やっと本性現したかクソ勇者が。テメェみたいな禍々しい魔力を持ったサイコ野郎が勇者と呼ばれるなんて、勇者業界ってのはよほど人材不足なのか? 海藤……いや、蟻道冷人ぎどうれいと


 吐き捨てるように言うイリス。


「はっ。オレは勇者じゃねェよ。そりゃオマエの勘違いだ」


「確かにな。俺たち魔族以上にドス黒い魔力を持ったテメェが勇者っていうのがむしろおかしな話だ。つーか人間かどうかも怪しいもんだ」


 どうやら小間の言う通り、イリスは海藤のことを勇者だと勘違いしていた魔族だったらしい。

 だが、残念ながら海藤は前世で殺したであろうイリスとエリスのことをまるで覚えていなかった。


「オレになんの恨みがあるのか知らねェが、こっちはなんの用もねェんだよ。長生きしたかったらさっさと消えろ」


「あ? まさかテメェ……俺たちを殺した癖に何も覚えてねーってのか」


「オマエらの魔力を見てもさっぱり思い出せねェ。なんせ気分で殺した奴なんて数えたらキリがないからな。まァ確かなのは、オレの記憶に残らねェ奴はどいつもこいつも雑魚だって事だけだ」


「……いいねぇ。流石だぜ海藤。イラつかせやがる。じゃあこれから思い出させてやるよ! 行くぞエリス! あいつに地獄を見せてやろうぜ!」


「かしこまりました。イリス様」


「クハッ! つくづく雑魚にお似合いなセリフしか吐かねェな。いいぜェ。そこまで言うならまた殺してやるよ! 来やがれェ!」


 チーム3と海藤咲夜の戦いが幕を上げた。



バトルロイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』


残り1時間20分

脱落チーム:チーム5(土井恭平どいきょうへい山下やましたトミカ、唐沢和也からさわかずや

      チーム7(斎藤連(さいとうれん)渡辺亮(わたなべりょう)塩浜聖(しおはまこうき

      チーム9(白崎祥吾しらさきしょうご、レックス、終始おわりはじめ



お読みいただきありがとうございます。

次回、イリスたちチーム3と海藤咲夜の戦いが激化します。

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