表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/103

昼⑧ 共闘

なんだかんだオーソドックスな能力者が出たのは今回が初な気がします。


 バトルロイヤル2回戦、モンスターハント。


 俺、小間竜騎と紅クレア、天上ミコトのチーム6は森を抜け、広々とした草原に来ていた。


「……なんだこの数は?」


 そこには、おびただしい数のモンスターが、草原を埋め尽くす勢いで集まっていた。

 「墓場の住人 : Lv15」

 「骸骨戦士 : Lv19」

 「ケルベロス : Lv41」

 いくつか表示を確認できたが、どれもオカルトチックなモンスターばかりだ。


「薄気味わりーな……」


「一番奥にいるケルベロスは、さっきの蟹さんよりレベルが上ですね。それに他のモンスターも凄い数です」


「そうみたいね。でも大量得点のチャンスじゃない」


「はっ、頼もしいこったな。そんじゃ、派手にやりますか!」


 俺の掛け声と同時に、クレアとミコトが走り出した。

 ミコトは不死鳥を即座に召喚し、黄金の炎でモンスターを焼き尽くしていき、クレアは目にも止まらぬジャブの連撃でモンスターを蹴散らしていく。


「いやーすごいぞ2人共。がんばれがんばれ」


「……アンタはなんでそこにずっと突っ立ってるのよ」


「俺はほらオートガードがあるから、動かなくても攻撃してきたモンスターを勝手に倒してくれるんだよ。まぁ心配するな。このゴールは必ず俺が死守して見せるからよ!」


「ゴールもないのにキーパー気取ってないでアンタも戦え!」


 クレアはそう言うと、一瞬で俺の元まで高速移動し、俺の両足を掴んだ。

 そして、俺をこん棒のように担ぎ上げる。


「おいバカ! 降ろせ! 俺はこん棒じゃねぇんだよこの原始人が!」


「うっさい! 戦わないなら武器として使うまでよ!」


 そう叫んだクレアは、ハンマー投げの選手の様に俺を振り回しつつ、回転しながらモンスターの群れに突っ込んでいく。


「食らえ! 必殺・竜巻旋風ハリケーン!!」


「それ全部風じゃねえか! やめるろろろろおおおおおおっっ!?」


 竜巻旋風ハリケーンと化したクレアと俺は、一瞬でモンスターの大軍を空の彼方へと吹き飛ばした。

 吹き飛ばされたモンスターたちが、青い光になって散りながら落ちていくのが見えた。


「うぇ……目ぇ回る……吐きそう」


「ったく仕方ないわね。しっかりしなさい!」


 クレアはそう言うと、俺の鳩尾にエルボーを食らわせ、別のモンスターの群れに突っ込んでいった。

 え、俺の話聞いてた? 何の応急処置のつもりなのかさっぱり分からないが、症状は悪化するばかりだ。


「2人共何をやっているんですか……」


 呆れた様子でミコトがそう呟いた。

 いや、本当ですよね。もっと言ってやって下さいよミコトさん。


 すると突如、ミコトの背後にモンスターが現れた。モンスターの頭上には「ヴァンパイア伯爵 : Lv32」と表示されている。


「ヤバい! ミコト、後ろ!」


「えっ!?」


 マズい、俺のスピードじゃ間に合わねぇ! クレアも戦闘中だからか、ミコトのピンチに気が付いていない。

 どうする……そう思った次の瞬間。


「おいおい駄目じゃないか! 女性を守るのは男の役目だぞ! ファイア!」


 突如現れた見覚えのない男が、ヴァンパイア伯爵を炎で吹き飛ばした。


「うおぉ! 燃えろぉぉぉぉ!! ファイア!」


「す、すみません助けていただいて。ありがとうございます」


「いえ! これも男の役目ですから! ファイア!」


「暑苦しいところわりーんだけど、誰お前」


 俺はミコトを助けてもらった礼もせず、つい聞いてしまった。

 それにしても、レベル32のモンスターを一撃でぶっ飛ばすとは……。なんて威力の炎だ。


「俺はチーム7の渡辺亮わたなべりょうだ! 好きな言葉は情熱と青春だ! ファイア!」


「あ、暑苦しい……」


 聞いてもいないことを喋りだしたことと、語尾がやたらうるさいことにツッコむ気力はもはや失せ果てた。それくらい暑い男だ。

 正直、俺が一番苦手なタイプかもしれない。


「ははは! 見たところ、このモンスターの軍勢に苦戦していると見られる! どうだい! ここはひとまず共闘しないか!? ファイア!」


「共闘だぁ? そんなことして、お前になんのメリットがある。何を企んでやがる」


「あーそいつただの熱血バカだから、何も考えてないよー。うん」


 俺の背後から、渡辺とは正反対の脱力した声が聞こえてきた。

 その刹那、巨大な雷撃が周囲のモンスターたちを一瞬で貫いた。

 鼓膜が破れそうになるくらいの、落雷の音と共に。


「す、すっげ。雷が落ちるのこんな間近で見たの初めて……じゃなくて。お前は? この暑苦しい奴の仲間か?」


「うん。ボクは塩浜聖しおはまこうき。そこの熱血バカと同じチーム7だよー」


「あ、あの。私たちと一緒に戦って頂けるんでしょうか?」


 脱力しきった塩浜に、ミコトが恐る恐る質問する。


「もちろんだよー。まぁ敵チームにこんなこと言われても信じないかもしれないけどさー。僕たちは得点は稼ぎたいけど、他チームと揉めるつもりはないんだよねー。だから利害が一致するなら、共闘もウェルカムって感じ。まぁ得点は早い者勝ちだけどねー。うん」


「……」


 聞いてる限り、嘘を言っているようには見えない。確かに、今回のモンスターの数は今までとは桁違いだ。俺たちチーム6の3人だけで倒しきれる保証はない。全滅したら得点どころの話じゃねえし、ここは素直にチーム7との共闘を受け入れるとしよう。


「分かった。ただし俺たちに危害を加えてきたら、その時は遠慮なくぶちのめさせてもらう」


「うん大丈夫だよー。キミ物騒だなぁ」


「よろしくお願いしますね」


「こちらこそ! しゃぁ! 燃えてきたぞ! ファイアッ!」


 渡辺の暑苦しい叫びが響き渡り、チーム6&7の共闘が始まったのだった。



バトルロワイヤル2回戦『チームで協力! モンスターハントバトル!』


残り3時間30分

脱落チーム:チーム5(土井恭平どいきょうへい山下やましたトミカ、唐沢和也からさわかずや

        チーム9(白崎祥吾しらさきしょうご、レックス、終始おわりはじめ



お読みいただきありがとうございます。

次回、強敵が現れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ