昼⑧ 共闘
なんだかんだオーソドックスな能力者が出たのは今回が初な気がします。
バトルロイヤル2回戦、モンスターハント。
俺、小間竜騎と紅クレア、天上ミコトのチーム6は森を抜け、広々とした草原に来ていた。
「……なんだこの数は?」
そこには、夥しい数のモンスターが、草原を埋め尽くす勢いで集まっていた。
「墓場の住人 : Lv15」
「骸骨戦士 : Lv19」
「ケルベロス : Lv41」
いくつか表示を確認できたが、どれもオカルトチックなモンスターばかりだ。
「薄気味わりーな……」
「一番奥にいるケルベロスは、さっきの蟹さんよりレベルが上ですね。それに他のモンスターも凄い数です」
「そうみたいね。でも大量得点のチャンスじゃない」
「はっ、頼もしいこったな。そんじゃ、派手にやりますか!」
俺の掛け声と同時に、クレアとミコトが走り出した。
ミコトは不死鳥を即座に召喚し、黄金の炎でモンスターを焼き尽くしていき、クレアは目にも止まらぬジャブの連撃でモンスターを蹴散らしていく。
「いやーすごいぞ2人共。がんばれがんばれ」
「……アンタはなんでそこにずっと突っ立ってるのよ」
「俺はほらオートガードがあるから、動かなくても攻撃してきたモンスターを勝手に倒してくれるんだよ。まぁ心配するな。このゴールは必ず俺が死守して見せるからよ!」
「ゴールもないのにキーパー気取ってないでアンタも戦え!」
クレアはそう言うと、一瞬で俺の元まで高速移動し、俺の両足を掴んだ。
そして、俺をこん棒のように担ぎ上げる。
「おいバカ! 降ろせ! 俺はこん棒じゃねぇんだよこの原始人が!」
「うっさい! 戦わないなら武器として使うまでよ!」
そう叫んだクレアは、ハンマー投げの選手の様に俺を振り回しつつ、回転しながらモンスターの群れに突っ込んでいく。
「食らえ! 必殺・竜巻旋風ハリケーン!!」
「それ全部風じゃねえか! やめるろろろろおおおおおおっっ!?」
竜巻旋風ハリケーンと化したクレアと俺は、一瞬でモンスターの大軍を空の彼方へと吹き飛ばした。
吹き飛ばされたモンスターたちが、青い光になって散りながら落ちていくのが見えた。
「うぇ……目ぇ回る……吐きそう」
「ったく仕方ないわね。しっかりしなさい!」
クレアはそう言うと、俺の鳩尾にエルボーを食らわせ、別のモンスターの群れに突っ込んでいった。
え、俺の話聞いてた? 何の応急処置のつもりなのかさっぱり分からないが、症状は悪化するばかりだ。
「2人共何をやっているんですか……」
呆れた様子でミコトがそう呟いた。
いや、本当ですよね。もっと言ってやって下さいよミコトさん。
すると突如、ミコトの背後にモンスターが現れた。モンスターの頭上には「ヴァンパイア伯爵 : Lv32」と表示されている。
「ヤバい! ミコト、後ろ!」
「えっ!?」
マズい、俺のスピードじゃ間に合わねぇ! クレアも戦闘中だからか、ミコトのピンチに気が付いていない。
どうする……そう思った次の瞬間。
「おいおい駄目じゃないか! 女性を守るのは男の役目だぞ! ファイア!」
突如現れた見覚えのない男が、ヴァンパイア伯爵を炎で吹き飛ばした。
「うおぉ! 燃えろぉぉぉぉ!! ファイア!」
「す、すみません助けていただいて。ありがとうございます」
「いえ! これも男の役目ですから! ファイア!」
「暑苦しいところわりーんだけど、誰お前」
俺はミコトを助けてもらった礼もせず、つい聞いてしまった。
それにしても、レベル32のモンスターを一撃でぶっ飛ばすとは……。なんて威力の炎だ。
「俺はチーム7の渡辺亮だ! 好きな言葉は情熱と青春だ! ファイア!」
「あ、暑苦しい……」
聞いてもいないことを喋りだしたことと、語尾がやたらうるさいことにツッコむ気力はもはや失せ果てた。それくらい暑い男だ。
正直、俺が一番苦手なタイプかもしれない。
「ははは! 見たところ、このモンスターの軍勢に苦戦していると見られる! どうだい! ここはひとまず共闘しないか!? ファイア!」
「共闘だぁ? そんなことして、お前になんのメリットがある。何を企んでやがる」
「あーそいつただの熱血バカだから、何も考えてないよー。うん」
俺の背後から、渡辺とは正反対の脱力した声が聞こえてきた。
その刹那、巨大な雷撃が周囲のモンスターたちを一瞬で貫いた。
鼓膜が破れそうになるくらいの、落雷の音と共に。
「す、すっげ。雷が落ちるのこんな間近で見たの初めて……じゃなくて。お前は? この暑苦しい奴の仲間か?」
「うん。ボクは塩浜聖。そこの熱血バカと同じチーム7だよー」
「あ、あの。私たちと一緒に戦って頂けるんでしょうか?」
脱力しきった塩浜に、ミコトが恐る恐る質問する。
「もちろんだよー。まぁ敵チームにこんなこと言われても信じないかもしれないけどさー。僕たちは得点は稼ぎたいけど、他チームと揉めるつもりはないんだよねー。だから利害が一致するなら、共闘もウェルカムって感じ。まぁ得点は早い者勝ちだけどねー。うん」
「……」
聞いてる限り、嘘を言っているようには見えない。確かに、今回のモンスターの数は今までとは桁違いだ。俺たちチーム6の3人だけで倒しきれる保証はない。全滅したら得点どころの話じゃねえし、ここは素直にチーム7との共闘を受け入れるとしよう。
「分かった。ただし俺たちに危害を加えてきたら、その時は遠慮なくぶちのめさせてもらう」
「うん大丈夫だよー。キミ物騒だなぁ」
「よろしくお願いしますね」
「こちらこそ! しゃぁ! 燃えてきたぞ! ファイアッ!」
渡辺の暑苦しい叫びが響き渡り、チーム6&7の共闘が始まったのだった。
バトルロワイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』
残り3時間30分
脱落チーム:チーム5(土井恭平、山下トミカ、唐沢和也)
チーム9(白崎祥吾、レックス、終始)
お読みいただきありがとうございます。
次回、強敵が現れます。




